空いている時間の合間を縫って、更にオーヴァーダブは続く。いいタイミングを待っていたのだ。声の調子、スケジュール、隠れ家Wの状況。そして少しづつ、コーラスを、そしてリードヴォーカルを録音していった。
 コーラスは、先に録音しておいた仮歌にあわせて歌う。歌ってみて、ハモり方を変えてみる。メインのメロディに対して、上を歌うのか、下を歌うのか。それともユニゾンなのか。
 "不埒"のサビのコーラスは、メインに対してオクターブ上のユニゾンと、下3度のハーモニーにした。オクターブユニゾンは、裏声でも限界に近い音域なので、振り絞るようにして出す。T.REXのカン高いコーラスを、フィル・コリンズを意識しながら歌ったという感じか。(俺の中ではね)これによって独特の雰囲気が生まれた。

 "Velvet"の追っかけコーラスは、コーラスというよりも一つの音の固まりにしたかった。考えた末、B7th+9thの5声のハーモニーを録音して、後でエフェクトをかけることにした。メイン、3度、5度のうちはまだいいが、7度、9度になるともう歌う前に音程のチェックが必要だ、歌いだす直前まで「ナー、ナー」と実際に声を出しながら音程を確認する。このコーラスは繰り返しなので、一番良く歌えたパートをコピー&ペーストする。作業の効率化。
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Recording日記 / 5

 今日は俺の個人作業。NGだったギターを録り直す。隠れ家Wに再びアンプをセットし、ひとりでブースとコントロールルームをいったいきたりしながら音造り。"Velvet"のバッキングの音は軽めの歪みでいいので、フェンダーでも充分だ。
 レコーダーも一人で扱う都合上、ブースの中でなくコントロールルームでギターを弾く。スピーカーから出る音を聴きながらギターを弾くのと、ヘッドホンでモニターするのとでは、弾くときのノリが全く違う。また、聴こえて欲しい音の種類が違う。スピーカーからの時はとにかくスネアの2拍4拍がハッキリ聴こえていたい。グルーヴを一番に大事にしたい。替わってヘッドホンでモニターする時は、どうしても音程が気になるので、チューニングの回数が増える。こう書くと、バッキングをスピーカーで、ソロをヘッドホンでモニターすれば良いとも思うが、そう単純ではない。
 この日は"Velvet"のバッキングのみで終わる。

 この時点で既に9月もなかばである。ちょっと録っては音をいじって聞き返し、更に音をいじる。この時期は一日にそれぞれの曲を必ず2回以上は聴いていた。聴きながら、この後オーヴァーダブする音や、既に録音されている音の処理などを考える。

 固まらない"Velvet"の歌詞も考えるが、思うように進まない. . .

 更に日を改めて、今日は"不埒"のギターソロを録る。今回録音する2曲のなかで唯一のソロである。このソロは、"不埒"の曲調をグラムっぽくしたいこともあり、初期のクイーンっぽくしたかった。すなわち、多重録音である。
 ブライアン・メイのギター・オーケストレーションは彼のトレードマークだ。登録商標だ。普段ライヴで弾いている"不埒"のソロを下敷きに、ブライアン・メイ風のギター・オーケストレーションにチャレンジである。
 とは言っても、どこを参考にするかである。1つのメロディに10本のギターを被せてハーモニーを付けるなんてのは、ちょっとやり過ぎだ。
 考えた末、クイーンの"Keep Yourself Alive"を参考にすることにした。いや、パクりではなく。
 ひとつのメロディがあり、それを他のメロディが追いかける。それは時に2声のハーモニーになり、3声目、4声目が重なってくる。
 . . .そんなに上手くゆくかどうかは解らないが、とにかくやってみよう。いつもの歪み(BossのSD-1)とVOXのワウである。このソロはアンプを通さなくていい。

 弾きながら、フレーズを探る。要所を書き留め、カウンターメロディーを考える。それを録音し、ハーモニーをつける。メインのメロディを修正し、さらにハーモニーを重ねる。こういう作業は、やはりある程度は音符を五線紙に書いていかないといけない。耳で聴いてなんとなくOKでも、実際はハーモニーが破綻していたら、雰囲気がブチ壊しだ。
 また、このソロはすべてワウペダルを踏んで録音する。音符で現すことのできない表現を、ワウペダルの踏み具合で込めてゆく。ここはギリギリまで理詰めとフィーリングを両立させてみたい。

 どうにか仕上がったソロを、それこそ何度もくりかえし聴く。雰囲気は出せただろうか?
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Recording日記 / 4

 仕事の合間を縫って、仮のヴォーカルをレコーディングする。まあ、肩ならしに歌ってみるといった程度。こういうことが出来るのが、隠れ家Wのいいところである。歌いながら、歌詞のチェックをする。そして日を改めて. . .

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 渡のギターのオーバーダブ。リハスタで限られた時間の中で録音するより、隠れ家Wでゆっくりとリラックスしながら録音したほうが良いので、フェンダーのアンプを隠れ家Wに運び込む。フェンダーのアンプと、アンプシミュレーターの2パターンで録音する。なにはなくともまずはアンプのセッティングから。
 普段彼が使用するのは、定番中の定番Roland JC-120だが、スタジオに持ち込んだアンプはフェンダーの真空管アンプである。微調整しつつ、音決め。アンプでの音決めが終わったらアンプシュミレーターでの音を決める。コントロールパネル上でまずアンプ本体を選び、次にスピーカーキャビネットを選ぶ。フェンダー系のクランチーなサウンドをセッティングする。

 今回はブースの中でアンプの生の音を聴きながらではなく、コントロールルームでスタジオのスピーカーから出る音を聴きながらのレコーディングだ。これも一長一短あるが、ブースの中の孤独な作業にくらべてメンバーの感想がダイレクトにプレイに反映される。(当然のことだが、録音ブースは録音中はコントロールルームと音が遮断されるため、今録り終わったテイクが素敵なのかクソなのか、メンバーがトークバックのスイッチを押して話してくれるまでわからない)

 さあ、渡の試練の時だ。悩みながらもバッキング、ソロと順にクリア。こう書くと短いが、自分(とメンバーを改めて_?)を見つめ直す貴重な時間だ。己れのSoulを刻み込め!

 同じ日に、"Velvet"のベースソロも録音する。フレーズは固まっているようだが、エンドがちょっと冗長な気がする. . .とこの時点では思う。あとで編集するかもしれない。

 メンバーが集まっているうちに、賑やかしのコーラスを録音する。"Hey !!" "Ooh !!"なので、一瞬で終わる。この日はその他に、メンバーと相談しながらパーカッションをダビング。"不埒"にカウベル、"Velvet"にシェイカーを入れる。こういう小物が、レコーディング全体の質を上げるのだ、と信じたい。
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Recording日記 / 3

 ドラムとベースの仮ミックスを作成する。仮のバランスでミックスしたものを作り、それを聴きながらリハスタでギターをオーバーダブするのだ。
 この仮ミックスを作る段階で、ドラムとベースのEQをあらかじめおおざっぱに決めておく。と言うより、いろいろいじりたいのだ。EQでどこを持ち上げるか、コンプの深度、リヴァーブは?これらは全て音が揃ってから全体のバランスを見ながら作業しても良いのだが、この段階で単体で聴いたときにカッコ良い音で聴きたいのである。

 ドラム&ベースの仮ミックスを、新しく作ったPro Toolsのセッションに読み込ませる。MBoxというシステムを使って、iBookG4上でPro Toolsを起動して録音するのだが、ドラムとベースの全てのトラックを再生しながらギターを録音しようとすると、マシンパワーが足りなくて止まってしまうのだ. . .

 今日は俺のギターのオーバーダブ。自宅近くのリハスタに楽器と機材を持って籠る。まずマーシャルをいつもの感じにセッティング。そこから曲にあった感じの音色になるよう微調整。マイクは定番Shure のSM57だ。
 しかし!実際やってみると、トラック数を減らしたにもかかわらず録音が途中でストップしてしまう。アラートによるとディスクの空き容量が足りないようだ。しかも、HDが断片化しているらしい。OS Xはデフラグいらないじゃなかったのかよ。全く。しばらく悪戦苦闘。前回のレコーディングの時はPro Toolsを使わずに、GrageBandを使ったからサクサクいったのになあ。
 結果は散々で、"不埒~"のバッキングのみOK、あとは仮にしておいて、仕切り直しをするしかあるまい。

Recording日記 / 2

 OKになったドラムス&ベースのテイクに、修正を加える。全体的なノリはいいのに、どうしても直したいミスを、他のテイクから持ってきて差し替える。ドラムとベースどちらがミスをしていても、両方まとめてその部分を持ってきて繋ぐ。ある程度の技術は必要だが、よほどテンポが違わない限りだいたい違和感なく繋がるものである。
 こういう作業に眉をひそめるミュージシャンは意外と多い。ごまかしだと受け取れるからだ。確かに、一発録りで上手くいった時の臨場感は何物にも代え難いし、自身の錬度の証明になる。しかし、効率よくいいものを作りたいという思いのほうが、自分的には強いのである。

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 いくつかの部分の差し替えをし、若干のタイミングの修正をする。若干ノリが変わってしまう部分もあるが、いい結果を期待してのことだ。この作業を経た後、ようやくギターなどの上ものを重ねてゆく。

Recording日記 / 1

 8月某日、新宿のリハーサルスタジオに、録音機材を搬入。今日から、12月リリース予定のシングルのレコーディング開始である。
 本日は、ドラムとベースのリズム録り。とにかくマイクを立てる。立てる。ドラムセットの録音には、LRステレオ2本+キックにマイクをあてるという方法もあるが、今回(も)、シンバル以外のパーツ一個一個にマイクを当てる。ドラムセットで5本。

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 ベースはマイクとライン両方で録り、後でどちらを使うか考える。ライン録音は、不必要な音の干渉が少ない代わりに臨場感に欠ける音になる。マイクで録音すると臨場感は出るが、当然他の音の干渉がある。今回のスタジオはそんなに広くない。それでなくても複数の楽器を同じ部屋で同時に録音するということは、狙った楽器以外の音がマイクに入ってきてしまう(カブる、と言う)。音がカブってしまうと、楽器個々の後処理をするのが難しくなってしまうのだ。まあ、カブりまくりのラフな音がバンドのサウンドに合うのであれば、全パート一発録りで構わないが、プロデューサーの私としては、後々いろいろいじりたい(悩みたい)のである。

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 今回は"Velvet"と、"不埒 A-GoGo"の2曲を録音する。4時間でどうしても録ってしまいたい。セッティングが終了したら、小手調べの音合わせから録音してゆく。メンバーはそれぞれ緊張しているが、リハーサルを積んだだけあって大きなミスはない。細かい箇所でいくつかチェックを入れながら、テイクを重ねる。ドラムのKen-Ichiはレコーディングが初めてだが、特に問題なく淡々と叩く。当初予定していた予備日も必要ないようだ。

 リハスタから、場所を隠れ家Wに移動。持ち込んだレコーダーからPro Toolsに音をコピーしながら、録音したテイクを全てチェックし、OKのテイクを決める。基本は一番グルーヴが出ているテイクだ。多少ミスっていても大丈夫。