2011.12.22 Echoes「連帯の日 Tokyo」 渋谷AX

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 Echoesというバンドが好きだった。

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 Echoesが再結成した。3.11の震災で被害を被った東北のために、福島のライヴハウスで今年9月4日、オリジナルメンバーとしては20年ぶりにライヴを行ったのだ。
 Echoesのライヴをはじめて見たのは、1990年10月3日。会場は渋谷公会堂だった。終演後、ギターを持ち込んでいた友人を中心に、Echoesの歌を歌いながらメンバーを出待ちしていた。辻仁成には会えなかったが、タクシーに乗り込む伊藤浩樹と伊黒俊彦を捕まえて写真を撮った。サポートでキーボードを弾いていた横田隆一郎は、友人たちと一緒にフレームに収まってくれた。

 バブルに浮かれた時代に学生をしながら、その世相にどこか違和感を感じていた当時のぼくたちは、小説家でもある仁成の書く歌詞に共感し、バンドのはじき出すビートに拳を上げた。"STELLA", "Dear Friend"、"Zoo"これらの名曲を、ぼくらは単に聞き飛ばすだけでなく、ヘタクソながらもギターを手にして彼らの曲を演奏した。高い音程にはキーを下げても、とにかく歌って彼らの世界を自分のものにしようとしたのだ。

 Echoesは1991年に解散、2000年に仁成と浩樹の2人で再結成したが、その時はあまり興味がなかった。自分の中でなにかがズレていたのだと思う。その後のユニット"Echoes of Youth"もいつの間にか自然消滅していた。仁成の小説を読む事もなくなり、彼の原作が時折映像化されると、「ふーん」と手に取ってはみても、レジに運ぶことはなかった。仁成と浩樹が新しいバンドを組んでも、情報すら耳に入ってこなかった。



 暮れも押し迫った渋谷は寒かった。会場である渋谷AXは、渋谷公会堂から歩いて1分だ。20年前はまさかこんなところにライヴハウスができるなんて思ってもいなかったし、そこでEchoesが再結成ライヴをするとは思っていなかった。

 ビールを片手にフロアに降りる。思った通り、客層は30~40代の男だ。皮の匂いがする。開演時間を過ぎたころ、客席から「行くぞー!」という声があがり、エコーズコールが始まった。熱いじゃないか。20年前の夢の続きを、この大災害の年にもう一度、という気持ちが伝わる。夏に観た再結成Complexや、氷室京介のBoowyナンバーによるライヴとはまたひと味違った雰囲気がAXを包んだ。

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 "Welcom To The Lost Child Club"が会場に流されると、不覚にも涙腺が緩んできた。"Hello are friend ? Welcom To The Lost Child Club" 20年前に別れてしまった友達、今どうしているだろうか?もしかしたらこの会場にいて、同じ涙を流しているのかもしれない. . .
 会場全体が歌うなか、ゆっくりとメンバーがひとりひとり歩いてきた。
 聞き慣れないアコースティックギターとピアノのイントロで曲がスタートする。スローテンポにアレンジされた"Jack"だった。ステージには辻仁成、今川勉、伊藤浩樹と伊黒俊彦のオリジナルメンバー4人と、キーボード、ドラマーの6人。勉のドラムセットは中央奥にセットされ、上手にサポートドラマーのセット、下手にキーボードが組んである。
 勉は病気の後遺症のために、以前ほどスピーディでパワフルなドラミングはできないが、黙々とリズムを刻んでいる。風貌がまるで若き日のジョー・ストラマーだ。浩樹はほとんど動かずに、丁寧にギターを弾く。上手では、貫禄十分になった俊彦が、勉と視線を交わしながらベースを弾いている。
 そして仁成。声が伸びている!ハスキーながらもよく伸びるハイトーンは、ちっとも衰えていないどころか、以前にも増してパワフルだ。
 シンセによるSEから、2曲目"Worrior"。これは、彼らの解散コンサートのオープニングナンバーだ。勉はシンセドラムのパッドを叩く。間奏のバグパイプのようなフレーズは浩樹らしいギターソロに置き換えられていたが、掛け合いのコーラスがグイグイ曲をひっぱる。だが、まだ会場は熱くなりきれていない。
 強力だがややマイナーなナンバーの後、浩樹のギターが"My Protest Song"のイントロをはじき出す。ここでようやく会場はヒートアップする。"Change Myself !"のかけ声で、一体になって拳を突き上げるオーディエンス。これを待っていたのだ。
 オルゴールのようなSEの後、ベースが鳴り響くと、バンドは"Cutting Edge"を演奏する。ここでもコーラスは大合唱だ。"Worrior"からここまでの流れは解散コンサートを彷彿させる。勢いで仁成はギターの弦を切る。熱い。熱いが仁成、このままのペースで飛ばして大丈夫なのか?

 今回勉は、ドラムセット半分、ドラムマシンの操作やパッド、パーカッションを叩くのが半分といった感じ。メインのリズムはサポートのチェリー氏がパワフルに叩く。
 ドラムマシーンのイントロに導かれて始まったのは、個人的には大好きな"Hello Again"だ。勉がドラムパッドでスクラッチなどの音を乗せている。 仁成が歌い出した歌詞は、今回の東電の失態を請けてかなり変えられていた。

 「原発やもんじゅがなくても 暮らしてゆけるけれど 歌や夢や愛がなければ 僕らは生きてはゆけない 信号や規律がなくてもどうにか転がれるけれど 労りや連帯がなくては この国の明日はない」 

 MCで仁成は「あの頃はひねくれてたしバブルだったから、"歌や夢や愛なんていらないし信号や規律が大事だよね""僕らの事は心配しないでね"って言ってたんだけど、今の時代ひねくれてたらメッセージ届かなくなっちゃったんだよ」と言っていた。「まっすぐ言っても隠蔽されたり全然わかんなくなっちゃったり、どれが本当なの?っていっても解らない時代になっちゃったんだよ。」
 悲しい、とても悲しいが、正しいのだろう。

 続く新曲"そのうち愛がないなら今すぐ手をつなげ -Solidarity-"(事前にアナウンスされていた曲名と若干違いますが、MCで仁成はこう紹介してました)は、この日の白眉だった。この日のテーマ「連帯」をストレートにタイトルにしたこの曲は、ブリッジでの仁成のラップが圧巻だった。ラップというよりも、演劇の長台詞、単純な言葉をたたみかける仁成の迫力は、それだけでもこの会場に足を運んで良かったと思わせるものだった。ちゃんとした音源化を望みたいけれども、ライヴ会場でのこの迫力は再現しきれないだろうなあ。

 勉がハープを吹く"ハミングバードランド"に続いて演奏されたEchoesの最大のヒット曲"Zoo"は、今回はレゲエにアレンジされて登場。楽しそうに歌う仁成がとても印象的だった。ちょっと中だるみ気味ではあったが、会場はもちろん大合唱。
 "Bad Boy"をはさんで、アルバム"Eggs"から"Rainbow"。熱くなりすぎた(?)仁成は構成を間違えまくるが、オーディエンスは合唱で」フォロー。「仁成落ち着けー」の声も。

 本編ラストは"アンカーマン"。冒頭の"Jack"同様この曲もスローテンポにアレンジされていた。このテンポが、今の勉に叩き易いテンポなのだろう。病気のあと、出来ることを、出来る範囲でがんばっている。メンバーも勉のことはあえて説明しないし、知らないひとにとっては「何故」って感じなんだろうけど、勉がいてこそのEchoesなんだ。

 メンバーが舞台袖に引っ込む。まだあれもやってない、これもやってない、アンコールは. . . Red Sun"!ここでも歌詞は変えられていた。「放射能の町をジョギングしているミドルエイジ」
 続く"デラシネ”もいい曲だが、渋い!"Tug of Street"は?"Someone Like You"は?"Gentle Land"は?なんとそこへきて次は"ロックンロールは歩く鏡である". . .まさかこの曲が出てくるとは。ベストアルバム"Silver Bullet"に未発表曲として収録されたナンバーで、いい曲なのだが、なんでまた仁成はこんな、「エコーズファン度」を測るような曲を持ってくるかな。
 迷走気味のアンコールにとどめを刺したのが、"ハミングバードランド"のパンクバージョン!もともとこの曲はアコースティックギターの弾き語りのようなアレンジで、アルバム"Heart Edge"に収録されていた。原曲に忠実なかたちでこの日中盤に演奏されたが、まさかのガレージパンクで再登場。正直、勢いだけであまり良くなかった。練習不足ながら仁成が無理矢理演奏したらしい。

 今回若干急ごしらえの感は否めず、ショウとしては詰めの甘い箇所もたくさんあった。
 だが、それを補ってあまりある、完成度の高い楽曲と仁成の声。年が明けてもまた東北を回りたいと言っていたので、Echoesとしての活動はしばらく続くのだろう。眠らせておくにはもったいない曲がEchoesには多すぎる。

 2度目のアンコール、最後のナンバーは"東京"だった。今度はややテンポアップしており、オリジナルでは印象的なマンドリンもなかったけれど、この夜を締めるにはいい曲だ。
 "東京"は失恋をして住まいを変える男の歌だ。傷心を癒すのに居を変えるのはいい手段かもしれないが、災害によって居を変えざるを得なかったひとたちはたまったものではない。無事に年をこせるだろうか。これからの幸せはあるのだろうか。

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 ちょっとだけそんな事を思いながら、20年前に一緒にEchoesのライヴを見にいった友人に電話してみた。
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ダンスのショーイング

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 ダンスのショーイング

 を見てきた。

 10名ほどの男女が、踊り、飛び跳ね、声を発し、全身を使って表現をする。1時間ほどのなかで、群舞あり、ソロあり、また踊りに限らず、時には演劇のように、時にはパントマイムを織り交ぜて表現は続く。
 日常生活の歪みというか、窮屈な毎日を表現したシークエンスが、見応えがあったが辛かった。「すみません」で渡っていかなければいけない世間は、やはり普遍的なものなのだろう。

 とにかく、濃密な時間だった。以前Blogにも書いたが、ステージに上がるバンドマンは、自分のフィールド以外のステージ(演劇、舞踏、朗読または演説など)を見て、何らかを演奏に反映させなければ駄目だ。そこで受けた刺激を、咀嚼して歌や楽器にのせて吐き出すことができれば、より面白いものができ上がるはずだ。

 Kへ
 表現力はあるんだから、次回は1場面でもかっさらう勢いで。今日で言うなら、呼ぶ猫ではなく呼ばれる猫をね。
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ガタカ

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 1997年の映画「ガタカ」を見た。近未来のSFものである。

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 近い未来。人間は、生まれるとそのDNAを詳細に分析され、知能、身体能力から将来における疾病発症の可能性までを知ることができる。あらゆる職業で適正/不適正が選り分けられ、不適と判断されると、その職業に就くことはできない。
 イーサン・ホーク演じる主人公は、遺伝子劣性と判断され、将来の可能性に希望を持てない。だがその弟は、すべてにおいて優生と判断され、あらゆる可能性を持っている。宇宙飛行士になる夢を捨てることができない主人公は、家を飛び出し、ビル清掃の仕事をしながら身体を鍛え、宇宙飛行士に必要な知識を詰め込んでゆく。
 そしてついに、非合法のルートから、DNAのデータを提供してくれる元アスリートのパートナーを見つけ、彼になりすまして「ガタカ」で宇宙飛行士候補生として働き始めることに成功する。
 ある日「ガタカ」内で殺人事件が起こる。捜査の過程で、正体を偽っている主人公に、司直の手が伸びる. . .

 SF映画ながらSFXはほとんど使われず、(6本指のピアニストは笑えた)ドラマの描写に終止するこの映画は、はっきり言って地味であるが、見応えのある作品だった。
 ひとはもちろん、人種や容姿、宗教、信条、もちろん数値によって将来の可能性を判断されるベきではない。主人公は、そんな不条理をはねのけ、自分の可能性を押し広げ、自分の力で夢を勝ち取ろうとする。

 だが、この映画で見るべきは、主人公の強い信念ではない。むしろ脇役、DNAのデータを主人公に提供する、身体障害者の元アスリートや、DNAのデータから本人確認をする「ガタカ」の検査官、主人公の清掃作業の先輩、そして、ユマ・サーマン演じる、主人公の正体に疑問を持ちながら恋に落ちる同僚といった登場人物が、主人公の夢を支える力の物語なのだ。皆、主人公に夢を託す。そして、主人公は宇宙に飛び出してゆく。


 ふりかえって僕は、何でも自分でやろうとしてその結果成功も失敗も自分で飲み込むことが多い。
 気づかないところで、必ず誰か助けてくれているものなのだ。疲れが溜まったとき、「自分はひとり. . .」と落ち込むのではなく、自分を支えてくれているひとのことを思い出そうと思う。
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Bon Jovi 2010.11.30 東京ドーム

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 Bon Joviのアルバム"New Jersey"を聴いて思い出すのは、友人宅に集まって皆でスコアブックを眺めながら、分解寸前のバンドをどうにかして立て直そうとした日々。
 Bon Joviの"New Jersey"を聴いて思い出すのは、深夜のMTVのLAメタル。
 Bon Joviの"New Jersey"を聴いて思い出すのは、受験生になる、そして親元を離れて下宿生活に入る少し前の不安な心境。
 Bon Joviの"New Jersey"を聴いて思い出すのは、ちょっと時間を下って、社会人になりたての頃に組んだBon Joviのコピーバンドの仲間の顔。

Cold Beer & Crazy Beat!~ FLYING WALRUS AKIHIのBlog-101130

 Bon Joviの東京ドーム公演に行ってきた。来日が発表になった時点では、あまり行くつもりはなかったが、日にちが近づくにつれ、なんとなく観たいという思いが強まっていった。
 この世界最高峰のロックンロール・バンドを、まだ生で観た事がなかったのだ。リリースされるアルバムを追っかけていったのは、5枚目の"Keep The Faith"までで、その後15年以上は、ヒットした曲しか知らなかった。
 当日券でもいいや。半分くらいは知らない曲だろうし、B席あたりでゆっくりと座って観るか。
 そう思ってドームに向かったが、実際はしっかりS席を手に入れ、しかもわりといい感じの席だったので、こりゃ楽しまなきゃ損だよなと思った。

 そして暗転ー
 "Blood On Blood"のイントロが鳴り響いた。

 "New Jersey"収録の、最も好な曲である。開始直後でまだ細かく整えられていない、荒々しいサウンドが鳴り響く。何となく、自分の知らない新しめの曲でショウは始まるものだと思っていたので、完全に虚を突かれた。頭は一気に20年前に吹っ飛んだ。当時毎日のように顔を合わせていたが、今はすっかりご無沙汰になってしまった人たちや、もう会えないであろう人たちの顔が次々と浮かんできた。

 涙があふれていた。憚ることなく涙を流しながら、郷愁に浸りながら、僕は"Blood On Blood"のコーラスを叫んでいた。

"Blood On Blood, One On One I'll Be Here For You Till Kingdom Come"


 そこからは夢中の時間だった。実際は、ちょっとカントリーが入った最近のナンバーにほほおと思い、ヴォーカルをスイッチしてギタリストが歌うようになった曲に仰天した。気に入っていた曲がアコースティックにアレンジされているのに戸惑い、中学生の時に初めて聴いた彼らのデビューナンバーに感慨深い思いをした。
 何より、誠実なジョンの歌声に感動した。リッチー、ティコ、デヴィッド、そしてサポートの2人のパワフルでハートフルな演奏に感動した。最近のコンサートにしては音そのものはあまり良くなかったが、とにかく、期待以上のものをこのロックンロールバンドから受け取ったのだ。

 さて、今日この場に、かつて苦楽を共にした仲間が同じ感動を味わっているはずだ。
 そいつの顔を見たいと思った。

2010.11.30 Bon Jovi Tokyo Dome Set List

1.Blood On Blood (New Jersey)
2.We Weren't Born To Follow (The Circle)
3.You Give Love A Bad Name (Slippery Wen Wet)
4.Born To Be My Baby (New Jersey)
5.Lost Highway (Lost Highway)
6.Whole Lot Of Leavin' (Lost Highway)
7.When We Were Beautiful (The Circle)
8.It's My Life (Crush)
9.I'll Sleep When I'm Dead (Keep The Faith)
10.We Got It Goin' On (Lost Highway)
11.Bad Medicine (New Jersey)
~Pretty Woman~Shout
12.Lay Your Hands On me (New Jersey)
13.What Do You Got?(Greatest Hits)
14.(You Want To) Make A Memory (Lost Highway)
15.I'll Be There For You (New Jersey)
16.Something For The Pain (These Days)
17.Someday I'll be Saturday Night (Cross Road)
18.Work For The Working Man (The Circle)
19.Runaway (Bon Jovi)
20.Have A Nice Day
21.Who Says You Can't Go Home? (Have A Nice Day )
22.Keep The Faith

23.Wanted Dead Or Alive (Slippery Wen Wet)
24.Livin'n On A Prayer (Slippery Wen Wet)

フィル・コリンズの新譜に寄せて その3

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 "Face Value"は、フィル・コリンズの1stソロアルバムである。
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 既にお気づきかも知れないが、彼のソロアルバムのジャケットコンセプトは、「顔」である。その記念すべき1作目の顔は、緊張と自信をたたえたモノクロのどアップだ。「男の顔は履歴書」というが、これから歩みだす、今後の作品ひとつひとつを、自身の顔で飾ることは、この時から決めていたのではないだろうか?
 フィルこの時30歳。この写真ではわかりにくいが、額はすでに後退しはじめている。

 "Face Value"は、初シングルにして初ヒットの"In The Air Tonight"(夜の囁き)を収録したアルバムであるが、聴きどころはむしろその他の曲にある。ホーンセクションをフィーチャーし、オリジナル(ジェネシスのアルバム"Duke"収録)からはるかにポップになった"Behind The Lines"や、ピーター・ガプリエルのスキャットが印象的な実験作"Droned"、アフリカの大地を思わせる壮大なナンバー"Hand In Hand"が、アルバムを彩っている。
 しかしここでの白眉は、ビートルズのカバー"Tomorrow Never Knows"だろう。フィル・コリンズのお家芸とも言える、チープなリズムボックスに乗っかるドコドコドラムと、サイケな効果音が見事に原曲を再現、いや、原曲を超えているのではないだろうか?ちょうどこのアルバムのレコーディングの時期にジョン・レノンは亡くなっているわけで、この曲と、この曲が終わった後にひっそりと歌われる"Over The Rainbow"は、ジョンに捧げられているのかもしれない。

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 "Hello, I Must Be Going !"は、"Face Value"をさらに解りやすくした楽曲がならぶ。ここでもやはりシュープリームスのカバー"You Can't Hurry Love"が突出した感はあるが、"I Don't Care Anymore"や"I Cannot Believe It's True"など、米でのシングルヒットも収録されている。
 お気に入りはインストナンバー"The West Side"だが、この曲はライヴヴァージョンを聴くことをオススメする。チェスター・トンプソンのバッキングドラムに乗ってドラムソロを繰り広げるフィルの迫力が、ライヴヴァージョンでは堪能できる。哀愁をおびたアルトサックスのテーマもGood。
 このアルバムからの1stシングルは"Thru These Walls"という曲だが、「となりの部屋の声が聞こえる」という、あまりポップソングにふさわしくないテーマを扱っている。「隣の壁にガラスのコップをくっつけて盗み聞きするのが最高の瞬間」なんて歌詞はちょっとゾッとするが、なぜかフランスでは16位まで上がっている。静かなイントロから次第に怪しく盛り上がってくる曲調は1stの"In The Air Tonight"と似ていなくもないが、それだけでシングルカットを決めたのか. . .?謎である。
 しかし、このシングルのジャケ写は笑える。
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 フィル・コリンズは、自分にとって、どうせミュージシャンやるならここまでやりたい、と思うアーティストである。作詞家であり、作曲家であり、またシンガーでドラマーでピアニスト。アレンジャーであり、ミュージシャンをまとめてトータルに音楽を制作するプロデューサーである。所属しているバンドでも、またソロとしてもヒット曲を持ち、さらにプロデューサーとしてもヒット曲を量産する。更にその他に趣味的な音楽を別のバンドで演奏する。
 いやあ、完璧である。しかも、音楽活動の傍らで俳優業もやってしまうのだ。

 1985年のフィル・コリンズはまさに「世界で一番忙しい男」として、世界中を又にかけて働いていた。その時期にリリースされた彼のメガヒットアルバムが、"No Jacket Required"である。

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 1985年1月にリリースされたこのアルバムは彼の3枚目のソロアルバムだ。ここからまず"One Morw Night"がシングルカットされ、あっという間に米で1位を獲得する。続いて"Sussudio"がカットされ、これも1位を記録。ちょうど"We Are The World"がヒットしている頃であり、世の中には世界を救おうムードが漂っていた。フィル自身もしっかりこのブームに乗っていて、"We Are The World"の先駆けとなった英のチャリティ・シングル"Do They Know It's Christmas?"に参加、ドラムスを叩いている。
 "One Morw Night"と"Sussudio"は、それぞれ当時のポップソングのバラードとアップテンポの見本のような曲で、打ち込みのリズム&シンセの上に、生の管楽器がフィーチャーされている。この当時は今聴くとかなりチープな音が幅を効かせていたのだが、それがかえってヴォーカルそのものの個性を際立たせていた. . .と思いたい。もちろんヴォーカルに個性のないひとは単なるポップで終わってしまう。

 このアルバムからは合計4枚のシングルが切られ、そのすべてがトップ10入りしている。1985年はその他にも、"White Nights" のサウンドトラックから、マリリン・マーチンとのデュエットで"Separate Lives"をナンバーワンヒットにしている。この勢いたるや!
 アルバムにはこの他にも隠れた名曲が詰まっているが、その中でもお気に入りなのが、"Long Long Way To Go"である。1音1音確かめながら弾かれるオルガンで始まるこの曲は、"One More Night"とはまた違った静謐なナンバーだ。この曲にはゲストでスティングが参加していて、特徴的なコーラスをつけている。ライヴ・エイドでもフィル、スティングそして当時スティングのバンドのサックス奏者ブランフォード・マルサリスの3人で粛々と演奏された。(この演奏は昨年ようやく発売されたライヴ・エイドのDVDには収録されていない。残念だ。)
 余談だが、このころソロ活動をスタートさせたばかりのスティング、お金が必要なのか、様々なところに出稼ぎに行っている。"No Jacket Required"では前述の"Long Long Way To Go"と、"Take Me Home"にコーラスで参加。他にもDuran Duranの派生プロジェクトであるアーケイディアの"The Promise"や、ダイアー・ストレイツの"Monay For Nothing"でも歌っている。(こちらもライヴ・エイドで競演)
 スティング参加のラスト・シングルの"Take Me Home"は、リリース後長らく、ライヴのセットリストの最後を飾る曲になる。打ち込みのリズムに、ゲート・エコーのかかったドラムが重なる。キーボードのシンプルなバッキングに、印象的なメロディ。まさにジェネシス中期から始まった、フィルの曲の典型的なパターンだ。

 とにかく、"No Jacket Required"はMid 80'sポップを代表するアルバムだ。シーンに迎合し過ぎ?冗談じゃない。

フィル・コリンズの新譜に寄せて_その1

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 フィル・コリンズがジェネシスの復活ツアーを最後にアーティストとしての表舞台からの引退を表明したことを、何年か前に知った。残りの人生をプロデュースなどの裏方と、自身の趣味に費やすんだそうだ。ほほー、売れまくった後の早めの引退か。いいなあ。しかし引退を表明した次の年、脊髄の手術の影響で手の動きに支障が出たということで、ドラムが叩けない、という事態に陥ったらしい。
 ほほー大変だなあと思っていたら、まさかのR&Bカバーアルバムのリリースのニュースが入ってきたのは、今年の夏だったろうか。ほほー大したもんだなあ。仕事好きなんだなあ、このひと。まあ、今回のアルバムは多分に趣味的要素を含んでいるが。これもまた売れるんだろうな。

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New Album "Goin' Back"

 このアルバムについては、改めてアルバムレビューを書くつもりだが、基本的にオリジナルに忠実で、ヒットした当時の肌触りが再現されている。好きなひとにとっては堪らない。両手にスティックをふん縛ってドラムを叩いたと言われているが、まあパワフルでテクニカルな彼を望むより、ヴォーカリストとしてのフィル・コリンズを名曲とともに存分に楽しむアルバムだ。

 フィル・コリンズは、自分がほぼ最初にそれと意識して聴いた外タレである。小学生の頃、ラジオで「恋はあせらず」がヘビーローテーションだった。この曲がシュープリームスのオリジナルであることを知ったのは大分後だったが、「恋はあせらず」と、フィル・コリンズの名前はその時に刻み込まれたのだ。

 毎週土曜の深夜に小林克也のベスト・ヒットUSAを見るようになると、彼の関わった作品が途切れることはなかった。ソロワーク、ジェネシス、そして他のアーティストのプロデュース。その頃のフィルは何せ、「世界一忙しい男」と呼ばれていたのだから。
 彼のソロキャリアの黄金期は、自分がリアルタイムで英米のヒットチャートを追いかけていた時期とほぼ重なる。その5年ほどの間に、彼がどのくらいヒットシングルを出したのか、ちょっと書いてみる。

 1984 Against All Odds (Take A Look At Me Now) (全英2位・全米1位)
 1984 Easy Lover (with Philip Bailey) (全英1位・全米2位)
 1984 One More Night (全英4位・全米1位)
 1985 Sussudio (全英12位・全米1位)
 1985 Don't Lose My Number (全英-位・全米4位)
 1985 Separate Lives (with Marilyn Martin) (全英4位・全米1位)
 1985 Take Me Home (全英19位・全米7位)
 1986 No One Is To Blame (Howard Jones . . .Produce) (全英16位・全米4位)
 1988 In The Air Tonight [Remix] (全英4位・全米-位)
 1988 A Groovy kind Of Love (全英1位・全米1位)
 1988 Two Hearts (全英6位・全米1位)
 1989 Another Day In Paradise (全英2位・全米1位)

 この後も、アルバム"But Seriously"からのシングルが次々にヒットしてゆくのだ。1986年のハワード・ジョーンズのシングルは、プロデュースワークの他ドラムの演奏やプログラミング、ヴォーカルハーモニーなどを手がけている。個人的に思い入れのある曲なので載せておいた。この後1986~1987年のフィルはジェネシスの一員として"Invisible Touch"のレコーディング/ツアーでガリガリ働いていたのだ。

 やはり、サード・アルバム"No Jacket Requied"からのナンバーが印象深い。最初このアルバムは、友人の持っていたカセットをコピーさせて貰ったのだった。なので、現行のCDに入っている最後の曲"We Said Hello Goodbye"は、このアルバムという気がしない。次回、リリース25周年のこのアルバムをちょっとレビューしてみたい。

サマータイム

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 . . .今年の夏はまだ西瓜食ってねえ。

 仕事で、"Summertime"という曲のいろいろなヴァージョンを探している。

 "Summertime"とは、「ポーギーとベス」というオペラで歌われている曲だ。ジャズとクラシックをはじめて融合した、"Rhapsody in Blue"で有名なジョージ・ガーシュウィンの作曲である。

 どちらかといえばジャズ系のアーティストのカヴァーのほうが有名であるようだ。メジャーなところでは、ジョン・コルトレーンの歴史的名盤"My Favorite Things"に収録されているヴァージョンがある。

 しかしロック好きならやはりこれ。


true-cheaothrills
"Cheap Thrills" Big Brother & Holding Company feat. Janis Joplin

 ジャニス初体験が、確かこの曲だったと思う。歌い出しの「シャマー!!!」のインパクトは、なかなか忘れられない。しばらく前に、エアコンか何かのコマーシャルで頻繁に流れていた。夏を凍えさせる歌声だ。

 ジャニスはデビューしてから3つのバンドをバックに活躍したが、公式CDで"Summertime"は、3つのライヴヴァージョンを聴くことができる。
 ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーと録音した、モントルー・ポップフェスティバルのライヴヴァージョン。("Cheap Thrills"収録)
 同じく、"In Concert"収録のヴァージョン。
 コズミック・ブルーズ・バンドと録音した、ウッドストックのライヴヴァージョン。("I Got Dem Ol' Kozmic Blues Again Mama!" ボーナストラック収録)
 
 オススメはやっぱり"Cheap Thrills"のヴァージョン。

映画漬け

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 ここ数日、自宅でゴロゴロしながらDVDで映画ばかり観ている。


 ビバリー・ヒルズ・コップ 1984年
 エディ・マーフィ マーティン・ブレスト監督

 1、2と続けて観たが、エディ・マーフィ扮するアクセル刑事のキャラが、1作目と2作目で微妙に違うのに気がついた。1作目では、エディ・マーフィ自身のキャラクターが確立していなかったのだろうか?


 サルバドル 1986年
 ジェームズ・ウッズ オリヴァー・ストーン監督。

 同時期に公開された「プラトーン」(ストーン監督)に比べ、よりドキュメントタッチで、エル・サルバドルの内戦を描くが、エンターテイメント性が薄い訳ではない。ジェームズ・ウッズの演技が圧巻。
 

 シックス・デイ 2000年
 アーノルド・シュワルツェネッガー ロジャー・スポティスウッド監督

 つまらん。「トータル・リコール」とカブるし、シュワちゃんももう若くない。


 戦場のピアニスト 2002年
 エイドリアン・ブロディ ロマン・ポランスキー監督

 ナチス占領下のポーランドで、ユダヤ人ピアニストとして迫害される主人公。収容所を脱出して地下に隠れるが、ソ連軍の侵攻によって街は廃墟と化してゆく。

 傍らに、自分の分身とも言える楽器がありながら、弾くことのできない無念。

 次の瞬間に殺されるかもしれないのに、堰を切ったようにショパンを弾く主人公に圧倒されるドイツ人将校。

 . . .感動した。


 ディパーテッド 2006年
 レオナルド・ディカプリオ マーティン・スコセッシ監督

 マフィアによって警察内に送り込まれたスパイと、警察がマフィアに潜入させたスパイの運命を描く。香港映画「インファナル・アフェア」のリメイク。

 期待せずに見はじめたら、ハマりこんでしまった。ラスト近くでめまぐるしくバタバタひとが死ぬのはどうかと思うが、見応えのある2時間半だった。


 地獄の黙示録 1979年
 マーティン・シーン フランシス・コッポラ監督

 2001年の「特別完全版」を観たら、昔観たのに比べてかなりエピソード追加されて、さらに示唆的になったぶん、冗長になった気がする。カーツ大佐(マーロン・ブランド)の独白のところで、寝た。

 兵卒が信号弾をオモチャにするシーンで、"Purple Haze!"と叫ぶシーンがあるのだが、「紫のけむり~!」とは訳されてませんでした。


 そして、今はキューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」を観ながらこれを書いている。

 「ディパーテッド」では導入部に"Gimme Shelter"が、「地獄の黙示録」ではラジオから"Satisfaction"が、「フルメタル・ジャケット」ではエンドクレジットで"Paint It Black"が流れる。
 関係ないが。

ピアノが欲しい

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 ピアノが欲しい。

 先週の土曜、BSで坂本龍一のピアノソロライヴの映像を見た。凄かった。

true-教授

 正確にはもう一台ピアノが置かれ、曲によっては自動演奏によって伴奏をする、といったものだが、その緻密なアレンジ世界に耳をそばだてた。

 坂本龍一の曲は、シンセザイザーで演奏されている曲が多い。シンセサイザーは、音色を創造できる優れた楽器だが、いかんせんその音は年月とともに古臭く、陳腐なものになってゆく。
 優れた曲だが、音が古い、といったことが起こりやすいのが、シンセサイザーで作られた楽曲だ。
 自身の過去のレパートリーを、シンプルで歴史のあるピアノという楽器のみで再構築することは、シンセをいじりつくした教授(坂本)にとってはある種当然の帰結かも知れないが、それによって、過去の曲を今の時代の音として聴かせてしまう彼の着想と力量には、眼を見張るばかりだ。

 しかし、ピアノが欲しい。