ギャース

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ギャース びあんち号 がマンションの地下の駐車場兼駐輪場に置けることになった。やっと空きが出て、これで玄関に置くこともなくなる。それはそれで寂しい気持ちもある。

柱には注射の際の注意事項が記されていた。同じものが6箇所にある。“ギャー”って何だと首をかしげたが、文面から考えると“ギア”を指す模様。車は全部で10台駐車できて、複数形にすれば楳図かずおに通ずる。

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ウィルコムからの解約手続き完了のハガキを渡され、ブンレツさんも知るところ になった。致し方なし。随分前から察してはいただろう。ブンレツグランマには僕の口から言いたかった。色の話が何よりも好きで、振れば正気に戻る。精気に満ちる。いつか恋人を紹介すると、グランマもそれを楽しみにしていたがまだまだ先になってしまい、伝えられないでいた。

案外、落胆した素振りは見せなかった。そして説法をくれた。「恋をする毎、人間的に成長できる。何度もふられたっていいじゃないか」と。しっかりした口調で驚いた。2度の結婚、その後も男を知っている経験談は骨身に沁みる。

哀れに思うのはブンレツさんのことで、彼女は一人しか知らず、それも失敗だった。グランマを見てきたことが起因にもなっているだろう。同じ過ちは繰り返さないよう見極めたい。

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明日へのチケット オーストリア・インスブルック発イタリア・ローマ着の列車に乗った老齢の教授が1枚目のチケットを持つ。そのチケットは食堂車のもので、多国籍、他人種が一堂に会していた。ヨーロッパらしさをかもし出す。オーストリアへの出張を済ませ、孫の待つローマに思いを馳せる教授だったが、出張先の秘書に恋心を抱いていた自分に気づき、彼は変わる。過去の回想を取り混ぜて、そのカットの繋ぎがあまりに滑らかで、エルマンノ・オルミの実力を初見で知ることができた。座席を取れなかったアルバニアの家族が通路に座っていたところ、軍人がぶつかって乳児にあげるミルクがこぼれた。それを見ていた教授の行動にささやかながら幸福の余韻を残す。

マイ・フェイバリットであるアッバス・キアロスタミが続く2枚目のチケットは、先のアルバニア人家族が乗り換えた列車から始まる。彼らと共に、太った醜い未亡人と若い青年が乗り込んだ。2等席にもかかわらず、彼女は空いていた1等席に座る。終始傲慢な態度に青年は辟易としているようだった。青年のことを知っている少女2人が列車にいた。彼女たちは青年の妹の友人で、昔のことや彼の以前の恋人の話を聞く。彼は自分を見つめなおした。複数の人間が対峙した時、対象の片方を画面で見せないキアロスタミ節は今回も炸裂した。想像力の活性化を促す。

「SWEET SIXTEEN」で主役を張ったスコットランドの若者を本作でも起用し、カンヌでパルムドールを受賞した新作はアイルランドを舞台にして、ケン・ローチはどちらの出身なのだろうと思っていたら、その実イングランドだった。3枚目のチケットを巡ってスコティッシュ訛りが飛び交う。ラーション移籍後はおそらく中村俊輔も応援してくれるであろうスコットランド人3人組はチャンピオンズリーグを見るためにローマへ向かっている。その道中でチケットが紛失し、アルバニアの家族をにらむ。ことの大小、対岸の火事、どこまでを他人事とみなすのか。彼らの決断がすがすがしい。

オルミは情緒を、キアロスタミは情弊を、ローチは情熱を描き、それぞれ叙情に満ちている。国や人種の垣根は低くなって然るべきだ。

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学生時代の知人にばったり出会って、彼はツボを極めたという。こと喉に関しては全国屈指と自負しており、声を変えられるからどうだと勧められた。それでは低く渋い声にしてくれと頼み、喉をまさぐった後に喉仏の下を押された。別れの言葉を何がしか添えて彼は去っていく。


自分で自分の声が分からない。また別の知人を見かけて駆け寄り、話しかけた。僕が喋っても彼女は聞き取れないようだった。重低音が過ぎて言葉が認識されないと言われる。僕は人と意思の疎通ができなくなった。別段それでも困りはせず、することもないので、というよりも何が目的で外出したのか忘れて、徒歩で帰ろうとした。


いつの間にやら知らない道を歩いている。家路につけず、道を聞こうと一軒家のベルを鳴らした。状況を説明しようとしたが僕の声は伝わらない。とりあえず麦茶でもどうぞと招かれた。味がしなかった。その時、全てを理解できたような気がした。次の瞬間、それは気のせいだと分かった。

インファナル・アフェア3 最終章は時間が切り刻まれて全てを解き明かす。在りし日のヤンの至福の顔、生き残ったラウは無間道を行く。警官として生きることを決めたラウに安息の日はない。サムが送り込んだスパイが警察にまだ潜んでいる。証拠を抹殺すべくその人間を追うが、彼もまた追われていた。

ラウはカウンセラーののリーに接触して情報を盗んだ。ヤンにとってカウンセリングは唯一の眠れる場だった。リーに思いを寄せ、ヤンが死んだ今、リーはヤンを思って涙にくれる。ビデオに写る柔らかなヤンの顔を知り、そこはラウに憧憬のようで、彼はヤンに自分を重ねた。妄想とも幻想ともとれる映像が挟まれる。

同じ警察にいる保安部ヨンの存在がラウを憔悴させた。ヤンを調べるうちに、ヨンがかつてのボスであるサムと接触していることを掴む。証拠を得るためヨンの監視を始める。しかし、ヨンのラウを見る目も怪しかった。

ラウの善人への渇望を描きながら、ヨンは果たして内通者なのか否か、尻尾を掴んだのはどちらか、本作もまたスリルを失わない。殉じた者の魂は引き継がれて残る。生きることのほうが地獄であるというような結末はとかく悲しい。

解説者の「必死さの差が出た」というようなコメントを聞いてテレビを消した。聞き間違いだったかも知らん。“大舞台を楽しむ”を実践し、結果を残す日本ハムを否定するつもりはない。しかしストイックにただ、勝利を求める落合中日の野球を誇りに思い、強さを証明するために切に願うことはただ一つ。

ある特定のチームを熱狂的に応援するのは修羅の道。思い通りになんて九分九厘いかず、今日のような全てが裏目に出る試合は拷問に近い。突きつけられた現実は厳しくとも、日本一だけを見据えるスタンスはシーズン前から変わっていない。中日は今年、悲願を達成する。

先日の岡本と、今日の小林・中里の起用はわけが違う。明日を見据えた、明日に繋がる1敗だった。朝倉もよく投げた。投手3人は誰も責められない。新人左腕に連続して、武田久は3連投で、中盤の拙攻には我を失いかけたが、これを糧にする。特に武田久にはロングリリーフを許し、4戦目以降も同様のピッチングをされようものなら、それは中日が日本一にふさわしくないというものだ。

荒木にも待望のヒットが出たものの、打線の湿り気は早く払拭したい。ミスをして勝てないのは当たり前。流れが悪いのも世間的に中日が悪役のようで仕方ない。しかしうちはとてつもなく強いことを念頭に置いて、巻き返そうではないか。負ける器でないということを声を大にして言いたい。

インファナル・アフェア2 1作目から翻って若かりし頃のヤンとラウ、ウォンとサムの交錯するそれぞれの運命、シンメトリカルな因果応報が描かれる。ノワールは健在だった。

ヤンが警察学校を除隊させられたのは、マフィアのハウが異母兄弟だったことが判明したからだった。そんなヤンをウォンが拾い、ハウの下に忍び込ませて潜入捜査をさせる。ラウも同時期、警察学校にいた。ボスであるサムに命じられてスパイとなる。香港はイギリスから中国に返還される激動の時代。マフィアのドンであるクワンが殺され、風雲急を告げていた。

クワンの次兄ハウが跡を継ぎ、4人の幹部は代替わりを機に上納金をためらった。しかしハウは辣腕ぶりを一瞬にして見せつける。4人が一堂に会して食事中、1本の電話で彼らは核の違いを知らされた。その場に立ち会った同じく幹部のサムは静観を決め込んでいた。クワンが死んでからちょうど4年後、4人はハウの手により同時刻に粛清された。サムにも魔の手が忍び寄っていたが、妻マリーの助言により難を逃れる。それぞれのシーンの緊張感たるや、カットを短く刻んで場面を切り替え、暴力が連動した。クロス・カッティングは他にも多く見られ、複数である主人公が偏りなく丹念に掘り下げられている。

ハウの逮捕に心血を注いでいたウォンだったが、相手のほうが一枚上手で窮地におとしめられた。ウォンの苦悶は続く。その部下、ヤンもまた苦悩を受け継ぐ。それは前作で知っていること。生き残っているラウにも次作で降りかかるだろうこと。

3つ年下の近藤真市から遅れること20年、山本昌はノーヒットノーランを達成した。1軍初登板が初先発にして偉業を成し遂げた彼とは対照的に大器晩成を地で行く、少なくとも僕が知る限りドラゴンズ史上最も尊敬されるべき男だと思う。1988年から4度の日本シリーズで先発投手を任され、今年こそは初勝利をあげてほしかった。逆転タイムリーを許して降板する昌の、あんな悔しそうな表情を今まで見たことがなかった。2戦目を落としてタイに持ち込まれたよりも、昌が残念でならない。

打線は八木に抑えられた。物怖じしない素晴らしいルーキーだった。第6戦までもつれた時は雪辱を。荒木のスランプが心配だ。