ここがヘンだよ、日本の中小企業 | アツキココロ

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広島県在住の経営コンサルタント・児玉学の熱血ブログ。

20回「中小企業こそリソース・マネジメントを!;その1」



中小企業は経営資源(ビジネス・リソース;以下「リソース」)に乏しい。本コラムで何度か触れてきた課題です。しかし、私は一度も「だから中小企業はダメだ」とは言ってません。そもそも「リソースの多寡でビジネスの成否が決まるのならば、大企業は永遠に大企業であり続け、ベンチャー企業は永遠に成長できない」ということになってしまいます。でも、当然大手でも潰れることはあり得ますし、ベンチャーも大手に育つ可能性があります。(じゃないとベンチャーは生まれませんよね。)要は、限られた「リソース」をいかに活かし、足りない「リソース」をいかに補っていくか―――ここにベンチャーや中小企業経営成功の鍵がある訳です。この「リソースの有効活用・適正運用を基軸とした経営手法」を「リソース・マネジメント」と言います。


 リソースには、「ヒト・モノ・カネ」のような有形資源と、「情報・知識・ブランド・信用・イメージ」などの無形資源があります。この中のいくつかのリソースから、そのマネジメントの要諦を見ていきましょう。まずは「モノ」から。


 モノ・リソースには「原材料や機械・車両・事務機等の動産」と「工場や事務所・ビル等の不動産」があります。「カネ」と「モノ」はイコールじゃないか、という話も聞きますが、カネで買えないモノもあります。モノは、同じモノでもその活用方法次第で価値が上がったり下がったりもする相対的な存在であるのに対し、カネはいつでも絶対価値で評価・取引されます。その分、「モノ」リソースには、ある特別な「マネジメントの視点」が必要となるのです。



 A社は倉庫業。倉庫業は典型的な「モノ」産業。モノ、即ち「倉庫」が直接収益を生み出す「生産装置」であり、モノが無いとビジネスそのものが成り立たない、という特徴を持ちます。このA社から、私に「最近収益率が下降気味で、その原因究明を手伝って欲しい」という依頼がありました。早速行って見ると、巨大な倉庫でたくさんの人が働いています。すごいな~、さすが某大手の関連会社だな~、と感嘆しつつ、ふと「なぜモノ産業の倉庫に、こんなにも人が溢れているんだ?」という疑問が湧いてきました。倉庫業は、荷物が倉庫に存在することでその「預かり賃」を頂く商売です。荷を動かして儲けるのは「運輸業」。倉庫運輸業と言うその双方を同時に受け持つ企業も多いのですが、あくまでこのA社のコアビジネスは「倉庫業」。更にこの企業、その倉庫内部の荷降ろし・荷積め作業を「アウトソーシング」していました。「なぜアウトソーシングしているんですか?」私が聞くと、その倉庫の責任者が言いました。「親会社からの指示で、『コア業務』以外は出来る限りアウトソーシングするように言われています。アウトソーシング化で当社をスリム化することが収益改善の道だ、ということですから。」・・・・コア業務以外?倉庫業で「荷降ろし・荷積め作業」以外に何がコア業務になるんだろう?聞いてみました。「空坪(空きスペース)をいかに埋めるかが、我々のビジネスの基本です。従って、我が社のコア業務はズバリ荷をとってくる『営業』です。」・・・調べて見て分かったことは、アウトソーシング契約が倉庫内荷物の「通過量()に対するパーセンテージ契約」になっていること。倉庫内の荷物の出入りが多い(通過量が多い)ほど、アウトソーシング先は儲かる訳です。その頃ちょうど荷主側でも「(滞留)在庫の圧縮」が叫ばれ、出来るだけただ寝かせておく荷は排除し、動きのある荷を倉庫業者に預ける傾向にありました。だから、やたらと人がたくさん働いていたのです。しかし、その「荷が動く」ことのメリットはアウトソーシング先に水平移動し、倉庫側は結果的にコストダウンになっていない。又その分、営業が稼いで来ようにも、面積に制限のある倉庫空坪の売りには当然限界がある。―――かくして収益は下降していた訳です。「モノ」リソースをマネジメントするには、そのモノが「どう収益貢献するか」を見極める力が必要です。「フロー(この例では通過荷)」と「ストック(同預かり荷)」のバランスしかり、内製業務とアウトソーシング業務の切り分けしかり、です。