ここがヘンだよ、日本の中小企業 | アツキココロ

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広島県在住の経営コンサルタント・児玉学の熱血ブログ。

19回「働く野生の復活~中小企業の魅力」



 私が初めて社会人生活を送った企業グループは、今でこそ「起業家輩出企業」などと言われて相当に有名になっていますが、私が勤務していた時期には「とにかくヒトのやらない仕事をやる」をモットーにした、傍から見ると「結局何をやっているのかよく分からない、相当にうさんくさい(?)会社」というイメージが強く、なかなか「マトモな人」が就職しにくい雰囲気の組織でした。でも、その分、恐ろしくバイタリティのある人たちが集まっていました。更に、「PC(プロフィットセンター)制度」と呼ばれる「組織内組織」を創り出し、その擬似経営をどんどん若手に任せて結果を出す、という独特の経営スタイルを貫いていました。即ち、「一癖も二癖もある人材」を活かして「小さな組織の運営」を行い、「旺盛な好奇心と行動力で足らざる点をカバーし、結果を導き出す」という、正に「中小企業経営そのもの」を早い段階から体感させていたと言えます。

私は当時、それが働く上でいかに重要なことなのか良く分かっていなかったのですが、その後転職し、更に経営コンサルタントとして独立してからというもの、その意義の深さに改めて感じ入らずにはいられません。擬似とは言え「中小企業経営の現場」には、あらゆる要素が転がっていました。メンバー一人ひとりの存在感の大きさ。明確に把握できる一人ひとりの働きとその貢献度合。組織内で見える化された過程と結果。先頭に立って行動し、結果に対する責任を明確に負うPC長。その責任と権限を有するPC長と働く価値観を共有しながら、良い時は一緒に喜び、悪い時は共に励まし合い挑戦し続けるメンバー達・・・。泥臭く厳しい世界だが、その分やりがいも多く、結果的に人の早期成長を促す。正に「働く野生」とも言うべき「人が働くことの原点」が、そこには詰まっていました。



その後、私は株式公開企業(いわゆる世間的には大手企業)にも勤務しましたが、そこには残念ながら前述の企業のような仕組みは無く、よくある「28の法則(2割の優秀な人たちが8割以上の業績を上げ、残りの8割の人たちはただぶら下がっている状態)」型組織で、何やらがっかりしたもんです。そのあと独立前最後に勤務した会社は、中小を超え正に「零細」企業そのものでしたが、はっきり言えばここが最も自分を成長させてくれた、と言えます。他に誰もいないから、全てを我が事として真正面から捉え、あらゆる業務に精通せざるを得ない。この企業で、私は独立してもやっていける「本当のビジネススキル」を身につけたと思っています。



最近、富に中小企業勤務の人たちに元気が無いのが気になります。中小企業の素晴らしいところ。それは、働く野生を目覚めさせるその環境にあります。給料が安い?勤務時間が長い?それ以上の何ものにも代えがたい「良さ」が、そこにはあるのになあ・・・。この良さに、気づけるか気づけないか。この良さを活かし切れる意欲があるかないか。最初に勤務した企業の社是は、「自ら機会を創り出し、その機会によって自らを鍛える」というものでした。ベンチャースピリッツは、満ち足りた環境からはなかなか生まれ出ません。必ず辺境から生じるものです。自らが置かれた現環境が、厳しく「辺境」だと思っている方。それは自ら機会を創り出すチャンス、だと捉え直すこともできるはず。私は、多くの学生が就職希望先に最も求める要素を「安定した職場」だとか言い出した頃から、日本人全体の「働く野生」が減少し始め、結果的に今の日本経済全体の低迷を招いたと見ています。この低迷を打破する芽は、「安定していない分、やりがいもある(やらざるを得ない?)」中小企業の現場から出てくると信じています。