嫌な世の中だ | 福岡若手弁護士のblog

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福岡県弁護士会HP委員会所属の弁護士4名によるBLOG
(ただしうち1名が圧倒的に多いですが、だんだん若手じゃなくなってるし)

先日オートサーフ投資を紹介したが、件のサイトはどうやら告発を受け、詐欺等で捜査の手が入るようである。インターネット上で、オートサーフを推奨しておったサイトでも、高リスクであることを認識し、その旨を告げておるサイトも増えてきておる。ということでちょっと安心しておったが、オートサーフを推奨していたサイトで、「これからはアンカーポート」という記述があったのでちょっと気になった。


アンカーポートってなんじゃ?


とググってみたら、出てくる出てくる。凄い数である。


で、何だと思って見てみたが、さっぱり分からぬ。私は、悪徳商法マニアックスでもなんでもないが、この数の多さにはビックリした。引っかかる人が出てくる前に、私の意見を書いておいた方がいいと思ったので、記事にしておく。


いや、日本語としては各サイトに書いてあることは分かっておる。投資型MLMで、国際分散型投資を行っており、オフショア口座を持つことができて、とっても儲かるっていいたいんでしょ、ってことは。で、またまたリンクを貼るのははばかられるので、紹介サイトで書いてある内容を抜粋してみると、3口登録(約20万円)でトルネードステージに1アセット持つことができて、1回転(4~6ヵ月)で1000ドル(11万円)、その1000ドルを再投資すると、2回転目(約4~6ヵ月語)10000ドル、さらにこれを再々投資すると、3回転目に1000万円もの配当が得られるというプランのようである。アンカーポートというマレーシアの投資会社のファンドに投資するという形態らしい。


ユメノヨウナハナシデスネ。ワタシモゼヒトウシシテミタイデス。←とても感情がこもっておる。


例によって、例のごとく、それならば、どういう金融商品を用意しており、どうやってこの高額配当を実現できるのか、についての記述を探してみた。しかし、ほとんど説明がなされておらぬうえに、こういったケースでの常套句である「優秀なスタッフが投資(国際分散型投資というそれらしい言葉を使っておった)して」実現する、と書かれているだけで、どのようなファンドかはやっぱり内容が分からん。というか、さっぱりである。


基本的に、金融商品を見る場合に、自分に専門知識がないために分からないのではなく、情報が与えられておらぬせいで物事を理解できない場合には、疑ってかかった方がいい、というのが私の考えであるが、サイレンなりまくりである。で、アンカーポート社の公式サイトらしきサイトが検索で容易に見つかるので、そこを見ても、全くファンドの内容は説明されておらぬ。どうもアンカーポートのは、投資先を開示する透明性ということで売っておるらしいが、目論見書がないことはもちろん、全くどういった内容のファンドかについての説明は欠落しておる。


ソロスのヘッジファンド等が、我々の常識では考えられないような高リターンを実現しておる、ということは知っておるが、これも、富裕者層相手の私募ファンドであり、かつ、極めて高額の投資が必要とされるのであり、このような形での募集ということはあり得ぬ。まともなファンド募集であれば、少なくともどういう対象にどういう方針で投資をする、ということを開示するのは当然である。これは日本国内だけの話ではなく、海外でも一緒である。海外だから、等と思わぬように。「国際分散型投資」を行いますよ~、という言葉だけで投資をする酔狂な人間は、日本国内だろうと海外だろうと、騙されているのでなければいない。これは断言できる。


で、そこら辺が解説されておらぬので、やっぱりな~、と思いながら、紹介サイトを眺めておったら、報酬プランらしきモノが説明されておるところを見つけた。まあ、引用するのも面倒なので、極めて簡単に説明すると、投資金額の3分の2は、MLMシステムにしたがって紹介料として会員に還元され、3分の1はアンカーポート社が投資を行うということであった。ピラミッド型の金銭配当組織であり、ファンドの実体は、その金銭配当であるという可能性が高い。マウスっておる。チューチューという声が聞こえてくる。先日のオートサーフ投資に比べたら、かなりあからさまな内容となっておる。


で、紹介サイトで、違法性はない、と説明しておる部分が笑えた。


・要は、アンカーポートはオフショアファンドという金融商品を販売しており、その募集方法をネットワークビジネスにしただけの事


 笑えます。商品販売の外形が伴っているとしても、その商品の価値が市場価値に照らして著しく低いとすれば、その実質はネズミ講で違法、というのが判例の立場である。だから、この場合重要になってくるのは、そもそもアンカーポート社が提供するというファンドの中身ということになる。ピラミッド型金銭配当がなければ、結局は、投資金額の3分の1というアンカーポート社が投資するファンドが商品価値となる。が、その商品価値の説明はどこにも見つけることができず(ピラミッド型金銭配当の説明しか見つけることができなかった)大したものではないのではないか、との疑念は拭いがたい。そのような状況で、こう言い切れるというのは、凄い。


・アンカーポートのプランは破綻する性質にも当てはまらない。


 すまぬ。私の法律の勉強が足りないのかもしれぬ。全く理解できぬ。さぞや高等法的知識をもっておるのであろう。


 この記述は、「「加入者が無限に増加するものとして」の規定は、加入者が無限に増加するという前提にたたなければその組織・仕組みが成り立たないものを意味するにとどまり、加入者が後順位者となる新たな加入者を勧誘する義務を負担すると否とを問わず、加入者が自己の支出した金銭の回収やそれを上回る金銭を取得するため新たな加入者を勧誘するかそれらを断念し勧誘行為に出ないかの選択の自由を有する場合も含む」という最高裁判例を意識してのものだと思われる。


 だとすれば、アンカーポートのプランは、要するにピラミッド型金銭配当組織ではなく、アンカーポートが提供しているファンドは加入者が増えなかったとしても利益をこういう仕組みで上げることができるんだよ、ということを説明するのが本筋である。


しかし、「バイナリープラン(日本バイナリーステージ)に於いても、紹介活動をしたくない方
は、初めから3口投資すれば、自動的にトルネードステージ(世界自動配置ステージ)
にポジションを持ち、待っているだけで報酬を得ることが出来ます。 」というような訳の分からぬ説明をしておる。これは、最高裁判例で、「新たな加入者を勧誘する義務を負担すると否とを問わず」と判示しておる部分を理解しておらぬのか、私には理解できない程の高度の法理論を駆使した理屈であると考えなければ説明がつかない。


 また、みんなが儲けるために再投資するんだから、加入者が無限に増えなくたって大丈夫なんだよ~ん、という趣旨の説明をしておるところもあったが、これも、ファンドの実質的内容を説明し、自分の投資した金額の運用だけで利益が出る、ということを説明せねば、その再投資資金すらおぼつかないわけであって、理論的な説明になっておらぬ。


 そういうもんである。


・で、ますます面白かったのは、アンカーポート 投資のメリットとしてオフショア口座を持つことができるというもの。中には、オフショア口座元の銀行と提携しておる、と説明しておるところもあった。


 あのー、オフショア口座を持つってのは、別に自分でもちょっと根気があればできるんですけど。自分でやるのが面倒であれば、代行業者を使う手もあるけど、その代行手数料って相場はアンカーポートで要求している3000円なんですけど。


 それに、そのオフショア口座元の銀行と提携しているって、ホント?だって、そこの銀行が取り扱っている商品でもないんでしょ。単に自分のところが、その銀行の口座を使っているという以上にどんな契約を交わしているんだよ。その契約の内容を明示してくれよ、と思ってしまう。うがった見方をすれば、代行手数料を取って、口座を開設しておるだけということもあり得る。7万口座限定の契約を結んでいるってなことも書いてあるけど、ホントに限定しておるのかどうかも確かめようがない。なお、勧誘人数限定でも、先の最高裁判例によれば、その性質上加入者がいなければ破綻するのかどうかが問題であって、適用を免れる理由にはならぬことにはご注意願いたい。


 よく、悪質MLMが自分のところを権威づけるのに、検査機関等の信頼性で話をごまかすが、そのパターンに当てはまっておる。だって、投資するときに、その振り込み口座の信用性をいろいろ説いたって始まらない。投資先の信用・格付けが問題なのである。紹介サイト上には、そのオフショア口座元の銀行の格付けが凄い、ということは縷々述べられておるが、肝心のアンカーポートの格付けについて触れられている記述は見つけることができなかった。この論理のすり替えは、悪質MLMの常套句と似ておる。


 もっといえば、その公式サイトと思われるところにすら、資本関係の説明がないことはもちろん、取り扱い商品ラインナップすらも存在しなかった。どういうこっちゃ。まさかこの商品の提供の為だけに設立された法人というわけなのであろうか。


 紹介サイトには、「理屈じゃないんです」という記述があるところもあった。いや、まず理屈を説明してくれよ。まっとうなビジネスであれば。夢を語るのはそれからだ。というか、その論理展開も悪徳MLMの常套手段に似ておる。


 こういうことをいうと、常識をブレイクスルーできない為に、夢をつかめぬかわいそうな人、等と言われるのであろうが、いっこうにかまわぬ。仮にまっとうなビジネスであり、参加者が巨額の利益を得るところを指をくわえてみておったとしても、それはそれで勉強である。それから自分の不明を恥じればいいことである。


 勘違いすべきでないことは、儲け話に乗り損なう、ということそれ自体は損害ではないということである。


 いずれにせよ、ねずみ講というのは、開設・運営を行った者だけではなく、加入を勧誘したものにも刑罰が科される法律である。そのリスクがないことをきちんと判断できるだけの情報提供を行わない限り、勧誘をしている者自信が処罰されるリスクを負うということをよく肝に銘じた方がよい。少なくともよく分かったような分からぬような、というような状態で勧誘を行うことは危険であることを認識されたい。


M弁護士