駅のホームで起きた殺人の犯人として追われるアキヒロは、盲目の女性ミチルの家へ逃げ込む。
アキヒロは、気づかれないように息を潜めて一階の部屋の片隅にうずくまり、
ミチルは、その気配に気付きながらも悟られないように暮らし続ける。
そうして視覚障害の女と、警察から逃げる男の、奇妙で危うい共同生活が始まるのだが・・


タイトルからホラーかと思いきや、ミステリー。
でも、ミステリー的な展開に唸るより、主体はラブストーリです。
ばれるか? ばれないか? いるのか? いないのか?
この駆け引きがなんとも面白く、不器用な二人の心理描写を楽しむ感じ。
そして、外の世界に関わりたくない、自分は独りでもかまわない、実際に孤独でいることが苦痛では無い二人が少しづつ変化を見せていく様から最後まで目が離せません。
乙一独特の不思議な世界が広がる中、孤独な二人の繊細で微妙な無言の交流が温かく優しい気持ちにさせてくれます。


人間は独りじゃ生きていけないことを改めて実感させてくれた作品。
悲しくて切なくて優しさが詰まっていて心温まりました。
読み終えた後に、じわっとほわっと心に残ります。


暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)/乙一
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