ピュアブログトップへ
2007-07-27

手紙 【東野圭吾】

テーマ:現代小説

両親を亡くし、二人だけで生きてきた兄弟。
兄・剛志は、弟・直貴の大学資金を工面したいという一心から老女の家に侵入し、衝動的に強盗殺人を犯してしまう。
判決は、懲役15年。
それ以来 毎月、直貴の元に 獄中の剛志から手紙が送られてくるようになる。
が…


深くて重いです。(重苦しさは無く、読みやすいですが)
加害者家族の視点の加害者家族の苦しみ、人間の非情な部分が、露わに描かれています。
剛志の犯した罪によって『殺人犯の弟』というレッテルを貼られた直貴は、差別され、掴みかけた幸せはことごとく指の間から零れ落ち、人生を狂わされ、何もかも諦めながら生きていきます。
罪を犯すことの重さについて、本当に考えさせられます。


直貴は、犯罪者ではありません。
でも、世間はそうは見てくれません。
夢も、進学も、就職も、恋愛も、、つかもうとした幸福全てが、殺人を犯した兄のせいで崩壊していきます。


犯罪者を家族に持つ人は、自分が罪を犯したわけではないのに、なぜ世間から差別を受けなくてはならないのか。
なぜこんな目に合わなければいけないのか。。。
懸命に生きようとする一方で諦めを覚えていく直貴の姿が痛々しくて、理不尽さに憤りを感じ、やりきれない気持ちでいっぱいになりました。


そんな弟の苦しみをよそに、兄は刑務所で自己満足の手紙を書き続けます。
自分の犯した罪が、弟を、被害者の家族を苦しめ続けているということに気付かない兄。
服役はしていても、償いきれることのない罪…。


日を追うごとに疎ましくなる兄からの手紙は、次第に無視され、捨てられ、やがて…。
そして、最初は兄を思い自分の幸せをも求めていた直貴は、最後にある決断を下します。


家族には罪はないし、それによって差別するのはおかしい!

分かっています。
でも、自分がその状況に、加害者家族と接する立場になったら、、
果たして自然に関わることが、受け入れることが出来るだろうか――。


理屈では分かっていても…


だけど、これだけはしっかりと胸に刻まれました。
罪を犯すと、本人以上に家族や周りの人が苦しむことになる。
加害者家族全てが加害者の罪を背負い、生きていかなければならない。
犯罪にはそれだけの罰が伴うということ、
それが加害者の罪の重さ、罪の償いだと。


ただ、あまりにも難しい問題だけに、
何が正しいことなのか、どうすることが正しかったのか、最後まで読んでも答えは出てきません。
ずっしりと心に響きました。


手紙 (文春文庫)/東野 圭吾
¥620
Amazon.co.jp


コメント

[コメント記入欄を表示]

1 ■周りへの影響・・・

こんにちは。
この本、わたしもいろんなことを考えながら読みました。特に罪が、犯した本人以外にも及ぼす影響ということを考えさせられました。

2 ■私も思う、周囲への関係

犯罪を犯し、服役し、償いを果たしキレイな一人として社会復帰する。
これがたやすい事でない事は、うすうすわかってはいますよね。
でも、なぜ難しいことなのか、との理由は色々だろうなあと想像してもあいまいでありました。
この「手紙」にあらわされた、罪を犯した人間だけでなくその周囲が世間から違った目で見られると言うこと、わかっているようではじめて気がついたような気がしました。
「犯罪」と言うのはそれほど罪深いものであると同時に、世間一般の私たちは罪を犯したものの周囲のものに対して色眼鏡を掛けてみている。確かにその通りだと思いました。けれど、いつ自分がその立場になるのか、これもわからないところです。肉親だからこその愛と憎しみ。自分の罪でないのになぜ? それが犯罪が憎むべきものである理由の一つなのでしょうか。

3 ■>nkawariversideさん

犯罪から少しでも遠ざかりたいと思うのは自己防衛本能で、感情としては当然なんですよね。
でも、罪を犯してない加害者家族までも色眼鏡で見たいわけではないですし…
>肉親だからこその愛と憎しみ
本当にそうですね、、、

4 ■無題

TB&コメント、ありがとうございました。
何が正しいのかわからない…本当にそうですよね。理屈としての正しさなら分かるけれど…。罪の深さやどれだけの人間を苦しめることになるのか、ということだけは、はっきりとわかりました。読んでいて、苦しかったけれど、色々なことを深く考えさせられる本ですよね。凄い本だと思います。

5 ■>葉桜月夜さん

コメントありがとうございます。
最近は、一生答えの出ないまま、分からないままに終わってほしいと思ってます。
理屈では割り切れないものって、本当にあるんですね。
大切な人には絶対薦めたい本です。

コメント投稿

コメント記入欄を表示するには、下記のボタンを押してください。
※新しくブラウザが別ウィンドウで開きます。

一緒にプレゼントも贈ろう!

トラックバック

この記事のトラックバック Ping-URL :

http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/10041214386/11aa9284

  • 1 ブログタイトル:親愛なる人に-読書の薦め
  • 記事タイトル:東野圭吾「手紙」読みました。手紙が相手に与える影響について・・・
  • 記事概要:東野 圭吾手紙 東野 圭吾手紙 2001年7月1日~2002年10月27日(毎日新聞日曜版連載) 2003年3月 毎日新聞社、2006年10月 文春文庫 428p ☆☆☆☆ ? 東野圭吾「手紙」読みました。 ? 高校生の直貴に両親もなく身寄りもいません。だから、兄
  • 2 ブログタイトル:月夜には物語を。
  • 記事タイトル:重く沈んでゆく ~東野圭吾 「手紙」~
  • 記事概要: この映画が公開された頃、読了しました。  けれど、映画は見ていません。  重い…。  読む前も、  読み進めている時も、  読み終えた後も、  思うのは、その言葉ばかりでした。    この小説は、強盗殺人を犯した兄を持つ弟??  つまり、加害者家族を主人公に
ハート気になる新刊