2015年春夏パリコレクションアンリアレイジ(ANREALAGE)2015年春夏コレクション




アンリアレイジ(ANREALAGE)2015年春夏コレクション。一言で言えば自己紹介。これまでの技術を発展させたアンリアレイジ・オールスターズであり、アンリアレイジの過去、現在、現在進行中の未来を集めたパーマネントコレクションとも言える、クレバーで戦略的なコレクションだった。


テーマはSHADOW。前半は服やボタン、スタッズなどのディテールの影がデザインとして加わっているのだが、これはデュシャンの階段を下りる裸体そのままに時間の経過を形にしたデザインを発展させたもの。前から光が当たっていると言うことか、前身が白、後ろ身が黒というものも。


そして、影をそのままプリントにしてしまったようなデザインは、かつてドリス・ヴァン・ノッテン(DRIES VAN NOTEN)が「木漏れ日」をプリントにしたドレスを思い出させるが、これも2013/2014年秋冬コレクションで注目を集めた色を壊すという挑戦を進化させたデザインだ。3Dプリンターで形が生まれるようにレーザー光線でグラフィカルなプリントが生まれる演出も効果的だ。日本らしいハイテク素材を加えたデザインは初めて見る海外のプレスやバイヤーを驚かせた。


パッチワークは神田恵介とともに東京タワーで開催した2006年春夏コレクションから一貫して進化発展させている定番中の定番だ。東京タワーのように服の形を作る骨組みをむき出しにしたテクニックも日本の繊細な切り絵細工のように美しい柄を描いている。


2013/2014年秋冬コレクション終了後これまで発表してきたアイデアを継続し発展させていくことについて聞いたときの「まだできていないが、半年というファッションのサイクルでデザインを広げていくのは難しいので、そういう気持ちはあるし、やらなくてはいけないとは思っている」という森永邦彦の言葉を思い出させたコレクション。トレンドへの対応や新しさなど常に変わっていくことが求められる東京とそのデザイナーの哲学や何を考えているのかが重視されるパリとの違いだろう。


80年代にコムデギャルソン(COMME DES GARÇONS)とヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)が作り出した黒の衝撃を意識し、光と影をテーマにしたという今回。アニメやアイドルなどのオタクカルチャーやラーメンなどが人気を集める中で、30年後に行われた色や形を壊したコレクションはボロルック、Hiroshima、Nagasakiと批判された当時とは違い、深読みされ、拒絶されることもなく、拍手で迎えられた。黒と白の色使いや墨絵のようなダークな柄、パッチワークなどはトレンドでもある。


日本では常に前回を捨て去り、新しい提案を続けてきたアンリアレイジ。


「アンリアレイジは世界ではまだ知られていない。1回目は自分らしいことをやり、これまでの技術を更新させた。もし、今シーズンも東京でショーをしたらまったく違うものになっていただろう。これをきっかけに、次はパリコレクションでも新しいことに挑戦したい。東京と違いさまざまな制限があるが、やれるところまでやって、パリコレクションをかき回したい」