蝋画塾 Atelier Berankat のブログ

第二次大戦中に開発された、「蝋画」という描画技法を紹介するブログです。


テーマ:
先日、浅井基文氏の「思想としてのヒロシマ」という講演を聴講した折、
主催者の竹内良男氏からいくつか資料を頂いた。
その中の〈ヒロシマへ ヒロシマから〉通信という資料の記事に、
岩槻にある寺院の墓碑が紹介されていた。
その文言が気になり、家の隣町でもあったので行ってみることにした。
 
道に迷いながら自転車を走らせて小1時間ほど、
岩槻の浄源寺に着く。
 
浄源寺
 
本堂
 
本堂の裏手奥に目当ての墓石があった。
正面に「原爆被害者家族 蔵満家の墓」の文字、
左側面に刻まれた文言は以下の通り。
 
おねがいです。おとうさんおかあさん、どうか安らかに眠らないでください。
花と花を愛する人間のために鐘を鳴らしつづけて下さい。
生きのこったものへの鞭となって、むしろ鞭のような花となって生きつづけてください。
 
〈ヒロシマへ ヒロシマから〉通信の記事によると、
長崎の原爆で子供4人を失った蔵満夫妻の墓だという。
 
記事は、「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」
と刻まれた広島の原爆慰霊碑と対比させ、
以下のように問いを投げかけている。
 
そもそも「慰霊」といい、「鎮魂」と言うが、慰められるべき霊とは何だろう?
鎮められる魂はどこに居るのか?誰が何のために、慰め、鎮めるのだろう…?
 
 
 
 
 
葉に先祖の兵士の像を蘇らせ、公の場で人の目の晒す時、
私には「安らかに眠らないでください」という発想はあっただろうか。
 
私が制作全体を通して感じていたのは、
やはり当たり前に「安らかに眠ってほしい」だった。
だからこそ、劣化した葉を土へ還す作業は大切だと思っていた。
 
ただ土に還す前に、アルバムの中の忘れられた人々を
今一度思い起こす時間を望んでいた。
制作において葉を素材としたことで、
その時間は季節ごとに巡る植物の時間と重なっていった。
 
当然、原爆被害にあった家族の想いが、
自分が制作の中で感じていた先祖への想いと
同じであるはずもない。
 
「安らかに眠ってください」と書かれた原爆慰霊碑には、
残された者の強い意志・決意のようなものを感じる。
 
それに比べ、「安らかに眠らないでください」という文言には、
ヒロシマ・ナガサキ以後の原水爆を巡る現状への強い杞憂を感じる。
残された者だけでは、また同じ過ちを繰り返してしまうのではないかと、
死んでいった両親に助力を求めている。
 
正確な年月はわからないが、原爆慰霊碑と墓石の碑文では、
書かれた時期に数十年の差があると思われる。
この間、核兵器の削減が遅々として進まないという現実が、
2つの碑文の表現の差に反映されているのではないか。
 
 
私が押入れの奥に古いアルバムを発見して、
そこに祖父母よりも前の世代、会ったことのない先祖の姿を見た時の、
自分の寿命が過去に向かって延びたような、奇妙な感覚。
 
写真の中の彼らの容姿・佇まい・表情を見ていると、
彼らの生きた時間が、自分自身の遠い記憶にも似た感触に近づいていく。
「戦時下」という時間も伴って。
 
アルバムの古い写真と向き合い、制作することがなかったら、
あの墓碑を見に行くことはなかったと思う。
たとえその存在を知ったとしても、
日常の多数の情報に紛れて、忘れてしまっていたかもしれない。
 
 
土に還す前に、今一度思い起こす時間を望んだのはなぜか。
彼らの警鐘を聴き、鞭を受けるためなのだろうか。
 
これもまた、制作において応えるべき事なのだと思う。
簡単に答えの出ない問いが、また一つ増えてしまった。
 
 
 
 
 
 
         
 
 
         ………………………………………………

 

簡単なものですが、蝋画技法の初歩を図解したPDFファイルを以下から配布しています。

https://ssl.form-mailer.jp/fms/0af30761220259

注:これは実習を伴う教室や講座の受講者に配布している資料ですので、
この資料を見ただけで蝋画が描けるようになる保障はありません。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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