Okinawa通信336
● 沖縄、といえば ……… のいくつか目に出てくるのが、サトウキビ。 沖縄では 「ウージ」 と呼ばれています。
沖縄の農地の半分以上がサトウキビで、沖縄本島のあちこちに、ざわわざわわのサトウキビ畑があります。
サトウキビが原料の酒、といえば、黒糖焼酎などもありますが、世界的な知名度でいえば 「ラム」 です。
沖縄の島酒は、何といっても泡盛ですが、あれは、タイの米が原料。
サトウキビ栽培が主産業の沖縄に、沖縄産の「ラム」が、実はつい最近までありませんでした。
それが、若いウチナンチューの女性が、熱意と行動力で、2004年にグレイスラムという会社を設立し、
サトウキビの島ともいわれるらしい南大東島生まれの、沖縄県産ラム 「CORCOR(コルコル)」 を誕生させたのです。
これが、グレイスラム社の 「CORCOR(コルコル)」。
通常ラムの仕込みで造られた 「赤ラベル」 720ml 40度 3100円と
アグリコールといわれる製法で造られた 「緑ラベル」 同じくで 4300円。
…… と、けっこうないいお値段です。
箱の絵柄を合わせると、南大東島の形になります。
この2本を、なんと、頂戴してしまいました!
コトの発端は、古い友人Seさんからのメールで教えてもらった、『風のマジム』 という本です。
那覇の会社に勤める、酒好きを自認する契約社員の女性が、社内ベンチャー事業企画に応募。
沖縄のサトウキビから、沖縄産のラムを造りたい、という企画をなんとか通し、南大東島との折衝も果たし、自らが社長として実際にそれを成し遂げる話です。
つまり、グレイスラムの実話をもとにして書かれたものです。
小説では、本人の名も会社名も別に作られていますが、
実際には、沖縄電力に勤めていた金城祐子さん (現・グレイスラム社長) をモデルにした、彼女の奮闘ぶりをベースした物語です。
『風のマジム』 原田マハ 著。
講談社刊 1575円
社内ベンチャー企画のプレゼン方法、
洋酒製造のノウハウや許認可など、
リアリティがあって面白い。
で、この本を読んで、私は沖縄産のラムがあることを、初めて知ったしだい。
Seさん、初めて知り合った当時、彼は洋酒会社の宣伝部長でしたが、あるシングルモルトウイスキーの広告づくりのために、スコットランドまでご一緒して以来の友人です。
なので、当然ですが、彼は酒には詳しいし、食べ物にも詳しい。
そんな彼とこの本を読んだあと、「いやぁ、飲んでみたいねぇ、飲むのだったっらグリーンラベルだよねぇ」 などと、メールのやりとりをしていました。
このグレイスラム社の 「CORCOR(コルコル)」、
値段が高いこともありますが (普通のラム、よく知られているロンリコとかマイヤーズとかバカルディなどではだいだい1000円台。もちろん高いものもたくさんありますが)
小さな蒸留所で手作りしているわけなので、生産数も少なく、ここ沖縄でも、どこの酒屋でもあるというワケではありません。
● なので、私は、一計をめぐらしていました。
わが家の近く (歩いて15分ほど)に、気に入っているバーがあります。
40歳前後のウチナンチューが、オーナー兼バーテンダーでやっているバーで、彼がつくるカクテルもとてもいい。
私は月に何回 …… というより、年に何回かしか行かない、という、常連では決してないのですが、気のいいマスターとは仲がいい。
以前、これもやはりSeさんから教えてもらった、「響き (HIBIKI)12年」 という、最高にうまいウイスキーが、たまたまこのバーになかったのを知り、
私はきっと酔いながらも、延々と、いかにこのウイスキーがおいしいかを語ったのだろうと思います。
そのあとこのバーに行ってみたら、なんと、この 「響き (HIBIKI)12年」 が置かれていたのでした!
(いやぁ、悪かったなぁ……買わせてしまって ……) とは思いつつ、マスターの気持ちがうれしかったですね。
で、その一計とは …… つまり、またこのバーで、グレイスラムの話をし、
もしなかったら (沖縄産ラムだもの) 置いてもらおう!と思っていたのでした。
一昨日の夜、ナミさんと、北谷(ちゃたん)の初めて入った焼鳥屋から、代行をたのんで、途中で電話をし、そのままそのバーへ直行。
たぶん2か月以上ぶりだったと思うけれど、マスターは快く迎えてくれました。
最初に、私は 「響き (HIBIKI)12年」 をストレートで、ナミさんはドライマティーニをたのみ、
おもむろに、グレイスラムの 「CORCOR(コルコル)」 の話を切り出しました。
当然ですが、マスターは知っていて、しかもお店にありました!
一番上の棚の奥のほうから、取り出した箱が2つ。ちょっとホコリをかぶっていたようです。
赤ラベルも緑ラベルも、まだ、口にちかいほどたっぷりと入っていました。
両方を1杯ずつグラスにもらい、それを味わいました。
あまり熟成されていない、若々しさ荒々しさはありますが、サトウキビの風味がたっぷり染みこんだ感じの、いいラムの味と香りです。 イタリアのグラッパにもちょっと似た感じ。
そんな話をしながら、どういうイキサツだったのかは憶えていないのですが、
(私はすでに1軒目でよい気持ちになっていましたので、このバーで何杯か飲み、後半は記憶が定かではない …)
なんと、マスターが、この「CORCOR(コルコル)」を、2本とも私にくれるというのです!!!!
いやぁ、どうしてなのでしょう。 (あまりお店で頼む人がいなかったからかなぁ …)
ともかくも、私は、酔った頭で、マスターの気が変わらないうちに2本とも持って帰ろう!…と考え、さっさとお勘定したのでした (笑)。
東京でも、私がさかんにイイと言った酒を置いてくれたバーはあったけれど、
気前よく、こんなふうに酒をくれたのは、初めて。
こうして、初めてその存在を知った、沖縄産のラム酒を、幸運にも、頂戴したのでした。
こんなことって、あるのですねえ。
グレイスラムの 「CORCOR(コルコル)」。
いずれも透明無色の、ホワイトラム。
ラムは通常、サトウキビの絞り汁から砂糖をとった後に残った、
糖蜜を発酵させて造る。この通常どおりが 「赤ラベル」 のラム。
それに対して世界でも少ないけれど、
サトウキビの絞り汁そのものを原料にして造るタイプがあり、
「アグリコールラム」 と呼ばれる。
その分、サトウキビじたいの風味やコクが仕込まれる。
それが 「緑ラベル」。
Seさんや私が、「緑ラベルを飲みたい」、と思ったワケもそれ。
瓶の裏に、
「緑ラベル」は、05年7月 詰口
「赤ラベル」は、05年9月 瓶口 の刻印が。
つまりこの2本は、グレイスラム社が最初に仕込んだラムかもしれない。