えりんぎのブログ

ホミン小説


テーマ:







───通勤ラッシュ前、まだ余裕のある構内で僕は心臓が跳ねるのを大きな深呼吸でごまかした。



今日こそ─────。

僕はあの人に告白する─────。



柱の影からこっそり覗く。

上等なスーツをパリッと着こなす広い背中。

整った精悍な横顔。

キュッと結んだ意志の強そうな唇。


ぼーっと、見惚れてしまって……


────あぁ、やばい。本当に好きだ。


彼をこの時間この場所で見つめるようになってもう半年。




半年前───。


転んでしまった、足の不自由そうな老人に何の躊躇もなく差し出された大きな手。


にっこりと微笑んだこの上なく温かい笑顔。


一瞬で好きになった。


────男の人なのに。僕も男なのに。



急に男から告白されたら、きっとびっくりするよね。


……気持ち悪いって思われるかな?


でも、もう…ただ見てるだけなんて、嫌なんだ。


ひと月前に彼が落とした名刺入れを偶然僕が拾って、すぐ追いかけて渡したけれど…実は一枚だけ貰っちゃったんだ。


チョン・イジュンさん。
外資系の保険会社勤務。


名刺入れを渡した時の優しい笑顔が背中を押して告白する勇気がでたけど。


じりじりと彼に近づく。


電車の到着を知らせるベルがけたたましく鳴る───────



────今だ!



それからの事はまるでスローモーションのように…断片的にしか思い出せない。


僕が足を踏み出した、その先に……場違いな子どもがふざけて…足を踏み外した。


線路に落ちていく子ども。


鳴り響くベルと周りの悲鳴。


一番に動いた彼が、線路に飛び降り、子どもを抱き上げ…そっと通路にもどした。


「────電車!!っ、来ちゃう!!」


足がもつれて、うまく走れない!


彼は迫ってくる電車を避けるように反対側の線路にとんだ。


間一髪のタイミングで通過電車が通り過ぎた向こう側、…倒れている彼をみつけた。


………反対側にとんだ時に、どこか打った?…ピクリとも動かない!!


また、けたたましいベル────


反対側からも!!!


「…!!…イジュンさん!!!」


ただ……無我夢中で、…気づいたら線路に降りて、彼を抱きかかえ、周りの人達の助けを借りて何とか安全な場所まで運んだ。


──────あぁ、良かった!


そこで記憶は途切れ、……気づいたら病院。



「…どこか痛いところは?」


「事故前後の事は覚えていますか?」


矢継ぎ早にされる質問に、ボーッとした頭でボツボツと答える。


「…!!イジュンさん、…イジュンさんは?」


「…あぁ、知り合いだったのですか?」



───会いたい!…無事を確かめたい!


「……し、知り合いです。」


連れていかれた個室の廊下、…医者から説明を受ける老夫婦。


警察の人が、ちょっと失礼…と僕をイジュンさんの両親らしき夫婦に紹介してくれた。



人の良さそうな夫人が、ギューッと突然僕に抱きついてきて。


「あぁ!!ありがとう!!あなたは息子の恩人よ!!」


………お世辞にも痩せてるとは言えない豊満な身体に挟まれてるようで。


────く、くるしっ………。


父親も優しそうな笑顔で後ろからギュッとハグしてきて、……本当に潰される!


やっと解放されたときには、僕は肩で息をしていて、ハァハァ…とうまく喋れない。


「…あ、あの…イジュンさん、は?」


気持ち目を伏せた母親が。


命に別状はないし、脳波も正常で…どこにも異常はないけど、ショックの為か…意識だけが戻らない、って。…そう告げた。


「………イ、…イジュンさん……。」


……まだ、告白もしてないのに…こんな事になるなんて!


ポロポロと僕の頬を涙が伝う。


驚いた母親が、また僕をそっと抱き寄せて。

「まぁ、…息子とそんなに仲良くしてくださってたの?……大丈夫よ?すぐ目覚めるから。」

優しく背中を撫でてくれた。


「…優しくて、きれいな男の子。…大丈夫だから…もう泣かないで?」


誰かにハグしてもらうのなんて久しぶりで……温かくて、…涙が止まらない。


カツン……。


誰かの足音?


「……母さん。…誰?…それ。」


ふっ、と視線を向けたら、長身の、…イジュンさんとはタイプがまったく違うけど、…いかにもモテそうな男の人。


印象的な切れ長の瞳を細め、ぽてっとした色気のある唇を歪め…疑い深そうに僕を見る冷たい視線。


───「…イジュンの弟のユンホよ。」









AD
いいね!した人  |  コメント(6)  |  リブログ(0)

えりんぎさんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。