さっき。 | 北川悦吏子オフィシャルブログ「でんごんばん」Powered by Ameba

さっき。

のんちゃん(小六の娘)の布団にもぐりこんで、もうぐっすり眠っている彼女の、その手を握ったら、

泣いた。

「ママ、大丈夫?」と、さっき声をかけくれた。私が夕飯の途中で、

具合が悪い、と言って寝室に籠もってしまったとき。



「天国への郵便配達人」の字幕つけ作業があまりにも大変で、

精神がいっぱいいっぱいになってしまった。

日本語の本を自分で書いてるんだから、何が大変なの?

とみんな思うでしょ?

私も最初はそう思ってたの。


でも、字幕って、一回に、何文字までしか出しちゃいけない、とか(14文字×2行まで)

この秒数(しゃべってる秒数ね)には、何文字って決まっているんです。


たとえば、私が日本語で書いたもともとの台本には

泣いてるヒョジュちゃん。

何も言えなくて黙ってるジェジュン。

そんなシーンがあるのね。

で、 ヒョジュちゃんが、「なんで何にも言ってくれないの?」

と言ってるとします。

「はい、ここ、3文字でお願いします」

と言われるのです。

その返しのジェジュンのセリフは「だって泣いてるから」

これは入ります、と言われます。


そうすると「なんで何も言ってくれないの?」を3文字のコトバにして

次のジェジュンのセリフにつなげなければ、ならないのです。

煙が出るほど、集中して考えます。

「黙ってるの?」

でも、2文字オーバーです。「?」入れると3文字オーバー。3文字しか読めない。


で、考えたあけく、やっと思い浮かびます。

「静かね」


これを、えんえんやっていきます。

シナリオの頭から最後まで。

こういう短いセリフにすることもあれば

全部で50文字しゃべっているナレーションを25文字にしてください、ってこともあります。

ただの、要約文の翻訳にはしたくなくて、なんとか、セリフとして成立させようと私はします。

言ってる意味がわかれば、いいとは、とてもわりきれなく。

そうすると、同じ意味ででも、まるで新しい脚本を書くことと同じです。

しかも、ものすごく制約がある中で。(ここは、何文字で。とか。作詞やってるのか、と思うよ。あれも、ほら、メロデューに字数を乗せなきゃいけないので)



すごく大変な作業でした。

なんの修行か、と思うよ。


私はこのために、スケジュールを一日取ってたんですが

結局、三日かかりました。

(みなさんも、その前に、御存知のように、家での作業はしてるんだよ。家で、

あらかたの字幕を付けなおしている)

いっしょにやった専門家の方、いわく

これ、なれてる人でも、一週間から10日の作業です。専門の人でも。

三日でやるなんて、常軌を逸してます。寝込みますよ、と言われました。

そしたら、やはり、頭がショートしました。


また、そのあとに、別件でものすごく参ることがあって

体に震えが来て、手足がつめたくなって

これはヤバイ、入院中に精神に来たときの感じに似ている、と思って

クスリ飲んで、

泣きながら、みっちゃんさんや、中野さんに(「素直になれなくて」メンバー)

電話しました。

今や、「素直になれなくて」チームは、私のホームなので、声を聞くと安心する。

虎は虎小屋?に帰りたいんですね。

ホッとしたかったんです。

ふたりとも、やさしかったです。


おとといはおとといで、こわい夢をみて、夜中に友人にメール。

起きてるから、電話くれて、いいよ、と言うので

1時間、たっぷり話を聞いてくれました。


「夢のことは、気にしないように。まわりの雑音もね。北川さんが書いて、喜んでくれる人がいるなら

その作品の意味は充分あると思うよ」

と彼は言いました。(男性です。また。すみません。←なぜ、謝る?)

業界外の人なんだけどね。



しっかりしなきゃな、ここんとこ毎日だけど

極限までがんばってしまったので。


でも、もう、今日からは、ドラマな毎日。

字幕、やっと終わったし。

すごく大変だった。


私の渾身の字幕です。


一応、ここで、この記事はアップします。


「どうして黙ってるの?」

はい、これ3文字で同じこと言ってください。

「静かね」


頭から煙が出るほど、考えました。