えりっき脳内議事録(えり丸)

Diary and memo written by a pathologist.


テーマ:
Tofacitinib or Adalimumab versus Placebo in Rheumatoid Arthritis
関節リウマチにおけるトファシチニブ/アダリムマブとプラセボの比較

van Vollenhoven RF et al. N Engl J Med 2012; 367:508-519August 9, 2012

Background Tofacitinib (CP-690,550) is a novel oral Janus kinase inhibitor that is being investigated for the treatment of rheumatoid arthritis.

背景: トファシチニブ(CP-690,550)は、新規経口JAK阻害剤であり、関節リウマチの治療で研究が行われている。

【TNFを標的とした生物製剤】 
 ・ インフリキシマブ(レミケード®): 抗TNFαモノクロナール抗体(キメラ抗体,静注) ※
 ・ アダリムマブ(ヒュミラ®): 抗TNFαモノクロナール抗体(ヒト抗体,静注)
 ・ エタネルセプト(エンブレル®): 可溶性TNFα受容体(皮下注)。TNFαをトラップする。
※インフリキシマブは、キメラ抗体であり、
アレルギー反応を起こしたり、
抗インフリキシマブ中和抗体産生による効果減弱が起こることがあるため、
これらを予防するために、
原則的にMTX(メトトレキサート)と併用する。

【抗体薬の種類】
 ・ マウス抗体: Fc部分がマウス由来。
   免疫原性が強く、アナフィラキシーショック等のアレルギー反応をを引き起こすなど、
   の副作用が強く、現在は使用されていない。
 ・ キメラ抗体: 可変領域はマウス由来、その他はヒト由来。
   免疫原性は減少したが、アレルギー反応は起こりえる。
   また、中和抗体が産生されて効果が減弱することがある。
 ・ ヒト化抗体: 可変領域のうち相補性決定領域(CDR)がマウス由来で、
   その他のフレームワーク領域(FR)がヒト由来。
   免疫原性はキメラ抗体よりもさらに低減する。
 ・ ヒト抗体: 完全なヒト型抗体。理論的には免疫原性はなく、最も安全である。


Methods In this 12-month, phase 3 trial, 717 patients who were receiving stable doses of methotrexate were randomly assigned to 5 mg of tofacitinib twice daily, 10 mg of tofacitinib twice daily, 40 mg of adalimumab once every 2 weeks, or placebo. At month 3, patients in the placebo group who did not have a 20% reduction from baseline in the number of swollen and tender joints were switched in a blinded fashion to either 5 mg or 10 mg of tofacitinib twice daily; at month 6, all patients still receiving placebo were switched to tofacitinib in a blinded fashion. The three primary outcome measures were a 20% improvement at month 6 in the American College of Rheumatology scale (ACR 20); the change from baseline to month 3 in the score on the Health Assessment Questionnaire–Disability Index (HAQ-DI) (which ranges from 0 to 3, with higher scores indicating greater disability); and the percentage of patients at month 6 who had a Disease Activity Score for 28-joint counts based on the erythrocyte sedimentation rate (DAS28-4[ESR]) of less than 2.6 (with scores ranging from 0 to 9.4 and higher scores indicating greater disease activity).

方法: 12ヶ月第III相試験において、メトトレキサートを安定量服用している患者717例を、トファシチニブ5mgを1日2回投与トファシチニブ10mgを1日2回投与40mgアダリムマブを2週間に1回投与プラセボを投与するように無作為に割り付けた。3ヶ月時点で、プラセボ群のうち、腫脹と圧痛を伴う関節数がベースラインから20%減少しなかった患者は、盲検研究に切り替え、5mgないし10mgのトファシチニブを1日2回内服した。6ヶ月次点で、プラセボ投与を継続した全患者は盲検研究でトファシチニブに変更した。3つの主要転機測定は、6ヶ月時点でのACR20、ベースラインから3ヶ月時点までのHAQ-DIスコアの変化(健康評価質問票を用いた障害指数は、0~3の範囲で、点数が高いほど障害の程度が強いことを示唆する)、6ヶ月時点でのDAS28-4[ESR]スコアが2.6未満の患者割合とした(赤沈に基づく28関節による疾患活動性スコアは、0~9.4の範囲で、点数が高いほど、疾患活動性が高いことを示唆する)。

Results At month 6, ACR 20 response rates were higher among patients receiving 5 mg or 10 mg of tofacitinib (51.5% and 52.6%, respectively) and among those receiving adalimumab (47.2%) than among those receiving placebo (28.3%) (P<0.001 for all comparisons). There were also greater reductions in the HAQ-DI score at month 3 and higher percentages of patients with a DAS28-4(ESR) below 2.6 at month 6 in the active-treatment groups than in the placebo group. Adverse events occurred more frequently with tofacitinib than with placebo, and pulmonary tuberculosis developed in two patients in the 10-mg tofacitinib group. Tofacitinib was associated with an increase in both low-density and high-density lipoprotein cholesterol levels and with reductions in neutrophil counts.

結果: 6ヶ月時点で、ACR20反応率は、トファシチニブ5mg(51.5%)、トファシチニブ10mg(52.6%))服用群、アダリムマブ投与群(47.2%))と、プラセボ群(28.3%)と比較して高かった(全比較P値<0.001)。3ヶ月時点のHAQ-DIスコアは積極的治療群はプラセボ群よりも大幅に減少た。また、DAS28-4(ESR)が2.6未満の患者割合は、積極的治療群がプラセボ群よりも低かった。副作用はプラセボよりトファシチニブで多くみられ、トファチニブ10mg群で肺結核が2例発症した。トファシチニブはLDL/HDLコレステロール増加と関連があり、好中球数減少と関連があった。

Conclusions In patients with rheumatoid arthritis receiving background methotrexate, tofacitinib was significantly superior to placebo and was numerically similar to adalimumab in efficacy. (Funded by Pfizer; ORAL Standard ClinicalTrials.gov number, NCT00853385.)

結果: 背景にメトトレキサートを服用した関節リウマチ患者において、トファチニブはプラセボと比較して有意に優れていた。また、数的にアダリムマブと同様の効能があった。(ファイザーが出資、ORAL標準臨床試験機構登録番号NCT00853385)

JAKを標的とした治療薬を開発中とは聞いていましたが、ここまで効果があるとは正直驚きです。アダリムマブと同等って、いいじゃないですか。しかも、経口投与可能な小分子ということで、薬価も相当抑えられるはずです。副作用で結核が発症したとありますが、アダリムマブに匹敵するような効果を有する薬剤ですし、現行の生物学製剤でも見られる副作用なので容認できる範囲だと思います。ファイザーもロシュも、流石大手製薬会社って感じ(笑)

私はこのJAK阻害剤というのには懐疑的だったので、ちょと悔しい。JAK/STAT経路は、造血器系細胞ではハブの役目を果たしている重要なKinaseとして知られています。下の引用論文の如く、ありとあらゆるサイトカインシグナリングにJAKが絡んでくるので、このシグナルを全て抑制するというのは、T細胞だけ抑制するというような細胞特異性が望めず、重大な副作用が出て、薬として使えないだろうと考えていました。ま、逆に、マクロファージだけが異常とか、好中球だけが異常といった病態は無いだろうから、色々な種類の免疫系細胞に効果がある方が良いのかもしれません。何が薬になるかなんて、使ってみないと分からないものですね。

えりっき脳内議事録(えり丸)-JAK STAT

上図によると、JAK阻害剤は、主にT細胞・B細胞・マクロファージ/樹状細胞に作用する薬と考えていいのでしょう。好中球抑制作用はあるんでしょうかね?副作用でneutropeniaが出たというから、好中球抑制作用もあるのでしょう。副作用として貧血が発生するように推測されますが、少なくとも本研究では副作用として貧血は認めませんでした(よかった、よかった)。トファシチニブはJAK1/2/3の全てを抑制するように設計されていますが、JAK2抑制作用は弱いようで、エリスロポエチンによる赤血球造血を強力に抑制するということはなかったのかな。RAだけでなく、SLE、IBD(炎症性腸疾患)、Bechet、SjS、PBC(原発性胆汁性肝硬変)、喘息、乾癬など、色々な免疫病に効くのではないかとのことで、免疫疾患に遭遇したら、取り敢えずトファシチニブ!みたいな日が来るのかな~。便利な薬だねぇ。

reference
1. O'Shea JJ, Plenge R.
 JAK and STAT signaling molecules in immunoregulation and immune-mediated disease.
 Immunity. 2012 Apr 20;36(4):542-50. review
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