2012-08-11 03:46:09

NEJM abstract 関節リウマチの新規治療薬JAK阻害剤

テーマ:NEJM-免疫・膠原病
Tofacitinib or Adalimumab versus Placebo in Rheumatoid Arthritis
関節リウマチにおけるトファシチニブ/アダリムマブとプラセボの比較

van Vollenhoven RF et al. N Engl J Med 2012; 367:508-519August 9, 2012

Background Tofacitinib (CP-690,550) is a novel oral Janus kinase inhibitor that is being investigated for the treatment of rheumatoid arthritis.

背景: トファシチニブ(CP-690,550)は、新規経口JAK阻害剤であり、関節リウマチの治療で研究が行われている。

【TNFを標的とした生物製剤】 
 ・ インフリキシマブ(レミケード®): 抗TNFαモノクロナール抗体(キメラ抗体,静注) ※
 ・ アダリムマブ(ヒュミラ®): 抗TNFαモノクロナール抗体(ヒト抗体,静注)
 ・ エタネルセプト(エンブレル®): 可溶性TNFα受容体(皮下注)。TNFαをトラップする。
※インフリキシマブは、キメラ抗体であり、
アレルギー反応を起こしたり、
抗インフリキシマブ中和抗体産生による効果減弱が起こることがあるため、
これらを予防するために、
原則的にMTX(メトトレキサート)と併用する。

【抗体薬の種類】
 ・ マウス抗体: Fc部分がマウス由来。
   免疫原性が強く、アナフィラキシーショック等のアレルギー反応をを引き起こすなど、
   の副作用が強く、現在は使用されていない。
 ・ キメラ抗体: 可変領域はマウス由来、その他はヒト由来。
   免疫原性は減少したが、アレルギー反応は起こりえる。
   また、中和抗体が産生されて効果が減弱することがある。
 ・ ヒト化抗体: 可変領域のうち相補性決定領域(CDR)がマウス由来で、
   その他のフレームワーク領域(FR)がヒト由来。
   免疫原性はキメラ抗体よりもさらに低減する。
 ・ ヒト抗体: 完全なヒト型抗体。理論的には免疫原性はなく、最も安全である。


Methods In this 12-month, phase 3 trial, 717 patients who were receiving stable doses of methotrexate were randomly assigned to 5 mg of tofacitinib twice daily, 10 mg of tofacitinib twice daily, 40 mg of adalimumab once every 2 weeks, or placebo. At month 3, patients in the placebo group who did not have a 20% reduction from baseline in the number of swollen and tender joints were switched in a blinded fashion to either 5 mg or 10 mg of tofacitinib twice daily; at month 6, all patients still receiving placebo were switched to tofacitinib in a blinded fashion. The three primary outcome measures were a 20% improvement at month 6 in the American College of Rheumatology scale (ACR 20); the change from baseline to month 3 in the score on the Health Assessment Questionnaire–Disability Index (HAQ-DI) (which ranges from 0 to 3, with higher scores indicating greater disability); and the percentage of patients at month 6 who had a Disease Activity Score for 28-joint counts based on the erythrocyte sedimentation rate (DAS28-4[ESR]) of less than 2.6 (with scores ranging from 0 to 9.4 and higher scores indicating greater disease activity).

方法: 12ヶ月第III相試験において、メトトレキサートを安定量服用している患者717例を、トファシチニブ5mgを1日2回投与トファシチニブ10mgを1日2回投与40mgアダリムマブを2週間に1回投与プラセボを投与するように無作為に割り付けた。3ヶ月時点で、プラセボ群のうち、腫脹と圧痛を伴う関節数がベースラインから20%減少しなかった患者は、盲検研究に切り替え、5mgないし10mgのトファシチニブを1日2回内服した。6ヶ月次点で、プラセボ投与を継続した全患者は盲検研究でトファシチニブに変更した。3つの主要転機測定は、6ヶ月時点でのACR20、ベースラインから3ヶ月時点までのHAQ-DIスコアの変化(健康評価質問票を用いた障害指数は、0~3の範囲で、点数が高いほど障害の程度が強いことを示唆する)、6ヶ月時点でのDAS28-4[ESR]スコアが2.6未満の患者割合とした(赤沈に基づく28関節による疾患活動性スコアは、0~9.4の範囲で、点数が高いほど、疾患活動性が高いことを示唆する)。

Results At month 6, ACR 20 response rates were higher among patients receiving 5 mg or 10 mg of tofacitinib (51.5% and 52.6%, respectively) and among those receiving adalimumab (47.2%) than among those receiving placebo (28.3%) (P<0.001 for all comparisons). There were also greater reductions in the HAQ-DI score at month 3 and higher percentages of patients with a DAS28-4(ESR) below 2.6 at month 6 in the active-treatment groups than in the placebo group. Adverse events occurred more frequently with tofacitinib than with placebo, and pulmonary tuberculosis developed in two patients in the 10-mg tofacitinib group. Tofacitinib was associated with an increase in both low-density and high-density lipoprotein cholesterol levels and with reductions in neutrophil counts.

結果: 6ヶ月時点で、ACR20反応率は、トファシチニブ5mg(51.5%)、トファシチニブ10mg(52.6%))服用群、アダリムマブ投与群(47.2%))と、プラセボ群(28.3%)と比較して高かった(全比較P値<0.001)。3ヶ月時点のHAQ-DIスコアは積極的治療群はプラセボ群よりも大幅に減少た。また、DAS28-4(ESR)が2.6未満の患者割合は、積極的治療群がプラセボ群よりも低かった。副作用はプラセボよりトファシチニブで多くみられ、トファチニブ10mg群で肺結核が2例発症した。トファシチニブはLDL/HDLコレステロール増加と関連があり、好中球数減少と関連があった。

Conclusions In patients with rheumatoid arthritis receiving background methotrexate, tofacitinib was significantly superior to placebo and was numerically similar to adalimumab in efficacy. (Funded by Pfizer; ORAL Standard ClinicalTrials.gov number, NCT00853385.)

結果: 背景にメトトレキサートを服用した関節リウマチ患者において、トファチニブはプラセボと比較して有意に優れていた。また、数的にアダリムマブと同様の効能があった。(ファイザーが出資、ORAL標準臨床試験機構登録番号NCT00853385)

JAKを標的とした治療薬を開発中とは聞いていましたが、ここまで効果があるとは正直驚きです。アダリムマブと同等って、いいじゃないですか。しかも、経口投与可能な小分子ということで、薬価も相当抑えられるはずです。副作用で結核が発症したとありますが、アダリムマブに匹敵するような効果を有する薬剤ですし、現行の生物学製剤でも見られる副作用なので容認できる範囲だと思います。ファイザーもロシュも、流石大手製薬会社って感じ(笑)

私はこのJAK阻害剤というのには懐疑的だったので、ちょと悔しい。JAK/STAT経路は、造血器系細胞ではハブの役目を果たしている重要なKinaseとして知られています。下の引用論文の如く、ありとあらゆるサイトカインシグナリングにJAKが絡んでくるので、このシグナルを全て抑制するというのは、T細胞だけ抑制するというような細胞特異性が望めず、重大な副作用が出て、薬として使えないだろうと考えていました。ま、逆に、マクロファージだけが異常とか、好中球だけが異常といった病態は無いだろうから、色々な種類の免疫系細胞に効果がある方が良いのかもしれません。何が薬になるかなんて、使ってみないと分からないものですね。

えりっき脳内議事録(えり丸)-JAK STAT

上図によると、JAK阻害剤は、主にT細胞・B細胞・マクロファージ/樹状細胞に作用する薬と考えていいのでしょう。好中球抑制作用はあるんでしょうかね?副作用でneutropeniaが出たというから、好中球抑制作用もあるのでしょう。副作用として貧血が発生するように推測されますが、少なくとも本研究では副作用として貧血は認めませんでした(よかった、よかった)。トファシチニブはJAK1/2/3の全てを抑制するように設計されていますが、JAK2抑制作用は弱いようで、エリスロポエチンによる赤血球造血を強力に抑制するということはなかったのかな。RAだけでなく、SLE、IBD(炎症性腸疾患)、Bechet、SjS、PBC(原発性胆汁性肝硬変)、喘息、乾癬など、色々な免疫病に効くのではないかとのことで、免疫疾患に遭遇したら、取り敢えずトファシチニブ!みたいな日が来るのかな~。便利な薬だねぇ。

reference
1. O'Shea JJ, Plenge R.
 JAK and STAT signaling molecules in immunoregulation and immune-mediated disease.
 Immunity. 2012 Apr 20;36(4):542-50. review
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コメント

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1 ■無題

トファシチニブ、経口薬で効果発現が速くて、しかも生物学的製剤に匹敵する効果、重篤な副作用も無さそうということなら素晴らしい薬ですね!

しかし作用機序が曖昧な点が怖いです(^▽^;)
JAK3に対する特異的阻害剤として作ったはずが、JAK1やJAK2にも作用してしまう点。複雑なJAK/STAT系の上流をいじって大丈夫なのだろうかという疑問もあります。それとリンパ球の減少が見られないことも腑に落ちないです。

金製剤のオーラノフィンにJAK/STAT系とNF-κBを阻害する作用があるという記事を見つけましたが頭の回転が追いつかず考えるのを諦めました(ノ_・。)両者はクロストークしてるはずですし炎症を考える際は関連付けて考えないといけないのでしょうけど、分子生物学って楽しいけど難しいですね(´・ω・`)

2 ■Re:無題

>ちょんすけさん

ねー!MTX+ヒュミラと同等なんて、にわかに信じがたい!ですが良い知らせです。

トファシチニブの作用機序は、JAK2抑制作用を極力なくしたJAK阻害剤ということで良いのではないでしょうか?JAK/STAT系とSOCSは、かなり解析の進んでいるシグナル経路だと思っています。JAK3単独阻害剤ですと、T細胞抑制しか期待できないと思うのでなので、寧ろブロードに作用することで大きな効果が得られたものと推測しています。ちょんすけ君のご意見は、いかがでしょうか。

ところで、金製剤の作用機序って、解明されていないというイメージを持っているのですが、これは間違いでしょうか?作用機序など具体的なことを知っていましたら、是非教えてください。

シグナリングと疾患との関連を考えるときは、羊土社の、イラストマップシリーズが、お勧めですよ~。①細胞周期②免疫学③発生再生④転写⑤シグナル伝達の5つが発売されています。今日は久々に、免疫学イラストマップを読み返して、あれやこれやと思いを巡らせました。

3 ■Re:無題

>えりっきさん

T細胞さえ抑制できれば効果は得られるだろうからJAK3阻害だけで十分、むしろ広範に発現しているJAK1やJAK2に作用してしまうと細胞毒性になってしまうんじゃないかとフワフワ考えてましたけど、全然的外れですかね(´□`。)

金製剤の作用機序については未解明というのが正しいですね!調べごとしてた時に偶然見つけた情報を吟味もせず書いてしまいました(^▽^;)

えりっきさんの知識量・考察力の足元にも及ばないです。。でもとっても勉強になるので、こんな低レベルなレスポンスでよければまたコメントさせてください!笑

イラストマップシリーズ、全て揃えると値段が張りますねー。まずは図書館で探してみようとおもいます!紹介ありがとうございました(^-^)/

4 ■Re:Re:無題

>ちょんすけさん

全然的外れじゃないよ!私も、ちょんすけ君と同じで、最初は細胞毒性が強く現れるんだろうと想像していました。それに、鋭い質問ばかりだから、レスするのも大変ですよ~(汗)

これは、知識というより経験則なんだけど、T細胞特異的阻害薬のシクロスポリンやタクロリムスがあるじゃないですか。IL-2分泌を抑制するというアレ。私も免疫がおかしいので、試してみたんですが、かなり大量に使っても、あまり効果がなく、ステロイドの方が圧倒的に効くという感触でした。こんな経緯があって、T細胞(というか細胞性免疫)だけ抑制してもダメなのねぇ…という結論に至ったのです。

RA治療薬で、現在もっとも効果があるとされるトシリズマブ(アクテムラ®)は、抗IL-6受容体抗体でしょ?IL-6というと、主にB細胞を活性化させて抗体産生やCRP産生を行うと言う生理活性があるじゃないですか。IL-6を標的にするのが良いと既に分かっているので、となると、JAK1かJAK2を抑制することが必要で、JAK2を抑制してしまうと貧血が生じるであろうから、JAK1抑制を強めたのかなぁ?と思ったのです。

いつでも気軽にコメントしてね!マニアックなお話の話相手がいるというのは、嬉しいです☆

5 ■UCにおけるトファシチニブの第II相試験の結果

今週のNEJMに、UC(潰瘍性大腸炎)にたいするトファシチニブ投与の第II相試験の結果が刑されていました。

患者は中等度~重度のUC患者が対象。その殆どの患者で、メサラジン・糖質コルチコイド・免疫抑制剤・抗TNF製剤による通常治療を受けている。

トファシチニブ投与の前に、AZA・6-MP・抗TNF製剤の投与を中止しているので、これらの薬剤との相乗効果は不明。

個人的なImpressionとしては、RAよりはresponceが悪いのかもしれない。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1112168?query=TOC

6 ■追記

NEJMで以下のreviewが掲載されました。
JAKs and STATs in Immunity, Immunodeficiency, and Cancer
J.J. O'Shea et al. NEJM 2013;368:161-170
興味のある方は、原著を読んでみてください。

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