2012-03-19

大阪アジアン映画祭「私の一本」

テーマ:映画
昨日、ある人から「お誕生日からブログ更新されていませんね」と言われ、もうそんなになるか、と思った。
更新できなかったのは、「第7回 大阪アジアン映画祭」の準備のためだった。1月・2月は同映画祭のポスター、チラシ、公式カタログづくりに忙殺され、「過労死するのはこんなときか」と思うぐらい働いた。ちょうど単行本(きのこ著『発酵マニアの天然工房』三五館)の仕事と重なったためもあるが、1月中には、2晩続けての徹夜を2回もやっている。自分でも信じられないぐらいだ。
かくしてポスター2種、チラシ(16ページ)、公式カタログ(69ページ)が出来上がり、3月9日からの映画祭本番は映画を見まくるぞ、と思っていたのに、なにしろお金と人が足りないため、トークイベントの司会やら映画上映時の舞台挨拶および質疑応答の進行役などの仕事を仰せつかり、そういうのは大の苦手なのに「素人っぽさが新鮮で良かった」などとおだてられ、結局5、6本の映画で人前に立つことになった。無事に終わったから言えることでもあるが、質疑の内容を振り返ってみて、大阪アジアン映画祭の観客は温かく、レベルが高いと思う。
そんな中で特に印象深いのが、トークイベント「『セデック・バレ』ウェイ・ダーション監督を囲んで」の司会を担当したことだった。『セデック・バレ』(11年)は台湾の劇映画で、第1部「太陽旗」(143分)、第2部「虹の橋」(131分)からなり、日本統治時代の1930年(昭和5年)に台湾中部の山岳地帯で起こった先住民の抗日暴動「霧社(むしゃ)事件」を描いている。
この霧社事件は、1992年に55歳で亡くなった小川紳介監督が、その晩年、台湾の若き映画人たちと協同してドキュメンタリー作品にしたいと言っておられたテーマで、私には感慨深いものがあるのだ。また、こういうハードな題材を『海角七号/君想う、国境の南』(08年)のウェイ・ダーション監督が取り上げたことにも興味があった。
そんな思いを抱きつつ『セデック・バレ 太陽旗』と『セデック・バレ 虹の橋』を見た。これが素晴らしい。日本人にも台湾先住民にも同等に視線が注がれている。先住民セデック族には「首狩り」という習俗あるいは宗教的慣習があるのだが、そのことも真正面から捉えている。ーーしかし首を切る描写は極めて抑制されている。この映画を「残酷」「野蛮」などと批判する向きもあるようだが、どうかしていると思う。ーーまた、日本人と結婚させられ蜂起に加われなかった先住民の苦悩、蜂起した300人を追走する立場になった先住民の葛藤もあり、事実を基にした物語は重層的な相貌を見せる。
さらに、アクション映画としても見事な出来栄えである。裸足で縦横無尽に山を走り、沢を渡り、樹の上に隠れ、飛び降り、神出鬼没で日本軍をおびやかすセデック族の戦士たちは、ともかくカッコいい。その族長モナ・ルダオの顔、声、言葉の味わい深さも忘れがたい。彼は俳優ではなく、牧師になる勉強をしている素人なのだというから驚く。
私が最も感銘を受けたのは、蜂起すれば、その先には死しかないことが分かっていて、それでも守らなければならないものがあるという彼らの強い志だった。人は何のために生き、また死ぬのか。その目的を明確に持てた300人の戦士は、間違いなく彼らの「虹の橋」を渡っただろう。
さて、トークイベント直前の打ち合わせで、私はウェイ・ダーション監督に「こういう質問は困るとか、これについては言いたくないということがありますか」と訊いた。中国と台湾の関係、日本の侵略についてなど、さまざまな立場や意見があり、トークイベントでの監督の発言が、台湾や中国で問題になることがあるやもしれない、と考えたからだった。
監督の返事は「いや、何もありません。どんな質問が出ても答えます」だった。小柄で華奢、優しい顔立ちのウェイ・ダーション監督は、実に骨太な大人(たいじん)でありました。トークイベント本番でも、70人以上の参加者を前に、マイクの設備もない会場でよく話してくださり、1時間の予定が1時間半にも及んだ。
そのトークイベント後に、満員のABCホールで『セデック・バレ 虹の橋』が上映され、時間の関係で質疑応答は行なわれなかったが、舞台挨拶はあり、監督と並んで私もマイクを持って舞台に立った。そして最後に、「この映画、台湾では昨年の9月に公開され、大きな反響を呼んだと聞いております。日本での公開はまだ決まっておりません。前・後編を合わせると4時間半にもなりますが、ここに配給会社の方がおられましたら、ぜひご検討いただきたいと思います。台湾と日本で公開されてこそ、この映画は完結したと言えると思いますので」と言えたこと、少し拍手をいただけたことが嬉しかった。
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