2006-09-30

傑作に出合う

テーマ:映画
午前中みっちり仕事して、午後から鶴見区民センターへ。私も関わっているコミュニティシネマ大阪実行委員会ほかが主催する「文化庁優秀映画鑑賞会」の様子を見るためである。事前の情宣不足か、キャパ200の会場に観客は60名ほどで、ちと寂しい。
午後3時から、映画評論家・浅野潜(あさの・せん)さんの講演。映画記者時代に出会った今井正、堀川弘通、小林正樹、木下惠介、黒木和雄などの監督たちの話をされた。今井正監督の不遇時代は、夫婦で苦労されたという話のところで、突然言葉に詰まり、ハンカチを出して涙を拭われたのには胸をつかれた。現在入院中の奥様のことを思い出されたらしい。
浅野さんをお見送りしてから、『あすなろ物語』(55年、堀川弘通監督)と『にごりえ』(53年、今井正監督)を見せてもらう。

『あすなろ物語』は、原作・井上靖、脚本・黒澤明で、明日は檜(ひのき)になろうとする「あすなろ」の木をモチーフに、一人の少年の成長を描いている。非常に素朴で真面目なテーマで、そこに〈時代〉を感じるが、決して不愉快ではない。むしろ、私たちが忘れてしまっているものを思い出させる。小学生時代、中学生時代、高校生時代という三話構成になっていて、どの時代にも魅力的な、ある種彼を翻弄する女性(岡田茉莉子、根岸明美、久我美子)が身近にいる。たとえば、今ならそこに肉体関係を介在させるであろうし、見ているほうも、いつそういうことになるのかとハラハラしているのであるが、最後までそうはならない。
三話目の高校時代は原作にはないらしいが、ここが弱いと思った。小学生時代には、ある大学生が話してくれた「あすなろ」の木の話に影響を受け、少年は勉強に励む。中学生時代は、勉強ができるために上級生にいじめられるが、鉄棒競技で打ち負かし、喧嘩にも参加する。いわば文武両道になったわけだが、それが高校生になると、自分の意見を言えない、おとなしいだけの青年になってしまうのだ。

『にごりえ』は、文句ない傑作であった。冒頭、明治時代の夜の東京の街を一台の人力車がゆっくりと走っていくシーンで、いきなり鷲摑みにされてしまった。屋内セットなのだが、これが素晴らしい(美術・平川透徹)。
これも三部構成のオムニバスだが、内容も凄い。離婚を決意して婚家を出てきた女(丹阿弥谷津子)が、実家の父に諭されて再び人力車で家に戻る途中、その車夫が幼なじみであったことに気づき、かすかに行き交い、しかし結ばれることはないと互いに諦める恋情の哀しさ(「十三夜」)。
吝嗇で冷酷な主人夫婦の家で、健気に下働きをする女(久我美子)。育ててくれた伯父夫婦の苦境を救おうと、たった2円(今の2万円ぐらいだろうか)の借金を女主人に申し込むが、伯父の家に借金取りが来るという大晦日になっても、言を左右にして貸してくれない。そんな折、取引先の男が20円の借金を返しにきた。女が、その金に手を付けるかどうかの葛藤とスリル(「大つごもり」)。
あるいは、場末のあやしげな店で働く女(淡島千景)がいる。女は美しく、その店では一番の売れっ子である。言い寄ってくる男も多いが、その目的を知っている女は、どこか投げやりで、男たちを軽くあしらうばかり。そんななかに、今は落ちぶれて店に上がることもできない男(宮口精二)がいる。男は一途だが、女は会おうともしない。一方、金回りもよく、紳士的な振る舞いの男(山村聰)が女に興味を持ち、通ってくる。互いの本心を探り合うようなやりとりが面白い。女は、そんな生活から抜け出ることをふと夢見るが、悲劇的な結末が待っている(「にごりえ」)。
三話を通じて、明治の女たちの哀しい生が透けて見えてくる。原作の樋口一葉を読みたくなった。
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2006-09-29

自由と責任

テーマ:日常
10月初旬、8月26日に開いた同窓会の「まとめ」をすることになった。幹事3人が集まり、経費を精算し(“持ち出し”になっているお金を均等に割るだけだが)、参加者に記念写真を送る手配をする。私は同窓会の「報告書」を書いて行かねばならない。それを写真と一緒に送るのだ。
せめて、同窓会から1カ月以内に集まりたかったが、Yさんはお勤めがあるし、Tさんも公私ともにお忙しかった。チンタラしていたのは私だけだが、その私も、このところ仕事に追われている。
昨日、私たちの心の眼を曇らせるものとして《日常生活でのさまざまな心の動きや、これまでの経験や習慣》と書いたが、まさにそれを実感させる日々だ。忙しいのは悪いことではないが、あまりに忙しいと自分を見失ってしまう。出版社勤めをしていたとき、徹夜続きだった同僚が「ときどき、フッと電車に飛び込んでしまいたくなる」と言っていたことを思い出す。
ともかく、今の私は、こつこつと働いて、山のように溜まってしまった仕事や雑事を片付けていかねばならない。全部きれいに終えられるのは、いつのことだろうか。唯一の救いは(それが危険なところでもあるが)、誰にも命令されず、自分自身の意志でそれを行なえることだ。自由でありつつ、責任は果たす。なんとカッコいい! 頭髪が薄くなり、腹の出たオジサンは、せめてそれぐらいでしかアピールできないかもなあ。めげずに頑張ろうっと。
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2006-09-28

優しさがしみる

テーマ:日常
この間の自分の停滞ぶりを象徴しているが、昨夜、19日ぶりにヨーガ教室に参加。だが、指導者Uさんは笑顔で迎えてくださり、Sさんは「今夜あたりメールしようかと思ってました」と言ってくださる。いつも変わらず、温かく、優しい人たちだ。しかし、その優しさは、決してベタベタしていない。それは彼女たちがそれぞれに修行者であり、つまるところ真実は個人個人が追求していくしかないのだと知っているからなのだと思う。その温かさ、優しさを誤解してはいけないのだ。
久しぶりのアーサナ(姿勢、ポーズ)はきつかったが、終わってみると、いつもの爽快感と至福感がやってきた。
最後にSさんの短いお話。「私たちの誰もが、奥深いところに本当の自由と真実を秘めていると師は言われます。しかし、日常生活でのさまざまな心の動きや、これまでの経験や習慣によって、それは隠されてしまっています。それらを取り除き、真の自分を見つけるのが、ヨーガの最終目的だと思います。勇気を持って進んでいきましょう」。
いいお話だと思った。もとより、私には自由も真実も分かっちゃいないのだが、これまでの経験と習慣を見直せというところにグッときたのである。

久しぶりに日記を更新したら、さっそく数人の方がメールやコメントをくださった。マジで嬉しい(まったく単純だね)。そのうちのお一人、東京のFさんからのメール。
《ところでHPの「日記」が久しぶりに更新されましたね。「映評」や「書評」とは一味違って、書き手はダイレクトに、しかもラディカルに身を晒さねばならない。シンドイ。気力がいる。それだけに第三者からすると興味深いのです。私なぞ、とても書く勇気はありません》
なるほど、そういうものかと思う。でもこれって、ドン・キホーテの猪突猛進ぶりを見て楽しんでいる賢者の趣もあるなあ。まあ私はそれほど直情型ではなく、けっこう慎重居士ですが。

いつもは昼過ぎに食事に行く喫茶店に、閉店間際の時間に行ったら、ママさんが「あら、今日は来られないのかしらと話していたんですよ」とおっしゃる。とたんにデレデレしてしまう。とくに話もせず、黙々と食事してブラックコーヒーをすすり、黙々と新聞を読んで帰るだけの客なのに、社交辞令はあるとしても、少しでも気にかけてもらっていることが嬉しい。
かくして、人の優しさ、温かい言葉が身に染む一日でありました。
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2006-09-27

リセット願望

テーマ:日常
読者の皆様へ。
すみません、また悪いビョーキが出てしまいました。これではならじ、という気持だけは強くあるのです。
「きちんと生きたい」と思います。
私の残り時間は、あと20年というところでしょうか。たぶんアッという間でしょうが、死ぬときには満足して死にたいのです。
そのためにも、精進しなければなりませんね。
ごめんなさい、でした。
これで一応リセットしたつもりです(大丈夫かなあ)。
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2006-09-07

腹の立つこと

テーマ:日常
最近はどこへ行っても、喫煙者は肩身が狭い。よく利用していた喫茶店があったが、店長が替わったとたんに喫煙席が三分の一に減らされ、以来、その店には行っていない。禁煙者の権利もけっこうだが、喫煙者にも権利があるわけで、せめて同等に扱ってもらいたいと思う。
で、最近よく行っている店での話。席に着き、注文を済ますと、テーブルに灰皿がないことに気づいた。ウエートレスに言わなければならないが、それはコーヒーを持ってきたときでいいだろう。しばし待って、コーヒーがくる。彼女の銀盆の上には灰皿も載っている。「ああ、気がついていたんだな」と思う。しかし、その灰皿は別のテーブルのものだった。彼女が戻ってきたとき、「ここにも灰皿お願いします」と言う。
別の席から「塩、ください」の声。「はあ?」と彼女。「玉子につける塩!」と言われて気づいたようだ。気が利かないんだなあと思うが、新人のようだし、いずれ学習するだろう。そんなことでは腹は立たない。

自動販売機、最近はどの飲み物も100円というのがある。喫茶店からの帰り、ミネラルウォーターを買っておこうと、その100円均一の自動販売機に寄る。先客があって、作業服姿の青年が二人、ビニール袋持参でたくさん買い込んでいる。同僚のも買っているんだなと思いつつ近づいていくと、彼らは一旦そこを離れた。だが、何か買い忘れたらしく、すぐに戻ってきた。タイミング的には私が先だったのだが、そこは紳士だから、「どうぞ」と譲った。「すいません」と一人が言ったのは当然だが、それから後がいけない。二人で同僚だか先輩だかの噂話をしながら、チンタラチンタラと5本も6本も買っている。ポーズだけでも、急いでいるふうを見せろってんだ。最後は、案の定、脇に立っている私を無視して立ち去った。

「なんだかなあ」と思いつつ事務所に戻ろうとすると、狭い道の先に十数人の若者たちがたむろしている。カメラやレフ板などを持っているところを見ると、写真学校の生徒たちなのであろう。ファッション写真撮影の練習をしているようだ。男女二人を店の前に立たせ、道を挟んで反対側からシャッターを切ろうとしている。幅4メートルぐらいの狭い道だから、カメラの前を横切るしかないが、そこは紳士だから、シャッターを押すまで待ってやろうと思う。だが、私が立ち止まっているのを知ってか知らずか、なかなかシャッターを切らない。「その襟、ちょっと立ててみて」などとやっている。「おいおい、ここは公共の道路だぜ」と思うが、口には出さない。ようやく一人の女の子が気づき、道をあけてくれた。「すいません」と言うのもシャクなので、頭を下げて無言で通り過ぎた。
なんだかなあの二連発で、さすがの紳士も憮然となるのであった。
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2006-09-06

光陰矢のごとし

テーマ:映画
なんだか落ち着かなくて、更新もままならずでありました。
昨年の12月にあった「韓国エンタテインメント映画祭2005 in大阪」が、今年は拡大バージョンで「大阪アジアン映画祭2006」となり、11月に開かれる。会場は、リサイタルホール、そごう心斎橋本店、KTVホール、シネ・ヌーヴォをはじめ在阪のミニシアター数館など。
今日、ようやくそのポスターとチラシ(といっても、表・裏で計8ページの立派なもの)の校正が終わった。関係する会社や団体が、主催・共催・後援・特別協力・協力・企画といろいろあって、その調整が大変。
このあとは公式カタログ作りが控えているんだけど、まあ小休止というところ。これから街でポスターやチラシを目にすることがあったら、見て、読んでくださいね。

昨日、『キリング・フィールド』(84年、ローランド・ジョフィ監督)をテレビで再見したけど、いい映画でした。それにしても、人間って、どこまで愚かなんだろう。
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2006-09-01

嬉しいこと

テーマ:映画
ようやく少し涼しくなってきた。嬉しい。秋は大好きだ。短いのが玉に瑕(きず)だが。

没後50年とかで、NHK・BS2で溝口健二の特集をやっているのも嬉しい。午後1時、8時、夜中の1時と、一日に3本も放映していることがあって、仕事にならないのが困るが。それでも、けっこう見たなあ。『近松物語』(54年)、『祗園囃子』(53年)、『祗園の姉妹』(36年)、『噂の女』(54年)、『歌麿をめぐる五人の女』(46年)、『新・平家物語』(55年)、『赤線地帯』(56年、遺作)、『残菊物語』(39年)。やっぱり〈女〉を、それも逆境の中にある女を描かせたら、この人の右に出る者はいないという気がする。

30日だったか、午後8時から『山椒大夫』(54年)——製作年を調べるために見た『ぴあシネマクラブ』も間違っているが、〈太夫〉ではなく〈大夫〉が映画タイトルとしては正解——を放映していたが、その時間は外出しなければならなかったので、「録画したいなあ」と思った。だが、事務所のビデオデッキは壊れている。しかし、この前買ってきた“テレビデオ”があるじゃないか(また私のズボラぶりがばれてしまうが、8月5日にヨドバシカメラで買ってきて以来、まだ箱から出してもいなかったのだ)。さっそく梱包を解き、セットする。うまくできるだろうかと心配していた配線も、無事にできた。やはり新しいテレビは画像がキレイだ。さてBSの画面にして、と思ったら、これが映らない。「え~~!?」、わけの分からぬままに説明書を読んだら、BSが映らない機種らしいのだ。そんな馬鹿な。15年も前のアイワ製でも映っているのに。
さっそくヨドバシに電話。やはり「BSチューナーが内蔵されていませんので」という。それは困る。録画するのはほとんどBSの映画なのだから。“テレビデオ”でBS付きはないともいう。「じゃあ、これを引き取ってもらって、テレビとビデオを別々に買うしかないんですね」というと、「そうなんですが、お引き取りはご購入から2週間以内となっておりまして……」という。しまった、なんでも先延ばしにする悪い癖は、ろくな結果を生まない! と思ったが、そんなことはおくびにも出さず、「ずっと忙しかったんでね(これは嘘)、今日初めて箱から出したんですよ(これは本当)。だから全然使ってないんです」と食い下がる。「ちょっとお待ちください」のあと、「分かりました。お引き取りしますが、領収書と保証書、それに説明書や付属部品などはそろっておりますね」ときた。「ハイ、全部あります」。
というわけで、今日またヨドバシへ行ってきた。いちばん安いテレビとビデオにしたが、設置料(テレビとビデオの配線が心配なので)と配送料(今度は景山の車が使えないので)が上乗せされ、結局2万円ほど余計にかかってしまった。また、配達してもらうまでに部屋を片付けておかねばならず、それは1週間先にしてもらった。やれやれ。

K先生の友人でY先生という方がおられる。お目にかかったことはないのだが、そのホームページ(http://www.venus.dti.ne.jp/~yoz)はよく拝見していて、ひそかなファンになっていた。ものの感じ方や考え方が「似ているな」と思うことが多かったのだ。それでよかったのだが、数日前の深夜(深夜は、この前懲りているのに)、酔った勢いで先生のホームページのメール欄に自己紹介を書いてしまった。K先生はすぐに返信をくださり、驚いたことに好きな映画(『影の軍隊』)、好きな本(『遙かなノートルダム』)が私と同じだという。そして今日判明したことだが、〈病歴〉まで似ているのである。メールのやりとりを2、3回しただけなのに、私はもう10年来の友人のような気になっている。嬉しいことだが、馴れ馴れしくなりすぎないよう、自戒せねばと思っているところ。
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