ドイツ兵俘虜来徳100周年記念音楽会は、2014年12月21日(日)午後に徳島市の徳島大学常三島けやきホールで行われ、無事に終了しました。ご来場頂きました皆様、ご支援頂きました皆様に深く感謝いたします。

看板2

前日は激しい雨でリハーサルに集まるのにも苦労するような状況で心配しましたが、当日は朝から青空が見えました。初めての徳島大学での開催、しかも会場が今年できたばかりのホールで、お客さんどころか団員も迷わずたどり着けるのか心配するほどでしたが、早朝から多くの方々のご協力を頂いて駐車場案内板や会場入口の大きな看板、建物内の案内などを設置し、準備を整えることができました。

入口

リハーサルの様子です。けやきホールは音楽専用ではなく大講義室なので、座席を移動してオーケストラの場所を作りました。

リハーサル1

大正時代の徳島エンゲル楽団と同じような少人数のオーケストラと20人ほどの合唱団が並ぶと、客席はすぐ目の前です。歌詞カードを見てもらえるように照明は客席の後ろの方を少し落とす程度に調節しました。演奏中にお客さんの様子がよく見えて、一体感があります。

まず、S代表による主催者の挨拶から開幕しました。1914年12月にドイツ兵たちが徳島県庁付近の徳島俘虜収容所にやって来てちょうど100年であるため、その記念の場所である県庁を会場として演奏したいと相談を持ちかけたところ断られ、ほかの会場も空きがなくて困っていたところに、新設の徳島大学けやきホールを見つけたという経緯の説明からこの演奏会開催への熱意が伝わってきましたが、語り口はソフトで(ご本人は意識していないかもしれませんが)、ユーモアも感じられ、開演前の緊張感が一気にほぐれて演奏者と聴衆との間に一体感が生まれたように感じました。

演奏会はいつものように徳島とドイツとの交流復活のきっかけとなった「愛の墓守」高橋春枝さんのエピソードを元にご子息の高橋敏夫さんが作詞した「友愛の花」から始まりました。続いて大正時代の徳島エンゲル楽団がエンゲルさんの指導を受けて演奏したと伝えられる「美しき天然」「荒城の月」、そして当時の流行歌「ゴンドラの唄」を演奏しました。会場の皆さんもリラックスした雰囲気で、多くの方々が一緒に口ずさんでいる様子がよく見えました。

ドイツ兵俘虜が徳島に到着したのが100年前の12月だったことから、今回の新しいプログラムとしてクリスマスに関係する曲を演奏しました。後に板東でベートーベンの第九を日本初演するハンゼン氏が徳島俘虜収容所で「クリスマスメドレー」という演目で演奏した記録がありますが、具体的な曲目まではわからず、弦楽器主体でバッハの曲を選びました。コラール「主よ人の望みの喜びよ」、グノーのアヴェマリア、管弦楽組曲第3番のアリアの3曲です。最初のコラールの後は合唱団はその場で着席して一休みです。心休まるバッハの音楽を楽しみました。

プログラム後半は、特別出演奥村智洋さんの演奏から始まりました。奥村さんは、ちょうど10年前の2004年に初めて出演されて以来、2009年、2012年、2013年と、これまでに4回も特別出演されています。2013年には、徳島市で日本初演されたベートーベンのバイオリン協奏曲を再演する企画で、この大曲のソリストとして名演奏を披露し、大好評でした。今回は急遽開催が決まった演奏会に出演をお願いしたところ、前日に東京で演奏会というハードスケジュールにもかかわらず、快諾を頂きました。

最初の曲はハンゼン氏が徳島オーケストラの最初の演奏会で採り上げたチャイコフスキーのバイオリン協奏曲第2楽章「カンツォネッタ」でした。オーケストラの編成が足りないことや練習期間がとれなかったことから、伴奏は徳島で活躍するピアニスト中村太さんにキーボードでお願いしました。奥村さんの演奏は音色が本当に美しく、最初から最後まで惹き付けられる名演奏でした。続いて、バッハの無伴奏パルティータから第2番のアレマンダ・コレンテ、同3番からガボットの3曲です。一昨年に発売されたバッハ無伴奏ソナタ・パルティータのCDはレコード雑誌でも推薦されるなど、大きな評判になりました。客席と楽団・合唱団のメンバーが奥村さんを取り囲み、和やかな雰囲気でゆったりと聴くことができました。次は恒例の「村祭り」でした。意外な選曲のようですが、理由があります。ドイツ兵俘虜が徳島にやってきた頃、日本では西洋音楽教育が始まっていて、文部省唱歌が数多く作られていました。その作曲家の1人である南能衛氏が徳島市の出身であることから、エンゲル楽団演奏会では彼の功績を讃えるために代表作の「村祭り」をプログラムに取り入れています。今回は奥村さんが自身の無伴奏編曲版を披露されました。さまざまな技巧を取り入れた編曲で、無伴奏バイオリンの充実した響きに圧倒されました。最後は、徳島エンゲル楽団との共演で、ベートーベンのロマンス第1番ト長調でした。この曲もハンゼン氏が徳島オーケストラと演奏した曲の一つです。奥村さんのすばらしい音色をじっくり味わえる名演奏でした。

奥村さんに大きな拍手が贈られた後は、再びエンゲル楽団と合唱団の共演で、モーツァルトのフィガロの結婚から「もう飛ぶまいぞこの蝶々」、シュトラウスの「美しく青きドナウ」、ベートーベンの「歓喜の歌」でした。フィガロのアリアは、以前はドイツ兵俘虜が歌ったであろうドイツ語の歌詞を使っていましたが、今年4月の演奏会から日本語の歌詞に変更しました。これは徳島市出身の詩人、野上彰氏の訳詞を紹介するためです。長い歌詞の一部に野上訳を取り入れ、残りの部分は浅草オペラの伊庭孝訳で歌いました。(徳島エンゲル楽団とは関係ありませんが、野上彰氏の功績を顕彰する演奏会の鑑賞報告を記事にしたことがあります。ここをクリックしてご覧ください。) 美しく青きドナウと歓喜の歌は、これまでのエンゲル楽団演奏会でおなじみの編曲です。少人数の合唱団員でオーケストラと共演することを考慮して、全員で主旋律を歌うことにしました。プログラム最後ということで、全員で力を込めて歌いました。指揮者とソリストへの花束贈呈、副代表(筆者)のお礼の言葉の後、アンコールは、これも恒例のラデツキー行進曲で、来場者の皆さんとともに合唱団も手拍子でリズムを取って締めくくりました。

演奏会本番の様子は、最後の2曲が勝ぼうずさんによる撮影でYouTubeに公開されていますので、リンクします。リハーサルに続いて本番も撮影・公開して頂いた勝ぼうずさんに感謝します。

2014年12月21日ドイツ兵俘虜来徳100周年記念音楽会の動画

徳島エンゲル楽団の演奏会は、これまで年に1回のペースで「エンゲル・松江記念市民音楽祭」として開催してきました。今年は4月と12月に少し違った趣向で開催できたことは、多くの方々のご支援によるものです。今後の企画にご期待頂くとともに、これまで通り皆様のご支援をお願いいたします。
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