全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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災害は、いつどこで起きてもおかしくありません。いざというとき避難所となる公共施設に独立した電源があれば、できることの幅は大きく違ってきます。

 

今回は、自然エネルギーによる防災対策を進めている神奈川県松田町を紹介します。松田町は、小田原箱根エリアに位置する人口11,000人ほどの小さな町です。松田町はエネ経会議との出会いをきっかけに、行政と企業が連携して公共施設に防災対策を行うことになりました。松田町の本山町長と、事業を担った湘南電力に話を伺ってきました。

 

松田町では、2016年に「エネルギー地産地消モデルの構築に関する協定書」を締結した。

左から、湘南電力の渡部健社長、ほうとくエネルギーの蓑宮武夫社長、松田町の本山博幸町長、エネ経会議の鈴木悌介代表。

 

◆今回の内容

 ・小さい町なりにできることを

 ・地域でエネルギーとお金を回す仕組み

 ・山間部をエコタウンに

 

◆小さい町なりにできることを

 

 古くから交通の要衝として栄えてきた神奈川県西部の松田町は、川や山など豊かな自然が残るのどかな地域です。しかし近年は他の地方と同様に、高齢化と人口減少に悩まされています。

 

「行政として『このままではいけない』という危機感が足りなかったのかもしれません」と語るのは、3年半前に町長になった本山博幸さん(47歳)です。 町長には以前から、持続可能な町づくりにエネルギーを取り入れたいという思いがありました。具体的になったのは、2016年にエネ経会議とつながってからのことです。 

 

「未来の子どもたちに何を残せるだろうかと、ずっと考えてきました。そういう意味で、エネ経会議の『地域でつくったエネルギーを地域で使うことで、地域経済のエンジンを回す』というコンセプトは、すごくいいなと思ったんです。松田町の自然を大切にしながら地域経済を回せるようになれば、いったん町を出ていった子どもたちも雇用の場があることで安心して戻ってくることができるかもしれない。都市部のマネをするのでなくて、小さい町なら小さいなりにできることがあるはずだと感じました」。

 

松田町役場屋上から見る山に囲まれた松田町の眺望。写真奥には富士山が見える。

 

 まず手掛けたのは、2016年11月に公共施設(9ヶ所)の電力を新電力の湘南電力に切り替えたことです。リポートでも度々取り上げている湘南電力は、主に神奈川県内の太陽光発電所などから電力を調達している電力小売会社です(※)。切り替えにより、電気代は年間で50万円ほど削減できる予定になっています。しかし本山町長は、切り替えた最大のポイントは価格ではないと言います。

 

 「松田町は、すでに東京電力から別の新電力に切り替えていたので、以前に比べて電気代は下がっている状態でした。今回は湘南電力さんにさらにもう少し下げてもらっています。それはもちろんありがたいのですが、湘南電力を選んだ最大の理由は、地域でつくった自然エネルギー電源の地産地消を推進している会社ということでした。長い目で見れば、地球温暖化の改善や地域経済の好循環にもつなげることができる。町がそういう方向に積極的に取り組んでいく姿勢を見せようということで、議会にもご理解いただけました」。

 

 ※湘南電力の地元での電源調達割合はおよそ50%程度(2016年度見込みの数値)。電源の種類は主に太陽光発電で、一部小水力発電も入っている。

 

◆地域でエネルギーとお金を回す仕組み

 

 さらに、町の公共施設2ヶ所に太陽光発電設備と蓄電池(出力は各10キロワット)を設置して防災対策に活かしました。今回の仕組みはユニークなもので、松田町の他に、4つの組織が関わっています。

これまでに紹介したエネ経会議と湘南電力の他、湘南電力の親会社である「エナリス」、そして近郊の小田原で誕生したご当地エネルギー会社の「ほうとくエネルギー」です。

 

今回の取り組みの仕組み図

 

まずは、ほうとくエネルギーが一部に経産省の補助金などを使って太陽光発電と蓄電池の設備を購入、松田町の公共施設に設置します。設備の所有者であるほうとくエネルギーには、売電収益が入ります。一方で松田町は、町の予算を使わずに災害時の非常用電源を確保することができます。

 

 設備から生まれた電力を買い取るのは、エネルギーの地産地消をめざす湘南電力です。湘南電力は、電力の小売事業者として9つの公共施設への電力供給も行っているので、地域で生まれた電気を地域で使うことになります。

 

裏方として、電力の制御を担当するのがエナリスです。エナリスは、蓄電池の遠隔制御も行っています。遠隔制御とは、蓄電池をある程度活用して普段から受給調整に役立てたり、いざというとき電池の残量がゼロにならないよう監視しておくという意味があります。そして、この仕組み全体のコーディネートをしたのがエネ経会議ということになります。

健康福祉センターに設置された蓄電池

 

 設備そのものは小さいながらも、地域で発電した電気を地域で消費、さらに利益も地域入り、非常時には防災対策にもなるという、とことん地元にこだわったこの仕組みは、全国的にも珍しいものと言えるでしょう。湘南電力はこの仕組みを通して、何を実現しようとしているのでしょうか?湘南電力の渡部健社長は、規模が小さいのでこの事業単体では利益は見込めないものの、大切なのはこの先にあると発言します

 

 「この事業は、地域の防災対策になっているのが大きな特徴です。このような取り組みを通して、地域にこだわった小売会社として自治体さんと長くお付き合いができる関係を築ければ良いと思います。今後はHEMSなどの技術を活用しながら、エネルギーを通して地域の課題を解決していく新しいサービスも検討しているところです」。

 

健康福祉センターのソーラーパネル

 

 単に電気の売り買いをしているという関係性では、価格面だけで比較されて安い方を選ばれてしまいます。しかし、地域のためにさまざまな面で協力関係を築くことができれば、簡単には関係を切り離すことができません。地域にこだわった小売会社として、地域とのつながりを大事にしてくことが、ビジネスにとっても長い目で見ればプラスになるということでしょう。なお湘南電力では松田町で実施した防災対策の取り組みを、周辺の他の自治体にも広げようと検討しています。

 

◆山間地域をエコタウンに

 

 ソーラーパネルと蓄電池を設置した2つの施設を紹介します。ひとつは、主に高齢者社や障がい者が利用している健康福祉センターです。ここは災害時には、ボランティアを受け入れるボランティアセンターとなります。そのような施設は防災対策が欠かせません。

 

健康福祉センター外観

 

 もう一ヶ所は、松田町の市街地から離れた寄(やどりき)地区の小学校です。山間部に位置する寄地区は、1本の細い道路でしか市街地への出入りができないようになっています。もしその道が塞がれてしまえば、地区が孤立する可能性もあります。大きな災害が発生した場合、この寄小学校と隣接している寄中学校は、避難所となる予定です。寄中学校の方には、すでに県の補助金によりソーラーパネルと蓄電池が設置されていましたが、小学校にはまだついていませんでした。そこで、今回の設置場所に選ばれたというわけです。 

 

もともと、松田町の市街地と山間部の寄地区は別の自治体でしたが、およそ60年前の1955年に合併しています。当時は地域で食料とエネルギーを自給していたようです。また現在も、多くの観光客が訪れる箱根に農産物などの食材を提供しています。都会の感覚では「アクセスの悪い山間部」と見る向きもありますが、本山町長はこの地区には実は豊かな可能性があると感じ、寄をエコタウンにしたいと考えてきました。ソーラーパネルと蓄電池の導入は、そのエコタウン構想の最初の小さな一歩になるかもしれません。

 

 「寄地区の歴史的背景を考えたら、今の時代に沿った形でエネルギーを地域で自給することは十分に可能だと思っています。安心、安全というだけではなく、CO2の排出をゼロにすることができるかもしれない。エコツーリズムもできるでしょう。現在は高齢化して人口も減っていますが、そのような自然が豊かな地域ならではの努力を続けることで、寄地区に移住したいという人が増える、そういう可能性のある場所だと思っているんです」(本山町長)。

 

松田町の本山博幸町長

 

 松田町では今後、他の公共施設でも順次、ソーラーパネルと蓄電池の導入を進めていく予定にしています。この取組は、単なる防災対策にとどまらず、地域をより魅力的なものにしていこうという構想のもとで行われていることがわかりました。このような取り組みが、全国の他の自治体にも普及してほしいところです。

 

◆【お知らせ】ご当地エネルギーを描く映画の制作が進行中!

 

自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」を現在制作中です。監督は、「よみがえりのレシピ」という地域と食をテーマにした映画をつくった渡辺智史さん。ぼくも「おだやかな革命」にはアドバイザーとして関わっています。この映画には、「ご当地エネルギーリポート」で紹介している地域のエネルギープロジェクトが数多く登場しています。映画の公開を応援するためのクラウドファンディングが行われています。ぜひ応援よろしくお願いいたします。

 

映画の内容とクラウドファンディングについて詳しくはこちら

 

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