全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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福島第一原発事故から5年、住民が主体になったエネルギープロジェクトとしては、桁外れに大きなプロジェクトが始動しました。事故を起こした原発から7キロほどの近さにある福島県富岡町を舞台にした太陽光発電事業、「富岡復興ソーラー」です。すでに市民出資の募集も始まっているこの事業を手掛ける事業会社「さくらソーラー」の小峯充史さん(プロジェクトマネージャー)に聞きました。

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富岡町の桜並木(提供:富岡復興ソーラー)

◆今回のトピックス
・全国初!市民主導で33メガの太陽光発電
・次世代に町を残したいという思い
・20年間の事業を成功させる仕組みづくり
・収益を生活支援や農家の自立に活用


◆全国初!市民主導で33メガの太陽光発電

福島第一原発のある大熊町の南に隣接する福島県富岡町は、全町避難となっています(2016年6月現在)。一部の地域は避難指示解除準備区域に指定され、来年には帰町できるエリアも出てくるのですが、2015年に実施されたアンケート(回答率約51%)によれば、3年以内に町に戻りたいと考える住民はわずか7%でした。

そんな状況で、地域住民の中からメガソーラーをつくるプロジェクトが立ちあがります。まずは2013年に元中学校の音楽教師だった遠藤陽子さんが、自分の夫が所有する田んぼに太陽光発電を設置できないかと計画します。この地域が、日陰もなく太陽光に適した土地だったからです。当初考えていた規模は約2メガ(出力2000キロワット)でした。

遠藤さんが、事業の実現に向けて富岡町や福島県、復興庁などと相談するうちに、福島や茨城にバラバラに避難していた地権者の方々から「うちの土地も使って欲しい」と声をかけられるようになります。そして最終的には35万平米という広大な農地に、33メガ(一般家庭約1万世帯分の電力)の太陽光を設置する計画に発展していきました。遠藤さんは、事業を支援するISEPなどの専門家からアドバイスを受け、事業主となる「一般社団法人・富岡復興ソーラー」を設立、代表理事を務めることになりました。現在、発電所の工事は2016年秋に着工し、2018年3月に運転を開始するスケジュールで進めています。

富岡町は交通の要衝に位置していて、国は原発の廃炉作業を進める前線基地となることを計画しています。そこで、町としては遠藤さんたちが計画しているエリアに、廃炉作業員向けの住宅を建設したり、廃炉作業に向けたロボットの研究施設を誘致しようということも検討していました。しかし地域住民としては、次世代が希望の持てる町づくりをしたいという思いが強く、太陽光発電所をつくることを選びました。なお通常であれば、農地で作物をつくらずに太陽光発電をやるのは簡単に許可されないのですが、今回はこの事業が富岡町の第二次災害復興計画と復興整備計画に盛り込まれたことで、転用が可能になりました。

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富岡復興ソーラープロジェクトの事業予定地(航空写真・提供:富岡復興ソーラー)

◆次世代に町を残したいという思い

地域の人たちが自然エネルギーを選んだ理由のひとつには、農地を残したいという強い思いがありました。富岡町の放射線レベルは、除染前より下がっているとはいえ、食料としての農産物を作って売れるような状況ではありません。しかし、いったん工場などを作ると農地に戻すのは難しくなってしまいます。太陽光なら、20年の発電期間が終われば、撤去して戻すことは可能です。

富岡復興ソーラーの事業を進めるため、事業会社「株式会社さくらソーラー」が設立されました。そのさくらソーラーでプロジェクトマネージャーを務める小峯充史さんは、これまで東京都調布市などで地域住民が主導する地域エネルギープロジェクトを手がけてきましたが、これほどの規模の事業はもちろん初めてです。プロジェクト全体の費用が94億円弱、応募する市民出資の目標額は13億円など、いずれも過去最大になっています。小峯さんは言います。

「土地の利用方法も含めて、まさに原発事故のあった福島だからこそ実現した事業だと思います。その分初期投資もかかりますが、資金の85%程度を大手金融機関や福島県内金融機関から、残りの15%程度を市民出資などで集める予定で、確実にうまくいくようしっかりとした仕組みを作りました。先祖代々の土地をなんとかして次世代につなげたいという富岡町の人たちの想いを、皆さんもぜひ応援して欲しいと思っています」。

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「株式会社さくらソーラー」のプロジェクトマネージャーを務める小峯充史さん

◆20年の事業を成功させる仕組みづくり

富岡復興ソーラーの事業会社である株式会社さくらソーラーの親会社には、遠藤さんが代表を務める一般社団法人富岡復興ソーラーの他、ISEPや複数の生活協同組合が出資、協力しています。また、金融機関としては大手金融機関と福島県内の金融機関が協力して融資を行い、設備の設置は株式会社日立製作所が担う予定となっています。地域プロジェクトとしては異例となる大手銀行や大企業が関わる事業になります。

この全国ご当地エネルギーリポートでは、工事会社や金融機関を含めてなるべく地域内でお金を回すことを推奨していますが、今回については規模が大きすぎるので、その尺度では測れないようです。資金調達の面でも、大手で実績のある工事会社が手掛けないと、この規模の融資は受けられないとのことです。

今回の事業の最大のポイントは、工事などのお金を地域で回すことではなく、地域のためにしっかりと20年間の事業を成功させて、売電収益で確実に地域貢献を達成するということになっているのです。小峯さんによれば、他にも災害に対する保険はもちろんのこと、元利金返済が滞った場合に備える積み立てや売電収入が少なくなった場合に備える保険への加入など、従来の地域プロジェクトでは考えられないような手厚いリスク対策をしているとのことでした。

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富岡復興ソーラープロジェクトの事業予定地(提供:富岡復興ソーラー)

◆収益を生活支援や農家の自立に活用

発電事業による収益は、20年間合わせると30億円超になる見込みです。この収益は、「一般社団法人富岡復興ソーラー」を通じて、地域の自立をめざす復興支援事業に使う予定になっています。

具体的に検討されているのが、次の2点です。ひとつは、避難指示が解除された後、富岡に戻る人に向けた送迎サービスです。人数が少ないとはいえ、どうしても故郷に戻りたいと考える高齢者の方はいます。しかし、商業地や病院などに行くための足がありません。そのため、ワゴン車での送迎サービスや買い物の代行などといった生活支援を実施します。 

もうひとつは、若手の農家が自立的な経営ができるための支援になります。富岡町は大半が農地(田んぼ)なので、これをなんとか残したいと思っている方は多いのですが、すでに述べたように現状では食品を栽培するのが難しくなっています。そこで、食用ではない花を育てたり、エネルギーになる原料を育てることで、農地を荒廃させずに残すことができるようになる可能性もあります。この部分は時間をかけて町と協力しながら、調査、提言をしていく予定です。 

このほか、収益の一部を福島からのエネルギーシフトを掲げて活動する「一般財団法人・ふくしま自然エネルギー基金」へ寄付することも予定しています。小峯さんは言います。

「地域に何かをあげて終わり、みたいなものは自立にはつながりません。富岡復興ソーラーの地権者の方々は、いまはそれぞれの避難先にバラバラになってしまっていますが、自分たちが生まれ育った富岡という地域をなんとか次につなげたいと強く願っています。それをなんとか形にしていければと思っています」。

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除染した袋が積まれた事業予定地(提供:富岡復興ソーラー)

福島第一原発の間近で、地域の復興をめざす新しい挑戦、富岡復興ソーラーに注目してください。7月23日(土)には東京都内で、富岡復興ソーラーについて紹介するイベントが予定されています。こちらには、城南信用金庫の吉原毅相談役も登壇されます。詳しくはこちらをご覧ください。

また、市民出資「福島富岡復興グリーンファンド」の募集は10月末まで、詳細は「株式会社自然エネルギー市民ファンド」にお問い合わせください。

ぼく自身も7月中には富岡町に取材に行き、引き続きこのプロジェクトについてお伝えしていく予定です。



自然エネルギーで地域に力を取り戻す!

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