アメリカ出張(2) | いまのしゅんかん

アメリカ出張(2)

1週間ぶりの職場でいろんなひとと話せて楽しかった。

同じタイミングでラスベガスに行ったPhDの子いわく、ラスベガスでは月曜日から3日間43℃の灼熱地獄だったという。たった1日の37℃なんてかわいいものである。しかし同じように建物の中は寒かったらしい。アメリカでの過剰冷房はどこも共通事項のようだ。そして、あるアメリカ人のありえない研究に目を見張ったらしい。確かに、ときどきアメリカでの研究でこんなこと可能なんだ、、というクレージーなものがあったりする。

そして別のPhDの子はなんとおめでた報告。わたしのときと同じく12月出産の予定だとのこと。わたしなどは確か61日に判明して年内出産だったことに驚いた記憶がある。彼女は4月にわかっていたらしいが、やはりつわりはひどくなかったらしい。わたしもつわりがなさすぎて10週も気が付かなかったという。。

あるポスドクは20年ものの中古車をドイツで超安く入手して、エンジンがもつかを懸念して自分でシリンダーめっきすることを考えているという。わたしは以前まさにそのプロジェクトに携わっていてシリンダーめっきをやりまくっていたので、もし本気なら手伝うよ、と約束した。買ってもいいけど、DIYをやるのも楽しそうである。

5月末に観に行ったコーラス・劇に出ていた元ポスドクとばったり再会。とても彼女は美しかったと言った。

 

今回出張に同行し、春に一緒にグラントのアプライしたプロジェクトリーダーでコーディネートのひとは、すべて自分のイニチアティブではないものの、11件もアプリケーションを出したという。

そしてうち4件の科学技術省のコンソーチウムグラントは、すべて第一フェースを通過したとのこと。だとすると、10%と言われていた通過可能性も実はもっと高く、第二フェースも50%と言いながら実は30%ぐらいになるそうで、わたしたちのアプリケーションが通るかどうかは本当にわからなくなった。しかし4件も第二フェースにもっていった彼は、確立論上少なくとも一件はグラントを獲得するだろうと思われる。

11件という数に驚いたが、彼曰く、「プロジェクトが途切れたら契約も切れることになるし、しかも最近はエネルギー関係でのファンドがとりにくくなっているから、とにかく数出すしかない。」とのこと。

彼は大学に雇用はされているが、自分のサラリー含めてすべて自分で外部から調達してくるしかないので、とにかくアプライしまくるしかないのである。

 

わたしが会社の年会以来考えていたことは、いつか、しかもそう遠くない将来に、わたしのcompetenceが必要とされない社会になるのではないか、、ということである。

エネルギー関係はかわらず重要事項でありつづけるかもしれないが、政治や社会情勢に左右されることが多く、それ以上にデジタル社会、スマート社会で必要な技術開発が重要になっていくと思われる。その中で、わたしの資質が役に立つのであろうか、それよりもエンジニアでいったらITか電気系が重宝されていくのでは?と思ったのである。

いつだか日本でも、25年後にはなくなる職業のリストがあがって騒がれていたが、わたしの職業でさえそのリスクが皆無ではない。少なくとも、デンマークの労働省のポジティブリストからは、ケミカルエンジニアの名前は消えている。

 

PSO税が廃止されれば、エネルギー省のグラントがなくなり、プロジェクトリーダーである彼の状況も厳しくなる。

しかし、11件もアプライするなど、やれることはやるだけやっているんだな、、と思った。

それでもいつか彼は仕事を変えなければならないかもしれない。でも、そのときはそのとき。何もわからない将来を憂いのではなく、今全力でがんばっていくしかないのだな、、と。

 

それに対して、わたしは今がんばっているのだろうか。

正直ときどき自信がなくなる。

でも、どんなに面白くない仕事でも、わたしはとりあえずすべての仕事を手を抜かずにきっちりこなす姿勢が重宝されていることに気が付かさせてくれた。たいしたことではないと思っていたけれど、みんながそれをできるわけではないらしい。わたしの美徳を大事にしないと、、と思った。

 

月曜日から金曜日まで5日間みっちり学会というのも滅多にないが、長かっただけに内容も豊富で、去年のハンブルグでの学会よりも学びは大きかった。

というか、ハンブルグでは一般的な話ばかり聞いていて理論はおろそかになっていたのかもしれない。今回はかなり基本的なことを知ることができた。それこそ、なぜ太陽電池の効率がそれほど高くないのかとか、どのように特性を評価するのかとか、どのように効率を増大させることができるのか、など。

本当にグラントがとれたら、この得た知識を活かせられるのに、、と思った。

 

ちなみに、わたしたちのプロジェクトのテーマに関しては、アメリカではそれほどポピュラーではないとのこと。

建物の美観が関わっているのだが、確かに気にするのはヨーロッパ人くらいのものであろう。

同僚の話では、わたしたちのポスターに、アメリカ人がたずねにきたと思ったら、軍隊に太陽電池をおろしている会社から来たひとで、模様をなくして一色にするというのは防衛上興味がある、と言ってきたそうだ。美観ではなく、防衛で目立たなくするのが目的、、アメリカらしいと思った。

でも、ポートランドは中心地は比較的きれいなのに、ちょっと外れたあちこちでゴミの山がみられ、特に金曜日学会が終わってからそのまま空港に向かう途中、草っぱらの上にショッピングカートごと大量のゴミが捨てられているのをみたときには心が痛んだ。なんでこんな捨て方をするのだろう、、美観以前に、ちょっと信じられない光景だった。

 

少しほろ苦い帰路だった。