2008年06月28日

隠遁の自然魔術師:JOHFRA【4】

テーマ:芸術家の紹介

「女性と顔」

1946年、ネーデルランドの画家ヨフラは、ディアヴォラという名で通っていた女流画家と出会いました。「彼女を見た瞬間、不可解なパニックに襲われ、その場を逃げ出さなければと焦った」と彼の日記に綴られています。彼女の本名はアンジェレ・テレセ・ブロムジュ。そのほかにもアンジェル、アヌシカ、ディアナといった愛称で呼ばれていた彼女は広い付き合いがあり、ヨフラは彼女を通してパリの画商や画家たちに紹介されました。

そして、二人は交流を深めていき、恋に落ちました。1952年、彼らは結婚します。


「アニマとアニムス」

次の年は彼らの人生の転機となります。コル・ダームというオランダ在住のアメリカ人から「秘教の文書に挿絵を描いてくれないか」と頼まれたヨフラは、彼を通して薔薇十字団という秘密結社の存在を知ります。


ヨーロッパ各地で活動を行ってきたこの秘密結社は、1612年から1616年にかけて匿名で出版された3冊の小冊子(「友愛団の名声」「薔薇十字団の告白」「化学の結婚」)を起源に持っています。これらの怪文書によると、紀元前1500年頃に古代エジプトのトトメス3世が設立した神秘学団の教えが、エジプトからギリシャへ、そしてローマへと秘密裡に伝えられていき、西洋でその伝承を受け継いだのが薔薇十字団だとされています。


大自然の神秘的な法則と原理を学ぶことを目的とした密教の学会。錬金術や魔術の知識をその根幹とし、惑星規模の社会改革を実現しようとしたグループ。その謎めいた始まりから様々な推理や噂が飛び交い、フリーメーソンや神智学、「黄金の夜明け」といった団体に大いなる影響を与えたとも言われる薔薇十字団は、一つの作り話から始まりました。その歴史については、いつか機会を見つけて詳しく書いてみたいと思います。


「ネブカデネザル王」

ヨフラとディアヴォラは、ネーデルランドのハーレム市に設立された薔薇十字学会に通い始め、古代グノーシス主義、ヘルメス学、カバラ、ルネサンス魔術といった思想に染まりました。この頃から、ヨフラの絵に太陽・薔薇・蛇・ハート・翼・頭蓋骨といった神秘主義のシンボリズムが登場し始めます。

二人はその後の十年間、薔薇十字団においての活動に専念しました。後年、ヨフラはこの時期を振り返って、こう言いました。

「私はこの団体の一員として、熱心な仕事を何年間も続け、全身全霊を注ぎました。それは我々の社会であり、世界でした」

(・・・続く・・・)

追記:ヨフラが描いた上の挿絵は、旧約聖書のダニエル書に出てくる話に基づいています。

紀元前7世紀、バビロニア帝国の王であったネブカデネザル (Nebuchadnezzar) は、ある夜、不思議な夢を見ました。その解釈を求められた預言者ダニエルはこう言いました。

「王よ、あなたは一つの大いなる像があなたの前に立っているのを見られた。その像は巨大で、光り輝いており、恐ろしい外観を持っていました。この像の頭は純金、胸と両腕は銀、腹と大腿は青銅、脛は鉄、足の一部は鉄と粘土が入り交じって出来ていました。あなたが見ていると、一つの石が人の手によらず切り出されて、その像の鉄と粘土の足を撃ち砕きました。こうして鉄と粘土と青銅と銀と金とは皆もろともに砕けて籾殻(もみがら)のようになり、風に吹き払われて跡形も無くなってしまいました。そして、その像を打った石は大きな山となり、全地に満ちました。今、私はその解き明かしを王の前に申し上げましょう」

この巨大な像は人類の歴史をあらわしており、金の頭で象徴されたバビロニア帝国の崩壊の後、次々と世界を治める国が変わって、最後に神の国が建てられる、とダニエルは説きました。しかしネブカデネザル王はこの解釈を受け入れることを拒み、27メートルもある巨大な黄金の像を国の平野に立て、この像を崇拝することを国民に強制します。

話は続き、もう一つの啓示夢をダニエルに解釈してもらった後、それでも改心しなかった王は、ついに神の罰を受けて獣の姿に変えられてしまいます。彼は国を追われ、牛のように草を食い、雨に晒されたその身の毛は鷲の羽のようになり、その爪は鳥の爪のようになりました。そして7年の試練の後、天を仰ぎ、許しを乞った時、元の姿に戻り、王座を取り返しました。

・・・・・

薔薇十字団の世界観に興味を持たれた方は、以下の関連サイトを参考してください。

バラ十字会宣言書

薔薇十字団の謎

薔薇十字団について

薔薇十字団に関する書評

錬金術について

ヘルメス思想の謎

グノーシス主義略説

ヘルメス学的カバラの知識

ルネサンスの舞台裏
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コメント

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6 ■にゃにゃさん

ヨフラとディアヴォラが結婚するに至った経緯に関しては情報が乏しいですが、愛というのは時々、恐怖(とは大げさかもしれませんが・・・)を伴うものなのかもしれませんね。

ここには心理学的な意味があると思うんです。自己意識の領域を超えた力に触れるとき、「自分」という概念の境界が崩れそうな瞬間、恐れを感じるではないかと。

これは人間関係においてだけではなく、宗教の基点となる超越的体験についても言えることだと思います。自己超越体験を表現するギリシャ語のエクスタシス (extasis) は、宗教的法悦,音楽や絵画などの芸術的創造活動への熱中,恋愛感情,大自然との一体感といった数多くの体験を含みますが、自己意識を超えた「何か途方もなく巨大な言い知れぬ力」に心身を委ねるということは、畏怖の感を及ぼすことが少なくないようです。

5 ■relight! さん

神秘主義のシンボリズムは、様々な解釈が可能であるからこそ、深い意味を包括することが出来たようです。それは古代文明の象形文字、漢字や数字といった、視覚的な形によってイデアを表す技術とつながりがあると思います。また、幾何学とも関連しているはずです。

これは個人的に関心を持っている題材です。世界中の伝統文化で用いられてきた幾何学的な装飾模様、今では占星学でしか見られない各惑星を表すシンボルが持つ意味、またゼロや十字といった単純な形に潜む真理・・・。

これは「思考と形の関係」または「視覚的言語」とも言い表すことが出来ると思います。

4 ■結婚

不可解なパニックに襲われ、その場を逃げ出さなければと焦った~そんな人と結婚したなんて、すごいですね。次回も楽しみにしています。

3 ■無題

 メーテルリンクが薔薇十字団に参加していたのですか。改めて青い鳥を読んでみたいと思います。

 ヘルメス思想のページを見てみましたが、ヘルメスの杖は本当にすごいですね。螺旋状に描かれた蛇とその中に通る一本のライン。
 ちょうど、4次元時空を表すモデルと同じ描き方をしています。ヘルメスの時代から、次元という概念をとらえていたのでしょうか。
 薔薇十字団参考になりました。ありがとう。

2 ■五色風さん

僕も同じ年頃のとき、好きな画家や作家との関係を通して、歴史に流れる神秘主義の伝統について学び、文献を貪り読みました。

数多くの著名な人々が、少なくとも間接的に薔薇十字団の思想に影響を受けたと言われています。

音楽家:モーツァルト、ドビュッシー、エリック・サティ
哲学者:フランシス・ベーコン、デカルト、ニュートン、スピノザ、ライブニッツ
政治家:ベンジャミン・フランクリン、トマスジェファーソン
神秘学者:ルドルフ・シュタイナー、スェーデンボル
作家:ウィリアム・ブレイク、WBイェイツ、ヴィクトル・ユゴー、ゲーテ
心理学者:カール・ユング

そう言えば、子供の頃に好きだった本「青い鳥」の著者、ベルギーのノーベル賞作家メーテルリンクが、薔薇十字団に加わっていたことを発見したときは、震撼しました。後に手に入れた英語版の本には、この子供向けのストーリーにあらわれるシンボリズムと、薔薇十字団の哲学との関連を浮かび上がらせる注釈がついていました。

1 ■参考になりました

凄いですね。この絵画は初めてでした。
参考文献も「お気に入り」に保存しました。
昔、二十歳前後に夢中になった分野です。今読むと、昔理解出来てなかった部分も発見出来ました。有難う。

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