長野が3年ぶり7度目の制覇!
勝因は高校生3人の快走

 

 風もなく、湿度は68%、スタート時の気温は7.5度、午後は10度ぐらいにあがった。長距離走にしてみれば、暑くも寒くもなく、ちょうどよかったことだろう。
 途中から気温が低下して大雪にみまわれた先週の全国女子駅伝にくらべれば、気象条件はめぐまれ、ランナーたちは走りやすかったのではあるまいか。

 今シーズン最後の駅伝である。
 最後の駅伝であるだけに、それゆえの紛れがあるというのがこの大会の特徴である。中学生(2人)、高校生(3人)、大学生・実業団(2人)の7人構成されるメンバー、大学生と実業団のメンバーの多くは、正月に目一杯のレースをしてきている。ベストの状態で出てきているわけでないので、あまり信用できないのである。
 中心をなすのは高校生である。高校生がどのような走りをするかが勝負の分かれ目になる。本大会はまさに日本長距離の未来を背負う高校生と中学生のためにある。全国大会に縁がなかったものの、実力のあるランナーが本大会には選抜されてくる。そんな彼らにとっては檜舞台なのである。
 兄弟3人でタスキ渡し。そんなことが可能になるのも本大会ならではのことである。たとえば山口県である。青学の田村和希(3年)、次兄・友佑(岩国工高3年)、末弟・友伸(玖珂中3年)の3兄弟を前半1~3区に投入してきておおきな話題になった。

 

 今回、候補の呼び声が高かったのは長野である。
 その長野の中谷雄飛をマークするかたちで1区は幕あけた。
 1㎞=3:03、スローの展開である。中谷をとりまくように、京都の清水、福岡の岩室天輝、大分の小野知大、群馬の西山和弥、滋賀の千葉直輝、広島の吉田圭太などの顔がみえる。1.4㎞で群馬の西山が集団を割って飛び出したが、3.3㎞では後続にのみこまで再びトップは大集団になる。
 3~4㎞は2:54とペースはあがったが4㎞をすぎても25チームぐらいがトップ集団をなしていた。4.5㎞では長野の中谷が先頭に出てひっぱりはじめ、京都の清水、群馬の西山、広島の吉田、三重の塩澤稀夕がは背後につけた。5㎞あたらいから縦長の展開になり,トップ集団は17~18人ぐらいになる。
 6㎞では西山、中谷、塩澤が前に出てくる。トップ集団はすこしづつばらけはじめおよそ15ぐらいにしぼられた。
 残り1㎞で西山がペースアップ、中谷が反応、残り600で西山が二段スパート、中谷、塩澤、清水が喰いさがった。最後に抜けだしたのは三重の塩澤、長野の中谷と京都の清水がつづいた。1区をおわって、トップは三重、3秒差で長野と京都、4秒遅れで滋賀、5秒遅れで群馬、6秒遅れで広島、8秒遅れで大阪と兵庫、11秒遅れで宮崎と静岡で、ここまでが10位、トップから25秒のあいだに20位までもがはいっていた。

 

 2区は中学生区間である。短い距離だが、いがいにここで差がつくケースも多い。
 京都の諸富湧が三重の大塚陸渡をかわしてトップに立ったが、そこへ群馬の伊井修司、滋賀の安原太陽が追ってきて4チームで先頭集団となる。激しい先陣あらそいがつづき、残り800で大塚と安原が脱け出すかにみえたが、残り500になって京都の諸富が巻き返してトップを奪い、そのまま中継所へ。
 2区を終わってトップに立ったのは京都、5秒遅れで群馬と滋賀、11秒遅れで兵庫、三重、14秒遅れで静岡とつづいた。長野は13秒差の7位、愛知は14秒差の7位、以下は千葉、福岡とつづき、ここまでが18秒差と大混戦となった。はるか後ろでは長﨑の林田洋翔が区間新の快走、14人抜きで41位から一気に27位までやってきた。

 

 3区にはいると群馬の戸田雅稀がトップを行く京都の川端千都を追い、2.7㎞で背後に迫り3.1㎞で先頭に立った。3位以降は大集団となり、愛知の山口浩勢、三重の山下流、千葉の浅岡満憲、長野の春日千速、福島の物江雄利、福岡の鬼塚翔太、静岡の梶原有高、新潟の服部弾馬がつけていた。
 5.7㎞で京都の川端は遅れ、群馬の戸田が単独トップに立つも3位集団もやってくる。6.1㎞の下り坂で、愛知の山口がペースアップ、京都の川端、群馬の戸田を抜いてひとたびトップに立つ。先頭は愛知、千葉、京都、三重、群馬、福岡、長野、新潟、静岡が2位集団をなすという大混戦となる。
 愛知がトップに立ち、3秒遅れで福岡と静岡、5秒遅れで京都、以下千葉、群馬、静岡とつづいた。
 
 4区と5区は高校生の区間である。
 4区にはいって福岡の森川弘康がトップを奪い、愛知の関口雄大、三重の田辺佑典、千葉の村上純大がつづき、少し離れて京都の渕田拓臣、長野の本間敬大がつづくという展開になった。トップ争いは千葉、福岡、愛知、三重の4チーム、激しいサバイバルとなり、2㎞で三重が遅れ、2.5㎞で愛知がこぼれてゆく。中盤からじりじりと追い上げてきたのは長野の本間敬大、残り700で福岡の森川がトップを奪ったが、残り500で千葉をとらえた長野の本間が一気にやってきて、残り300で福岡の森川もとらえて奪首に成功した。

 5区にはいると勢いに乗った長野、名取燎太が福岡の竹元亮太にリードを奪い、トップの座を確かなものにする。しかし2位の福岡との差は12秒、だが3位の京都との差は55秒とひろがり、6区以降は長野と福岡のマッチアップの様相となったのである。

 

 4区、5区の高校生区間で主導権をにぎった長野、6区はそのまま勢いにのるかと思いきや、福岡が踏ん張りをみせた。1㎞通過は長野の眞田稜生がトップ通過、だが福岡の杉彩文海が差を詰めてきた。残り700で眞田をとらえ、ラストスパートで振り切った。3位の京都以降との差は1分以上となり、アンカー結着にゆだねられたのである。

 

 6区の福岡は押川裕貴、長野は上野裕一郎、ともに実業団ランナーである。福岡の押川を追う長野の上野は本大会出場が10回目、22回ののうち10回、半分以上は顔を出していることになる。上野は1.9㎞ではやくも押川をとらえて先頭に立ってしまった。
 先頭争いと、もうひとつの見どころは3位争いであった。2㎞になると3位の京都に群馬、愛知、静岡が追い上げてきて3位集団となぅた。京都は青学の一色恭志、群馬は順天堂大の塩尻和也、愛知は山の神といあれたあの神野大地、静岡は青学の下田裕太、つまりOBを含めて青学3人と順天堂大のオリンピアンの争いとなったのである。
 トップ争いは上野が先頭に立ってからも、押川がしぶとく粘り、およそ7秒差ぐらいで推移、7㎞ぐらいから降りだした雨が雪にかわるなか、上野は決定的なリードを奪えないまま膠着状態で8㎞、10㎞とすすんだ。
 後ろでは入賞争いが熾烈となった。千葉、三重、秋田が8位集団をなしていたが、10㎞すぎで佐賀、新潟、兵庫が追いついてきた。
 トップ争いは12㎞過ぎで差がひろがって、最後は上野がそのまま押し切った。3位争いは10㎞すぎでスパーとした愛知の神野大地が一色以下を押さえて先輩の貫禄をしめすかたちとなった。もつれにもつれた8位入賞争いは新潟の畔上和弥がわずかに千葉の潰滝大記に競り勝った。

 

 優勝した長野は3年ぶり7度目の制覇である。中学生はいまひとつだったが3人の高校生の快走が流れを引き寄せた。最後は上野裕一郎がベテランの走りで優勝をきめたが、高校生3区間のうち区間賞が2つと区間2位、お膳立てをしたのはかれらであった。。
 2位の福岡は惜しかった。このチームも中学生、高校生が強かった。1区の出遅れがなかったなら、と惜しまれる。
 3位の愛知は昨年の覇者である。1区で19位と出遅れたが、2区の中学生で一気に8位まで追いあげ、3区の準エース区間では山口浩勢(愛三工業)が区間賞の力走、一気にトップまで押し上げてきて地力のあるところをみせた。
 4位の京都は2区でトップに立ち、注目の静岡もつねに上位をキープしての5位、期待通りの走りをみせたが、候補の一角といわれた群馬の6位は、いささか期待はずれというべきか。3区でトップに立つ布陣だったが、頼みの3区でむしろ順位を落としてしまったのは大誤算だったろう。

 本大会に出場した青学の一色恭志、下田裕太はそれぞれびわこマラソン、東京マラソンに出場する。アンカーでゴールテープを切った上野裕一郎もマラソンを視野においている。そしてあの神野大地も……。
 駅伝の延長にマラソンがあるのではない。マラソンの延長に駅伝があるのだ。今では少なくなってしまったマラソンを視野において駅伝を走っているランナーに喝采をおくりたい。

 

◇日時 2016年01月22日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:くもり 気温:07.5度 湿度:63% 風:西北西 1.1m(スタート)
◇長野(中谷雄飛、石川晃大、春日千速、本間敬大、名取燎太、眞田稜生、上野裕一郎)
◇公式サイト:http://www.hiroshima-ekiden.com/index.html
◇総合成績:http://www.hiroshima-ekiden.com/information/pdf/22nd/22nd_seiseki.pdf
◇NHKロードレース:http://www.nhk.or.jp/rr/race04/index4.html
◇区間記録:http://www.nhk.or.jp/rr/race04/divrank.html

 

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