青山学院大が3連覇、学生駅伝3冠を達成
分厚い布陣で往路復路ともに圧勝!

 

 青山学院大の学生駅伝3冠なるかどうか。
 出雲、全日本、箱根……。過去において学生駅伝3冠を達成したチームは3大学である。1990年の大東文化大学、2000年の順天堂大学、そして2010年の早稲田大学と奇しくも10年ごとに出ている。
 そして今シーズン
 出雲、全日本と圧倒的な強さで勝ちあがってきた青山学院大に千載一遇のチャンスがめぐってきたのである。箱根3連覇と学生3冠となれば史上初の快挙ということになる。
 むろん他の大学も黙ってはいない。なにより箱根だけには、ただならぬ執念をもやしている。全日本2位の早稲田、長い距離になれば強みを発揮する東洋大学、さらには駒澤大学などなど……。
 青学に1区から先をゆかせてはならじ……。東洋大学は第1区に学生長距離界のエース・服部弾馬を起用してきた。青学の出鼻を叩こうという作戦だ。奇襲というより東洋のこのチャレンジ精神に拍手を送りたい。観戦者のわれらにためにレースをおもしろくしてくれたのだから……。

 その注目の第1区、主導権はむろん服部弾馬が握っていた。弾馬がどのように動くか。すべてのランナーは弾馬の動静をみていて、自ら仕掛けては動こうとはしない。
 1㎞=3:04、3㎞通過が9:40、これじゃ女子のレースよりも遅い。超スローペースで、横長の集団ですすむ。5㎞で服部弾馬がたまりかねて一気にペースアップ、6㎞では東洋大の服部を先頭に、日本大の石川颯真、東海大の鬼塚翔太がつづき、後ろでは日本体育大の小松巧弥、駒澤大の西山雄介、青山学院大の梶谷瑠哉らが集団を形成る、この集団から早くも山梨学院大の伊藤淑記がこぼれてゆく。
 9㎞をすぎても、20チームがタテ長の集団をなしていた。弾馬がハイペースで一気にゆくことを期待していただけに意外な展開に観戦者としてはストレスがたまる。あるいは弾馬の調子がいまひとつだったのかもしれない。
 13㎞で服部と日本体育大の小松が前に出てきて、集団が縦長になるなか、関東学生連合の丸山竜也(専修大)と国士舘大の石井秀昂が集団からこぼれてゆき、15㎞をすぎても先頭集団には18チームもいた。どうやらラスト勝負に様相が強くなって、各ランナーは弾馬の顔色をみながらスパート合戦にそなえようという腹とよめた。
 レースが動いたのは20㎞すぎである。弾馬と駒澤の西山を先頭に早稲田の武田凛太郎、青山の梶谷、東海の鬼塚でなす集団のスピードが一気にあがった。そして残り1㎞、それまで自重していた弾馬が猛然とスパート、後ろからついてきたのは東海の鬼塚で、ほとんど同時にたすきをつないだ。3位は早稲田の武田、4位は青学の梶谷、5位は神奈川の山藤篤司、6位は駒澤の西山……。ここまでトップからわずか8秒である。青学をはじめ主力校はそれぞれ好位置をキープした。

 2区に入ると4位発進の青学・一色恭志がやってきて1.5㎞で早くも先頭を奪う。うしろは東洋大の山本修二、神奈川大の鈴木健吾。4位には東海大の關颯人、5位に早稲田大の永山博基、6位は駒澤大の工藤有生がつづいていた。
 先頭集団6人は安定したペースで距離をかさね、そのうしろからは順天堂の塩尻和也、帝京大の内田直斗、中央学院大の高砂大地らが7位集団で追ってくる。
 鈴木が關が集団を割ろうとするが、6人の集団はくずれない。権太坂で鈴木が先頭、關がここで遅れ始める。16㎞の下りで鈴木がペースアップ、駒澤の工藤、青学の一色がついてゆくも,早稲田の永山、東洋の山本が遅れた。後ろからは拓殖大のデレセが7位集団から抜けだして追ってくる。
 神奈川大の鈴木はその後も快走、青学の一色、駒澤の工藤との差をじりじりとひろげ、先頭でタスキリレー、1時間7分17秒は歴代7位の記録だった。青学の一色は38秒差の2位、3位は駒澤で55秒差、4位には拓殖大のデレサ、5位は帝京の内田、早稲田の永山は6位、7位は順天堂、8位は東洋とつづいた。

 3区はたんたんとレースがはこんだ。
 注目の青学の秋山雄飛はすぐには動かなかった。ゆっくりとトップをゆく神奈川の越川堅太を追ってゆく。その自信にみちた走りが印象深かかった。
 5~6㎞の遊行寺の坂にきて神奈川大・越川と青学・秋山との差は28秒である。後ろの。3位は駒澤大の下史典、4位は帝京大の浜川駿と早稲田大の平和真がならんで追っていた。 トップ神奈川と青学との差がつまりはじめたのは9㎞過ぎからだった。10㎞で20秒を切り、秋山はそこから一気にやってきた。浜須賀では6秒差となり、134号線に出た13㎞すぎで一気に越川をつかまえた。越川はしばらく踏ん張っていたが、14㎞過ぎから遅れはじめ、その差は少しずつひろがってゆく。越川は3位にあがってきた早稲田の平にも追い上げられ、20㎞ではその差10秒を切ってくる。
 奪首に成功した青学の秋山はこの区間を1時間3分3秒で駈け抜け2年連続の区間賞、2位には中継所直前で神奈川の越川をとらえた早稲田の平がとびこんできた。トップ青学との差は1:20。3位は神奈川大、4位は東洋大、5位は駒澤大、6位は帝京大。帝京大と青山学院大との差は1:51秒。7位は創価大、8位は日本大と大東文化大、10位は順天堂大とつづいた。ここまで神奈川大、創価大は大健闘である。

 待望のトップに立った青山学院大、昨年より2㎞距離が伸びた4区の森田歩希はゆっくりと逃げた。早稲田の鈴木洋平が懸命に追うのだが、その差はつまるようで詰まらない。
 後ろからは駒澤大の中谷圭佑と東洋大の櫻岡駿が4位集団で追ってくる。だが中谷のピッチがあがらない。櫻岡は3㎞すぎで神奈川の東瑞基をとらえて3位までやってくるが、駒澤の中谷は完全にブレーキー後続にもつぎつぎととらえられる。
 トップをゆく青学の森田はゆうゆうの独走、2位の早稲田の鈴木との差を終盤になってひろげ1:29の差を付けてタスキをつないだ。3位は東洋で1:52の差、帝京大が4位、5位には創価大、6位が順天堂大、7位は神奈川大、いずれもここまで大健闘。駒澤はエースの中谷のブレーキで順位を4つ落として6:18差の9位に沈んでしまった。

 青学の5区は貞永隆佑、5キロを16分8秒というゆったりしたペースで坂をのぼってゆく。追う早稲田の安井雄一との差は詰まらず、むしろ10㎞では1:50と開いてしまった。早稲田にとっては前半に追い切れなかったのが痛かった。安井は18㎞から猛追して、最後は33秒差までやってきただけに、もし前半で追って慌てさせていれば、おもしろい展開になっていただろうと惜しまれる。
 貞永かゆうゆうと逃げ切って、5時間33分45秒でゴール! 3年連続の往路優勝である。2位は早稲田大で青学との差は33秒。3位は順天堂大でトップと2:24差、4位は東洋大で2:40差。5位には鈴木洋平の快走で4つ順位を上げた駒澤大、以下は神奈川大、中央学院大、上武大、創価大、日本大ととつづいた。
 シード圏内突入の上武大、創価大は大健闘。だが今シーズンは復路でタイム差でのスタートがみとめられる10分以内に、11位以下の帝京大、法政大、日本体育大、拓殖大、東海大、山梨学院大までの16チームが入っており、10位の日大から16位の山梨学院大まではわずか、2:02というありさま。復路のシード権争いは例年にまして熾烈なものとなった。

 青学の往路優勝、早稲田との差は結果的にわずか33秒だが、復路のランナーの顔ぶれからみて、この時点ですでに総合優勝はきまったといっていい。2位の早稲田は往路に主力をほとんどすべて投入してしまっていた。東洋とは2:40、駒澤とは4:01もの差がついてしまっていた。

 それでも33秒差というのが気になったのか、青学は控えに回していた田村和希(7区)、下田裕太(8区)、安藤悠哉(10区)の3人を当日のメンバー変更で投入してきた。もし往路で5分以上の大差がついていれば、エントリー通りで押し切っていただろう。
 かくして復路の興味はもっぱらシード権争いにしぼられた。
 6区の山下り、青学は小野田勇次が堅実な走りで逃げ、早稲田の石田康幸に追わせず、2:08にその差をひろげた。後続は順位変動がめまぐるしく、13位発進の日本体育大学が秋山清仁の区間新記録の快走で一気に7位までやってくる。12位発進の法政も1年生・佐藤敏也の快走で8位まで押し上げてきた。5位以降13位の上武大まで3分弱となり、シード権争いはますます激しくなった。

 しかし7区のハプニングは青学にとっては想定外だったろう。
 駅伝は走るたびに区間賞という田村和希に異変が生じたのは16㎞すぎだった。突如、顔つきが苦しげにゆがみ,足もとがよろけだした。1㎞のペースが3:20を超え始めた。脱水状態が顕著、明らかにブレーキである。ひとたびが2:52まで開いた早稲田の井戸浩貫との差がつまりはじめる。
 田村はそれでも必死の形相で踏ん張った。だが早稲田の井戸のほうも追い切れなかった。その差は1:21まで詰まったものの、青学の逃走をゆるしてしまったのである。背後では東海大学の石橋安孝が区間賞の走りで順位を4つあげて11位、シード圏内目前までやってきていた。

 8区は 青山学院大の下田裕太が区間記録に遅れること16秒という好タイムでたすきリレー、2位の早稲田大との差を5:32秒として独走態勢をきずいてしまった。3位の東洋大は6:38秒遅れ、4位の神奈川大は6:44遅れ、シード権争いは9位の駒澤大と10位の東海大は16秒差、東海大と11位の帝京大とは2秒差、3チームの競り合いがつづいた。

 青山はこの8区で後続にとどめを刺した感じで、9区は池田生成、10区は安藤悠哉と堅実につないで堂々の3連覇、最後はチームをまとめてきたキャプテンが学生3冠のゴールにとびこんでいった。

 終わってみれば往路、復路ともに青山学院大の圧勝である。往路では2区のエース一色の調子がいまひとつ、復路では7区田村のブレーキがあったものの、ひとつやふたつの紛れがあってもびくともしない。選手層がいやがうえにも厚く、これぞ総合力の勝利といえるだろう。

 2位の東洋大は最後に早稲田を交わして2位にくいこんだ。果敢にチャレンジして玉砕したという感じだが、1区に弾馬を配して積極的に仕掛けるなど、その積極的な姿勢は評価されるべきだろう。

 3位の早稲田は往路に主力をあつめて往路優勝をもくろんだ。やはり玉砕というべきでその結果、復路が手薄になって9位。総合では3位に終わったが、まあ、しかたがないところか。

 4位の順天堂大、5区の神奈川大は大健闘である。ともに箱根を制覇したことのあるチームだがひさしぶりに上位を賑合わせてくれた。

 神奈川大と同じく予選会からあがってきた法政大もひさしぶりに8位でシード権を獲得した。往路5位はみごとだった。

 期待された東海大は1年生主力の往路でみごとにずっこけた。復路では3年生、4年生が踏ん張って4位にもぐりこみ、みごと総合10位で最後のシード権をもぎとった。惨敗して苦杯をなめた1年生たち、いずれも潜在能力のあるランナーたちだから、その悔しさを生かせば、きっと驚異の的となること必至である。

 期待を裏ぎったのは9位の駒澤大、かろうじてシードはたもったものの、往路も復路もちぐはぐな戦いぶりで最後まで浮上できなかった。

 山梨学院大はなんと17位、落ちるところまで落ちてしまった。あのエースのニャイロもなんと区間9位というありさま、これでは戦えない。戦う以前の問題があったのだろう。

 すでにして来シーズンの戦いははじまっているが、青山学院大の選手層の厚さは図抜けている。来年もやはり青学中心にまわってゆくのだろう。4連覇に待ったをかけるチームが見当たらない。なんとか、「伸び代」がありそうな東海大あたりに期待したいと思うのだが、どんなものだろう。旭化成の例にならって奮起してほしい。

◇ 日時 2017年1月2~3日(祝) :午前8時00分 スタート
◇ コース: 東京・読売新聞東京本社前~箱根・芦ノ湖間を往路5区間(108.0Km)、復路5区間(109.9Km)の合計10区間(217.9km)
◇天気:往路 晴れ 気温:5.0度 湿度:50% 風:北1m(スタート前)
 :復路 晴れ 気温:0.0度 湿度:% 風:西北西m
◇青山学院大学(梶谷瑠哉、一色恭志、秋山雄飛、森田歩希、貞永隆祐、小野田勇次、田村和希、下田裕太、池田生成、中村祐紀、安藤悠哉)
◇公式サイト:http://www.hakone-ekiden.jp/
◇総合成績:http://file.hakone-ekiden.jp/pdf/93_Record_all.pdf
 

 

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