旭化成、若い力で古豪復活
後半勝負で18年ぶり22度目の制覇!

 駅伝が冬のビッグな観戦スポーツになったのはいつのころからか。テレビでライブ中継されるようになったときからであろう。
 マラソンのテレビ生中継は物心つくころからおこなわれていたが、駅伝のテレビライブがはじまったのは、それほど昔ではない。
 1979年の高校駅伝(NHK)が最初だから、およそ38年まえからだということになる。続いては1983年の全国女子駅伝(NHK)である。日本テレビの箱根駅伝は1987年、TBSの全日本実業団駅伝は1988年の第32回大会からである。
 駅伝のテレビ放映ビッグ4の相乗効果により、いまや駅伝ライブは高視聴率番組になるとともに、良くも悪くも陸上競技としてもカラバコス化していったのである。

 ビッグ4の一角・全日本実業団駅伝がテレビ放映されるようになったのは第32回からである。奇しくもコースが滋賀県から群馬県に変更され、開催日も1月1日となって、ニューイヤー駅伝と称せられるようになった。伊勢や彦根で開催されていたとき、さらに群馬開催となっても全長84~99㎞だった。7区間全長100㎞の現在のコースになったのは2001年の第45回大会からである。

 古豪・旭化成がいつから優勝から遠ざかっているのか。調べていると1999年の3連覇を最後に優勝戦線から姿を消している。つまり現在のコースになってからは、いちども制覇がないということになる。

 過去62回のうち21回優勝……。つまり旭化成は3回に1回、優勝チームとして名をなしてきた。だが新世紀になってから、コニカミノルタ、富士通、中国電力、日清食品などに名をなさしめてきた。もはや忘れられた存在におとしめられた感ありの昨今だったが、今回、18年ぶりに返り咲き、古豪がみごとに復活を果たしたのである。
 
 本大会は7区間だが、1区~3区までを、ひとつの区間と考えたほうが分かりやすいだろう。1区は12.3㎞、2区は8.3㎞、3区は13.6㎞だが、2区は外国人特区である。唯一、外国人が走ってもよろしいという区間になっている。1区の順位は2区の外国人同士の競り合いでガラガラポンとなり3区を終わったところで、ようやくレースの流れがみえてくる。本大会はそんな構図である。
 3区を終わった時点にどのポジションをキープしているかが、レースの行方を占う指標になるようである。

 第1区のペースはどんなふうになるのか。もっぱらの興味はそこにあった。
 3連覇を狙うトヨタ自動車は藤本拓、コニカミノルタは設楽啓太、Hondaは田口雅也、旭化成はリオ五輪日本代表の村山紘太、日清食品は好調の戸田雅希など、スピードランナーがそろった。
 1㎞=2:50の入りで旭化成の村山紘太が先頭に出て集団を引っ張り、2㎞では縦長になる。後ろにつけたのは藤本拓、田口雅也、中国電力の山崎亮平など。
 5㎞は村山が先頭で14:25で通過、日清食品の戸田雅稀、カネボウの文元慧らも前に出てくる。
 村山は終始、積極的に動くのだが脱け出すことができないまま、8㎞になって藤本、田口とともに並走状態となる。
 10㎞で愛三工業の山口浩勢がスパートをかけて集団を割ったが、藤本、田口らがすぐに追いついてしまう。11㎞では安川電機の古賀淳紫が先頭にとびだし、山口がこれを追いかけてゆく。
 レースが動いたのは12.3㎞だった。先頭集団は10人前後になったが、機をうかがっていたのか、ここで日清食品の戸田が一気に抜けだして、そのまま中継点になだれこんでいった。
 2位は1秒遅れで、カネボウの文元慧、3位は2秒遅れで九電工の東雄馬、トヨタ自動車の藤本は9秒遅れの10位、、Hondaの田口も9秒遅れの11位、前半ひっぱった旭化成の村山紘太は11秒遅れの13位、コニカミノルタの設楽啓太は32秒遅れの28位とブレーキー気味におわった。

 2区の外国人特区で目立ったのは21位でたすきをうけたDeNAのビダン・カロキである。6㎞ですでに17人抜き、4位にあがり、先頭をゆく上がる。先頭をゆく九電工のポール・タヌイ、日立物流のジョナサン・ディク、日清食品グループのバルソトン・レオナルドとの差をつめてゆく。
 疾走する黒人ランナーたちにしばしみとれているうちに、誰が誰なのか分からなくなってしまった。
 7㎞すぎでトップ集団は割れ、タヌイとディクが飛び出し、レオナルドが遅れ始める。そのレオナルドをカロキがとらえる。
 かくしてガラガラポンに2区では日立物流のディク、九電工のタヌイの順でタスキをつなぎ、3位には18人抜きのDeNAのカロキとつづき、トヨタ自動車は1:20遅れの23位、コニカミノルタは41秒遅れの12位、日本人ランナー・鎧坂哲哉を起用した旭化成は1:11秒遅れの20位というハンディーを背負う結果となった。


 3区はめまぐるしかった。
 トップを行く日立物流の牟田祐樹、2位は九電工・濵口隆幸、3位でたすきをもらったDeNAの上野裕一郎があっというまに差を詰めてくる。濵口に追いつき、4㎞では牟田をとらえて先頭に立ってしまう。上野はまさに快走、後続との差をひろげるなかで、7㎞すぎ、23位発進のトヨタ自動車の大石港与が10位まで順位を上げる。
 3位争いは日清食品グループの小野と愛三工業の石川、5位集団はHondaの山中秀仁、ヤクルトの小椋裕介ら6人、そのなかからコニカミノルタの菊地賢人が前に出てくる。11㎞になってトヨタ自動車の大石が3位集団に追いつき、一気にすりぬけ、2位の牟田に肉薄する。
 トップ上野の勢いは衰えず、2位の日立物流の牟田に59秒の差をつけて中継所へ、4秒差でトヨタ自動車の大石、6秒差で4位はコニカミノルタ、1分6秒差で5位HONDA、1分9秒差で6位日清食品、旭化成は大六野秀畝が区間3位の走りで1分12秒差の11位までやってきた。このあたりまでが圏内か。いよいよ4区からの優勝戦線のヨーイドンが始まるのである。

 4区は最長区(22㎞)だけに、やはり最も見どころが多かった。
 先頭はDeNAの高木登志夫、トヨタ自動車の服部勇馬、コニカミノルタの神野大地、日立物流の日下佳祐が2位グループで追い、すぐ後ろにHondaの設楽悠太が追ってくる。2.5㎞で設楽が追いつき、服部とふたりで抜け出して、トップの高木を追い始める。
 
 後ろからは旭化成の市田孝が5㎞で6位グループのトヨタ自動車九州の今井正人、日清食品の村澤明伸、MHPSの井上大仁に追いつき、するすると前に出てゆく。市田の軽快な走りがひときわ眼を惹いた。
 12㎞で2位集団の服部勇馬が設楽悠太との差をひろげトップの高木を追いはじめ、その差がどんどん縮まってゆく。遅れた設楽悠を旭化成の市田とコニカの神野が13㎞で追い抜いてゆく。設楽悠は失速してブレーキ状態となって落ちていった。
 トップをゆくDeNAの高木はしぶとかった。19㎞あたりから二の足をつかって、追ってくる服部勇を突っ放した。後ろでは4位の神野に今井、村澤、井上が追いつき4位集団で3位の市田を追い始める。21㎞になって今井と井上が3位の市田に追いついた。
 後続の激闘を尻目にDeNAの高木はトップをまもり、3秒差で2位はトヨタ自動車の服部勇、11秒差で3位はMHPの井上、14秒差でトヨタ自動車の今井、17秒差で旭化成の市田、22秒差で7位は日清食品の村澤、38秒遅れで日清食品の神野とつづいた。
 優勝争いはこの上位7チームにしぼられ、5区以降にゆだねられたのである。

 5区で積極的な動きをみせたのは旭化成の村山謙太だった。
 2位発進のトヨタ自動車の早川翼がすぐにDeNAの永井秀篤をとらえたが、後ろからは3位争いを演じながら旭化成の村山謙太が、MHPSの松村康平、トヨタ自動車九州の押川裕貴をひきつれてあがってくる。3位グループは3㎞すぎで早くも永井をとらえて2位グループとなる。さらに4㎞ではトップの早川もとらえてしまう。
 集団の主導権をにぎっていたのは村山だった。4区で区間賞をもぎとった市田孝の勢いをひきついだかのようにトップをうばうと、9㎞でスパート、引き離せないとみると、ひとたび自重して、11㎞で再びスパートをかけた。押川が粘ってついてきたが、15㎞でまたしてもスパートをかけ、そのまま押し切った。
 村山の区間賞で旭化成は待望のトップをうばい、7秒差でトヨタ自動車九州、24秒差でトヨタ自動車、コニカミノルタには45秒差をつけた。一気に流れに乗った。

 4区~5区で一気に流れに乗った旭化成、その好リズムは6区にも引き継がれ、市田孝の弟・宏が快走した。2㎞ではひとたびトヨタ自動車九州の奥野翔弥に追いつかれたものの、安定した走りで3㎞すぎで突き放して、独走状態にもちこんだ。終わってみれば区間新記録……である。
 旭化成はこの市田宏の快走で3連覇をねらうトヨタ自動車に58秒差、3位のトヨタ自動車九州以下に2分以上の差をつけ、勝利をほぼ決定づけたのである。最後の総仕上げはマラソンランナーでベテランの佐々木悟、安定した手堅い走りで、18年ぶり制覇のゴールへとびこんでいった。

 旭化成は若い力が爆発した。村山兄弟、市田兄弟、鎧坂哲哉、大六野秀畝……、いずれも箱根駅伝のスターたちである。陣容的にみて、ほんとうは昨年優勝しても不思議はなかった。7位に甘んじてのは若さが裏目に出たのだろう。かれらがたがいに競い合って、ようやくホンモノになってきた。とくに今回はツインの村山兄弟、市田兄弟がフルに力を発揮した。とくに市田兄弟と村山謙太の自信にみちた面立ちが印象深かった。
 18年ぶり22度目の制覇、古豪復活ははからずも若い力によってもたらされた。外国人がいないチームであることも清々しいものがある。
 2位のトヨタ自動車は3連覇を逃したが、ミスがあったわけでもない。旭化成がその上をいったということだろう。ランナーたちはそれぞれ力を発揮している。強いてあげれば2区の外国人の調子がいまひとつで勢いがつかなかった。
 3位のトヨタ自動車九州は前回につづいて3位、4位のMHPSとともに健闘したといっていいだろう。
 コニカミノルタの5位は1区設楽啓太のブレーキがすべて。Hondaは前半で流れに乗れず、ちぐはぐな闘い終始、11位はしかたのないところだろう。
 それにしても……
 優勝した旭化成は選手層がいかにも厚そうで、しばらくは旭化成の時代がつづくのかもしれない。


◇ 日時 2017年 1月 1日(金=祝) 9時00分 スタート
◇ 気象 天気:快晴 気温5.7 湿度61% 西北西0.8m
◇ コース:群馬県庁スタート~高崎市役所~伊勢崎市役所~太田市尾島総合支所~太田市役所~桐生市役所~JA赤堀町~群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇旭化成(村山鉱太、鎧坂哲哉、大六野秀畝、市田孝、村山謙太、市田宏、佐々木悟)

▽TBS公式サイト:http://www.tbs.co.jp/newyearekiden/
▽総合成績:http://gold.jaic.org/jaic/res2017/nyeki/pcsp/61results.pdf

 

 

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