立命館のリベンジ成る!
4年生の4人が踏ん張った!

 

 7区間43.8㎞
 別名:富士山駅伝とよばれる本大会は女子の数ある駅伝のなかで最も総距離が長い。最長区間も5区の10.9㎞であり、全日本と肩をならべる。高低差のある区間が多く、とくに最終7区は166mもの高低差があるというきびしいコース設定がなされている。スピードとスタミナが問われる苛酷な大会である。
 第4回をかぞえる本大会、これまで立命館が3連覇しているが、今シーズンは先の全日本で松山大学に不覚をとり、さらに名城大の台頭もあり、勝負のゆくえはまさに混沌、それゆえ例年になく目が離せない大会となった。

 全日本を制した松山大が余勢を駆って立命館大を退けるか。それともエリート集団の立命館がプライドにかけてリベンジを果たすか。近年にない興趣つきないレースだった。
 レースの終わったいま、顧みると、いかにもサプライズのおおい大会だったな、という感ありである。
 第1のサプライズは前日発表の区間オーダーである。
 立命館のオーダーをみて、「なに!」と思わず声を上げそうになった。準エース格というべき関紅葉、太田琴菜の名前がない。さらに1区で来ると思われた4年生エースの大森菜月が最短区間の3区に回っている。最長区の5区だろうと思われた菅野七虹が2区にはいっている。ようするに立命館の2本柱がともにベストの状態ではないということだ。結果、5区にはそれほど長い距離に実績のない和田優香里、急坂のある難所の7区には3年生でありながら、いままで主要なレースに登場していない松本彩花を配するというありさまである。
 松山大のほうは全日本で活躍した緒方美咲が外れたぐらいで、ほぼベストの顔ぶれである。
 5区から7区までの顔ぶれを比較してみると、明らかに松山が優勢、立命館の劣勢は否めないとみた。1区から4区までに立命館がリードしても後半は松山に逆転されるだろう。松山の圧勝か。そんなふうに思われた。

 第2のサプライズは第1区、松山大:高見澤安珠の飛び出しである。
 全日本を制しても、まだまだ挑戦者の姿勢を貫くというのか。松山大は積極的に動いた。スタートして松山大の高見澤が1㎞で集団を割った。1㎞=3:15のペースなら、まずまずだが、高見澤の果敢な走りで1㎞すぎで速くもタテ長の展開になったのである。
 前半でリードを奪おうという立命館の作戦を読んだうえで、その出鼻を叩こうという腹づもりだったのだろうか。立命館の1区は1年生にして5000mで学生最速の佐藤成葉である。相手を経験の浅い1年生とみて虚を突いて出たというわけか。
 飛び出した高見澤に東日本選抜の出水田真紀が反応、立命館も黙ってはいない。2㎞をすぎたあたりで佐藤が追い始めた。佐藤は残り1㎞で一気にやってきた。かくしてレースは早くも立命館と松山のマッチアップの様相になる。最後は3000障害で鍛えた高見澤のスタミナが生きたのだろう。高見澤は粘り勝って6秒先んじた。
 1区を終わったところで、トップは松山、2位は6秒差で立命館、3位は17秒差で城西と大健闘、京産と名城は25秒以上の遅れで5位、6位と出遅れた。


 立命館と松山はマッチアップ、2区もびっしりと肩をならべる並走がつづいた。だが今シーズンの菅野七虹はいまひとつキレがない。松山の高見沢里歩に煽られぎみで、残り1㎞で高見沢が前に出ると、もう,追いすがる勢いはなかった。菅野はそれでもけんめいに粘り、なんとか12秒差でタスキをつないだ。
 1区で先手をとり、2区では追いすがられたが突き放してリードをひろげた。流れは完全に松山に傾きそうだった。そんな負の連鎖をくいとめたのが菅野と同じ4年生・大森菜月である。
 エースといわれながら繋ぎの区間にしか出られないもどかしさがあっただろうが、松山の藤原あかねをじりじりと追う上げる。焦らず逸らずの走りはみごと、さすがエースである。残り200で背後につくと、あと100mで逆転、トップでタスキを4区の池内彩乃につないだのである。
 松山の4区・古谷奏はすぐにトップを奪うも、池内は背後にピタとへばりついて離れない。心理的プレッシャーをかけるところ、いかにも老獪で4年生らしい。池内は勝負所の2~3㎞を3:20とペースをあげると、古谷はじりじりと置いてゆかれた。前半は押さえて後半は突きはなすという池内の走りが光った。大森につづいて池内の連続区間賞で立命館はここで松山に15秒差で単独トップに立った。

 第3のサプライズは最長区間の第5区である。
 松山の5区は中原海鈴、先の全日本では5区で奪首、初制覇の立役者になった。今回も眼をゆく立命館の和田優香里との差はわずか15秒である。力の比較でも中原に分のある展開である。
 中原は独特の前傾姿勢、虎視眈々と獲物を狙う豹とおぼしき雰囲気で和田をおいかける。だが……。その差が詰まらない。後半勝負かと思われたが、逆に、じりじりとその差がひろがりはじめたのである。
 中原の異変を察知したとき、名城の赤坂よもぎが後ろから猛然とやってきた。中原は7㎞で顔がゆがみ、完全にブレーキ状態。脱水症状なのか。8㎞では赤坂につかまってしまい、後続の大阪学院の新井、京産の棚池穂乃香にもとらえられ、9㎞すぎからは夢遊病者のようにさまよいながら……。
 中原の思いがけないブレーキによって立命館の和田は区間7位ながら、トップを独走、4連覇の道筋をひらいたのである。

 2区、3区、4区の4年生で流れを変え、5区で2位にやってきた名城に41秒のアドバンテージを得た立命館、6区も4年生である。園田聖子が軽快に逃げて区間2位、2位の名城との差を64秒とひろげてしまった。
 7区アンカーの立命館は駅伝初登場の松本彩花、トップをゆきながらも、最少からハイペースで突っ込んでゆく。そんな攻めの走りが印象に残った。惜しくも区間賞はのがしたものの、追ってくる名城の玉城かんなを完全に突っ放して、笑顔でゴールにとびこんでいった。

 立命館はこれで4連覇、みごとに全日本のリベンジを果たした。ベストメンバーが組めず、主力が故障をかかえていても、代わりに出てきたランナーがみんな、ちゃんとそのアナをうめる。今回は池内、園田、松本、いままで脇役に甘んじていたランナーが輝きを放った。いかにも層の厚いチームだな。

 2位の名城は今回も大健闘である。松山の自壊によってめぐまれた面もあるが、着実に力をつけており、来年以降も3強の一角を占めるだろう。

 松山も立命と同じく区間賞3つ、中原のブレーキがなければ最後まで立命とはげしく競り合っていただろう。だが中原中心のチームなのだから、彼女で負けたのならいたしかたがなかろう。どこかで大きな紛れが出る。そのあたりが、まだチームとして未熟なのであろう。

 4連覇の立命館は大森、菅野、池内、園田など今回の主力をなしたランナーがこぞって卒業する。松山も中原、上原など4年生がいなくなる。ところが名城は今回のメンバー全員が残る。今年以上に驚異の存在になりそうだ。
 いずれにしても来年もこの上位3校、今回以上に激しくしのぎを削ることになりそうだ。

 

◇ 日時 2016年 12月30日(金) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:07.2度 湿度:56% 風:北西1.7m
◇立命館大学(佐藤成葉、菅野七虹、大森菜月、池内彩乃、和田優香里、園田聖子、松本彩花)
◇公式サイト:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/index.html
◇結果:http://www.fujisan-joshiekiden.jp/press/result.pdf

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