前半・中盤の攻防で勝負が決した!
女子は薫英2年ぶり2度目、男子は倉敷が初制覇

 

数ある駅伝のなかで伝統あるレースを三つあげろといわれればどうなるか。箱根駅伝、、全日本実業団駅伝、それから全国高校駅伝であろう。箱根駅伝は今シーズンで93回、実業団は61回、高校駅伝は男子の場合、今回で67回をかぞえ、実業団駅伝よりも歴史がある大会なのである。
京都でおこなわれるようになってすでに50年をこえ、今ではすっかり師走京都の風物詩となっている。同一コースで開催される大会としても、箱根につづく歴史を誇っている。 京都も街を東へ、そして北へと縦断するコースを、観戦者のぼくたちも選手たちとともに走っている。西京極競技場から五条通り、西大路通り、北大路通り、堀川通り、紫明通りから烏丸通りに出て、わが母校の前を駈けぬけ、京都御苑を舐めるように丸太町に出て、鴨川を渡り、東大路通りから吉田をぬけ白川通りを北へ北へ宝ヶ池へ……。毎年いちど、師走の京都の街なみを観られるのがなんとも楽しいのである。

昨年は京都開催50周年の記念大会でもりあがり、広島の世羅が男女ともに制覇、アベック優勝でも話題をさらった。
男子の世羅は2時間1分18秒という、とてつもない大会新記録、まさに「神って」いるというほかないタイムで、「神の領域」ともよばれた仙台育英(宮城)の2時間1分32秒を11年ぶりに更新して注目をあつめた。
高校駅伝も高速化の流れがとまらない。いったいどこまでゆくのか。男女ともに興趣つきない、みどころいっぱいの大会となった。

午前中におこなわれた高校女子、今年は混戦もようだった。予選タイムからゆくと、鹿児島の神村学園が抜けた存在、兵庫の西脇工がつづき、あとは愛知の豊川、熊本の信愛、大坂の薫英女学院、福岡の筑紫女学院、長野の長野東……。予選タイムはひとつの目安にすぎないが、このあたりが要注目チームであった。。
昨年は最後の最後までもつれ,アンカー勝負で結着したが、今年はあっけなかった。意外や意外というべきか。2区・3区で大勢が決してしまうかたちになったのである。

女子・注目の1区、スタート直後に筑紫女学園の花田咲絵が集団のなかで転倒するというハプニングもあり、波乱含みの幕あけとなった。
1㎞=3:15というゆったりとした入りで、西脇工の田中希実、諫早の森林祐希、山梨学院の小笠原朱里、土岐商の加藤優果、神村学園の中島愛華が前に出てくるも、大集団ですすむ。
中間点が9:42だから、各選手とも自重ぎみだったが、中間点をすぎて西脇工の田中がスパート、山梨の小笠原がつづき、世羅の大西響、成田の加世田李花、長野の和田有菜がくわわって5人の集団となった。
仕掛けたのは山梨の小笠原である。4.6㎞でとびだした。のぼり坂で1㎞=3:09と一気にペースアップ、世羅の大西が反応して2人がとびだした。残り700で大西がトップを奪ったが後ろから長野東の和田が猛追してきた。残り500で先頭に立ち、そのまま中継所にとびこんでいった。
1区を終わってトップは長野東、5秒遅れで世羅、3位は山梨で15秒遅れ、4位は西脇工で17秒遅れ、5位以降は成田、筑紫女学園、諫早、土岐商で、ここまで28秒遅れ、候補の一角・常磐は32秒遅れの9位、薫英は37秒遅れの10位、神村学園は38秒差の11位と遅れをとった。

流れが一変したのは2区(4.1㎞)であった。好発進の長野東の松澤綾音が独走態勢にもちこんだと思いきや、後ろから10位でタスキをうけた薫英の高松智美ムセンビが猛追、1.5㎞ですでに7人抜き、2.2㎞では2位までやってくる。紫明通りから烏丸通りにさしかかるあたりで、長野東の松澤をとらえ、残り400mでトップをうばってしまったのである。
3区にはいって薫英の村尾綾香、長野東の高安結衣が並走、はげしいつばぜり合いがつづいたが、2区高松の圧巻の走りで勢いづいた薫英が強かった。村尾は1.5㎞で高安をふりきってしまう。
3区・村尾の区間賞で流れをつかんだ薫英はリズムよく4区の中島紗弥も区間賞、追ってくる長野東を寄せ付けず独走状態にもちこんでしまった。
候補とみられていた西脇工は3区を終わって55秒差の4位、神村学園は61秒差の5位と伸びを欠いた。これでは薫英の思うまま、やすやすと逃がして優勝させてしまったのである。
薫英女学院は2年ぶり2度目の制覇、2区以降は危なげない闘いぶりだった。1区の嵯峨山はやや出遅れたが、2区の高松が期待通りの走りでリカバー、3区・4区の1・2年生が区間賞でとどめを刺した。「100点満点のレース」と言い切った安田監督のことばがすべてを象徴していよう。
2位と3位には西脇工と神村学園がやってきた。最終区で地力を発揮したかたちだが、優勝争いしてのものではないので、まったく評価できない。
4位・筑紫学園はともかく、健闘したのは5位・成田と6位の長野東であろう。成田は序盤から上位をキープ、3~4区では3位をキープしていた。
長野東は1区でトップに立ち、その後も4区まで2位をキープ、終始、優勝した薫英とはげしくトップを争っていた。最終5区で力つきたが、薫英を苦しめたのは西脇工でも、神村学園でもなく、この長野東であったことを特記しておきたい。

 

男子も前半の攻防がおもしろかった。1区から3区までは実に見応えがあった。
とくに1区の攻防はめまぐるしかった。1㎞=2:51、その後も2:55、2:50とまずまずのペース、九州学院の西田壮志、大分東明の伊東颯太、大牟田の竹元亮太、武蔵越生の戸口豪琉、洛南の清水颯大らがひっぱり、4㎞すぎても26~7人がひとかたまりになっていた。
中間点でも25チームほどの集団だったが、世羅の吉田圭太がなんとここで遅れ始めた。 6㎞でトップ集団はおよそ16人、九州学院の西田がひっぱっていたが、7㎞になって佐久長聖の名取燎太が前に出てきて、西田、伊賀白鳳の塩澤稀夕、西脇工の加藤淳、秋田工の斎藤掠ら11人がつづく。
8㎞手前で塩澤がとびだし、西田、名取、國學院久我山の菅原伊織がつづき、先頭争いがはげしくなるなか、区間賞は塩澤、名取、西田の争いとなる。
残り1㎞で塩澤がスパート、勝負あったかと思いきや、紫明通りにはいって名取がスパート、のこり200mで塩澤をふりきった。
1区を終わって、佐久長聖がトップ、5秒差で伊賀白鳳、九州学院がつづき、以下は國學院久我山、倉敷、西脇工、洛南、秋田工、山梨学院、鳥栖工までが30秒以内と好位置を切したが、候補の一角で連覇をもくろむ世羅はなんと71秒差の19位と大きく出遅れて圏外に去った。

2区にはいるとトップをゆく佐久長聖の松崎咲人に3位からやってきた九州学院の亀鷹雄輝が1㎞で追いつき並走、だが松崎がなんとかもちこたえて、3区の準エース区間へ。佐久長聖の中谷雄飛は巧走であった。
後ろから留学生たちがやってくるにちがいない。追いつけれても抜かせない。最初からそんな作戦がほのみえた。
倉敷が3区で勝負をかけたのは予定通りだったろう。21秒遅れの4位でタスキをうけた留学生ムアウラ、じりじりと追いすがり、6.2㎞で松崎の背後についた。そこから中谷がしぶとかった。
後ろからは1区で遅れをとった世羅が留学生デビット・グレーの快走で11人抜き、一気に4位まで押し上げてくる。
佐久長聖と倉敷のトップ争いは熾烈をきわめた。7㎞で追いつかれた中谷が猛然とスパート、だがムアウラは離れない。残り500mでこんどはムアウラがスパート、だが中谷はくらいつき、ラスト300mで中谷がスパート、思惑通りにムアウラを振り切った。
3区を終わってトップは佐久長聖、2秒遅れで倉敷、52秒遅れで3位は大分東明、世羅は4位までやってきたが、その差は1分15秒とひらいており、レースは佐久長聖と倉敷のマッチアップの様相となった。4区以降のメンバの比較では3区をしのいだ佐久長聖に分があるように思われた。
だが、駅伝は走ってみなければわからない。
4区は佐久長聖の本間敬大、倉敷の前田舜平のガチンコ勝負になった。両者肩をならべての叩き合い、だが前田の勝ちたいという意識が本間を圧したというべきか。1.5㎞すぎの跨線橋のうえで前田が前に出る。本間はくいさがるが勢いは前田のほうにある。その差はじりじいとひろがってゆく。4,5㎞すぎで8秒差、その後も前田の勢いはおとろえることはなかった。
独り旅の前田は終わってみれば区間賞の快走、2位の佐久長聖のとの差は1分04秒とひらいてしまい、勝負の流れは一気に倉敷の手に落ちた。
5区以降は倉敷の独走に終始した。佐久長聖は追っても追ってもとどかない。1分前後の差がつまるようでつまらないのである。佐久長聖が追い切れないなかで、倉敷は独り旅でゆうゆうとタスキをゴールまで運んでいった。

 初優勝の倉敷は予選記録トップの実力を本戦でみごとに実証してみせた。
 2位は佐久長聖、3位は九州学院、4位は大分東明、5位は伊賀白鴎、6位は西脇工、7位は世羅、8位は洛南……、終わってみれば下馬評が高かったチームがみごとに連なっている。
 倉敷の優勝タイムは2時間02分13秒、歴代5位の記録である。気象条件にめぐまれたとはいえ、なんと14位の浜松商までが2時間06分台である。
 科学的なトレーニングの導入で、高速化の流れはとまらない。だが全般的にレベルアップされたというよりも、個々の実力が均質化されただけと思えてならない。将来、日本を代表する逸材、世界で闘えそうな原石がみつからないのである。これはいったい、どういうことなのだろう。

 

◇ 日時 2015年 12月25日(日) 女子:午前10時20分 男子:12時30分 スタート
◇ コース:京都市・西京極競技場発着 男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:10.0度 湿度:62% 風:南西1.3m (正午)晴れ 気温:13.0度 湿度::45% 風:北:2.2m
◇ 女子:薫英女学院(嵯峨山佳菜未、高松智美ムセンビ、村尾綾香、中島紗綾弥、竹内ひかり)
◇ 男子:倉敷(畝拓夢、若林大輝、ジョエル・ムアウラ、前田舜平、畝歩夢、北野太翔、名合治紀)
◇公式サイト:http://www.koukouekiden.jp/
◇結果詳細:(男子)http://bulletin.koukouekiden.jp/bulletin/2016result_male.pdf
(女子)http://bulletin.koukouekiden.jp/bulletin/2016result_female.pdf

 

 

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