青山学院大が初制覇!
最終8区でエースが逆転トップ

 

 逃げる早稲田、追う青山……
 勝負のゆくえは最終区の攻防にゆだねられた。7区を終わってトップが早稲田で2位は青学、その差は49秒、3位以降とは3分ちかい差があり、優勝は完全にこの2校にしぼられていた。
 最終区は19.7㎞の最長区である。逃げる早稲田は3年生の安井雄一、追う青山は4年生のエース・一色恭志である。一色は2月の東京マラソンで日本人2位、日本選手権5000mでは学生トップの4位となるなど学生長距離界のトップ。両者の10000mのベストを比較しても44秒ぐらいの差がある。距離からみて逆転は十分可能な情勢にあり、青山陣営はもう安心してなりゆきをみももっていたことだろう。、
 一色は快調なペースで安井を追いかけ、勢いの差はもはや歴然といていた。5㎞手前ではやくも安井の背後に迫っていた。逃げる安井のほうは、そんなに速く追ってくるとは夢にもおもわなかったのではないか。
 5.5㎞ではなんとその差はわずか5秒、もう安井の背後に迫っていたのである。そして6㎞でとうとうトップを奪ってしまう。安井もけんめいに食らいついたが、搭載するエンジンがちがっていた。その差はじりじりとひろがる一方で、10㎞すぎでは一色の独走状態になった。後ろから追ってくる者は誰もいない。山梨の留学生ニャイロも3位までやってくるのがやっとというありさま。かくして青学の全日本初制覇は、8区の半ばで確実になったのである。

 

 現在、学生駅伝のすべては青山学院大を中心にまわっており、青学の学生3冠なるかどうかが、もっぱら焦点になっている今年の大会だが、その青学に食い下がったのは、昨年の覇者・東洋大でもなく、出雲2位の山梨学院でもなく、駒澤大でもなく、伸び代ではいちばんの東海大でもない。出雲で8位と惨敗して、まったくノーマークになっていた早稲田だったというのは、なんとも皮肉な結果というほかない。

 

 レース全般をみわたして、最も見応えがあったのは第1区の攻防である。
 熱田神宮を27チームがいっせいに飛び出してゆく。よく晴れて小春日和の空、だがスタート時の気温が13度と、朝のこの季節にしては高めであった。
 東洋の服部弾馬、駒澤の工藤有生などが前に出て先頭集団をひっぱる。3㎞の通過が8分48秒。ここれ駒澤の工藤が先頭に飛び出し、後ろに東洋の服部、その後ろに青山の下田裕太などがつづく
 5㎞通過が15分00秒、先頭集団は20チームぐらいで、青山の下田が先頭に出てひっぱりはじめる。東海の鬼塚翔太、明治の阿部弘輝、東洋の服部、駒澤の工藤らがつけていたがスローペースで集団は横ひろがりになり、ここで、いよいよ思惑をうちにひめた牽制がはじまった。
 7㎞で駒澤の工藤が出るも集団はくずれず、レースが動いたのは7㎞過ぎであった。中間点となる給水ポイントで東洋の服部がスパートをかかて一気にとびだした。2位集団の先頭は駒澤の工藤、青山の下田らが2位集団をなして追い、集団は一気に縦長になる。
 9.5㎞でひとたび遅れた駒澤の工藤が服部に追いつき2人は並走状態となり、早稲田の武田凜太郎、青山の下田、山梨の上田健太、日本大の石川颯真が3位集団で追ってゆく。

 10㎞になると早稲田の武田が先頭集団に追いつき、東洋、駒澤、早稲田が先頭集団を形成、青山の下田、山梨の上田、日本大の石川を引き離しにかかる。。
 先に仕掛けたのは東洋の服部だった。13㎞すぎでスパート、早稲田の武田、駒澤の工藤を一気に引き離した。服部はそのままトップでたすきリレー、2位は11秒差で早稲田の武田、3位は駒澤大の工藤とつづいた。以下、日本大学、京都産業大学、山学院大、國學院大とつづき、学生3冠をねらい青山の下田は30秒遅れの8位だった。東海の鬼塚は34秒遅れの10位とやや出遅れた。

 

 2区にはいって順位争いはめまぐるしくなる。トップをゆく東洋の櫻岡俊を早稲田の平和真、駒澤の西山雄介が追ってくる。後ろからは青山の田村和希が猛然と追いあげてくる。
4㎞では青山の田村が山梨の佐藤孝哉をひきつれてあがってきて、3位の駒澤の西山をとらえしまう。
 5㎞になるとトップの東洋・櫻岡に2位・早稲田の平和真とは8秒差、さらに3位に上がった青山の田村がどんどん差をつめてくる。6㎞ではとうとう櫻岡に平と田村が追いついてしまう。櫻岡は遅れはじめ、そこから平と田村は並走、11㎞すぎでひとたび平が田村をふりきったかにみえたが、13㎞手前で田村が平い追いついた。2人のトップ争いは最後までつづき、ラストスパートで青山の田村が早稲田の平をふりきった。
 かくして2区の通過はトップは青山、1秒遅れで早稲田、25秒遅れで駒澤、30秒遅れで日大、35秒遅れで山梨学院、東洋は37秒遅れで6位だった。

 

 2区でトップに立った青山、そのままトップを突っ走るかと思いきや、青山独走にストップをかけたのが早稲田であった。
 3区の1㎞で早稲田の鈴木洋平は青山学院の吉永竜聖をあっさりとらえてしまう。そして4.5㎞で鈴木がスピードアップすると吉永はじりじり後退していった。吉永はけんめいに追ったが最後の1㎞で鈴木は2段スパート、差はさらにひろがった。後ろでは12位まで後退していた東海大が1年生・館澤亨次が快走、区間1位で8位mで順位をおしあげてきた。
 1区~3区でレースの流れをつかんだのは早稲田である。早稲田は4区の永山博基も快走した。
 永山は青山の安藤悠哉に追われるかにみえたが、好リズムにのって快調に逃げた。前半はやや押さえ気味、後半の走りで安藤を突っ放して12㎞地点では、なんと50秒もの大差がついていた。
 永山はそのまま中継所にとびこみ、2位の青山との差は67秒、永山は堂々の区間賞である。3位には中央学院が浮上。4位は山梨学院、駒澤大は5位、6位には拓殖大があがってきて、東洋大はなんとシード圏外の7位におちてしまった。

 4区をおわって、レースは早稲田と青山のマッチアップの様相がみえてきた。ポイントは5区を終わってその差はどれほどのものとなるか。差が詰まるかひろがるかが、もっぱら興味のマトとなった。


 5区の早稲田は1年生の新迫志希、快調なペースで逃げた。青山の小野田勇次が必死に追ってくる。だがその差はつまるようでなかなか詰まらない。小野田は区間賞をもぎとったが、タスキ渡しでは1分02秒の差、わずか5秒しか詰まらなかった。
 かくして天下分け目の攻防は6区にもちこされた。
 6区の早稲田は藤原滋記、1㎞を2:52のペースで入った。後ろからは青山の森田歩希がひたひたと追ってくる。気温が18度をこえて、2人の額や肩口は汗で光っている。中間点をすぎてもその差は1分、このまま藤原が逃げ切るかと思われたが、7㎞すぎから形勢に変化のきざし、少しずつ差が詰まり始めた。7.5㎞で40秒、10㎞では33秒とつまりはじまたのである。そして中継所ではわずか37秒だった。青山の森田は区間賞で、流れは青山に傾きつつあるかにみえた。


 7区ではトップの交代劇があるやも……。だが、ここでも青山は追い切れなかった。早稲田は1年生・太田智樹、青山は中村祐紀が必死に前を追う。ひとたびはその差20秒をきったが、そこから追い切れなかった。むしろ後半はその差がふたたびらいて、中継所では49秒差とふたたび開いてしまったのである。
 かくして優勝争いは最終区のアンカー対決に持ち越され、青山のエース・一色恭志にとって最高の見せ場がやってきたのである。

 

 青山の初制覇は終わってみれば横綱相撲であった。各ランナーともに安定していた。何よりも選手層の分厚さが感じられる。区間賞が3つ、1区の下田をのぞいて、他のメンバーはすべて5位以内である。箱根でもむろん候補の筆頭で、3冠の可能性はさらに高くなったようである。

 早稲田は1区から3区までの4年生3人の奮闘で完全に流れに乗った。本大会にかんするかぎり、レースを終始支配していたのは、この早稲田だったのである。
 健闘したなどといえば早稲田に失礼にあたる。やっと、ここにきて持てる実力を発揮したというべきだろう。個々にみると、もともと潜在能力のあるランナーがそろっているのである。青山が抜けた存在で、あとはどんぐりの背比べ。1強万弱といわれるなかで古豪・早稲田の復活、すこし箱根がおもしろくなってきた。
 3位の山梨学院は中盤でやや伸びを欠いたが、出雲2位につづいて力のあるところをみせた。アンカーのニャイロが生きる展開になっていたら、おもしろかったのだが……。
 4位の駒澤はエースを欠いていただけに、しかたのないところか。距離の長くなる箱根ではやはり上位争いにからんでくるだろうとみる。
 5位の中央学院はエース的存在はいないのだが、各ランナーが堅実な走り、東洋、東海を上まわったのは大健闘というべきだろう。
 昨年の覇者・東洋はちぐはぐな戦いぶり、あわやシード権を失うやもしれなかった。このチームも距離が長くなればなるほど実力が発揮されるだけに、箱根での巻き返しを期待したい。
 期待の東海は8位におわった。経験の浅い1年生が主力のチームだけに、距離が長くなると若さを露呈してしまうようだ。箱根では若い力が爆発するか、それとも若さを露呈してしまうか。いずれにしても目が離せない存在だ。

 ところで……
 早稲田の合宿所は自家のちかくにある。歩いて10分とかからない。朝ランに出ると、ときおりジャージ姿の部員たちと出くわすことがある。朝練のまえの足慣らしなのだろう。なにやら楽しげに談笑しながらまるで宙を舞うかのように、ふわりふわりと走っている。ゆっくり走っているようだが、それでいて信じられないほど速いのである。
 そんな、よしみもあって、いつも箱根でも早稲田に肩入れして観ているが、今回はレースの大半を支配していただけに、最後までついつい力がはいってしまった。(笑)

 

◇ 日時 2016年 11月6日(日)午前8時05分スタート
◇ コース:熱田神宮西門前(名古屋市熱田区神宮)→ 伊勢神宮内宮宇治橋前(伊勢市宇治館町) 8区間 106.8 km
◇ 天候:晴れ 気温13.0度 湿度 風:(出発時)
◇ 青山学院大学(下田裕太、田村和希、吉永龍聖、安藤悠哉、小野田勇次、森田歩希、中村祐紀、一色恭志)
◇総合成績:http://www.iuau.jp/ev2016/48meki/16-48meki_results.pdf
◇公式サイト:http://daigaku-ekiden.com/index.html
 ◇tv asahi:http://www.tv-asahi.co.jp/ekiden48/

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