愛知が15年ぶり2度目の制覇!
同一年のアベックVは史上初の快挙!


1月1日、群馬の前橋……。
ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)で、満面に笑みをたたえ、ゴールテープを切ったランナーの姿、まだ誰しも記憶に新しいだろう。
山本修平、入社1年目ながらトヨタ自動車のアンカーをつとめ、区間2位でトヨタ連覇の原動力となった。
今大会では愛知のユニフォーム、やはりアンカーで登場、いままさにノッているランナーの勢いそのままに、優勝候補の呼び声高かった埼玉、広島の追撃をみごとにふりきった。
ゴールするときの笑顔、あれッ、どこかで観たぞ、と、己が記憶をさぐると、それが20数日前のニューイヤー駅伝だったのである。

愛知といえば、ほんの1週間前、全国女子駅伝で歴史ののこる逆転劇を演じて初優勝した。愛知は奇しくも男女とも都道府県対抗駅伝の覇者とのなった。同一年に男女そろってのアベックVはむろん史上初の快挙である。
まさに奇遇というべきか。


奇遇といえば、もうひとつある。
アンカーとしてゴールテープを切った山本修平と鈴木亜由子(日本郵政グループ)は時習館高校で同級生だったという。奇しくも実業団にすすんだ時習館コンビが愛知に栄冠をもたらしたのである。
時習館高校は、旧制・豊橋中学、県内で屈指の進学校だという。同校HPによると、20国公立大学合格者も多い。鈴木亜由子は、現役で名古屋大学経済学部に合格。中学時代から将来を嘱望されていたが、高校時代はケガガ多く目立った成績は残していない。いまや女子長距離のトップにあるが、ランナーとしての才能が開花したのは名大にすすんでからである。
山本修平は1年の浪人生活を経て念願の早稲田大学に進んでいる。だが、浪人中も2010年には1500m3分52秒46、5000m14分09秒01、1万m28分38秒15の自己新(高校時代のベストは3分53秒51=2009年、14分12秒92=2009年)で走っているというから、ランナーとして非凡なものを秘めていた。早稲田では1年から箱根の山登りに起用され、4年では駅伝部の主将をつとめている。
実業団選手としてルーキーの年に2つの駅伝で優勝のゴールテープを切った。オリンピックイヤーだけに、ひとつの弾みになるのではないか。


おりから広島の北部は大雪で、開催を危ぶんでいたが、瀬戸内海寄りはそれほどでもなかったたようだが、路面凍結のせいか、転倒する選手たちが4人もあって、選手たちは吹雪と強風に悩まされたようである。

高校生区間の第1区はハイペースで幕あけた。
1=2:51は昨年より6秒早かった。先頭集団をひっぱるのは群馬の横川巧(中之条高)と千葉の鈴木塁人(流通経大付柏高)ら。優勝候補の一角・広島の中島大就(世羅高)、埼玉の館澤亨次、京都の阪口竜平(洛南高)らもついている。
中間点通過が10:08、このころから粉雪が舞いはじめ、4㎞では先頭集団はおよそ15人だった。5㎞で福島の遠藤日向(学法石川高)がトップに出てきたが、6㎞で群馬の横川がペースアップ、だが集団はばらけない。すると福岡・鬼塚翔太(大牟田高)がトップに立ち最後のせめぎあいがはじめる。京都の坂口竜平(洛南高)、福岡の鬼塚ががかわるがわる先頭に立つのだが決め手がなく、集団を割るにはいたらない。
残り400で、群馬の横川がとびだし、福岡の鬼塚、福島の遠藤とのすさまじいスパート合戦。最後の最後で遠藤がトップでとびこんでいった。
2位は福岡で1秒差、3秒差で群馬、7秒差で三重、8秒差で京都、候補の埼玉は9秒差の6位に付けたが、広島は12秒差の11位、愛知は15秒差の14位であった。


中学生区間の2区(3㎞)で快走したのは、3位でタスキをうけたは群馬の大澤佑介(広沢中)だった。前をゆく福岡の下迫田衛(守恒中)、福島の中澤雄大(石川中)をとらえ、2㎞でトップに立ち、そのまま最後まで突っ走った。2位は10秒差で福島、あとは広島、長野、静岡、埼玉と続いた。埼玉はトップから23秒遅れ、愛知は8位で26秒差だった。
エース区間の3区(8.5㎞)は優勝するには第一関門というべきか。一般・大学生のエースランナーが顔をそろえるこの区間は、いちばんの見どころである。
1区と2区で好発進の群馬は大学1年の塩尻和也(順天堂大)、小雪が舞うなかひたすら逃げた。一時は2位集団との差が22秒までにひろがったが、後ろは名うてのランナーたちで、そうはうまく逃げさせてはくれない



広島の北魁道(中国電力)、静岡の木村慎(明治大)、福島の住吉秀昭(国士舘大)の2位集団に埼玉の設楽啓太(コニカミノルタ)、長野の春日千速(東海大学)、愛知の田中秀幸)、福岡の高井和浩(九電工)も追いつき、7人による2位集団となる。
5㎞ではトップの群馬と2位集団との差は19秒と詰まり、6㎞では16秒となる。7㎞をすぎて静岡、福島、長野が2位集団からこぼれ、広島、埼玉、愛知、福岡が群馬を猛然と追った。
群馬の塩尻はなんとかトップをまもったが、2位には田中秀幸の区間賞で愛知がやってきて6秒差、3位は広島で7秒差、4位は埼玉で8秒差と候補の三チームのそろいぶみとなって、勝負どころの4区から5区の高校生区間でタスキが渡ったのである。


4区(5㎞)は大激戦だった。
群馬の千明龍之佑(東京農大二高)に、広島の植村拓未(世羅高)、埼玉の三井貴久(埼玉栄高)、愛知の三輪軌道(愛知高)、福岡の米満怜(大牟田高)がひたひたと迫ってくる。そしてとうとう1.5㎞で2位集団はトップの群馬をとらえてしまうのである。
激しいつばぜり合いの変化が生じたのは4㎞あたり、満を持していた愛知の三輪がスパート、埼玉の三井、福岡の米満はくらいついたが、広島の植村、群馬の千明が置いて行かれたのである。
3区の勢いそのままに愛知が奪首に成功。埼玉が6秒差、福岡が11秒差でつづき、広島は17秒差の4位に後退した。
4区(8.5㎞)は好リズムにのった愛知に対し、2位に浮上した埼玉と広島がチャレンジする構図だったが、愛知の勢いがとまらない。。
ゆうゆう快調にトップをゆく青木祐人(愛知高)、広島の吉田圭太(世羅高)は4㎞で埼玉の埼玉の中村大聖(埼玉栄高)をとらえ2位まで浮上、だが全国高校駅伝1区区間賞、の長野の關颯人(佐久長聖高)が後ろから猛追してくる。かろうじて2位をまもりはしたが、タイム的には愛知に24秒とひろげられ、逆転の狼煙をあげるまでにいたらなかった。後になって考えてみると、この4区が勝敗の分かれ目になったとみる。


愛知は6区(3㎞)の中学生もうまく繋いで、2位広島との差を28秒とひろげ、アンカーの山本修平にタスキをつないだのである。連覇をねらっていた埼玉は5区の失速を6区の中学生・関口雄大(埼玉/桜中)が区間賞の走りで3位まで押し上げてきたが、トップとは44秒差、アンカーの力関係からみて、かなり苦しいところに追い込まれてしまった。
優勝争いは逃げる愛知の山本修平、追うは広島の工藤有生(駒澤大)だが、力関係からみて逆転はのぞむべくもない。3位の埼玉は服部翔大(ホンダ)との差は前述のように44秒もあるうえに、今シーズンの服部はいまひとつ調子はあがっていない。事実、本レースでも、ひとたび長野の矢野圭吾(日清食品)、さらには後ろから急追してきた佐藤悠基(日清食品)にとらえられる始末で、首位を追うどころか3位をまもるのに精一杯だった。
かくして山本修平はニューイヤー駅伝のときほどのデキではなかったものの、やすやすと逃げ切ってしまったのである。


愛知は15年ぶり2度目の制覇である。1区、2区の前半はつまずいたものの僅差でしのぎ、3区の田中秀幸の区間賞で圏内の2位まで浮上、愛知高校の2人がしっかりと優勝への流れをつくった。
2位の広島も1区では出遅れたが、以降は堅実に上位をキープ、最後まで優勝争いにからんでいた。アンカーが鎧坂哲哉が出てきていたら、あるいは逆転があったかもしれない。
連覇をもくろんだ埼玉は3位に終わった。優勝した愛知、広島より好発進し、4区までは優勝争いにきわどくからんでいた。だが後半は失速した。高校生、一般ともに少しバランスがよくなかったようである。
4位の静岡はアンカーの佐藤悠基で一気に4位までやってきたが、前半からつねに入賞圏内につけていた土台があってのもの、その闘いぶりにはみるべきものがあった。
5位は長野、6位は福島、7位は群馬、8位は福岡、ここまでが入賞である。5位の長野は5区の關颯人(佐久長聖高)の快走が光っている。全国高校駅伝の1区で区間賞、今レースでも持てる力を発揮した。福島は1区でトップを奪うなど高校生の活躍が光った。7位の群馬は1区、2区の高校生、中学生の活躍で3区まではトップに立っていた。福岡は最終区で8位に順位を落としたが、3区以降はつねに5位以内をキープして、地力のあるところをみせていた。


今シーズンの時評もこれで最後だから、ひとつ不満点をあげておこう。全国女子駅伝もそうだったが、全国男子駅伝でも解説者に増田明美が登場しなかったこと。どうやらNHKは増田が嫌いらしい。(笑)もしかしたら、女子マラソンの代表選手選考をめぐって「これでいいんでしょうか?」と異議を唱えた例のバトルで、陸連から圧力がかかっているせいなのかも……。(笑)
ぼくたちファンがレースに登場するランナーを注目し、追っかけてみようとファンになるのは、そのランナーの人間としての個性であり、人間としての魅力に惹かれるからである。サッカーでも野球でもテニスでもラグビーでも同じだろう。ファンはその選手の人間としてのドラマに心を寄せ、ファンになるのである。
増田明美はそこのところをきっちりフォローしてくれる。彼女は足でかせいだ綿密な取材にもとずいて、選手個人の人間としての魅力をミニ情報としてエピソードで語ってくれるのだ。ファンのパーソナルインタレストを引き出し、「ああ、そういうランナーなのか。ならば注目してみよう」という気にさせてくれる。瀬古俊彦や小出義雄など、いいかげんで場当たり的なおしゃべりでなく、個の選手によりそったユニークな解説者なのである。
それはともかく男子は金哲彦、女子は増田明美、今シーズンもベスト解説者の座はゆるぎなかったようである。


◇日時 2016年01月23日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:くもり 気温:01.5度 湿度:62% 風:南東6.3m(スタート)
◇愛知(長谷川令、大上颯麻、田中秀幸、三輪軌道、青木祐人、葛西潤、山本修平)
◇公式サイト:
http://www.hiroshima-ekiden.com/index.html
◇総合成績:http://www.hiroshima-ekiden.com/information/pdf/21st/21st_seiseki.pdf

◇NHKロードレース:http://www1.nhk.or.jp/rr/race04/index4.html
◇区間記録:http://www1.nhk.or.jp/rr/race04/record/divrank.html


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