~ejicoすくえあ~

ドキわくノベルライターejicoの連載小説
「マンハッタン・オーバード~夜明けの歌~」を再掲載中!
らくがきのような日々の想い♪♪も時々つづっております。

NEW !
テーマ:

「寿三郎、ここへ来なさい。」

 

 

 

 


その威圧的な声を 聞いた瞬間。

 

 

 

1本の 碧白い氷柱に似た何かが、


カイの体の中心を

 

 

激しく 天に向かって、突き抜けた。

 

 

 


外目には微動だにしていないカイの、

 

栗色の髪が

 

 

少しだけ、揺れた。



 

 


「 お、おい 寿三郎・・? 」

 

 


 

 


猪之介の手が、座長の指示に従おうとせず

 

ただじっと たたずんでいるカイの体を、

 

揺すってみる。

 

 

 


カイは、この場とまったく 

 

切り離されているように

 

 

 

京之介ひとりに 向き合っていた。

 

 

 

 

ステージの中心に君臨している その男に

 

自分の呼吸を合わせる。

 

 

 

 

 


そして、マスコミの

 

好奇心に満ちた視線を浴びながら、

 

 


出番を迎えた 看板役者のように、

 

 

淡々と歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「オ、オイ  どーなってンの ・ ・ ?」

 

 

 

 

 


オウジは、予期しなかったこの場の展開に、

 

隣にいるショウゴの顔を 伺った。

 

 


が、ショウゴは慌てるでもなく、

 


「 来るなら来い 」といった表情だ。

 

 

 

 

 

 


「 私のひとり息子、

 

11代目 嘉川寿三郎 にございます。 」

 

 

 

 

 

壇上に向かって歩いてくるカイを、


京之介が手の平で示した。

 


京之介はカイを、見なかった。

 

 

 


多少なりとも

 

カイへの罪悪感があっての事だろうか。

 

 

 

 


そしてカイがステージにやってくる間に、

 

ここまでを続けた。

 

 

 

 

 

 


「来年の正月公演は、


TVドラマでも 活躍している新進の

シナリオライターを迎え、

 

 

古典にアレンジを加えた 

 

斬新な演出となる 予定でございます。」

 

 

 

 

 


その言葉を、

 

井上真由美が、NYのマスコミに向けて 

 

英語に訳す。

 

 

 

 

 

カイが2階の踊り場に到着した。

 

 

 

 

しっとりとした風合いの、

 

カイの足によく馴染んでいる

 

黒の革靴が、

 

 

京之介の前で足を止める。

 

 

 

 

2人の視線がこの時、初めて合った。

 

 

 

 

 


どしりと 威厳の塊りである 

 

紋付き袴の父に、

 

 

 

 

時のデザイナーズスーツで装った息子は

 

 

凛と 花形の微笑みを携え

 

 

 


それはまるで一枚の 美麗な絵のようだ。

 

 

 

 

会場に 声にならぬ感嘆のため息が、

 

重ってゆく。

 

 

 

 

 

だが、2人の視線の間には、

 

 


たくさんの思惑と 想念が、

 

音をたてる程に ぶつかり合っているのが 

 


オウジには分かった。

 

 


 

 

 

「  カイ  ・ ・ ・ 。 」

 

 

 

 

 

 

オウジも初めて見る、

 

彼の、氷のように 冴えた微笑。

 

 

 

それは 触れたら火傷しそうなほどに冷たく、

 

 

 

体にまとう空気から、碧い焔が

 

ゆらり、と立ち上っていた。

 

 

 

 

 

 

そして京之介は、

 

岩のように揺るがぬまま

 

 

決して獲物を逃がさない 黄金の眼光を

 

 

息子に向けて らんらんと放っている。

  

 

 

 

 

 

――  猛虎と 青龍みてーだな、

  

    この  父子 ・ ・ ・。

 

 

 

 

 

  

それは 相容れるハズのない 

 

 

近寄れば、ぶつかり

 


  

風雲を巻き起こしてしまう

 

2つの魂だ。

 

  

 

 

オウジの胸までが、どきどきと呼応する。

 

 

 

 

 

全ての場が整い、


真由美が 再びマイクを握った。

 

 

 

 

  


「そして、その新春公演、

主役を務める 役者こそが、

 

ここにいる ・ ・ !」

 

 

 


 

その名が告げられようとした、瞬間。

 

 


カイは彼女にウインクをして、


その手からマイクを奪い取ると、

 

 

 

一歩前に出て ライティングの正面を陣取った。

 

 

 

 

 

 

「 ご来場の 皆様! 

 

ただ今 ご紹介にあずかりました、

私が 嘉川寿三郎にございます。」

 

  

 

 

 

流暢な クイーンズイングリッシュだった。

 

  

 

いっさいのムダがない所作、

 

 

舞台から離れていたコトを 感じさせない 

 

涼やかに 突き抜ける声。

 

 

 

 


そして、類まれなその美貌も

 

 

華も 蝶も    星も 夢も。

 

 

 

  

持ちうる あらん限りを全開にし、

 

 

 

カイは一瞬で、この場のすべてを

 

自分のオーラの中に、引き付けた。

 

 


 

 

そして、つぎに

 

 

 


「まったく! 

ブロードウエイで、


こんなビッグチャンスを 得られたなんてね!

 

ボクのファミリーのラッキーには 驚きさ。

 

この神さまの イキな計らいに、

ボクは心から 感謝するばかりだよ!」

 

 

 

 

 

と、そこらへんを歩いている

 

ティーンズのように続けた。

 

 

 


会場中に 和やかな笑いがこぼれ、

 

 


彼等はますます 

 

このチャーミングでスマートな

 

 

新参者に 魅せられた。

 

 

  


 

持ち運び用の 簡素なライトの光でさえ、

 

彼の黒のスーツを通りこし

 

 

 

その透き通る 存在感を 

 

あざやかに照らしだす。 

 

  

 

あらゆるオオモノがそうであるように

 

カイは実物より 数倍も大きく見えた。

 

  

 

 

その彼が スイッチをもう一度、

 

11代目寿三郎に 切り替える。

 

 

 

 

 

「嘉川カンパニーが、

確かな伝統に支えられる 一座でありながら

 

新たなる挑戦を 続けていることは

 

この一週間の公演で、

 

皆さまにも お分かり頂けたことと 

思います。」

 

 

 

 

 

英語にウトい京之介や座員たちのために

 

日本語に訳そうとするも、

 

 

真由美はマイクを持っていない。

 

 

  


 


「そして来年の嘉川は、

さらなる挑戦を 致します。

 

先程、父、京之介から紹介しました 

 

新春の公演はなんと!

 

 

このブロードウエイに習い、

 

主役をオーディション形式で 

決定することに、相成りました!」

 

 

 

 

「オオ~~ゥ」

 

 

 

 

期待のどよめきが


会場のマスコミ関係者から上がった。

 

 


 


「このオーディションは

 

嘉川一門や 歌舞伎界だけではありません、

 

 

外部から 広く垣根を越えての 

募集となるのです!

 

 

これは、もちろん

 

伝統を重んじてきた 嘉川一門にとって

初の試み。

 

 

どうでしょう?

 

 

主役の座を射止めるのは

 

もしかしたら、女性かもしれませんよ!

 

 

それとも、49丁目で 

オーディションの列に並んでいる

 

青い目の誰かか、肌の黒い誰かかな?」

 

 

 


  

記者たちに起きる、笑いと ざわめき。

 

  

 


 

 

「 なんだ、寿三郎のヤツ 

何言ってるんだ・・? 」

 

 

「オ、 オディションって 

言わなかったか・・?」

 

 

  

 

英語のわからない座員たちは、

 

やたらにリアクションの大きい

 

マスコミたちから

 

 

テキトウに 推測するしかない。

 

 

 

 

 

「 あるいは、

12代目 寿三郎の名を継ぐにふさわしい、

 

若き 獅子かも ・ ・ 。 」

 

 

 

 

 

カイがチラ、と視線だけを 友哉に送る。

 

 

 

 

 

「  お、お兄様 ・ ・   ?

    い、 いったい ・ ・ ? 」

 

  

 

 

 

ロビーに居る友哉の脳ミソは

 

カイの口早な英語を 日本語に訳すことと、

 

 

その信じがたい内容と、不安とで 

 

煙が上がりそう。

 

 

 

 


 

「ですが、それはまちがいなく

 

真の役者の魂を、持ったもの。

 

 

このステージに 全身全霊をささげ、

 

 

お客様に、夢と喜びを届けうる

技量と器を持った、

 

最高の舞台人と なるでしょう!」

 

 

 

 

 

「もちろん、

アナタもそれに 参戦するんですよね?」

 

 

 

 

と、会場から声が上がる。

 

 

 

 

「ボク? ノー!

 

ボクは唯のノーティーボーイだもん。

 

ココだって、怒られないうちに

さっさとズラかんなくちゃ!」

 

 

 

  

会場にまた、どっと笑いが起きた。


 

 

 

まるで組み込まれていた

 

コメディーショーのような、

 

小気味よいテンポに

 

 



真由美はダークチェリーカラーの口を、

 

ポカンと半開きにしたままだ。

 

 

 

 

 

 

すっかりカイに持っていかれたこの場の、

 

 

歯車が 何か大きく狂わされてしまったのだと

 

 

京之介が、理解したその時。

 

 

 

 

 

目の前に立ちはだかっている 息子の背中が

 

ピンと姿勢をただし、 

 

 

 

彼は正面に向かって、ひとつ 

 

 

息を吸い込んだ。

 

 

 

 

 

「 ・ ・ ・ ?!!! 」

 

 

 

 

 

---------------------------------To be continued!

 

 

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「マンハッタン・オーバード〜夜明けのうた〜」

 

は、こちらの小説の  続編です↓↓

 

「SOULFRIEND〜ボクが見つけた、ひとつの歌〜」

 

 

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