~ejicoすくえあ~

ドキわくラノベライターejicoの連載小説
「マンハッタン・オーバード~夜明けの歌~」を再掲載中!
らくがきのような日々の想い♪♪も時々つづっております。


テーマ:

 

 

 


――  カイ・・?   







オウジの中の紅い血が もうひとつハジけ、温度を上げた。

 

 

 


この名は 特別なシグナルだ。



彼が 人生の中に現れると

 

いつも何か、オウジの知る事のなかったスイッチが

 

入れられて来たのだから。

 

 

 

何かが起きることを オウジの体中の細胞が

 

予感し、ざわめきたつ。
 

 

 

 

アイツあの晩以来 行方知れずだったのに。

 

 

 

 

 

―― ・・ オレのライヴ、 覚えてたのか ・・。

 


 

 

 

150席程あるホールの客席は

 

ウワサの人物探しに どよどよと落ち着かない。

 

 

 

その時、昨日のウィルの言葉が 

 

オウジのアタマに飛び込んできた。

 

 

 

 

 

      『 何か 伝えきれない想いを

 

        この歌に 

       託してみて欲しいんだ。 』

 

 

 

 

 

―‐  そうだ・・・  !

 

 

 

 

 

あったじゃないか、伝えたいコトが。

 

 

 

オウジはしずかに目を閉じた。

 

一昨日の京之介の顔を思い起こす。

 

 

威厳の塊りのようなオトコが見せた、情けない

 

まるで弱々しかった 父親のカオを。

 

 

 

今頃はもう 東京の家に着いてるだろうか。

 

 

あのオヤジの事だから 

 

もう稽古なんかしてるかも。

 

 

 

 

 

看板役者であるムスコに バックレられた痛手とか

 

独りでは立ち上がれないほどの 体の故障とか

 

知ったコトじゃない。

 

 

だけど、この気持ちだけは 伝えなきゃ。 

 

 

 

 

伝えたい。

 

 

 

 

 



スタンバイを終えた アンディが


ドラムスティックで 合図する。

 



続いてミシェルのギターが 暗闇をつき抜けると、

 

ウィルのベースが、音の絨毯のように広がって

 

 

ヴォーカリストを バラードの宮廷へと誘い込む。

 

 


スポットライトが オウジを捕らえた。


さっきまで オウジを支配していた黒い恐怖は 

 

すっかりどこかへ消えていた。






―― ・・ 聴いてろよ?   カイ・・ 。
    
    

 





ウィルの敷き詰めたメロディーラインに乗って

 

オウジは歌い始める。

 

 

 

客席のざわめきは 徐々に力を失い

 

 

ひとびとは 彼の歌に耳をかたむけた。

 

 

 

メランコリックな匂いのする

 

ひどくやさしい その声に。






 

     

      たそがれの光に切り取られた  うす影の街


      届けられることない

 

      たくさんの 言葉が

 

      こんがらがって 行き場をなくし

 

 

      マンハッタンの空に 浮かんでる








――え・・・ ?  


――オイ、マジか ?!

 

 

 



ミシェルとアンディは パチクリと目を見合わせた。

 

 

英語圏にはイミ不明な言語で 

 

オウジが歌っているのだ。

 


日本語らしい。



ポカンと口を開けたまま、

 

アンディはリズムを刻んでいる。



ミシェルはすかさず 

 

オウジの向こうでベースを弾いている

 

ウィルを見た。




―― どうなってんの、一体?!





ドレッドロックの前髪のすき間から

 

ウィルは小さく笑っていた。



というより、幸せを味わっているような。





―― 知ってたのかしら? 

 

 ウィルはオウジと、グルだった・・?

 

 

 

 

 

 

 

      キミがあんまり近すぎて 

 

      伝えられずにいた この想い 

 

 

      見えるかな

 

 

      白く雲に 姿を変えて

 

      マンハッタンの空に 浮かんでるよ

    
   


 


 

 

思いつくまま 流れるまま

 

目に浮かぶままを オウジは歌っていた。

 

 

 

ガンコで ぶきっちょな京之介の

 

その奥に広がる 彼の愛と 淋しさに

 

 

ただただ 思いを馳せながら。

 

 

 

 

こういう時のオウジは

 

ネイティヴの日本語になってるコトにも

 

 

時々ハングルや 

 

台湾語まで混じっているコトにも

 

 

まったく気づいていないのだ。

 

 

 

 

 

「お・・。」

 

 

「へえ・・?」

 

 

 

 

 

観客たちは、少しかすれたその声が織りなす、 

 

フシギなフィールドに 導かれていく。

 

 

コトバの意味はわからずとも、

 

ラブソングなのはマチガイないのだが。

 

 

 

恋と言うより 愛のような。

 

もっとまるごとの感情のような。

 

 

 

大切な友人か、 

 

もしかしたら肉親に

 

歌ってる様にも聴こえる歌。

 

 

 

その、妙なふり幅と 色あいに

 

聴き手は 胸の奥にしまってあった懐かしさや 

 

愛おしさを引き出され

 

 

聴く人の数だけの ラブソングが

 

狭い講堂の中に創られ 広がって行った。

 

 

 

 

 


―― これが あのオウジ ・・ ?


なんだったのよ、

昨日までの あのクズソングは・・・!






思わず 湧き上がってくるイラ立ちを

 

ミシェルは振り払った。

 



考えるのはヤメだ。



この曲が この一度きりになるのなら


自分も 今、この中に溶け込もう。




ミシェルは 指先のピックがはじく音で


オウジの声に 近寄づいて行く。
 

 

 

 

 

 

      いたずらな天使よ 聴いてるかい?

 

      キミがそこで見てるなら

 

      その羽を使ってさ

 

 

      この街 覆う白い雲を

 

      雨つぶに 

 

 

      愛のしずくに してくれないかな

 

 

 



――  う ゎ ・・・!





ミシェルはたちまち、オウジの声に包まれた。





――ズルいわ こんなの・・ 

 

リハの時とは まるで別人じゃない・・!



 

 

シルクのように滑らかな 光のバイブレーションに

 

そっと 抱き寄せられたよう。




あの横暴で幼稚なサルが 
 

こんなリリカルで 透明な音を、出すなんて。

 




客席はすっかり、このウィルのバラードに 酔っている。

 


いや、明日に成ればコレはもはや 

 

“オウジのバラード”と、呼ばれているコトだろう。





――スゴイな・・ 。

 

やっぱりキミはイカシてるよ、 オウジ・・。

 

 

 

 

 

黒い瞳を半分閉じて、白昼夢の中で歌う少年を

 

ウィルが誇らしげに見つめている。

 

 


 

 

      

 

      摩天楼からやってくる

 

      パステルの雨

 

 

      生きててほしいと

 

      シアワセで居てと  

 

      愛してるからと

 

 

      キミの肩に 

 

 

 

      ホントは離したくなんかなかったよ

 

 

      ずっとずっと 

 

      隣に居て欲しいンだ

 

  

    

 

 

 

バラードの波に 身をまかせて揺れながら

 

 

オウジは この歌を 

 

歌いながら ヒト事のように聴いていた。

 

 

 

 

 

 

―― これは 誰の歌だろう・・?

 

 

 

 

 


この切なさ

 

 

泣きだしてしまいそうな この甘やかさは

 

 

 

 

京之介の、ではない

 

 

次から次へと あふれでてくる

 

体中を支配してしまいそうな この想いは。

 

 

 

     

 

 

       ねえ気づいてたかな

 

 

       オレが アンタを ・・・

 

 

 

 

 

 

オウジはハッと息を呑み

 

歌が止まった。


 

 

 

 

 

―― なんだオイどーしたよ、アイツ固まったぞ?!

 

 

――今度はナンなのよ、 もう!!

 

 

 

 

 

 

アンディとミシェルが、もう一度カオを合わせた。

 

 

ウィルはすかさず、ミシェルに目くばせ。

 

 

おりしも、ミシェルのギターが

 

ソロパートに突入するタイミングだったのだ。

 

 

 

 

――んもうっっっ! 

 

 

 

 

ミシェルは これ見よがしなオーバーアクションで

 

 

オウジの異変に気づいた観客達を

 

強引に自分に引き付けた。

 

 


そのスキに、アンディがドラムスティックを

 

オウジの背中めがけて投げつける。

 

 

 

 

――おーい 起きろ、ボケナス!

 

 

 

「 いでっ!    ・・ あ・・。  あれっ・・」

 

 

 

 


たった今、自分がフリーズしてしまったイミさえ分からず

 

デクノボー状態で 突っ立っていたオウジの視界に 

 

現実がカットイン。

 

 

 

その途端に飛び込んできたのは、

 

目の前に居る150人の 人、ひと、ヒト。

 

 

 

 


――うわ・・・ っ!

 


 

 

 

そしてそこから送られてくる、

 

ギンギンに膨らみあがった 期待のオーラだ。

 

 

 

マズイ。

 

マズイぞ、頭マッシロ。 

 

 

次の歌詞が まったく思い浮かばない。

 

 

 

ああ、このギターソロが終わったら、

 

もう一度サビを歌って 終わりなのに。

 

 

 

 

 

―― やべぇ・・・! 

さっきオレ ナンて歌ってたんだよ???!

 

 

 

 

脳ミソが、急速発進の 高速回転で 

 

1分前を 検索するのだが。

 

 

チェーンの外れた自転車のタイヤみたいにつるつると

 

上辺だけを 空回りするばかり。

 

 

 

 

――うをぉぉぉ  やべえ ど、どうするよ・・!!

 

 

 

 

 

吹き出す汗。

 

 

 


―― ナニ焦ってんの、あとワンフレーズじゃん?!

しっかりしなさいよ、サル小僧!

 

 

 

 

ソロパートを終えようとするギタリストの

 

苛立ちの炎に燃えた目が

 

 

パニクりまくったヴォーカリストの眼と合った。

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

1分前をはるかに超え、 3週間前の

 

思いもよらない歌詞が

 

オウジの口を突いて 飛び出した。

 

 

 



     人参女は ガツガツ女

     バニラな巨乳もありゃしナイ

 

     どこまでも飛んでいく

 

     蝶の羽をもつオンナ

 

 

 

 

「なっ・・?!!!」

 

 

 

 

紅いレスポールがミシェルに変わって、

 

ぎょわゎ~~~~ん と驚愕の音を出す。

 

 

 

 

「ぶぶっっっ!!!」

 

 

 

 

背中の後ろで思いっきりアンディが吹き出して、

 

さすがのウィルも、目をむいた。

 

 

 

 

「 バニラな巨乳ぅ・・?」

 

 

 

 

会場に広がる、キョトンな空気。

 

歌詞がやっと英語圏のコトバになったのに、イミ不明なのだ。

 

 

 

 

 

―― うわわわわヤベえ・・・ ! ど、ど、ど、どうするよ・・?!

 

 

 

 

 

 

慌てふためくオウジを護るナイトの如き

 

ウィルのとっさのアレンジと、

 

 

アンディのタイコの力技で

 

なんとか無理矢理ラストまで こぎつけた。

 

 

 

 

 

「 ニンジン女って ・・   何? 」

 

 


 

 

客たちは 笑っていいのか 拍手したものか。

 

 

会場中に飛び交うハテナマークの いっさい合切を払拭するように、

 

照明がカットアウトした。

 

 

 

 

「ぶ、ぶわははははっっっ」

 

 

 

 

暗転になったステージから、ノーテンキなイタリア野郎の

 

笑い声だけが 高らかに響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------------------------To be continued!

 

 

 

このお話の 第1話はこちら↓↓

「SOUL TOWN #1 キャロットオレンジの女」

 

 

「SOUL TOWN ~夜明けの歌~」は

こちらの小説の  続編です↓↓

「SOUL FRIEND〜ボクが見つけた、ひとつの歌〜」

 

 

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