2005-05-14 13:31:17

チケットは予約しない

テーマ:今生の別れ

今日、病院に行ったら、そこで昔の主治医の先生にあったので、義母の容態を報告したりしていて、部屋に行くのがいつもよりも10分ほど遅れた。まあ、でも、頭も大分はっきりしなくなってきたし、わからないだろうと思って、部屋に入った。


そうしたら、義母が途方にくれてベッドの上に座っている。


I cannot move.  What shall I do?
動けないの。どうしよう。


見ると、点滴の管がぐるぐるに絡んでいる。おやまあ、と思いながら、点滴の管をゆっくりと解いてあげた。


初めての散歩に行って引き綱に絡まれた子犬みたいに途方にくれていて、笑ってしまった。


I was wondering if you are coming today.
今日は来ないのかと思ったわ。


I said I am coming every day.  Here I am.
毎日来るって約束したでしょ。だから来たよ。


Could you really come to see me every day?  Really?
本当に、毎日来てくれる? 本当?


Yes, I will.
約束するよ。


本当は今日、航空会社に電話をかけて帰りのチケットを予約しようと思っていたんだけど。電話をするのをやめた。

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2005-05-11 16:03:08

にわにはにわにわとりがいる:二話

テーマ:今生の別れ

第一羽:


子供が小さいとき、自分の頭の中でいろいろ考えて、けっこう無茶なことを言ったりしたりする。


農家から買ってきた卵に、ニワトリの小さな羽根がついているのを見て、


「あ、卵がひよこに成りかけてる!」


卵に羽が生えて、ひよこが生まれると思っていたらしい。


「これ、あっためてもいい?? ねえ、ねえ、ねえ」
「あかん。これは、ニワトリにはならへんねん。卵がひよこにはならへんの。この中にひよこの素が入ってんの」
「じゃあ、それがひよこになるんだったら、暖めてもいい?」
「うーん、黄身が入っていても、ひよこはできないんだよね・・・」


だんなが言った。


「・・・・なあ、悪いんやけど、黄身はひよこにはならへんよ。黄身はひよこが育つ栄養なんやけど…」
「・・・・・うそ」
「ほんま」


るーるーるー、僕のジンセイって・・・。

泣くだんな。


「ねえ、卵あっためてもいい?」
「だから、これはひよこにはならへんの」
「何で?」
「ヤッてないからや」
「ヤッてたらできるの?」
「ほかにも、方法はあるけどな、それが一番簡単や。そやからおまえが生まれたんやで」
「ヤッたの?」
「そうや」


*******************************


第二羽:


薬の副作用で、義母も頭の中でいろいろ考えて、無茶を言う。


昨日、義母ががいきなり聞いた。


「ねえ、今日の夕ご飯のニワトリ〆た?」
「いえ、まだですけど・・・」
「早く〆て頂戴」


昔、ニワトリを飼っていたころに帰っているらしい。


「おなかがすいてるわけじゃないのよ、でも、せっかく〆たんだったら食べたいわ」
「すみません、わたし、ニワトリの〆かた下手なんです」
「あら、じゃあいいわ。下手な人が〆ると美味しくないのよ」
「役立たずですみません」


ニワトリを〆ずにすんでほっとしました。

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2005-05-10 21:38:45

逝くこと

テーマ:今生の別れ

義母が時折やんだを言う。


点滴はいやだ、風呂に入りたい、点滴取って、好きなようにさせて。


その理不尽さ、息子が小さかったときのヤンダダダと同じ。


そして、わたしに訴える。


何とかしてよ、ねえ、ねえ。


ああ、子供に帰るんだな。


そう思う。


でも、息子だったら、そこで叱ったり、いけないと教えようとしたりするだろう。


義母にはしない。あやして、あやして、ご機嫌をとってあげる。


逝くとは、こういうことなのだ。






自分も一緒に逝ってしまうかも知れない。


そうならないように、今日も生きている人を見つけに行く。


炭酸入りのミネラルウォーターを口に含む。



*****************************************************


ちょっと凹み気味。まあ、いろいろあるわ。

ヨーヨー・マの弾くバッハの無伴奏チェロソナタが心にしみる。

パブロ・カサールスの演奏もよかったけど、こういう夜は、ヨーヨー・マのほうがいいな。

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2005-05-09 11:13:51

眠ること

テーマ:今生の別れ

息子は赤ちゃんのとき、ものすごくよく眠るこどもたっだ。


それは、半端ではなかった。


生後2ヶ月半のとき、普段は比較的よく寝る息子が、一晩中、泣いて泣いて、泣き通したことがある。病気でもなんでもない。単に、おなかがすくのだ。ものすごい量の授乳をした。しょうがないので、一晩中、たくさん水を飲み、豆を食べ、ミルクを飲み、単なる母乳製造機となった。


それが、朝の6時くらいまで続いた、と思う(疲労困憊で記憶が定かではないです)。


そして、息子は、寝た。


寝ました。

起きない。





お昼になっても、起きない。

寝てます。

爆睡。




たまたま、保健婦のメアリーが来てくれる日だった。だから、メアリーに、


「起きないんですけど・・・」


と、言うと、


「そうね、今寝てると、夜ねないもんね。わたしに任せなさい


と、息子を起こしてくれることになった。くすぐる、あたりから始まり、抱っこをして左右に揺らす、オムツを代える・・・。


普通なら、このあたりで起きる。


しかし、息子は起きない。


メアリーは、おかしいわね、と言いながら、ひざの上で「お馬さんごっこ」をした。ボンボンボン、とひざの上でリズムに乗って息子を跳ねさせる。息子はこれが大好きで、普段なら、げらげらと笑っているはず。


しかし、息子は起きない。


「しょうがないわ、最終手段に訴えてもいいわね」


メアリーは、覚悟を決めた。わたしたちも覚悟を決めた。


そしてメタリーは









































指で息子の

まぶたを

開けようとした。




そして、息子は















































力を入れて

まぶたを閉じて

開かせない。
ぎゅうううううううううううううううう~


筋肉対決

指VSまぶた


昔から意志の強い子でした。自分ですると決めたことはやりとおす子供でした。ほんとによく寝る子でした。この日から、夜の7時から翌朝の8時まで寝るようになりました。



今、義母は一日のほとんどを眠って過ごしていて、その隣で、ただ座っている役立たずなわたしです。眠っている義母を見て、眠りにつこうとする意思を感じます。眠り続けようとした息子をたたき起こそうとしたような事は、彼女にはしたくない、と思っています。

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2005-02-10 19:45:26

2. 告知、家族、そして

テーマ:今生の別れ
義母に癌を告知するかどうかについては、どうしていいのかわからず、さまざまな人に相談をした。息子も意見を求められた一人である。

「うーん、僕だったら、いってほしくない、かな? 死ぬんだ、って思いながら、生きていくのはつらいよ」
「でも、誰かって、死ぬやろ。そんで、しらんままに、ぼおっとして、最後の3ヶ月、過ごしたいか?」
「うーん・・・」
「どっちが正しいわけでもないと思う。そやけど、おばあちゃん、どっちがええかなあ・・・」
「おばあちゃんに聞けば? うん、それがいいと思うよ」
「あほか、お前、聞いたら、ばればれやないか・・・」

しかし、認知症の初期段階で記憶力がなくなっている彼女に、いうべきか、どうか。義母をよく知る人たちは、彼女は言ってほしいだろう、と口をそろえた。黙ったままでいては彼女をだますことになり、彼女はそれを一番憎むだろう、と。そして、主治医や、介護のチームとも話し合った結果、告知をすることにした。

義母は冷静に告知を聞いた。

「あと、2・3ヶ月なんですね」

念を押す声が震えていた。しかし、30分後、彼女は主治医に会いにいったことすら忘れていた。

でも、その日の夕食の席で、彼女はいつもなら、5分おきに繰り返す

「今度みんなできたら、Yはえいさんより背が高くなってるわねえ」

を、一度もいわなかった。かわりに、何度も繰り返した。

「ねえ、わたしはアメリカ人だし、えいさんは日本人で、なのにわたしの息子は***人で、孫が***人。みんな、国籍はばらばらだけど、それでも、家族なのねえ・・・」

家族というものに恵まれないまま、一生を「家」に縛られて過ごした彼女のことを考えると、切なかった。そして、義母が席をはずしたとき、

「やっぱり、記憶のどこかに残ってんのかなあ」

とだんなが言った。

「残ってると思うよ。僕だって、ありがとうっていうのを忘れても、言わなきゃいけないのは覚えてるでしょ」
「あのなあ、それは、単に不注意なんとちゃうか?」

と、しんみりしていたら、義母がカップを片手に戻ってきた。そのカップを彼女はわたしに渡した。

「ごめんなさい、お茶を入れてもらえるかしら」

カップを受け取り、わたしは台所に行った。息子もついてきた。そして、お茶を注ごうとして、あらぬことに、悲鳴をあげてしまった。息子も、絶句。なぜか。カップの中には、義母の

入れ歯

が入っていた。

次の日に、早速、入れ歯の入らない小さな直径のカップを自分用に買い求めた。息子はガラスのコップだけ使うことに決めた。来年の春には、この小さな直径の飲みにくいカップを使いながら、入れ歯を思い出して、やっぱり笑っているんだろうと思った。
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2005-02-05 23:20:47

1. 出発間際

テーマ:今生の別れ
義母はここ数年で急激に痴呆が進んだ。また、体調もよくないらしい。わたしたちは離れて住んでいるため、いまいち、現状がうまく把握できない。が、彼女の周りにいる人たちからの要請で、急遽、荷物をまとめて彼女のところへ行った。そのため、3週間ほど不在にしておりました。末期の肺がんで、脳へ転移している可能性が高く、あと2-3ヶ月との診断。

行くにあたって、息子に大好きなおばあちゃんがもうすぐ死ぬことを説明しなければいけなくなった。

「突然やけどな、生きてるもんはみんないつか死ぬんや」
「知ってる」
「そやから、おばあちゃんももうすぐ死ぬんや」
「・・・」
「時期がきたんや」
「・・・」
「それでな、おばあちゃんがきちんと死ねるようにせなあかんねん。医者が注射打って無理やり生かしたり、手術したりせえへんように、せなあかん。それだけやなくて、最後におばあちゃんがどうしてもらいたいのか、それもきちんと決めなあかん。そやから、おばあちゃんとこに行くで」
「おばあちゃん、かわいそう・・・」
「いや、実はな、ボケてるやろ、そやからおばあちゃん、自分が死ぬこと忘れてるみたいや」
「・・・?」
「ボケるゆうのは、本人にとっては、幸せなことなんや」

ボケる人間の周囲にいる者はたまらない。が、ボケたことにより、今まで不平不満の塊で、それを回りにぶつけることで解消してきた義母が、不平不満をぶつけてこなくなった。忘れてしまうらしい。

「それでな、約束したやろ、おばあちゃんが死ぬ前にもっぺん会わせたるって」
「うん」
「これから会いに行くでえ。支度しい」
「でも、死ぬんでしょ」
「まだ、間がある。今すぐには死なへん」

今生の別れや。

「でも・・・」

あのな、死ぬのは怖いと思うかしらんけどな、よう考えてみ。生きとるからいろいろ感じるわけやし、考えるやろ。そやから生きてる限りは、絶対に死なへんし、死ぬことかって経験できへん。そやけどな、死んでしもたら、生きてえへんさかい、なんも感じひんし、考えへん。そやから、死んでしもたら死ぬことなんか関係あらへん。

「・・・・???」
「要するに、死ぬことは経験できひんから知ることはできん。そやからそんなこと考えんでもええねん。生きてる限りは生きてるんやし」
「よくわからないけど・・・でも、やっぱり、考えるでしょ、そうすると死ぬのは、怖い」
「そや、怖い。それは、知ることができひんから、怖いんや。幽霊の正体見たり枯れ尾花ってやつや。その恐怖を利用する悪いやつらがいてるねん。それが、宗教や」
「でも、ジーザスに天国にいけるって言われたらほっとするよ」
「おまえ、それこそようわからんやろ。天国ってどこにあるねん。隣の町までまっすぐ行って、突き当りを左に曲がった右側の三軒目ってわけやないやろ」
「上のほう・・・」
「宇宙に上も下もあるかい」

とりあえず、出かけたのでした。
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