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トリシェの蹉跌

経済危機対応に目立つ足並みの乱れ


ESMの前倒しやらEFSF規模の明確など、欧州は炎上している。

欧州は金融政策が統合され、財政がバラバラだとよく言われるが、これらの政策は実質、欧州の財政政策だといえる。


しかしながら、財政政策の場合は単独国家ですら実行ラグが大きい訳であって、ユーロ圏に17カ国も加盟している事を考えると、足並みがなかなか揃わない事は容易に想像できた。この事について自分は昨年、再三指摘してきた。 今後も、足並みを揃えなくてはいけなくなるような、即ち「追い詰められた時」になってやっと物事が進むというような、後手の対応は当面続く事になるだろう。


ECB、「かなりの額の」イタリア国債を買い入れているもよう


という事で、実行ラグの小さい金融政策に頼らざるを得ない状況は続いており、ECBのSMP(国債買取)は今現在、何だかんだで継続している事になる。


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国債買い入れのアナウンスとともにイールドは下落(赤枠)、中断していた時には上昇した(黒枠)。 しかしながら今現在、買取額が拡大する中(水色背景)、「ネズミ大作戦」(A Game of Cat and Muse)は効かなくなってきた。EFSF規模が拡大した暁には、国債買取プログラムも規模拡大となる訳ですが、根本的な問題は、買い支えの規模の問題では無い。 ギリシャみたいな「ヤミ金国家」とイタチごっこを繰り返している限り、いくら受け皿の規模が大きくなろうとも同じ事の繰り返しだといえる。




功績への勇み足


そんな国債買取りとともに、不胎化措置も同時並行しているECBですが、それと反するように「長めの流動性供給」の必要性に迫られている。最近では、09年に実施した1年物オペ再開が議論されていますが、ECB当局者が統一見解を待たずしてこれ(1年物オペ)に言及した事で、実施はほぼ確実な状況となっている。


利上げにしても再三指摘 したとおり、4月・7月と先走りし過ぎた。2度目(7月)に関しては、かなり余計だった。ここ最近、ユーロショートで稼いだ投資家はかなり多かったはずだ。


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利上げに踏み切ったトリシェは、経済鈍化のリスクも重々承知していたはずだが、おそらくは、残りの任期を計算した場合、ユーロ下落分を2度の引き上げで誤魔化しが効くと踏んでいたのだろう。少なくとも、そのような側面はあったように思える。


しかしながら彼の見通しは「大甘」だった。結果、ユーロ圏の信用とマネー規模は縮小した。彼の個人的な、「功績への作戦」は裏目に出た、という事になる。