朝ドラの主役に抜擢されるのは大もうけだが、大河の主役は貧乏くじだ。じゃあ、どうすればいいんだ。 | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

 かつては「NHK大河 に出た」というだけで役者の格が上がる、という時代がありました。
 しかし、いま、大河は壊滅的な状況です。
 ここ数年、朝ドラの主人公は高視聴率でチヤホヤされ、大河の主人公は低視聴率で叩かれる、というのが定番と化しています。特に女性主人公の年で顕著です。

 これは主演女優の資質ではなく、もはや構造的問題です。平日朝のドラマはみんなリアルタイムで見る習慣がついている、日曜夜の大河を家族で見る習慣なんか日本にはなくなっている、という単純な理由です、という話を、前のページで書きましたが
 どうせ誰が何の役をやっても、大河は視聴率を取れません。そして、責任は企画を立てたエライさんではなく、主演の役者におっかぶせられます。
 だから、新人女優が朝ドラの主役に抜擢されるのは「大もうけ」ですが、実績のある俳優が大河の主役に起用されるのは「貧乏くじ」です。下手すれば今までのキャリアを全否定されるようなダメージを負います。本人の責任でも何でもないのに。
 役者殺すに刃物は要らぬ、大河の主役にすればいい。
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 朝ドラは朝のあの時間にやってるから見るんで、同じものを日曜夜にやっても誰も見ません。朝ドラは「ながら」で見るものなので、主人公が架空でも無名で もいいし、15分番組ですから構成もジェットコースターで粗っぽいほうがウケます。朝ドラで実在の人物が出てきてもあくまで「モデル」であり、名前が微妙 に違ったりしますから、史実と違う派手な展開をいくら作っても構いません。主人公は新人で、脇の数人はベテラン、あとは話題作りでバラエティタレントを脇 役に並べるのは有効です。
 でも、同じことを大河でやったら「軽すぎる」と総スカンを食います。そりゃあそうでしょ。
 大河はいまや、個々が意識してアクセスするのでなければ見ない、というものになってます。まずは道具立て(題材やキャスティング)で「おお」と思っても らわなければ、見ようとも思わないでしょう。だから、題材選びは重要で、見てもらえなければいいドラマも何もないわけです。

 大河ドラマを熱く論じる人たちは歴史マニアばかりですから、周りのみんなそうだと思い込んでいるでしょうが、現実にはそんなこたあないです。歴史ファ ンなんて、国民の一割もいりゃいいほうで(その意味では「視聴率は10%で充分」という伊勢谷友介 がまったく正しい)、大多数の人間は「戦国武将なんて、信長か秀吉くらいしか知らないよ」というyような人がほとんどです。そういう 「国民」相手にドラマ作らにゃあならない、という現実からすれば、主人公の歴史邸知名度って、意外と大きな要素かも知れません。
 とはいえ、何にしても大河の視聴率がハネ上がる方法なんてもはやないですから、「いいドラマだったけど視聴率は悪かったね」という状態を普通に受け入れるのが、正しい態度だ、つうことになります。
でもね、NHK的には、そうはいかないんですよね。大河と紅白の視聴率は権威のバロメーターで、この2枚 看板がつねに民放より段違いに格上の視聴率を取ってることが、「NHKは特別だ」という権威を保てるわけで。
 無理ですって。時代の流れに抗おうとしてもダメだってのは、それこそ大河ドラマがいつも描いていることじゃないか。

 平均12%のドラマ、御の字じゃないですか。井上真央がんばった じゃないか。現代社会なら立派なものじゃないか。・・・とはいかないのが、NHK大河のつらいところで、そもそも今の時代に無理な任務を負わされているのだから、今後もますます大河は迷走するでしょう。残念ですが、宿命です。
では、大河を「復活」ではなく「維持」するためには、どうすればいいのか?