南極物語
1983年公開当時、約59億円という配給収入記録を打ち立て、
『もののけ姫』がその記録を更新するまで十数年間にわたり
日本映画最大のヒット作の座をキープしてきた『南極物語』
(高倉健、渡瀬恒彦、夏目雅子、荻野目慶子他、出演)が、
ディズニーによってリメイクされ、3月18日に公開された。
全米では2月に公開され、既に90億円近く稼ぐヒットとなり、
評判も概していい。

オリジナル版は終戦後間もない昭和20年代の実話の映画化で、
リメイク版はそれを現代風かつディズニー風に焼き直している
が、基本的な展開はだいたい同じ。やむを得ない事情で南極に
「犬ぞり犬」たちが取り残され、極寒の夏(北半球でいえば、
冬のこと)をいかに生き抜き、ご主人様の人間と再会できたか
を描いた感動のドラマだ。が、細かい描写や人物設定等の印象
は随分と違う。

南極に犬が取り残されるまでの経緯は、ディズニー版の方が
うまく筋道立てた展開に練り直されていて、テンポがよく
説得力もある。それに対して、オリジナル版の方は、
あくまで実話に則しているせいか、そこに至るまで
のドラマ的設定がイマイチ弱い。

同じく高倉健主演で大ヒットした『八甲田山』もそうだったけど、
「ほとんど必然性の感じられない試練に意味なく放り込まれる」
といった感じだ。それはそうと、高倉健さんは『八甲田山』とか
『ぽっぽや』とか、寒々しい大地の雪の中に佇むイメージが
ホントよく似合う俳優さんだよネ。

オリジナル版は南極でロケしたせいか、本当に寒そうで暗い。
それに比べ、ディズニー版はカナダとスタジオで撮影されたせいか、
主演が『ワイルド・スピード』シリーズのポール・ウォーカー
というキャラのせいか、全体的に晴々とした青空の下、
日差しも明るく、ちっとも寒そうじゃない!!
……これなら猫でも生き残れそうだ(笑)

道理で、日本版ではタロとジロの2匹しか生き残れないが、
ディズニー版では、さすがに一匹殺すのが精一杯。
ほとんど生還して、ご主人様と感動の再会を果たす。
サバイバルのリアリティより、観客受けするドラマ性を
重視した監督は、『生きてこそ』や『コンゴ』を演出した
フランク・マーシャル。監督としてよりも、プロデューサー
としての実績の方が華々しい監督ならではの最大公約数的
演出が興行的にも好結果をもたらしたと言えるだろう。

その代わり、ディズニー版にリアルさを求めちゃいけない。
例えば、ヒョウアザラシの描写にも、その違いは顕れる。
ディズニー版では犬たちに襲い来る敵のような存在だが、
日本版では生きるための獲物としてアザラシを取り囲み、
食うか食われるかの非情な自然を描く映像になっている。

当然、ディズニー映画だから、それでいいのかも知れない。
が、現実には南極の6月前後は太陽がほとんど顔を出さない
(逆に南極の12月前後は白夜で太陽がほとんど沈まない……
ディズニー版は、そんな明白なリアリティも無視している)
闇の世界で、犬たちがオーロラに向かって吠える日本版は、
まるでドキュメンタリー映像を見ているかの如き、見事な
シーンもあった。そこにヴァンゲリスの例の有名な主題曲が
流れていたかどうかは忘れた(再会のシーンでは流れてた)
が、この音楽はオリジナル版のハイライトとも言うべき
素晴らしい出来だ。この音楽で、日本版は救われた。

それにしても、日本版はリアリティ重視でトーンが暗い。
そんな映画がなぜ、記録的な大ヒットになったかというと、
これは初めてフジテレビが映画製作事業に乗り出したという
経緯から、自局番組の中で昼といわず夜といわず毎日のように
『南極物語』のタロとジロをPRしまくっていたからだ。

当時、黒澤明監督はそんな状況に対して苦言を呈していた。
「最近は、動物と子供の話ばかりで、そんなのしか売れない。
日本映画は大人の人間の話を描かないと、いずれダメになる」
みたいなことをコメントしていた。実際、『南極物語』の興行
記録に次ぐ邦画のヒット作は、長らく『子猫物語』だった。


で、どっちが面白かったか?……動物と人間の愛情ドラマに、
リアリティのある実話の迫力を求めたいなら日本版、単純に
エンターテイメントとして楽しみたいならディズニー版、
といったところか。総合評価は、どちらも★★★



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南極物語



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……いい勝負かな。でも、
個人的にはディズニー版の方が好きだ。
やっぱり、映画は楽しい方がいい!(笑)
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emily rose

王JAPAN、野球世界一おめでとう!
荒川静香の女子フィギュア初の金メダルに続いて
今年二つの目の国民的ビッグニュースだね!

これは、すぐにでも映画化してほしい話。
実話じゃなかったら考えられない奇跡的展開といい、
内容的にもいろんな要素、切り方ができるはず。

最近はWBCのことで頭がいっぱいになって、
映画の話がトンと御無沙汰になっちゃった。

というわけで、実話ならではの「考えられない話」の凄味が
堪能できる劇場最新作『エミリー・ローズ』について。

昨年、全米で初登場1位となった話題作『エミリー・ローズ』は、
悪魔祓いによって死亡したとされる19歳のアメリカの女子大生が
本当に悪魔にとり憑かれて死亡したのかどうか、裁判で争われた
という実話の映画化だ。

訴えられたのは、エミリー・ローズの両親から依頼を受けて
キリスト教会から派遣された悪魔祓い師(エクソシスト)。
その神父が医者の処方する薬を一切やめさせた結果、彼女は
死んだのかどうかが焦点となる裁判劇で、その合間に随所で
挿入される生前のエミリー・ローズの描写が思っていたより
怖い。裁判劇と思って余裕で見てると、オカルトホラー的な
怖さに縮み上がるぞ。もちろん、実話なので大げさなホラー
描写は少ないが、これが本当の話かと思うと迫力が違う。

神父の弁護人を引き受ける主人公に扮するローラ・リニーと
舞台で共演し、彼女の推薦でエミリー・ローズ役を射止めた
ジェニファー・カーペンターが、悪魔にとり憑かれたように
上体を反らしている姿を使った日本のTVスポットCMは、
「悪魔のイナバウアー」(本来のイナバウアーとはまったく
意味が違います)として深夜枠中心に放映され、賛否両論の
大反響。いったんは「怖い」と抗議殺到したことから放映は
中止されたが、そのことでさらに話題となって盛り上がり、
再び「悪魔のイナバウアー」TVスポットは復活したらしい。

弁護士役のローラ・リニーは、オスカー候補にもなった演技派。
『ラブ・アクチュアリー』の独身OL役も良かったけど、最近は
『ミスティック・リバー』でショーン・ペンの奥さん役、さらに
『目撃』ではクリント・イーストウッドの娘役と、オスカー監督
イーストウッドの信頼も厚いようだ。しかし、彼女を最初に認識
した映画『真実の行方』(1996年、エド ワード・ノートンの出世作)
は、リチャード・ギア扮する弁護士と対決する冷徹な検事役で、
やっぱり裁判劇。彼女には、そんな知的な役柄がよく似合う。
まさにピッタリの適役。



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真実の行方


(以下、ネタバレ注意!)

どこまでが真実の話で、どこまでが演出なのかはよくわからないが、
悪魔祓いに立ち会った医師(彼は証言を前に自動車事故で死亡!)
が録音した現場のテープは実在のもの。また、エミリー・ローズが
自ら死を選んだ理由が明かされる手紙の内容から、彼女を「聖人」
として推挙しようとする動きがあるのも事実だ。

しかし、裁判の結果は有罪。無罪とすれば、悪魔に殺されたことを
認める判決となるため、それは無理だったのかもしれない。けれど、
判決まで獄中にいた期間を刑期として、実質無罪放免になるという
灰色決着の結末も実話なの???

この裁定には、唖然とした。白黒ハッキリさせたがるアメリカで、
こんな出来すぎな結末は普通、考えられない。まるでドラマ的オチ。
実話なのかもしれないけど、あまりに突飛な裁定だけは真実の迫力が
なかったな~。やっぱり悪魔が絡むと、さすがのアメリカ人も白黒
ハッキリつけられないのかな。っていうか、そもそもそんな事件を
法的に裁こうとした国選検事(?)側の意図がイマイチ不明瞭……
売名行為?……エミリー・ローズの両親がエクソシストを訴えた
というならわかるけど、彼らは神父を応援する側だったし、
結構「余計なお世話」的な裁判だったわけ?…(笑)

確かに、悪魔祓いが近年、増加している現実に目を向けさせた、
という意義は大きかったかもしれない。昔からアフリカなどの
土着部族民の間では、悪魔祓いは日常的にあったらしいが、
実はここ10年間で悪魔祓いの依頼は10倍に増えているらしい。
そのため、カトリック教会では正式に公認エクソシストを任命し、
ニューヨークだけでカトリック司祭が正式調査した悪魔憑きは、
過去10年で40件もあるという。真実は恐ろしい。

それを娯楽のように商品化して見せるアメリカ人の商魂もまた
スゴイものがある……今や実話は、金儲けのネタ?(笑)
……そう思ってみると、そんなに怖くなくなるかな。
それが最後に実話の迫力を削いでる気がする。
というわけで、総合評価★★★

誰か、早く「王JAPAN」の感動実話を映画化しようよ!
何なら私が脚本を書いてもいいですよ!(笑)
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crash2
今回は、映画三昧ブログ開設1周年記念!
というわけで最近、1週間以上も更新できなかったこともあり、
この1年間の反省と自戒をこめて『クラッシュ』について書こう。

コレ、今回のアカデミー作品賞候補5本の中で唯一見ている映画。
オスカー予想とは別に、とても応援したくなる、いい映画だった。

全米では昨年5月(日本では2006年2月11日)に公開され、
5500万ドルを稼ぐ中ヒットを記録したLAが舞台の現代劇だ。

人種偏見についての映画、と一言で片づけてしまうのは、
サンドラ・ブロックなどのパートを見れば間違いではない、
といえるけれど、この映画の良さが半分も伝わらないだろう。


実は昔、私は夢の中で、まったく知らないアカの他人を
しょっちゅう殺していた……。理由はよくわからないけど、
たいがい電車の中とかで超ムカつく奴がいてボコボコにしたり、
線路に突き落としたり、たまたま車を運転中に飛び出してきた
人を轢き殺してしまったり……なんてことも時々あったかな。

問題は、その夢の結末。なぜかいつも同じパターンだった。
自分にとっては、殺したいほどムカつく態度の奴が、なぜか必ず
殺した後に、そいつが世間的に評判のいい人だったとわかる……
両親に優しかったり、家族思いだったり、なぜか殺した奴に限って
みんないい人!なのだ。で、そいつの親とかが、涙ながらに訴えて
くると、どんなにムカつく奴だったか、なんて説明しても無意味。

なんで、いつもそうなんだろう、と夢の中で毎回、悩んでいた。
そこで夢はいつも終わり。実際に人を殺したことはないので、
多分、似たような夢をよく見ていたんだと思うけど(笑)。
でも、割り切れない思いだけがいつも残った……

『クラッシュ』を見ていたら、突然またその夢の中に引き戻されて
ボーッと見ているような感覚に襲われた。確かにビデオなどで寸断
しながら見ていたら、そんなマジックにはかからなかったかもしれ
ないし、見るのが辛くなってたかもしれない。なぜかというと……

『クラッシュ』は、人と人との繋がりや関係の「悪い面」ばかりを
ピックアップしたような映画だからだ。
ある意味、人と人との繋がりの「素晴らしい面」ばかりを出会いと
愛でくくった名作『ラブ・アクチュアリー』とは対極をなす映画。
『ラブ・アクチュアリー』のダークサイド版と思って間違いない。
この映画の甘さが嫌いだった人には、ぜひ『クラッシュ』を劇場で
(辛くともノンストップで観られる環境で)見てほしいと思う。

とにかく『クラッシュ』に出てくる人たちは皆、他人の言うことを
まったく聞かない。一人一人の内情を見てみると、実はみんな、
そんなに悪い人じゃない。というか結構、善良な人たちなんだけど、
いざ他人との関わり合いをもつと自分の主張ばかり始めて、
人の話に聞く耳をもたない。相手に理解を示さない。

これはブログをやっていて感じたことでもある。
主張と理解のバランスが崩れ、自己嫌悪に陥ることもある。
これが一年を通じての反省だ。実はソーシャルネットなどでも、
そうした泥沼の言い争いが裏では頻繁にあるらしい。

その結果、いろんな最悪な状況が生まれるわけだが、
人種偏見は、その一つの要因に過ぎない。

特に印象的なのは、ヒスパニック系の錠前屋とイラン人の話。
全財産を叩いてアメリカに渡り、店をオープンしたイラン人が
用心のため拳銃を購入しようとするが、イラク人と間違われて
互いの主義主張を譲らずクラッシュしまくる。このイラン人、
あとで錠前屋に店のドアのカギを直してもらおうと依頼するが、
「ドアの周りを直さないと、これではカギを直しても無意味だ」
という錠前屋の助言を聞かず、「いいから言われた通り直せ!」
の一点張りで、まったくラチがあかない。それで、この錠前屋、
お金を受け取らずに帰ってしまう。後日、イラン人の店は夜中、
強盗に破壊され尽くす。全財産がパーだ。絶望したイラン人は、
錠前屋を逆恨みし、拳銃をもって錠前屋の住所を捜し当てる。

この錠前屋には一人娘がいて、娘のために一所懸命働いている。
「この透明マントを身に付けていれば天使が命を守ってくれる」
と、娘にプレゼントする優しい父親だ。そこへイラン人が現れ、
彼に拳銃を突きつける。それを見た娘は「パパは今、透明マント
を付けてないから、天使が守ってくれない!」と家を飛び出し、
拳銃と父親の間に割って入る。銃撃音。娘を抱きしめ叫ぶ父親……

『クラッシュ』は、最もそうなってほしくない、と思う方へと話が
展開する。もう、やめて、とお願いしたくなるストーリーなのだ。

マット・ディロン扮するベテラン警官に、セクハラ的な取り調べを
受ける黒人女性の話もそうだ。こんな横暴なセクハラ警官だけには
二度と会いたくないと思っているのに、車の横転事故でガソリンが
漏れ、怪我して脱出できない彼女を救いに来たのは、たまたまそこ
に居合わせたマット・ディロンなのだ。「来ないで!」と叫ぶが、
このままではすぐに引火して爆発してしまう、その皮肉な状況…。

マット・ディロンの行き過ぎたやり方に我慢ならず、コンビ解消を
直訴する相棒の若い警官(ライアン・フィリップ)は、この映画で
唯一、人の話を聞き入れ、温情も厚い一番いい奴だった。なのに、
結果的に彼だけが法的に取り返しのつかない行為に及んでしまう、
その皮肉さ。一方で、人の話をまったく聞かないマット・ディロン
が、家では不憫な闘病生活を送っている父親思いの一面もあったり
……まさに、これが現実だ。人間にはいろんな面があって、捉え方
によっては、善人にも悪人にもなる……実に見事な脚本だった。
終わり方の切れ味も良かった!
最近、マンネリ化している群衆劇の大家ロバート・アルトマン監督
作品より、はるかに上をいく出来ばえだ(総合評価★★★★★)。

この脚本は『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー脚色賞候補
となったポール・ハギス、彼の監督デビュー作でもある。当然、
今回のオスカー予想では、個人的に最も応援している映画だ。


最近、あの夢を見なくなったのは、その夢に対して一つの結論が
出たからだ、と思っている。それは、殺された人の家族や友人が
死んだ人に対して、「あー、あいつは殺されて当然の奴だったね」
なんてコメントするはずがない、家族のコメントもその人の一面
を語っているに過ぎない、と思えるようになったからだろう。
ただし、新聞やニュースでは、その一面しか取り上げられない。
結果論とその感想でしか物事は語られないことが実に多い。
『クラッシュ』はその内情をいろんな角度から見せてくれる。
イーストウッドの『ミスティック・リバー』とテーマは同じ。
現実は思ったより複雑で、時に非情だ。何事も理解し合うこと
から始めるしか、良くなる方法はないのだろう。

読者の皆様、一年間ありがとうございました。
また今後とも宜しくお願い致します。
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フライトプラン
1月28日、日本公開初登場1位。3週間で、興行収入23億円。
すでに3年前の主演作『パニック・ルーム』の興収20億円を
超える大ヒットとなったジョディ・フォスターの最新主演作
『フライトプラン』は、予告編のオモシロさと本編が同程度
の出来という、標準的なハリウッド娯楽映画だ。宣伝費も、
それ相応。テレビCMは、随分長いことやってた。

飛行機の中にいる母娘。「数時間、眠ってしまえば、
起きた時にはニューヨークに着いてるから大丈夫」
みたいなことを娘に話して、眠るように諭す母。
窓にフーッと息を吹きかけ、指でハートを描く娘……。
ところが、母役のジョディ・フォスターが目覚めると娘がいない。
高度1万mを飛行中の乗客425名の機内で、目撃者は誰もいない。
娘を探しまくる母親の騒ぎで、機内が混乱状態に陥ったため、
捜索は乗員に任せ、席に着いて落ち着くように諭す機長。

しかし、機長役が今まで何度も悪役を演じているショーン・ビーン
だから信用できない(それが狙い??……笑)。
そして、この機長は客室乗務員から「娘が離陸前に死亡している」
と報告を受け、最初から子供など乗っていない、と母親に告げる。
夫が自殺したばかりで、一人娘までも失い、我を見失う母親。
心理カウンセラーに付き添われ、本当に自分がおかしくなっている
のかもしれない、と思った瞬間、窓に浮き出たハートを見つける!
やっぱり自分は狂ってない、娘は絶対、機内にいる……
そう確信した母は単独、実力行使に出る。

そんな予告編だけで、見たくなってしまうストーリーは、
もともとショーン・ペンのために書かれた脚本だった。が、
ジョディ・フォスター演じる母親に主人公が変わったことで、
より興行的な成功が確実なものになったのは間違いない。

(以下、真犯人は明かしませんが、それ以外はネタバレ注意!)

とはいえ、主人公がこの飛行機の設計者という設定は、いかにも
ご都合主義的。そうしないと、普通の母親では機内で実力行使など
簡単にできない、というリアリティ上の都合が最大の要因だろう。
さらに、彼女をハイジャック犯人に仕立てて現金を要求するという
手の込んだ筋書きを達成させるために、あえて飛行機の設計者を
選んで仕掛けられた罠だったという一見、合理的な説明もされる
ので、物語としての違和感は確かにない。けどねえ……後半、
そうした整合性のための種あかしの説明をされればされるほど、
見ているほうはシラけてくる。ご都合の説明を延々と受けてる
感じになっちゃうんだよねぇ…(笑)。

実際、その後の強いジョディ・フォスターの活躍を見るにつけ、
飛行機の設計者を犯人に仕立てるメリットより、デメリットの方が
はるかにデカいような気もしてくる。特に、犯人がわかった後の
展開は誰の目にも明らかで、急速に話への興味が冷めてしまう。
そこへ追い打ちをかけるような、ご都合の説明の嵐で万事休す。

最後は、爆発する飛行機から娘を抱えて歩いてくる母親の姿など、
ハリウッドの典型的ヒーローもの以外の何ものでもない。だから、
ヒットしたんだろうけど……全米では『パニック・ルーム』と同じ
9000万ドル前後のヒット。まるで、ありがちなアクション・スター
ばりの映画が2本も続くとは、ジョディ・フォスターらしくない。
間にチョイ役で、フランス映画に出ているところが彼女らしいけど
……単純にハリウッドスターとしての期待しか彼女にはしていない
ということなら充分楽しめるだろう。総合評価は及第点の★★★

『パニック・ルーム』公開のとき以来、3年ぶり6度目の来日
となったジョディ・フォスターは、映画で見るよりずっと若く、
子供との生活が本当に充実しているらしかった。それだけに、
監督作の予定は当面なく、依頼が来た映画に時々出演するだけ
というスタンスがしばらくの間は続くようだ。

それでも毎回、1億ドル近いヒットを飛ばせるのはスターは、
そんなにいないことを考えると、大したもんだなんだけどね…。
でも、それでいいの?……同じく危険に晒される母娘を描いた
パニック・サスペンス娯楽映画『パニック・ルーム』の方が、
もうちょっと盛り上がったような、そんな記憶があるけど……
こちらも総合評価は及第点★★★ぐらいだったかな。



ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
パニック・ルーム
7p
2005年暮れより、2本のタイ映画が全国順次公開されている。
いずれもアクション映画で、実際テイストは随分違うのだが、
邦題が似通っていて(一方の原題は邦題とまったく違う)、
製作スタッフも似たりよったりで、ややこしいので、
まず最初に整理しておこう。

タイでの公開順で言うと、日本で最も遅れて公開された
『バトル7』(原題:ヘブンズ・セブン)が、2002年で最初。
同作のプロデューサー、プラッチャー・ピンゲーオが監督した
『マッハ!』(原題:ムエタイ・ウォリアー)が、2003年公開
(日本では2004年に公開されている)で、同監督が再び製作し、
『マッハ!』のアクション監督パンナー・リットグライが監督した
『七人のマッハ!!!!!!!』(原題:ボーン・トゥ・ファイト)が
最近の2004年公開、という順番になっている。

(以下、面倒なのでタイトルの「!」マークは省略する…!)

今回は、ちょっと怒っている(ホントにちょっとだけです、笑)。

そもそもCGなし、ワイヤーなし、スタントマンなし、がウリの
アクション映画『マッハ!』は、一部評論家の絶賛でブロガーの
「年間ベスト10」にも入るぐらい評判だったらしいのだが、まず
それが信じられない。実は、この『マッハ!』は見てないので、
あんまりどうのこうのと言える立場ではないんだけれど、どうも
『七人のマッハ』が『マッハ!』をさらにパワーアップした感じ
のアクション映画であるという宣伝文句や、その『七人のマッハ』
評を見るにつけ、『マッハ!』がそれと同類のどうでもいい映画
のような気がしてならない。

基本的に、素晴らしいアクション映画というのは、物語における
必然性や緊迫感の中で、初めてスタントシーンも生きてくる。
どんなに凄いスタントシーンをつなげたところで、無味乾燥な
物語の中では、ちっとも盛り上がらないし、退屈極まりない。
『七人のマッハ』は、その典型。そんなのが見たい人はスタント
のドキュメンタリーを見ればいい。それで事足りる。そういう
アクション映画は評価したくない。決死のスタントには拍手を
贈りたいが、それをつなげただけのドキュメンタリーにした方が
まだマシ、みたいな物語を延々見せられるのは拷問に近い。

こんな映画が、そんなにいいのか???????
まったく信じられない。我が目を疑う。

実際、『七人のマッハ』の最大の見どころは、エンドロールに
流れる生身のスタント失敗シーンの数々だ。NGシーンの方が
迫力があって見応えがあるということは、そんなドキュメント
部分だけで充分、あとは寝ていても、まったく損しないレベル
ということだ。そこまで言える映画は滅多にない。総合評価★、
っていうか、眠気との戦いがメインになって判定不能だ。

ところが、いくつかのブログを見る限り、『七人のマッハ』は
「絶賛」までいかないにしても、ヘンに評価されている。前作
の『マッハ!』よりいい、とも悪い、とも書いてない。きちん
と評されているとは到底思えない。不思議でしょうがない。
これはオカしい。さらに、この邦題もオカしい。

この映画は、スタントシーンを寄せ集めたアクション映画なので、
俳優を使わず、ムエタイ、テコンドー、体操、サッカー等のプロを
主役に配して撮影されただけあって、物語や演技はどうでもいい、
ということらしいのだが、アホでも主役のプロが七人なのかどうか
数えればわかるものを、あえて「七人」(実際はもっと多い!)と
しているところに、この映画のC級以下のいい加減な作りが表れて
いると言っていい。ただし、映画のノリ自体はいい加減ではなく、
演出スタイルは結構マジだから、余計にタチが悪い。

それに比べれば、『バトル7』の方がオープニングの地雷シーン
からして相当いい加減なノリで面白い。オリジナルは1950年代に
製作された国民的物語らしく、タイに駐留する米軍憎しの感情が、
マカロニ・ウェスタンばりの娯楽アクション映画(タイ人たちは
アクション西部劇が好きなのか、そういうタイ映画が少なくない)
に結実している。何より、7人のキャラクターがきちんと立って
いる点だけでも、『セブンソード』などより遙かによくできている。

『七人のマッハ』は根本的に七人じゃないので、キャラクターの
描き分け以前の問題。話にならない。『セブンソード』の方が
人数を数え間違えてないだけ、まだマシ…(なんと低レベルな!)

もちろん、単純明快な米軍=悪者の構図やヘタウマな特撮シーンは、
無邪気なB級映画のノリなので、真剣に見るほどのアクション映画
じゃないが、米軍をやっつけてタイ国民の溜飲を下げ、続編も製作
されるほど愛され大ヒットしたというのは、わからないでもない。
(……総合評価★★★)

でも、二挺拳銃の主人公のオヤジは、なんで赤パン(赤いパンツ)
を履いているんだろう。意図がよくわからない。確かに目立つこと
は目立つけど、日本の女性には好まれそうなキャラじゃないね……
相対的に皆さん、暑苦しいタイプ。タイだから仕方ないのか(笑)。

何はともあれ、この勝負『バトル7』の圧勝です!
くれぐれもタイトルを間違えて見てしまわないように……。



ジェネオン エンタテインメント
マッハ ! プレミアム・エディション

ガッツ

水野晴郎さんが倒れて重体、というニュースを見て、
急遽予定した内容を変更、「1月14日よりOK牧場ロードショー」
(チラシの宣伝文句より)されているガッツ石松主演最新作
『ガッツ伝説 愛しのピット・ブル』の話をしよう。

なぜって、この二人、実は浅からぬ因縁がある。
ガッツ石松が唯一、監督・主演・脚本を兼ねて製作した意欲作
『カンバック』(1990年)の公開当時、映画評論家として
横綱級の知名度があった水野晴郎さんに映画を酷評され、
怒ったガッツさんは、テレビ番組中に食ってかかった。
「これまでのボクシング映画は、みんな嘘っぱち。
本当のボクシングはそんなもんじゃない。それが
ボクシングの素人にわかるのか。釈明しろ!」
みたいな大人げない内容だった。水野さんも負けてはいない。
「私は映画評論家として、よくないと思うものを皆さんに
オススメするわけにはいきません」
「何を!」とガッツさん、険悪なムードで収拾がつかないまま
テレビ番組はドタバタと終了、となってしまったのである!



松竹
カンバック
これには見ている方が驚いた!
それ以降、ガッツさんは俳優に専念、映画を一度も製作していない。

実はそれから数年後、私はガッツさんにも、水野さんにもお会いして
話をしたことがある。もちろん、あまり深くは聞かなかった(笑)
が、二人ともタイプは違えど、とても素敵な人たちだった。

実際、その後、ウチの娘が生まれた時、あまりにガッツさんに顔が
似ていた(後で知ったのだが、生まれたばかりの赤ちゃんは、みんな
ガッツ石松さんに似ているらしい。そういう話を出産した人に何度も
聞いたことがある!)こともあり、ガッツさんには思い入れがある。

そして一昨年、ガッツさんが水野晴郎さんの『シベリア超特急5』に
出演しているのを見て、「和解したんだな」と人知れず嬉しかった。
ちょうど、ガッツさんが「OK牧場?」で再び脚光を浴び始めていた
頃だ。それから、『ガッツ伝説』が40万部のベストセラーとなった。



ポニーキャニオン
シベリア超特急5~義経の怨霊、超特急に舞う~



ガッツ石松&鈴木佑季, EXCITING編集部
最驚!ガッツ伝説



ガッツファミリー, エキサイティング編集部
最驚!ガッツ伝説2

しかし、それ以前に、ガッツさんの俳優としての実績はものすごい。
リドリー・スコットとスピルバーグ監督作品の両方に出ているのは
日本人では他にいない、というのがガッツさんの自慢だ。それで、
「人情ドラマの最高傑作」という明らかな誇大宣伝に騙されて、
最新作『愛しのピット・ブル』を見てしまった、というわけだ。

確かに人情喜劇であることは間違いない。ただ、『ガッツ伝説』と
タイトルに謳うからには、徹底的に大ボケをかましてほしかった。
これじゃ全然、笑えない。元ボクサーのしがないペット屋のシャイ
なオヤジが、シングルマザーの麻生祐未に不器用な恋をするという、
今時TVドラマでもやりそうにない、ありきたりな設定は古臭過ぎ。
舞台での実績がある野伏翔監督は、なぜ『ガッツ伝説』という本が
こんなに受けたのか、まったくわかってなかったんだろうと思う。
どうせコケるなら、せめて「OK牧場?」の台詞に失笑が起こる
ぐらいボケまくって、大暴れしてほしかったなあ……総合評価★
(ガッツさん、ゴメンね……水野さん同様、許して下さい~笑!)
新宿トーアにて、まだ公開中、と思います(汗)。

ちなみに、「OK牧場?」のネタ元、『OK牧場の決闘』(1956年)
は、水野晴郎さんの水曜ロードショーでも視聴率25%を稼いだ往年の
大ヒット作。何度も映画化されている西部開拓史上最も有名な実話を
基に、実際の決闘シーンの一人一人の動きを忠実に再現したという
ジョン・スタージェス監督の決闘三部作の一つ。フランキー・レイン
とディミトリ・ティオムキン(50~60年代の映画音楽のキング)の
『ローハイド』コンビによる有名な主題歌、バート・ランカスター、
カーク・ダグラスという二大スターの競演でも話題になった名作だ。
ジョン・スタージェス監督がワイアット・アープとドク・ホリデイの
その後を描いた続編『墓石と決闘』(1967年)も、出演者は異なるが
(ジェームズ・ガーナーのガンさばきは見事ですよ)佳作だった。
また、後者の音楽は巨匠ジェリー・ゴールドスミスの初期の傑作。
スリリングでキレのある音は、もう往年の名作とは違って今風です。
どちらも、総合評価★★★★(……今、見ると★★★ぐらいかな?)



パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
OK牧場の決斗【字幕版】



アミューズソフトエンタテインメント
墓石と決闘

ケビン・コスナーとデニス・クエイドの『ワイアット・アープ』(94)
や、カート・ラッセルとバル・キルマーの『トゥームストーン』(93)
は、『OK牧場の決闘』と『墓石と決闘』の話の前後まで描いた大作
(前者)とアクション映画(後者)で、比べて見ると面白いですよ。

ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演の名画『荒野の決闘』
(46)も同じ話だけど、詳しく違いを述べていくとキリがないので、
今日はこのへんまでにしておこう。とにかく全部見てください(笑)。
でないと、いつか話が合わなくなりますから……。

『ガッツ伝説』との対決?……まだ言わせたいんですか?(笑)
元ネタは偉大だったということです。

水野さん、意識は回復したそうですが、くれぐれも無理はなさらぬように……。

青空


同じキーワードを含むタイトルの映画が同時期に公開されるという
現象は、昔からよくある。『四谷怪談』や『エンテベ』の企画等、
数え上げればキリがないだろう。主な理由として考えられるのは、

1、一方が他方の話題作を意識して誤解を招きかねない題名を
 あえて付ける場合、
2、対抗馬をつくることで話題性の相乗効果を狙う場合、
 の二通りがある。

似たような話の映画が同時期に公開されることが多いのも同様。
たいがい、おこぼれ狙いの映画の方が慌てて先んじて公開され、
本命はじっくり後からドンとくる。もちろん、

3、たまたま似ちゃった、

なんてこともあるだろうけど、それでは紛らわしくなるばかりで、
お互い迷惑な話。むしろ、話題作りのために恣意的に仕掛けられる
ケースの方が多いだろう。2005年11月公開の『トンケの蒼い空』
(全国順次公開なので、これから公開される地方劇場もある)と、
同じく12月公開の『アメノナカノ青空』(こちらも地方によっては
これからだったり、東京では渋谷シネクイントで明日まで!)も、
どちらも若手イケメン韓流スターが主演の韓国映画とあって、
極めて紛らわしいが、さて今回のケースでは、上述のどれに
当てハマるのか?

その判断は、以下を読んでからにしていただくとして、
とりあえず内容的に「どっちが面白かったか」のみ、
完全ネタバレありで話そうと思うので、未見の方はご注意を!
(……もう、公開が終了してる地域もあるので、いいよね?)

まず、先に公開された『トンケの蒼い空』は、『友へ チング』が
韓国映画史上最高のヒットとなったクァク・キョンテク監督作で、
注目は昨秋評判になった『私の頭の中の消しゴム』で人気上昇中の
若手実力派韓流スター、チョン・ウソン主演最新作として相次いで
公開された点。そんな彼が初の汚れ役に挑戦した珠玉の青春映画、
というのがこの映画のウリ(宣伝文句)なのだが、「珠玉」って
部分を除けば、確かに主人公は小汚く、アオ臭い話だった!(笑)

原題は『MUTT BOY』で、「蒼い空」は単なるイメージ?
……それより何より彼が劇中ズーッと壊れたクビ振り人形みたい
にフニャフニャ喋っているのが、気になって、気になって……
まるで、昔の田原俊彦と『太陽にほえろ!』のボン刑事を足して
2で割った感じ。チョン・ウソンの映画を見るのは、実はこれが
最初だったので、それが演技だとは思いつつも、いい年齢こいて
父親と二人暮らしで目的もなくフラフラしてるボンボンが偉そう
に首を横振り運動させながら喋る姿は、どうしても好きになれず
……とってもバカに見えた……純真にも見えたけど。それはいい
としても問題は、そんな馬鹿キャラに最後まで成長が見られない
こと。少年時代から因縁のあった地元のワルに1対1で殴り勝ち、
メデタシ、メデタシという、何ともマッチョな結論なのだ……!
これにて大人として父親に認められた、とでも言わんばかり。

ただ、この父親がとってもいいんだな。優秀なジモティ刑事で、
常にバカ息子を愛情深く見守っている。そんな父親の愛情が、
やっとラストでバカ息子に伝わる、というのが話の唯一の救い。
まあ、ちょっとは成長があったってことか(笑)……総合評価★★


対する『アメノナカノ青空』は、2003年に韓国で話題となり、
一部のファンが待ちに待って「お蔵入り」寸前から復活公開を
果たした感動作。原題は「…ing」で、こちらも「青空」とは
何ら関係ない。どちらも日本人的なイメージってことだろうか。

ポスト「微笑みの貴公子」的な爽やかさが魅力の韓流スター、
キム・レウォンが昨年末に来日した時は、さすがに3年前の映画
撮影時より精悍になっていたが、爽やかなスマイルはおんなじ。
彼が学生カメラマンに扮し、内気で病弱な主人公ミナ(『箪笥』
でブレイクしたイム・スジョン)をナンパする出会いのシーンは
爽やかなテンポながら「わざとらしく」もあり、「どうなの?」
って思ってたら、わざと「わざとらしく」していたことが後半、
わかってくる。それは、ミナの母親が自分自身と、いつ死ぬかも
知れない娘のために、最初で最後の恋の楽しい思い出とその写真
を撮っておこうと、学生カメラマンを雇っていたからだったのだ!
しかし、そんな内情まで知らされてなかったキム・レウォンは、
本気でミナのことが好きになってしまい……もう、その後の展開には
観念して号泣するしかない(笑)。

基本的には、シャーリーズ・セロンが自分の短い残りの人生を
思い出のあるものに、と行動する『スウィート・ノベンバー』
(これもエンヤの主題歌「オンリータイム」と相まってゲロ泣き
の映画でした……総合評価★★★★)と同じ清々しい感動が残る
ハートウォーミングなドラマなのだが、この映画は母親の気持ち
(ここでもなぜか『トンケの蒼い空』と同じく親子二人暮らし)
が物語を動かしている、という二重構造によって難病もののラブ
ストーリーにありがちだったアオ臭さが完全に消し飛んでいる!
見事な脚本、演出だ。この監督は『子猫をお願い』の女性脚本家
イ・オニで、これが監督デビュー作。しかも、撮影当時まだ28歳
だったというから、なんともコシャクで老練な監督だ。拍手!!
……総合評価★★★★

というわけで、「似てる題名新作対決1」の勝負は、
もう言うまでもないね(笑)。



ワーナー・ホーム・ビデオ
スウィート・ノベンバー 特別版
ザ・コーポレーション堀江社長絶命 (某夕刊紙一面の大見出し)
……ビックリしたなあ、もう!
知らない人が見たらホリエモンが死んだのかと思っちゃうよね?
(ホリエモンは年下なので、あえて、そう呼ばさせていただく)

ホリエモン逮捕のニュースは、他の重要なニュースをすべて
ブッ飛ばしてしまった。これには別の意味があるかもしれない。
それは後述するとして、個人的には誰かが逮捕されたニュースを見て、
こんなに「かわいそうだ」と思ったことはない。

物事には常に「表と裏」の二面性がある。
見方によって二種類の考え方が常にできる、ということだ。

表面的には、ホリエモン逮捕は最近流行の株買収により会社を大きく
していく手法に警鐘を鳴らしている、というホリエモンを完全に犯罪
者として扱うマスコミの論調。特に、ホリエモンがプロ野球球団買収
に名乗りを挙げて以来、彼のことを目の敵にしている某新聞社系列の
テレビ局などは「それ見たことか」と、嬉々としてホリエモン非難の
報道を繰り返し、誠に見苦しい。特に「これが報道でござい」って顔
して、端っからホリエモンを問題児扱いするような質問ばかりしてた
オバサン・キャスターと、得意気なヒゲづらの怪しい記者の二人は、
某独裁オーナーの傀儡だったのか、と疑ってしまいたくなるほどだ。

一方、その裏には多くの人が抱く「出る杭は打たれる」の格言通り、
企業買収を繰り返す会社拡大手法に対する「見せしめ」ではないか、
という感覚的感情論もある。それが事実かどうかは別として、意外と
そうした国民の直感は、遠からず的を射ていることが多い。

実際、政財官の思惑が一致した人たちによる好ましくない力が強力に
作用していたであろうことは、容易に想像できる。ここからは私見。

このスピード逮捕劇は、誰の誰に対する「見せしめ」だったのか、
またはこのニュースによって誰が一番得をするのか、それを考えれば
大筋のシナリオは読めてくる。普通に考えると、財界の一部の経営者
たちによる、企業買収を繰り返す新興経営者やフィクサー的ファンド
運営者たちへの警告と見せしめ、ということになるが、それだけでは
メリットが少ない。しかし、そこにホリエモン擁立の小泉責任を問う
声が加わってくると、胡散臭くなってくる。抵抗勢力と呼ばれた小泉
憎しのジイサマたちの顔が思い浮かんでくるからだ。しかも、彼らが
最も癒着していた国土交通省と金づるだった土建屋たちが、今まさに
マンション建築偽装問題で追い詰められようとしていた。そうなると
いつ、彼らの口から責任所在の火の粉が自分のところまで飛んでくる
かもしれない、という瀬戸際でヒヤヒヤしていた政治家や官僚もいた
だろう。つまり、ホリエモン逮捕を今、仕掛けることで最も得をした
のは、国民や野党の目がそちらに向かわせることで、マンション偽装
問題追及のムードに水を差してウヤムヤにしたい政官の大物、と見る
こともできる。そんなカラクリさえ、ホリエモン逮捕の影に見える。

マンション偽装問題の根は、拝金主義の経済性論理に他ならない。
そんな企業の経済性論理が世の中(特に米国)を支配していることに
疑問を呈し、数々の実例を挙げて糾弾しているのが、現在公開中の
カナダ製長編ドキュメンタリー映画『ザ・コーポレーション』だ。
経営学の神様、ピーター・ドラッカー氏をはじめ、『華氏911』の
マイケル・ムーア監督他、多くの著名批評家たちも出演していること
で話題となり、アメリカでも単館系でロングランのヒットを記録した
『ザ・コーポレーション』は、問題意識のない人には2時間を超える
上映時間が辛いかもしれないが、興味深い事実を次々提示している。

例えば、カナダや欧州各国では、米国産の牛乳の輸入を一切禁止して
いるらしい。米国の畜産業者たちが生産性(経済性)を上げるため、
牛に成長促進剤を投与し、その結果、有害物質が米国産牛乳から検出
されたからだという。日本も米国の経済性論理の前に屈して牛肉輸入
を再開した直後、経済性とは対極にある問題で再び輸入を禁止した。
いまだ米国政府は、業者の経済性を優先させる態度を翻していない。

ホリエモン逮捕の影響でフッ飛んでしまった重大なニュースの数々を
この映画を見て、もう一度思い返してほしい(……総合評価★★★)

先日、米国では拉致被害者の横田めぐみさんのドキュメンタリー映画
が上映され、「初めて知った」という人から大反響があったらしい。
しかし、なんで日本人がこれを作らなかったのか、大いに不満だが、
こうした硬派のドキュメンタリー映画が一般的に注目されるキッカケ
つくったマイケル・ムーア監督にも、とりあえず拍手を贈りたい。
なぜ、世界中で米国だけ銃による殺傷事件数がケタ違いに多いのか、
それを突撃アポなし取材で全米ライフル協会元会長のチャールトン・
ヘストンまで引っ張り出して問題提起した『ボーリング・フォー・コ
ロンバイン』(2003年)の功績は、映画の枠を超え社会的意義にまで
及ぶものだ。ドキュメンタリーを一般大衆レベルの話題にまで広げた
という意味でも、まさに価値ある名作だった(……総合評価★★★★)



ジェネオン エンタテインメント
ボウリング・フォー・コロンバイン



ジェネオン エンタテインメント
ボウリング・フォー・コロンバイン マイケル・ムーア アポなしBOX



ジェネオン エンタテインメント
華氏 911 コレクターズ・エディション



ジェネオン エンタテインメント
マイケル・ムーア ツインパック 「華氏 911」×「ボーリング・フォー・コロバイン」 (初回限定生産)
東京ゾンビポスター東京のど真ん中、処分に困った粗大ゴミや死体、産業廃棄物で
できたゴミの山が黒く高くそびえ立っている。「黒富士」
と呼ばれる、現代の日本の「終末的無倫理感」の象徴だ。

その発想と映像だけで、半端でチープなB級ホラーじゃない
とわかる『東京ゾンビ』(2005年12月13日より全国順次公開
なので、まだギリギリ公開中の劇場も少なくないだろう)は、
とんでもないブラックコメディだけど、ある意味では日本初の
正統派ゾンビ映画とも言える、快(怪?)作。

実際、この映画に出てくるゾンビは、1、動きが極端に遅く、
2、生きてる人より遥かに大人数で、3、生きた人のみ襲い、
4、ゾンビに嚙まれた人はゾンビになって増殖し続ける、

などの点において、本家ジョージ・A・ロメロ監督が創造した
ゾンビ(生きる屍)そのものの終末的世界感と暗黙のルール、
そして、全く同様のメイクと動きがきちんと踏襲されている。



ハピネット・ピクチャーズ
ゾンビ ― ドーン・オブ・ザ・デッド



ハピネット・ピクチャーズ
ドーン・オブ・ザ・デッド~ゾンビ:ディレクターズ・カット・エディション~

これを単なるパロディ映画として片づけたくないのは、
本家ゾンビ映画と同様のテーマ性と世界観、そして、
本家以上とも思える訴求力と面白さがあるからだ。

とはいえ、この手の映画を2005年公開日本映画ベスト5の4位(!)
に入れてしまうことになろうとは、夢にも思わなかった……。他に
これより面白いと思える映画が少なかったってことなんだけど、
見た映画の半数以上が及第点にも達しないというレベルの日本映画
において、これぐらい面白ければ及第点を付けられると断言できる
「なかなかよくできた娯楽映画」だと思う(……総合評価★★★、
本当はもっと評価してあげてもいいかもしれない……)

その日も仕事時間中、柔術の練習に励んでいた主人公の二人
(浅野忠信、哀川翔)が、勢いで殺してしまった上司の死体を
「仕方ねえなあ」と何の迷いもなく、「黒富士」に捨てに来る
と、同じような輩が結構、いるわ、いるわ、そこら中で殺人
(なかには姑を生き埋めに来た若妻も……)やら死体処理が
普通に行われている、倫理観もへったくれもない世界観。

決して、良い子の皆さんに見せてはいけません!
精神年齢が子供の大人にも見せてはいけません!

案の定、「黒富士」からは何の脈絡もなく死体が蘇り、
生きてる人間を次々に襲っていく。というより、ほとんど
主人公たち以外は、すでにゾンビ化している、という状況。

ついに柔術の師匠、ハゲ頭の哀川翔もオバさんゾンビに嚙まれ、
自ら河に飛び込む。カナヅチの相棒、浅野忠信は救いにいけない
……というトボけた二人の初共演が、また実にいいコンビなのだ。

「本当に強くなりたいならロシアに行って武者修行を積むんだ」
という哀川翔に、「どうせ行くならアメリカがいいんだけど…」
と、ボケる浅野忠信。「バカ!」と、一喝する哀川翔。
「本当に強い奴はロシアにゴロゴロいるんだ!」…… みたいな、
冗談とも真実とも取れない会話が延々続く、そのセンス。

この脚本を書いたのは、これが監督デビュー作となる佐藤佐吉
という人。なんと、大好きなテレビ番組『オー!マイキー』
(テレビ東京系、会話のみで動かないマネキン人形しか出てこない
ホームドラマの傑作!……よくわからない、ですか?)の脚本家
だった!……それで、納得。道理で「病み付き」になるわけだ。
しかも、『キル・ビル』やら『ローレライ』やら、相当の映画に
出演もしている(!)という、変わった経歴の人らしい。

この人を日本インターネット映画大賞の監督賞と新人賞に入れようか
と迷ったぐらい。結果的には両方とも『隣人13号』の井上靖雄監督に
入れてしまったんだけど(ゴメンなさい!)、もう忘れませんよ、
この名前。要注目の監督さんになるでしょう!

ふーっ、やっと紹介できました、この映画……(笑)。
まだ年末から1月にかけて公開された映画で、見たのに紹介してない
作品が何本かあるんですよねえ。また書く時間がなくてオクラ入り
なんてことになると申し訳ないので、今月中に書きたいと思っている
作品一覧として事前に「総合評価」だけ、忘れないうちに書き留めて
おきます……このうち、何本書けることやら……(笑)。

『ザ・コーポレーション』★★★(カナダのドキュメンタリー大作)
『非日常的な彼女』★★★(ベタベタ韓流感動コメディ)
『アメノナカノ青空』★★★★(韓流爽やか系感動ドラマ)
『あぶない奴ら』★★★★(ベタベタ韓流アクションコメディ)
『七人のマッハ!!!!!!!』★(タイ式アクション)
『バトル7』★★★(同上……以上、12月公開)
『るにん』★★★(松坂慶子主演の時代もの)
『ガッツ伝説 愛しのピット・ブル』★(コメディ?)
『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』★★★(シカゴの現代劇)
『プライドと偏見』★★★(英国式文芸メロドラマ)
『ギミー・ヘブン』★★(江口洋介、松田龍平主演の現代劇)
『スパイモンキー』(眠っちゃったので、よくわからない)
『スパングリッシュ』★★★★(カリフォルニアの現代劇)
『ブラックキス』★★★(予測不能のサイコサスペンス)
『ミラーマン』★★(TVヒーローもののリメイク)
『フライトプラン』★★★(サスペンスアクション)
『白バラの祈り』★★★(ドイツの感動実話……以上、1月中公開)

ひえ~っ、これじゃ一日一本ずつ書いてっても無理!
どっから手をつけましょうか……?
ご希望があれば、是非コメントください!
チキンリトル3D
さようなら、酉年。ハロー、戌年……

どうにも相性の悪い映画というものが、たまにある。
メガネをかけた可愛らしいニワトリの子供(ひよこ)が主人公の
フルCGアニメ『チキン・リトル』がまさに、そうだった。

「ディズニー映画史上最もツイてないキャラクター」という
触れ込みで、ディズニー・アニメの王道をいく設定とキャラクター
の『チキン・リトル』は、日本でも昨年末(23日)に公開されて
以来、『キング・コング』を上回る大ヒットを記録し、現在も
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』に次ぐ観客動員を維持
している。けど、どこまで続くかな……っていうのが正直な感想。

実際、全米でも『ライオン・キング』に次ぐディズニー・アニメ史上
2位となるオープニング興行成績を11月に記録、1億3000万ドル超の
大ヒットとなってはいるものの、年末を前にほとんど伸びがなくなり、
近年のディズニー×ピクサーによるフルCGアニメ大ヒット作5本
と比べると、間違いなく下回る数字になることが確実だ。

これが、実は自分にとっても踏んだり蹴ったりの相性の悪い映画で、
まずは英語版の試写会で見て、眠ってしまった…(笑)ってこと。

疲れている時に映画を見ると、そういうことが起こりがちなんだけど、
前から4列目ぐらいで見た『エピソート3』は徹夜明けの早朝試写
だったにも関わらず、一睡もしなかった(できなかった?)し、
いくら眠くても映画によっては眠気などフッ飛んでしまうことを
考えれば、イマイチな映画だったんだろうな、と思うしかない。

実は『アイランド』も不眠不休で無理して夜、時間をつくって見に
行ったのに、真ん中がドカーン!と抜けてて(前半で眠ってしまい、
起きたらエンドクレジット寸前というパターンがなぜか多い…笑)、
そのせいで作品紹介など、まったくできなくなってしまった。
時間もお金も無駄だよねえ……とは思いつつ、しかし!
一家でディズニーフリークの私(間もなくディズニー・シーにできる
最新アトラクション「タワー・オブ・テラー」も7年前にフロリダで
乗っています=自慢)の状況としては、家族との時間を潰して一人で
見て、「寝ちゃったから、わからん」なんて話が許されるはずもなく
(ホントは浮気してて見てないんでしょ、なんて思われても困る)、
再度、満を持して『チキン・リトル』鑑賞に挑んだ、というわけ。
挑むほどの映画じゃないのは、わかってるんだけどねえ…(笑)

多分、前回は主人公の英語の声が、意地悪な大人っぽいのが嫌で、
英語で連発されるギャグがスーッと入って来ずに乗り遅れたことも
眠ってしまった原因だろうという反省のもと、今度は日本語吹替版。
しかも唯一、3D(立体)上映しているイクスピアリのシネコンで
雰囲気も盛り上げ、前夜はきちんと睡眠もとった。オープニングの
映画的ギャグも今回は日本語でスーッと入って来て、んー、完璧!
と途中までは思っていたのだが……あり得ない、と思わせてしまう
野球のシーンぐらいからかな、だんだん、また嫌な兆候が……。

結論から言うと、また眠ってしまったのだ!(以下、言い訳です=笑)

たまに思うのだが、どうもディズニー(特にピクサー)のCGアニメ映画は
明るいシーンの色調が落ち着いていて暗い。これは2Dの、いわゆる
普通のディズニーアニメの多くがビビッドな色調であるのに比べて、
明らかに目に優しく、そして眠くなる。『ファインディング・ニモ』など
では、ほとんど感じなかったけど、『モンスターズ・インク』の時は
その暗いトーンが気になって気になって、途中からは眠気との戦いに
なってしまった。今回は、それに立体映画のメガネも加わり、余計に
暗く感じられ、逆に立体映画のメリットや驚きはほとんど感じられず、
またしてもヤマ場を見逃してしまった、というのが話の全容……笑。

そんな状況で評価を下してしまうのは、製作した方々に大変失礼!
とは思うものの、2度までも寝かせていただいたことには、それ相応
の出来という要因もあるはずで、総合評価は★★!……残念ッ!

何が面白くなかったのかは、今回はコメントを差し控えます……
(そんなこと言える立場ではないので、当然?…笑)。それでも、
ホントに醜いアヒルの子のアビー(ジョーン・キューザックが
『トイ・ストーリー2』のジェシー役に続いて声を担当)や、
いつも水槽状態のヘルメットを被り「ゴボゴボ」としか喋れない
フィッシュなど、相変わらず脇を固める新しいキャラクターたちは
素晴らしく個性的で面白い。子供には楽しめる映画だろうとは思う
(ウチの娘は見もせずに嫌いだ!と決めつけているけど……)が、
最近のディズニー・アニメ映画の中では、これが最も低い評価点。
他の作品がみんな及第点以上の面白さだから仕方ない。もちろん、
実写のディズニー映画では、もっとヒドいのもあるから、
たまにはそういうのがあってもいいんじゃない?