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Thu, April 13, 2006 posted by eigazanmai

『サウンド・オブ・サンダー』~映画と原作の関係4

テーマ:映画と原作の関係
サウンド・オブ・サンダー
3月25日公開のSF娯楽映画『サウンド・オブ・サンダー』は、
初登場で4位か5位、3週目に入っても7位とベスト10内をキープ
して、予想外のヒットになっている。なぜ「予想外」かといえば、
全米では「酷評一色」で、まともに公開もされず、今や2億ドル
が全米大ヒット作の目安といわれているなか、嘘か誠か
200万ドル(2億円強)しか稼げなかったからだ!

でも、そこまで「つまらない映画」だとは思わなかった。
先入観を捨て、適当にいい加減なSFサスペンス(&ホラー?)
として楽しんじゃえば、損した気分にまではならないはずだ。

元を辿れば、悪い先入観の発端となっているのは、この映画が
製作過程で監督交代などのゴタゴタが続いたからで、完成さえ
おぼつかない状況で監督を引き継いだのは、ベテラン職人監督
ピーター・ハイアムズだ。シュワちゃんのSFアクション大作
『エンド・オブ・デイズ』(1999)でも製作中止になりそうな
状況で監督を押しつけられてスンナリ完成させた「立て直し屋」
としての実績が買われたようだが、実はこの監督、70年代から
「SF映画のようなアクション映画」を数多く、「文字通り」
撮影も兼ねて撮り上げている。作品の出来はイロイロだが、
エリオット・グールド主演の『カプリコン・1』(1977年)
ショーン・コネリー主演の『アウトランド』(1981年)
ジャン・クロード・ヴァンダム主演の『タイムコップ』(1994年)
宇宙とは関係ないけど『レリック』(1997年)もSF的な話だし、
さらに『2001年宇宙の旅』の続編『2010年』(1984年)といった
普通の監督なら尻込みしそうな本格的SFにも取り組んでいる。
いずれも話題作として、そこそこヒットしているところが凄い!



ビデオメーカー
カプリコン・1



東宝
エンド・オブ・デイズ




ワーナー・ホーム・ビデオ
2010年【ワイド版】

で、今回はSF怪奇小説の巨匠レイ・ブラッドベリの古典的短編
「いかずちの音」の映画化。だからといって「本格的なSF映画」
を期待しちゃいけない。そもそもレイ・ブラッドベリを「SF小説」
というジャンルで語ってしまうことに、誤った先入観は起因する。

確かに、レイ・ブラッドベリの作品群には、本作が収められている
『太陽の黄金の林檎』や『火星年代記』といった宇宙を題材とした
名作短編集が目立つ。しかし、いわゆる科学(サイエンス)的な話
かというと、全然違う。むしろスティーヴン・キングの風変わりな
説明のつかない短編ミステリーのノリに近いような感じさえする。



レイ ブラッドベリ, Ray Bradbury, 小笠原 豊樹
太陽の黄金の林檎



レイ・ブラッドベリ, 小笠原 豊樹
火星年代記

実は、そんな風情のあるレイ・ブラッドベリの短編小説が大好きで、
特に名作「霧笛」など22篇が収められている『太陽の黄金の林檎』
はオススメ。アッと言う間に読めるので、何度も読み返してしまう。
T-REXのマーク・ボラン(嘘か誠か、魔女に教育を受けた、と
本人は生前、語っていた)もレイ・ブラッドベリのファンだった
らしく、「いかずちの音」に出てくる恐竜の運命にインスパイア
されてバンド名を決めた、というのも有名な逸話。

この原作は、わすか十数ページの短編だ。タイムマシンを使って、
死ぬ間際の恐竜を何度も見学できるツアーの話……ある日、ツアー
コンダクターが現代に戻ってみると何もかもが微妙に違っていて、
その原因は、お客が過去をほんの少し変えてしまったからだった
(有名な小説なのでネタバレしますが、一匹の蝶を踏んづけていた)
……という程度の内容。

映画『サウンド・オブ・サンダー』は、この原作を大幅に肉付けし、
第一波、第二波、と次第に現代がジャングル化して得体の知れない
生物が襲ってくるホラーもどきのSFサスペンス映画になっている。
現代を激変させた原因を究明し、再びタイムマシンで過去へ行って
元通りに戻さないと現代文明がこのままでは壊滅する、という展開
でハリウッド的なエンターテインメント一色に染めた感じ。なぜ、
そうなるのか、なんて質問は無意味だ。レイ・ブラッドベリの小説
だって、科学的になぜ、どうして?……なんてところに、いちいち
引っ掛かっていたら、ちっとも楽しめない。レイ・ブラッドベリの
古典的な小説を娯楽映画として映像化すると、必然的にB級映画的
な匂いがする話になってしまうんじゃないだろうか、とさえ思う。

彼の映画化作品で最も有名なのは、フランソワ・トリュフォー監督
唯一のハリウッド映画『華氏451』(1966年)で、これは本の紙
が発火する温度のこと。本が諸悪の根源として焼かれる近未来世界
を描いたSFで、この長編もトリュフォーがハリウッド式映画作り
に馴染めず、トラブル続きだった作品。ここでも、風変わりな背景
や舞台設定などにB級映画的な匂いを感じてしまうのは、もう原作
の持つ力としか思えない。レイ・ブラッドベリ作品の映画化では、
最も評価が高いようだけど、やっぱり総合評価★★★ぐらい……
彼の小説の風情を映像化すると、どうしてもこうなるんだな。



ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
華氏451

実際、この巨匠を誤った先入観で過大評価しない限り、彼の映画化
作品はファンが見ても、失望するほど酷くはないと思うけれども、
小説にある寓話的な憂いや滑稽さが、映像化するとチープな印象に
なってしまうのは、彼の作品の特徴だと割り切るしかないだろう。

例えば、アーヴィングの小説は監督が違っても、全部フワフワした
感じの映画になっちゃってるでしょ?(笑)……多分、それと同じ
なんだろうね。だから今回は、むしろ、どんなふうに短編が肉付け
されたのかを興味津々で見入っていた。

結論としては、違う進化の過程で変移した生物(マンドリルの顔に
狼の鳴き声、ラプトルのような尻尾、そしてコウモリのように眠る
……なんじゃ、そりゃ?)の襲撃ばかり目立つクリーチャーもの的
な盛り上がりが映画の最大の見どころになってしまっているので、
原作の寓話的「憂い、ユーモア、滑稽さ」は薄れ、「恐怖とサスペ
ンス」の色が濃い。当然、こんな怪物は原作には出てこない!!
しかも、この怪物が見てくれ的に、そんな怖さを感じないところが
レイ・ブラッドベリ的な感覚で、ますますB級映画的な匂いを醸し
出してしまい、それがいいんだか、悪いんだか……いずれにしても
巨匠の深いSF的世界を期待する向きには、どうしても駄作に見え
てしまうんだろうなあ……というわけで、総合評価★★★

主演のエドワード・バーンズは、自分で脚本や監督もできる才人
だけど、多分、彼もレイ・ブラッドベリが好きだったのかな?
タイムトラベル会社の社長を演じる名優ベン・キングズレーも…?

もう一人、ヒロインの科学者を演じるキャサリン・マコーマックは
メル・ギブソンのオスカー受賞作『ブレイブハート』(1995年)で
彼の恋人(映画が始まってすぐクビを切られる)役だった女優だと
思うんだけど……違うかな?

最後に、レイ・ブラッドベリは巨匠と呼ばれるようになる以前、
一度だけ映画の脚本を手掛けたことがあるいる(トリビア!)…
それがなんと、ジョン・ヒューストン監督の『白鯨』(1956年)
なんだよね。原作は言わずもがな、ヘミングウェイの古典的名作。
白い島のような鯨=モビー・ディックへの個人的復讐の念から
航海に出る偏執狂的エイハブ船長をグレゴリー・ペックが演じた
名作だ。巨匠の原作を若き日の巨匠(当時30代半ば)が
脚色した、そういう視点で『白鯨』を見ると、今までとは全然
違った感覚で楽しむことができて、もっと面白いと思うヨ!
個人的にも総合評価★★★★!……と言いたいところだけど、
どうなのかなあ……ヘミングウェイの原作ものとしては、
異色な感じがすることは確か。ブラッドベリの影響大?
これがブラッドベリの映像化の限界なのかな?




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白鯨

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