あした元気にな~れ!

「文部科学省選定」「東京都推奨」「PTA推薦」「映倫推薦」
と、つまらない映画を象徴する、そうそうたる面々の看板が
所狭しと並んでいて、思わず引いてしまいそうになるけど
大丈夫!

戦後60年記念と銘打たれた『あした元気にな~れ!』に、
説教臭さは微塵もないし、いやらしい思想教育的な意図も
まったく感じられない。にも関わらず、
決して戦争の悲惨さだけを訴えている話には
なっていないところがまた素晴らしい。

悲しさより力強さ、悲惨な体験よりも勇気を描いているからだ。

とはいえ、この長編アニメは泣けるよ。見事な戦争反対の映画だ。

絵のタッチとしては、『火垂るの墓』と似てる感じもするけど、
あそこまで徹底した悲惨な話にはなっていないので、
号泣したくない人でも見られるから心配ない!(笑)。


1945年3月9日の東京大空襲により、両親をはじめ
家族6人を一瞬のうちに亡くして戦争孤児になってしまった
主人公の少女、かよ子(海老名香葉子=息子の林家こぶ平に
ソックリ。ということは峰竜太の妻=海老名みどりの母親!?)
の戦争体験談『半分のさつまいも』が原作で、
同じく91年に長編アニメ化された『うしろの正面だあれ』
の続編に当たる。



海老名 香葉子, 千葉 督太郎
半分のさつまいも

前作は、戦前から戦争までの話が中心で、
今作は戦後の極貧無法状態の庶民の話が中心だ。

疎開して生き延びた主人公が、唯一家族で生き残ったキイ兄ちゃん
を探し続けて、いかにして再会したか、という物語だ。

戦後、主人公は居候として知人に引き取られ、
兄は浅草の闇市で戦争孤児仲間と助け合いながら、
どのようにして生きていったか、が描かれる。
兄を求めて危険な闇市を徘徊する少女の健気さに
涙しない人はいないだろう。

別に林家(海老名)一家には何の思い入れもないが、
アニメが始まる前に原作者本人が登場して語る、
その話だけで泣けてしまった。


実は、私の父親も戦前の浅草の生まれだ。
小学生で東京・青梅に疎開した父は、
妹と乳飲み子の弟と三人で戦争中を過ごした。
父と妹は畑から野菜を盗んだりして生き延びることができたが、
乳飲み子の弟はミルクがなく、山羊の乳をやっと仕入れて
父が帰ってきた時には、弟は餓死していたという。
「かわいそうだったね」
という父の話は1回しか聞いたことがない。
消防車ごっこをしていて本当に火事を起こしてしまった笑い話
とかは何度も聞いたことがあるのに…。

祖父の戦争話も、ちっとも口調が悲しくなかった。
当時、兵器工場の工場長だった祖父は、空襲で仲間が倒れて、
「だいじょぶか、って聞いたら死んでた」とか、
そんな話し方で大笑いしてしまった記憶がある。

でも、実際の体験は、悲しい記憶がいっぱいあるんだろうな、
と慮る他ない。あまり、悲しい話は語られた記憶がない。
自分の周りにいる人たちは、みんなそんな感じで、
悲惨さばかり訴える他の日本人とは少し違うような
気もするが、このアニメ映画を見ていると、
そんな下町の人たちの力強さや前向きさが、
実に自分の周りにいた人たちと似ていて、
それがとても親近感があって良かったのかもしれない。

間違いなく、今年一番泣けた日本の映画だ。
当然、総合評価も★★★★!

ただ、『ヒトラー~最後の12日間~』のように、
積極的に侵略者の側から描いた日本人の話が今まで
あまりないのは残念なような気もするけど。
この映画を見ていても、まるで単なる被害者としてしか
戦争が語られていないし……。
もちろん、この映画の立場(子供が主人公)では、
それも仕方ないとは思うけど、そろそろ加害者側の立場から描いた
反戦映画も日本で作られていい頃なのではないか、とも思う。


ただし、先日ニュースでやっていた原爆をつくったアメリカ人が
初めて広島に来て被爆者と語り合った、その内容には腹が立った。
語り合う、というよりは、まったく意見が合っていなかった。

日本人が「二度とこのような戦争が起こらないように」と
お決まりの被害者論を展開すると、
そのアメリカ人は、一切の謝罪などすることなく、こう言った。
「アメリカには別の言葉がある。リメンバー・ザ・パールハーバーだ」

ちなみに真珠湾攻撃とは、その方法論はともかくとして、
戦艦や空母などの兵器の破壊を目的としたもので、
東京大空襲や原爆投下などの一般市民の無差別殺戮とはワケが違う。

もちろん「今とは時代が違う」という意見もあろうが、それは、
現在の戦争では考えられないような、アメリカ人が非難する類の
大義名分の下に行われている無差別テロ行為と同じではないか。

そろそろアメリカ人も真珠湾攻撃に対する意味合い
(すべてを正当化させる道具として使われている)
を今の時代の視点から再考してほしいと思う。


ちなみに『あした元気にな~れ!』は、なかには公開がもう
終わってる地方や、これから公開される地方もあるようだが、
東京では「東京都写真美術館」で8月25日まで公開中。

親たちがあまり語ってくれない戦後の話を
ここで再見するのに、とてもいい機会だろう。

『あした元気にな~れ!』~公開劇場他、公式ページ
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