銀河
前回の続きなので、勝敗は言うまでもないでしょう。

興行成績を見ても、『銀河ヒッチハイク・ガイド』は全米全英で1位、
『ザスーラ』は全米初登場2位ながら急降下して
トータル3000万ドル程度。前作(と言っていいでしょう)の
『ジュマンジ』が10年前であるにも関わらず5000万ドル以上
稼いでいることからも、『ザスーラ』に勝機はありませんね!
唯一、日本での興行成績がきわどい勝負?

逆に、それぐらい『銀河ヒッチハイク・ガイド』は日本人ウケが
良くなかったってことなんだけど、英米では1500万部も売れた
人気カルト小説の映画化。もともとは1978年開始のラジオドラマ。
その後、テレビシリーズ化され、ビデオゲームにもなっている。
ポール・マッカートニーやジョージ・ルーカスも、
この話の大ファンであるらしい。そんな大人向けのコメディだ。

子供向けコメディは世界共通の感覚で見られるが、どうも
日本人は欧米の大人向けコメディがわからない人が多い。
テレビのヴァラエティ番組や漫才の悪影響なのか、
笑いの次元が大人になってもリズム感と一発芸重視で、
考えさせられる笑いを理解しない傾向にある気がしてならない。

『銀河ヒッチハイク・ガイド』が提示する笑いは、
オープニングからしてイマジネーションに溢れる世界観だ。
地球で最も知的な高等生物はネズミとイルカで、
人間はそれより下等なため彼らのメッセージが理解できない、
という解説から始まり、いきなり地球が宇宙ハイウェイ計画の
予定地にあたるため爆破されることになったりとか、
すでにそのへんからアバンギャルドな発想の面白さに
ついていけない日本人もいるんじゃないだろうか。

結局、地球は映画開始10分で消滅、唯一、生き残ったのは
地球にいた宇宙人と親交のあった冴えないイギリス人と、
彼が思いを寄せている女性科学者のみ。といっても、
地球がなくなったという悲しみは微塵もない。
そんなコメディ、見たくないという人はもうダメ。
次から次へと出てくる新たな情報と価値観に唖然として
面白がる大人の余裕が必要な映画なんだよね。

特に笑えるのは、宇宙一融通の利かない役人気質をもった
ヴォゴン人とのやり取り。書類が三通ないと、
どんな場合も言うことを聞かない。実にクダラない。
何度も言ってるけど、コメディにおいて「クダラない」は
ホメコトバです。誤解のないよう!



ダグラス・アダムス, 安原 和見
銀河ヒッチハイク・ガイド



ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
銀河ヒッチハイク・ガイド



ジェネオン エンタテインメント
銀河ヒッチハイク・ガイド

コレ(一番下のDVD)は、テレビシリーズを収めた2枚組。


こういうコメディをB級映画とは呼ばない。
実際、この映画の映像には相当お金がかかっている。
(以下、ネタバレしているので注意!)
 
随所に登場するチョイ役の出演者も一流の顔ぶれで、
鬱病のロボット「マーヴィン」の声だけで登場する
スネイプ教授(アラン・リックマン)をはじめ、
ジョン・マルコヴィッチ、ヘレン・ミレン、そして
最後に地球の設計技術者として登場するビル・ナイ!
彼が地球のスペアをつくっていて、主人公を案内する
ラスト近くのCG映像と話のオチは、まさに壮観!
(総合評価★★★)

えっ、ビル・ナイって誰かって?
最近一番のお気に入りの俳優で、実は彼のことを書きたかった
んだよね……(笑)。彼がこんな重要な役で登場してきたことに
思わず拍手喝采してしまったぐらい!

多分、皆さんが一番見ていると思われるのは、
吸血族と狼族の遺恨の戦いを描いたスタイリッシュなアクション
映画『アンダーワールド』(2003年)の吸血族長老・ビクター役。
途中で主演のケイト・ベンキンセールに永い眠りを覚まされ、
最後に最強の混血族と死闘を演じるジイさん、と言えば、
なんとなくわかってくれる方もいるだろう。もともと
舞台において輝かしい実績をもっている実力者なのだが、
スティル・クレイジー』(1998年)以降、映画出演も増えて、
今ではスッカリ個人的なツボにハマってしまっている。

『アンダーワールド』も、長老たちの存在が自分的にはツボだった。
特にビル・ナイが出てたから、総合評価★★★
は、言い過ぎかな? 結構、大ヒット(全米1位)してたし、
続編もできそうな終わり方だったけど、どうなのかな?

さて次回、どうやら今年最後のブログ記事は、
ビル・ナイの話で締めくくることになりそうです(笑)!



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ザスーラ
今年の年末(正月)映画には、一つの大きな流れの特徴がある。
日本語吹替版によるテレビCM比率が一気に増えたことだ。

近年の洋画公開時のテレビCMでは、その映画のシーンは
字幕のついた画面にオリジナル版の言語(ほとんど英語)
で流される、というパターンが大半だった。確かに、
その方がオシャレに見える。最先端に見える。
けど、それが何を意味しているのか?

マーケティングにおけるメインターゲットが子供のいる家族向けに
日本でも完全にシフトしてきた、ということだ。

アメリカでは90年代から、そうした傾向が強まっていた。
要は、家族で見に行ける映画が安定したヒットを記録する
ようになっていたのだ。

日本でもシネコンが次々にオープンし、40年もの長い間、
毎年着実に減り続けていた映画館数が4~5年前から再び
増加に転じた。以降、2003年、2004年、と連続して
年間総興行収入の最高記録を日米ともに更新する
という好況ぶりを堅持している。

その最も大きな要因となったのが、駐車場完備で完全入替制の
シネコンに押しかける子連れ家族層だったというわけだ。

事実、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』といった
宮崎アニメのスーパーヒット作は、その大半がシネコンで
動員された数字という。これらは、明らかに子連れ家族が
メインターゲットの作品で、『ファインディング・ニモ』
『ミスター・インクレディブル』といったディズニーアニメ
が最近、軒並み大ヒットしていることとも無関係ではない。
12月23日公開の『チキン・リトル』も、内容的にはともあれ
大ヒットする可能性が高いと予測できる。

この層は、団塊世代ジュニアと呼ばれる日本で最も人口分布の
多い年代(30代)とも合致しているため、この傾向は今後数年
にわたり続くはずだ。ということは、10年後にはティーン向け
と中年向けのマーケティングに二極分化されていくのかな?

日本語吹替版のテレビCMがやたら目立つようになったのは、
そうしたマーケティングがついにメインストリームになった、
ということの顕れだったんだよね。

12月10日公開のSFコメディ『ザスーラ』も、まさにそれ。
内容的にも家族向け、というより子供向けといったレベル。
宇宙が舞台のボードゲームの中身が現実のものとなって主人公
兄弟の身にふりかかる冒険ファンタジーなんだけど、そもそも
子供向けコメディなので、危機感はコレっぽっちもない。

原作が『ジュマンジ』と同じC・V・オールズバーグなので、
どうせまたうまく元に戻るんだろう的な察しは誰でも容易につく?

……待てよ。っていうことは、『ポーラー・エクスプレス』の
原作者と同じ人じゃないか!……なんてこった!

とはいえ、『ジュマンジ』(1995年)は面白かった。
実際、どうなるのか、結末が見えない緊張感もあった。
脚本にオールズバーグ自身が加わっていたせいもあるだろう。

こちらも物置にあった古いボードゲームを主人公兄妹が始めた途端、
家の中がジャングルと化し、危険な猛獣たちが次々と襲ってくる、
というブッ飛び体験的SFファンタジー映画で笑えたが、
『ザスーラ』はその設定がジャングルから宇宙に変わっただけで
何の変哲も工夫も見られない。両方に共通する父親の存在(今回は
ティム・ロビンス、『ジュマンジ』はロビン・ウィリアムズ)も、
前作の方が遙かに深くストーリーと関わっていた。
つまるところ、『ジュマンジ』の焼き直し……
いや、内容的にはそれ以下……なんたる手抜きだッ!

映像的には確かに『ジュマンジ』の動物たちの動きより数倍、
CG技術が進歩していることがわかる。でも、それだけ。

『ジュマンジ』では主人公兄妹の女の子の方が子役時代の
キルスティン・ダンスト!っていう見どころもある。



ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
ジュマンジ コレクターズ・エディション

『ジュマンジ』には総合評価★★★★をあげてもいいが、
『ザスーラ』は総合評価★★!

子供が見ても『ジュマンジ』の方が怖くて楽しめるはずだ。

大人の視点で同じSFコメディを見るなら、
今年9月に公開された『銀河ヒッチハイク・ガイド』の方が
遙かにイマジネーションを刺激する。
実は紹介のタイミングを逸してしまった1本なんだけど、
そろそろビデオ化されているはずなので、
次回にコッソリ……(汗)

次回の『銀河ヒッチハイク・ガイド』は、コチラから!!
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ポーラーエクスプレス3D

夜中にゴソゴソ起きてきて、サンタさん活動開始です!
事前に買ってあったプレゼント数個を
リビングの150㎝のツリーの下に並べ準備完了。
その横には5歳の娘がサンタさんに書いた手紙と絵がある。
「サンタさんへ、プレゼントはジャスコの3かいにある……」
とか、なんとか(笑)。
もちろん、ちゃんと希望は叶えました!

子供のいる家では、いつか必ずこういう質問がくるでしょう。
「サンタさんは、本当にいるの?」
あなたは、子供にどう答えていますか?

かつてアメリカの学校で「サンタなんていない!」とイジメられた
子供に同様の質問を受けた親は、こう答えたそうです。
「新聞に投書して聞いてごらん。新聞なら嘘はつかないから…」
その子供は実行しました。そして、クリスマス、
その回答が新聞に大きく載ったのです!

「サンタさんは、います。あなたが信じている限り。
世の中には目に見えないものを信じない人がたくさんいます。
見たことがないからです。だったら、なぜ皆さんは
見たことがない神の存在を信じているのか?
目に見えない魂や愛の存在を信じているのか?
目に見えないものでも、それは存在しているからです。
だから、あなたが信じている限り、目に見えなくても
サンタさんは本当に存在しているんですよ!」

正確な記事の内容は忘れましたが、
だいたいそんなような答えだったと思います。

なんて素敵な新聞記事なんだろう!
「新聞は嘘つかないから投書してみたら?」
と子供に提案した親もスゴイし、
それに答えた新聞社のデスクもスゴイ!
だからアメリカという国が好きなんだ。
そのスピリッツと魂と、
それを体現している音楽や映画も含めて。

子供は納得してサンタの存在を確信したそうだ。
両親もその回答に大満足したに違いない。

『ポーラー・エクスプレス』は、まさにそういうスピリッツの話だ。
この映画が大好きだ。子供にはオールズバーグ原作の絵本を
去年、プレゼントした。村上春樹が日本語訳をしている!

トム・ハンクスがこの映画化権を買い取り、
『フォレスト・ガンプ』のロバート・ゼメキスに監督させたのは、
自分がこの本を子供に読み聞かせしていたからだ。
当然、私も子供に何回か読んであげた。
読んでるうちに何度も自分が泣きそうになった。
しかし、子供はちっとも泣くでもなく、感動もなさげ(笑)。
この話に感動するには幼なすぎるんだな。
きっと、この話に感動するのは大人たちだ。
子供には別の視点で楽しんでもらえばよい。
「サンタは北極にいるの?」
それまで、サンタはフィンランドにいる、
と話していたからだ。どっちでもいいんだけど、
「そうみたいだね。北極にいるフィンランド人なのかな」
と、いい加減に答えてしまった。例の新聞記事みたいに
素敵な答えはなかなか見つからなかった(笑)。けど、
そのうち子供もこの話の素晴らしさをわかってくれるだろう。

今のところ、娘の興味は『プリキュア』と『ハム太郎』で、
『ポーラー・エクスプレス』は見てない。でも、
大人になって、この映画をみてくれればいい。
それぐらい息の長い名作になるだろう。
総合評価★★★★★だ。

今、アメリカでは『ポーラー・エクスプレス』の3D版が公開されている。
66館での上映ながら、週間興行成績は12位とか13位ぐらい。
でも、最新の週では1600館以上で上映されている『チキンリトル』
よりも一つ、順位が上だった。スゴイことだ。

去年の暮れに初公開された時も、出足は鈍かった。
同時期に公開されたディズニー『ミスター・インクレディブル』が
大絶賛を受けて、2億ドルを超える大ヒットとなったのに比べ、
その半分もいかない数字だった。しかし、今年の1月に
入っても『ポーラー・エクスプレス』の人気は衰えず、
ついに『ミスター・インクレディブル』より週間の興行順位が
上になるロングランヒットとなった。
最終的には約1億7000万ドルの大ヒット。
にも関わらず、アカデミー賞ではアニメ部門でノミネートもされず、
アニメ作品賞は『ミスター・インクレディブル』が受賞した。
往々にして、そういうことはよくあるが、
アカデミー賞会員は「なんてセンスがないんだろう」と思った。

唯一、この映画でノミネートされたのは、音楽部門だ。
もちろん、エアロスミスのスティーブン・タイラー
(エルフの役で映画にも顔が出てくる!)
の初のソロ楽曲ではなく、エンディングに使われた主題歌
でのノミネートだった。このメロディが素晴らしい。
特にオーケスラバージョンの方が。作曲は
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』他でゼメキス監督と常に
コンビを組んでいるアラン・シルベストリ。
『フォレスト・ガンプ』のピアノのスコアも良かったね!
このサントラも愛聴盤で、イヴの夜にもかけてた。

子供のクリスマス・プレゼントはもう準備できた?
何か一つ物足りない、という人には『ポーラー・エクスプレス』
の絵本でもCDでもDVDでも(いずれも素晴らしいから)、
是非追加してあげてください。来年のクリスマスでも…。
きっと、来年のクリスマスには3Dバージョンが日本でも
公開されるんじゃないかな?

いまだ娘を映画館に連れて行ったことはないけど、
最初はコレにしたいな。娘は『プリキュア』が見たい、
って言ってるけど…(笑)。

では、地球上のすべて皆さんに、メリー・クリスマス!




クリス・ヴァン・オールズバーグ, 村上 春樹, Chris Van Allsburg
急行「北極号」



ワーナー・ホーム・ビデオ
ポーラー・エクスプレス 特別版



サントラ, トム・ハンクス, マシュー・ホール, ミーガン・ムーア, スティーヴン・タイラー, ジョシュ・グローバン
ポーラー・エクスプレス
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僕の恋、彼の秘密

今日、12月21日、おそらく世界で初めてとなる同性愛者同士の
婚姻を認める法律がイギリスで施行される。

世界で最も売れた楽曲のレコード保持者であるエルトン・ジョン
(『エリザベスタウン』の中で最も印象的に使われていた
ナンバー「父の銃」も、彼の70年代初期の名作でした……)
など、周知の同性愛者たちは、この日を待ちかねていたように、
晴れて長年のパートナーと正式に結婚することとなった。

ジョージ・マイケルも6月に挙式予定という。
相手の名前は忘れたが、男であることだけは確か。

近年、ある程度はオープンになってきたとはいえ、いまだ
同性愛は映画の中でも特異なキャラクター設定であったり、
タブー視される環境や雰囲気の中で描かれる傾向が根強い。

米国の黒人の黒人による黒人のための映画作家として、鮮烈に
スパイク・リーがデビューしたのも、そんなに昔の話じゃない。
1989年の『ドゥ・ザ・ライト・シング』(総合評価★★★★)
が最初だったのだ。以降、そうしたアメリカ映画は普通に登場
するようになったが、つまり、それまでは白人社会の中の黒人
として描かれることが常道だったということ。

同性愛者の描かれ方も同様で、彼らがメインの話であっても
異性愛者社会の中の同性愛者という視点が必ずどこかにあった。

しかし、ついにそれがまったくない映画をおそらく初めて見た。
12月3日公開の台湾映画『僕の恋、彼の秘密』(原題:17歳的天空)
だ。しかも、これが台湾の2004年上半期における最大のヒット作
となったというから驚きだ。この事実は後で知った。実は最初、
これが何の映画だか、よくわからないで見てしまった……!

オープニングシーン、プールに飛び込んだ主人公(トニー・ヤン)
がどこからともなく泳いできた男にいきなり水中でキスされる。
興奮して飛び起きる主人公。十代の頃、自分も同じような夢……
もちろん、相手は見も知らない女性で、水中でくんずほぐれつ
……を見たことがあったので、とてもよくわかる出だしだった!

ところが、いつまで見ても女性が映画に出てこない。それで、
ようやくどういう話なのか、わかってきた。彼が都会に上京し、
名うてのプレイボーイ(ダンカン・チョウ=七剣の一人として
『セブンソード』にも出ていた華流イケメンスター)に胸ときめき、
ついに彼のシャワールーム(だったかな?)で肉体関係をもつ。
ただし、このプレイボーイはヴァージン荒らしが趣味で、
同じ相手とは二度と肉体関係をもたない主義。無垢な主人公は、
「一夜限りの遊びだったの?」と深く傷つく。果たして二人は
結ばれるのか……???

コレって、一昔前のトレンディドラマ、まんまだと思わない?
それを若い男だけの世界でやってるわけ。友達も全部、男。
女性など眼中にない、どころの騒ぎじゃない。完全女性無視
の映画。まるで、世界には男しかいないみたいに!!

よくある男女の惚れた張ったの青春恋愛ドラマを真剣に男だけで
マジにやっているわけだ。なんか、とってもくだらなく見えた。
逆に、昔のトレンディドラマを見ていた同性愛者も、とっても
くだらない話に見えていたのかもしれない、と思った。

それで、ちょっと見方を変えた。プレイボーイ役はロブ・ロウ、
その友人はジェームズ・スペイダー、主人公は当然ナイーブな
アンドリュー・マッカーシーだ!!

すると、なんとなく彼らの真剣な惚れた張ったの話が、
とても爽やかでオシャレな青春ドラマに見えてきた。
そうか、トレンディドラマって、こんな幼稚な話だったのか
……と理解するのが自分の立場では精一杯でした(笑)。
これが本当に感動的な話なのかどうかは、おすぎさんたち
同性愛者に聞いてみないとわからない?

ただ、この映画の監督が同性愛者だっていう話は聞かない。
その点、『ドゥ・ザ・ライト・シング』とは意味合いが違う。
とても作り事っぽい。けど、それが大ヒットしているというのは、
この映画の内容が台湾ではとってもオシャレな流行の先端をいく
ドラマだってことなんだろうね。幼稚な話に見えたのは、
立場が違うからっていうだけの問題なのか、結論が出せなかった。
たまたま歴史的意義のある映画になってしまった、
おそらくそういうことなんでしょう。

というわけで、同性愛者以外の人が見たら、総合評価★★
あなたが同性愛者なら★★★
……というより、イギリスに行くことをオススメします!

『僕の恋、彼の秘密』公式HP

ちなみに、『ドゥ・ザ・ライト・シング』のサントラ盤は、
今も愛聴盤。パブリック・エナミーの「ファイト・ザ・パワー」
は、やはりバカでかいラジカセで屋外で聴きたいですね!




ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ドゥ・ザ・ライト・シング



サントラ, パブリック・エナミー, テディ・ライリー, EU, スティール・パルス, キース・ジョン, ペリー
ドゥ・ザ・ライト・シング



チョン リン, 松繁 梢子, ラディ ユウ
僕の恋、彼の秘密
sayuri2
前回の続き。今回はネタバレしてるので注意!)

以前、置屋の古い体質に反旗を翻した舞妓さんの集団脱走事件
があって、私はその舞妓さんと芸妓さんの二人と一晩中、
お店で飲みながら話をしたことがある。

舞妓さんと芸妓さんは髪形や服装も違うが、
便宜上その二つを分けているのは、簡単に言えば、
「処女か、そうでないか」の違いだ。

彼女たちが集団脱走したのは、例えば、舞妓さんの行動は逐一
見張られて自由がなく、個人的な手紙もすべて置屋が開封して
内容を確認される、といった伝統的な置屋の不自由かつ横暴な
人権無視のしきたりに我慢がならなかったからだ、という話だった。

こうした縛りをつくっていた最大の要因が『SAYURI』でも
かなり時間を割いて(ほとんどメインの話として)描かれていた
「水揚げの儀式」だ。要は、舞妓さんの処女喪失を顧客に対する
目玉商品として提供する、という伝統的なイベントのことだ。

置屋側は舞妓さんの商品価値を失わないための慣習として当然、
との認識を示していたが、元舞妓さんたちに言わせれば、
「今の舞妓さんは昔と違って子供の時に預けられるよりも、
十代半ば以降に置屋さんに入る人が多いので、それ以前に
実際は処女ではなくなっているケースも少なくないため、
水揚げの儀式も実質上、形式的な伝統行事になっていて、
お客さんの方もそのことは理解したうえで成り立っている。
だから今の舞妓さんの行動を厳しく見張る意味がない」
とのことだった。もう十年ぐらい前の話なので、
その後、多少環境は変わっているかもしれないが、
いずれにしても「水揚げの儀式」は、つい最近まで
置屋の伝統的な収入源の一つとして残っていたということ。
おそらく、ごく私的行事として今も存在しているのではないか。

今でこそ、こうした人権無視の伝統行事は公になると大問題に
なりかねないが、『SAYURI』が描いた60年前までの祇園の
世界では普通の話。今の感覚で見たらトンでもない話のはず
なんだけど、それを和文化ファンタジーとして見せたのが
『SAYURI』なのだ。だからこそ、現代人がそれを見た時、
その儀式を何の抵抗感もなく受け入れてしまうSAYURIに
ドラマとしての盛り上がり不足を感じてしまうのは当然でしょ?

実際、SAYURIは「水揚げの儀式」のことをよく知らなかった
みたいに描かれていたし、ましてや会長(渡辺謙)という恋心を
秘めた相手がいるにも関わらず、悩みも葛藤も見えなかった。
ちょっとは会長のハンカチを握りしめて儀式に臨むとか
……クサイ演出かもしれませんが(笑)、
これが今の女性だったら、といった視点をもう少し加えてくれれば
……オスカー受賞監督ならもっといい方法を思いつくでしょ?
主人公が成り上がるシステムの的確で簡潔な説明に終始していた点
が、感情的な盛り上がりに欠けた最大の理由なんじゃないかな。

これだけ日本の文化をきちんと描いてくれた外国映画に対して
厳し過ぎるかもしれないけど、総合評価★★★は、
そんな理由もあってのこと。現代の舞妓さんの内情をよく知って
いたから、だけなのかもしれない。もちろん、昔の日本の文化に
敬意を表した外国映画としては非常に好感がもてる内容だった。
その意味では『ラフト・サムライ』と双璧をなす出来ばえだと思う。

むしろ『ラスト・サムライ』の方がドラマとしては違和感があった。
特に、死に対するサムライのモチベーションが説得力不足で、
現代人の感覚で見ると「名誉」のために討ち死にするという
サムライの価値観が日本人にさえスーッとは入ってこない
ストーリー展開だったと思わない?

まるでサムライ村に来た『ダンス・ウィズ・ウルブス』みたいで
現実味に乏しいアドベンチャーもの、といったテイストだったよネ。
『ダンス・ウィズ・ウルブス』のドラマに、そうした違和感は一切
感じなかった(…だから名作なんだけど、イーストウッドはいろいろ
不満を感じていたらしい。これについては、また別の機会に…)

それでも、おそらく初めて日本の過去の文化を真正面から描いた
ハリウッド製のファンタジー大作として、『ラスト・サムライ』は
外国人が日本人であることの誇りを取り戻させてくれる画期的な
映画だった。そういう意味では、日本人にとっての満足度は、
こちらの方が高いのではないかと思う。



ワーナー・ホーム・ビデオ
ラスト サムライ

多分、全米での興行成績(1億ドルに達しなかった)よりも
日本で大ヒット(米ドル換算で2億ドル近い)した初のハリウッド
大作だったのではないだろうか……何事も“初めて”は意義深い!
だから、総合評価は大甘だけど★★★★!
「水揚げの儀式」に高い値段がつくのと同様の評価論理だね(笑)。

でも、どっちが好きか、と聞かれたら、結構いい勝負だと思うヨ。
特にチャン・ツィイーの流し目シーンは、名場面だった!
『SAYURI』が今後、全米でどれぐらいヒットして、
日本でどれぐらいヒットするのか、とっても楽しみだ。
sayuri
1997年にベストセラーとなった原作『メモワール・オブ・ゲイシャ』
の映画化権をすぐに買い取ったスティーヴン・スピルバーグは、
映画化にあたり生前の黒澤明監督に相談をしている。

黒澤監督は「絶対、日本語で映画化すべき」とアドバイスしたため、
英語で全世界配給を考えていたスピルバーグは自ら監督することを
断念してしまったようで、しばらく企画は棚上げとなっていた。

スピルバーグが投げ出したこともあり、当時から話題になっていた
『メモワール・オブ・ゲイシャ』だが、黒澤監督亡き後、ついに
『シカゴ』でオスカーを獲得したロブ・マーシャルを監督に迎え、
スピルバーグが製作に回って完成した話題の和文化ファンタジー
大作『SAYURI』が12月10日より、ほぼ世界同時公開
(全米での拡大公開は23日~)されている。

話題は何といっても、1930年代~1940年代の日本の祇園文化を
中国・日本の混成オールスターキャストで映画化したことが
果たして、うまくいったのかどうかという点。実際問題、
主人公の芸者さゆりを“アジアン・ビューティ”チャン・ツィイー
(クレジットでは苗字の“チャン”が後になってましたね……)
が演じているのをはじめ、“ボンド・ガール”のミシェル・ヨー、
『始皇帝暗殺』他チェン・カイコー作品の“マドンナ”コン・リー
と、主要芸者3人はすべてアメリカで馴染みのある中国人なのだ!

それだけで拒否反応を示す人もいるに違いない。
あまりに日本人として情けないから。

唯一、主要な芸者役で登場する日本人も米国映画で主役経験のある
工藤夕貴という極めてわかりやすい米国市場向けのキャスティング。
男性陣も『ラスト・サムライ』の渡辺謙、
『シャル・ウィ・ダンス?』の役所広司、
それ以外は日系の米国人俳優がメイン。さゆりの実父役で、
やっぱりMACOさんも、出てました~ッ!

『パール・ハーバー』や『ライジング・サン』といった
ハリウッド大作で日本人役といえば、この人しかいない!
っていうぐらい皆勤賞もののMACOさんが出てないとね、
寂しいでしょ?……だから、ってわけじゃないけど、
当然セリフは全部英語(時々、英語的日本語も混じる…)。

おかぼ役の工藤夕貴は、置屋のおかあさん(桃井かおり)にまで
「パンブキン」と呼ばれてる!…し、神社で願掛けするシーンでは
鈴を鳴らすところで「ゴ~ン!」と、お寺の鐘を衝く音(笑)。
そういう細かい部分を気にする人には向かない映画。

ロブ・マーシャル監督自身、歴史的な再現にこだわるのではなく
外国人が見た日本文化のファンタジーとして描くということを
最初から断言している。実際、意外と言うか予想通りと言うか、
話としては実に違和感なく、簡潔によくまとまっている。

日中混成キャストも英語のフィルターを通すと違和感ない。
中国人の美人芸者が下手クソな日本語を話すのを聞いたら、
それこそ目も当てられない事態になっていたでしょうから(笑)。

日本人の役は基本的に日本人に演じさせ、日本でも大ヒットした
トム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』(2004)とは多少、
趣旨が異なる点を承知の上で見れば、この映画は十分楽しめる。

特に主演のチャン・ツィイーは、日本舞踊の特訓だけでなく、
立ち居振る舞いのすべてにおいて、短期間で「よくやった!」
と褒めてあげたい。しかもセリフは英語。覚えることだらけだ。
キツかったろう。試写会では最後に拍手も起きた。それぐらい、
キレイにまとまっている。でもねえ……。

普通なんだよねぇ。普通にまとまってるの。
日本人が見ると、なんだか、たいした話じゃない。
『ラスト・サムライ』のような胸高鳴る異様な迫力がないのは、
題材的に仕方ないにしても、このドラマは日本人にとって、
あんまり意外性のある話じゃないんだよね。
結構、昔からよくあったような話。
日本の文化を曲解している欧米人や十代の若い日本人が見れば、
新鮮なのかもしれないけど、20年近くも前に見た五社英雄監督の
『吉原炎上』(1987年)の方がよっぽどすごい話で、強烈だった。
遊廓の実態とか、特殊な文化とか、女同士の戦いとか、情念とか……
祇園と遊郭という話の違いはあるけど、『SAYURI』の場合はアッサリ
と簡潔にキレイに説明されてる感じで、違和感も、嫌悪感もないけど、
驚きもなかった。
これは見る人によるんだろうけど。総合評価は★★★

唯一、意外な発見だったのは、アメリカ人が監督しているのに、
やっぱりアメリカ人が出てくるとバカに見える、という点かな。
昔の日本の映画に出てきた陽気なヤンキーが皆、バカに見えたのは
日本人が描いているからだとばかり思っていたんだけど、
それが『SAYURI』でも同じように見えたのにはビックリ。
きっと、濃い文化の中でアメリカ人を描こうとすると必然的に
バカに見えてしまうんだろうね。勘違いしないでくださいよ、
アメリカ人がバカだって言ってるんじゃありせんからね!

では、同じく日本の文化に敬意を表した本格的ハリウッド大作
『ラスト・サムライ』とは、どっちが面白かったか?

ゴメンなさい。長くなったので、続きはまた明日……ということで。




東映
吉原炎上



デビッド・ジェームズ, ペギー・マロイ, 小松 伸子
SAYURIオフィシャル・ビジュアルブック


続きはこちらから!!
昨日、ついに眼科へ行ってきた。
市販の目薬では、もう一週間近く充血が治らないからだ。
最近、ホラーの話ばかり書いていたせいか、
自分自身がホラーみたいになってきてしまった。

で、診断の結果は「急性結膜炎」ということで、
パソコン画面なんかに向かってる場合じゃない
とは思うんだけど、どうしてもキリが悪いので、
一本だけ……。

『@ベイビーメール』の人気ホラー作家、山田悠介原作の
サスペンス・ホラー『あそこの席』のことだけ、
ほぼ同時期に見ているので、もう3カ月も前のことで
印象がかぶってるので、どっちが怖かったか、
ハッキリしたことは言えないんだけど、
こちらの方が最近のホラーファンを満足させる刺激が強い
映画だったように思う。

内容的にはジャパニーズホラー定番の学園もの。
ある席に座った生徒が必ず死ぬという話で、
その席に転校してきた女子高生が主人公。
協力的な男性教師と自分の身にふりかかる災いの謎に迫っていくのだが…。

意外とちゃんとした結末に向かうのかと思いきや、
最後はチリとりがクラスメートの頭に刺さったり、
といったスプラッター系のオカルトに突然展開、
しかも予想外の事実がラストに用意されている。

これならホラー好きのファンも結構マジで
満足できるんじゃないだろうか……総合評価★★★

スタッフもキャストもほとんど知らない人ばかりだけど、
ホラーではそういうことも多いからね、問題ないでしょ。





ジェネオン エンタテインメント
あそこの席



山田 悠介
あそこの席

それにしても最近、子供を狙った惨殺事件が多過ぎませんか?
今度は若い塾の講師が女生徒を殺したらしい。

たまたま昔よりニュースになってる事件が多いだけ?

たまたま先月、行きつけの床屋で
ご主人の姪子さんもかつて子供を殺された
という話を聞いた。それも近所の同級生の親に。
当時は、オウム事件真っ盛りの頃で大きなニュースには
ならなかったらしいけど、その子供殺しは精神障害ということで
病院送りとなって名前も公表されず、
今はのうのうと普通に生活しているらしい。
その手の精神障害者は同じ犯罪を繰り返すことが
そうでない人と比べ非常に多い。
それなのに精神障害というだけで罪を逃れられる法律はおかしい。
法律家は加害者の人権ばかり強調しすぎだ。

これじゃ被害者の親はタマッタもんじゃない。
日本の刑法は被害者の立場が辛過ぎる。
俺なら確実に子供が受けた仕打ちと同じことを
加害者に対して実力行使するから、
あらかじめ覚悟しておいてほしい。
でないと、殺された子供は救われようがない。

世の中、少子化問題がこんなに重大なテーマとなっている
っていうのに、これじゃ子供が増えるわけないよね。
子供を持つのが嫌になっちゃうでしょ。

もう討論したり、お題目だけの少子化対策をやってる場合じゃないっつうの。
年金問題も将来不安も景気の問題も、
少子化問題が根っこにあることはみんなもうわかってるでしょ?

これに関してはもっと言いたいことや、
いろんな障害や問題があるのは承知しているけど、
話し始めるとキリがないので、今日は基本的問題提起だけ。
自分の眼と子供の体調が良くなったら
また今度ゆっくりと、ね。

ホラーの話が続いたので、今回まで。
次回からはもっと気持ちのいい話をしようね。

kidan


今、最高に目が充血中。
下の娘に移されたみたいだ。
母親は上の娘に吐き気を移され、
日曜日から二人でゲロゲロ吐いている。
私は夜中じゅう、洗面器を抱えて上の娘と添い寝だ。

娘が「食べたらすぐ吐く」病を発症してから、
もう3週間も経つというのに、いまだによくならない。
先週は一時期よくなったと思ったが、
今は水道水を飲んだだけで吐く。
医者を変えて薬をもらったが、まったく効かない。
ヤブイシャたちめ……呪い殺すぞ!

もう最悪だ。心配病から寒気までしてきた。
「もう絶対、娘には怒鳴ったり怒ったりしない」
と神に誓って願をかけた。

何の神に?……よくわからない。すべての神に、だ。
それが日本人的発想。
欧米では、神は唯一絶対の存在。すべての神などいない。
キリストの生まれ変わりが日本の隠れキリシタン部落に突如、
現れるなんて発想自体、異端として非難されかねない。

11月19日公開された『奇談 キダン』は、そんな短編漫画の映画化。
『リング』『呪怨』『ノロイ』『仄暗い水の底から』の一瀬隆重氏が
プロデュースしているからホラー映画色も濃いんだけど、
怖いのはチラシだけだった……(笑)。

むしろミステリー映画として主人公たちと一緒に
謎解きしていったほうが楽しめるだろう。
たまには、そんな一瀬プロデュース作品があってもいいよね?

主人公は、隠れキリシタン部落の隣村で子供の時に「神隠し」
に遭った経験をもつ女子大生(NHKの連続ドラマ「天花」の
ヒロイン役だった藤澤恵麻)と、異端の考古学者役の阿部寛。

トレンディドラマ全盛の80年代後半、男性モデルあがりの俳優が
数多く主演に抜擢されたけど、残っているのは阿部寛ぐらい。
いい俳優になったよね。主役・脇役、TV・映画を問わず、
彼の出演作数は今や膨大だ。けど、
『トリック』のようなノリは、ここにはない。

とりあえず一睡もせずに最後まで見られたから、
そこそこ面白かったんだろうなあ、
とは思うのものの、東北弁を話すキリストの生まれ変わりに
「ウギャー!」と身をよじらせてしまった。
言うまでもなく、怖いからじゃない(笑)。

(以下、ややネタバレです=注意)

彼が神隠しに遭った子供などを最後に解放するわけだけど、
こんな神の話自体が異端中の異端。日本人的発想の賜物。
突飛なだけで説得力が皆無だ。一番の問題はそこ。
敬虔なクリスチャンが見たら、怒るかもしれない。

まあ、面白ければ、どうでもいいんだけどね。
退屈はしなかったけど、そんなに褒めるほどのもんでもない
……微妙。総合評価★★

なぜなら怖さでいえば、今年9月に公開された『@ベイビーメール』
(『スウィングガールズ』にも出ていた松田まどか主演)
のほうが断然上だからだ。これはチープなりに完全なるホラー。
紹介のタイミングを逸してしまったけど、ビデオになったら是非!
田舎に謎解きしに行く時のシーンなどが『ノロイ』と似ていて、
たまたま見た時期が近かったせいか印象がややゴッチャだが、
こちらの方が娯楽映画としてワイワイガヤガヤ、
みんなで楽しめること請け合いだ。

ある携帯メールを開いてしまうと死者の子を妊娠してしまって、
母体は1カ月後に死ぬ、というトンでもないホラーなので、
妊婦にはオススメしない。流産しても知らないよ!

『リング』の亜流みたいな話で突っ込みどころも多々あれど、
これだけ楽しませてくれれば満足。及第点だ……総合評価★★★



ジェネオン エンタテインメント
@ベイビーメール


なぜか、ホラーには子供がつきものなんだよねえ
……神様、お願い、ウチの子供を元気にして!
なんでもするから……
(ほら、ホラーみたいになってきたでしょ?)

darkwater2

前回の続き、今回はネタバレ編です!)

『ダーク・ウォーター』は、最近のホラーにしては昔ながらの
サスペンス・スリラー的演出になっているという話を前回した。
ホラーでは悪が栄えて謎で終わったとしても恐怖さえ残ればいい
のだが、後者のジャンルでは主人公たちがサスペンスの要因となる
障害を最後にクリアして救われないと、見る側にとっては非常に
カタルシスを得にくい(つまり、納得できない)話となる。

『ダーク・ウォーター』の場合、主人公の母娘を追い詰めるのは、
二人が住むアパートの上の部屋で両親に見捨てられ、一人ぼっちで
死んでしまった女の子の霊。彼女は親の愛情(特に母親の存在)を
求めて、階下に引っ越してきた同世代の娘から母親を奪い取ろうと
数々のシグナルを送り、主人公たちを精神的に追い詰めていくのだ
が、最終的に主人公たちはこの危機から脱出できず、母親は亡霊に
命を奪われ、娘は亡霊に母親を奪われ、女の子の亡霊は母親を得る
……すなわち、亡霊側の完全勝利で終わるのだ!

これでは完全にホラーだ。
サスペンス・スリラーとして見ていると納得できない。
なんで母親が死ななきゃアカンのか、と思ってしまうからだ。

この映画が怖いとすれば、母親が娘の安全と引き換えに女の子の
亡霊の母親となり命を奪われてしまうという点にあると思うのだが、
「納得できない!」が先に立って「怖さ」がフッ飛んでしまった。

オリジナル版の『仄暗い水の底から』は、その辺がさらに露骨で、
亡霊の子供に愛情を注ぐ母親の姿まで描かれる。確かに母親は、
絶命することで子供時代に受けた「母に嫌われた」という心傷から
解放され、カタルシスを得られるのかもしれない。実の子でない
子供でも同じ様に愛せるのが「母性の真髄」ということなのかも
しれない(逆に父性とは……長くなるので下記※参照)。けれど、
亡霊の女の子に母親を奪われてしまった実の娘の立場はどうなる?
離婚調停中の父親が最後に出てきて引き取るから一件落着?
……なわけがない。そんな簡単に感情は切り換えられない。
それは観客も同じだ。

原作では、母親は死なない。それはホラー小説じゃないからだろう。
それをホラー映画にしようとした時点で、母親は死ぬ運命となった。
リメイク版もそれを踏襲しているが、観客に残る感情は微妙だ。
要は、子供には愛情を与えないと皆さん幸せになれませんよ、
ってな訓話みたいに、虚しくなるホラーなんだな。

『ビューティフル・マインド』で復活したジェニファー・コネリーも
役柄以上にギスギスしていて、あんまり好きになれなかったなあ。
ロビン・ライト・ペンとかが演ってれば、もうちょっと好きになれた
かもしれないけど……総合評価★★★

子供の幸せは、親の幸せ。子供の不幸は、親の不幸……
皆さん、めいっぱい自分の子供を愛してあげてくださいね(笑)。


※父性について

群れで生活するライオンは、その群れの中に
成人した雄ライオンが一頭しかいない。ご存じでした?

この唯一の雄ライオンが新たな雄ライオンにその立場を奪われると、
その群れにいた子供のライオンは、新たな雄ライオンにすべて
食い殺される!……という事実もご存じでした?
つまり、自分の種の子供しか雄ライオンは認めないってこと。
その本能に、私は「父性の真髄」を見る。
前述の「母性の真髄」と最も対極的だと思うのは、その点だ。

他の動物においてもオスの行動は多くは、他のライバルを排除し、
メスを確保するために戦う。それがオスの闘争本能の原点だと思う。
これがメスの場合はライバルを排除することなく、オスを選ぶ、
または選ばせる。種を得るためにはライバルを出し抜けばいいだけ
なので、その後は子育てのためにライバルを排除せずに、
群れの中で連携していくという特徴もある。
「母性の真髄」はそこらへんにも見える。

もちろん、これは私の勝手な私的見解です。念のため……

dark water

やっとウチの幼い娘の調子が良くなったと思ったら、
今度は下の娘が目を真っ赤に充血させている……!
なかなか二人揃って万全の体調にならない。
子供の不調は、それだけで親の精神状態に影響を与える。

でも一つだけ、安心できる材料もできた。
「食べたらすぐ吐く」という症状は、どうやらウチの娘だけでなく
近所の幼児にも発症しているらしく、さらに去年も11月頃に
似たような症状の幼児が何人かいた、という話を聞いた。
やはり治るまでに1~2週間かかったらしい。
ただし、相変わらず原因は不明……(幼児特有の病気なのか?)
とりあえず、ウチの娘だけの特殊な病気ではなかった
と、わかっただけでもホッと一安心だった。
(ご心配をおかけしてスミマセンでした…)

何も他の子供と一緒だから安心というわけでは決してないのだが、
そこがまた親というものの微妙な心理(笑)。
あんまり他の子供と違っていると心配になってくるもんなんですよネ。

さて、前回は「子供が仕事をもってきてくれる」……
という不思議なジンクス(よくある偶然)の話をしたけど、
そんな子供の霊的な力が何かを呼び寄せるといった類の話は
古今東西、枚挙に暇がない。『エクソシスト』や『シックスセンス』
といった有名な映画を例に挙げるまでもなく、時には良くないものも
呼び寄せてしまう。往々にして、霊的なものは子供を媒介として
やってくるケースが多い。こうなると親の心配は絶えなくなる。

11月中旬に劇場公開された『ダーク・ウォーター』も、
唯一まともな登場人物の子供を媒介として寄ってくる事件や
超常現象を軸に展開するサスペンス・スリラー(ホラー)映画だ。
一応、オカルト色もあるので「ホラー映画」と呼んでも決して
間違いではないと思うが、いわゆる最近のトレンドになっている
「音響オドカシ系スプラッターホラー」に慣れっこの観客にとって
“ホラー”と呼ぶには少々地味な印象を与えているようだ。

むしろ、モノクロフィルム時代のA・ヒッチコック監督の名作
『レベッカ』『断崖』『白い恐怖』といった、主人公が精神的に
追い詰められていくタイプの伝統的サスペンス・スリラーに近い。

いろいろなブログや書き込みの評判を読んでみても、
多数派の「怖くない」という意見から少数派の「怖い」とか
「感動した」という感想まで千差万別。つまり、見る側が
何を期待しているかによって感じ方がエラく違う映画なんだよね。

言うまでもなく、これは黒木瞳主演の日本映画
『仄暗い水の底から』(2001)の米国版リメイク。
主要スタッフがジャパニーズ・ホラーの旗手である
一瀬隆重プロデューサー、中田秀夫監督&鈴木光司原作
という『リング』などと同じトリオだから、否が応にも
「怖い」ホラーをみんな期待してしまうのは当然……
なんだけど、こちらも「怖くない」というのがもっぱらの評判
……(多数派、笑)。



バップ
仄暗い水の底から

それでも、どちらかというとオリジナルの日本版の方がまだ
最近のホラー的演出に則っていた。実際にリメイク版では、
『セントラル・ステーション』(1998)でブレイクした
ブラジル人監督のウォルター(ヴァルテル)・サレスが、
自身のハリウッドデビュー作として、それとは正反対の作風
----音響効果や血糊などに一切頼らない繊細で重く湿った、
まさにタイトル通りのホラードラマ----を目指していたらしく、
その目論見自体は見事に成功している。

ただし、それが怖いか?……というと、やっぱり違う。
離婚調停中の母親(ジェニファー・コネリー)がひたすら精神的に
追い詰められていく前半は、ほとんど不動産絡みのトラブル話。



ポニーキャニオン
パシフィック ハイツ

『バットマン』のマイケル・キートン演じる得体の知れない借家人の
恐怖を描いたジョン・シュレシンジャー監督のサスペンス・スリラー
映画『パシフィック・ハイツ』(1991)とでは、どこが違うのか?
といえば、何より主人公の精神状態。『パシフィック・ハイツ』の
メラニー・グリフィスとマシュー・モディーンは新婚カップルで
超ハッピー。そこからドン底へとジワジワ落ちていく……
(最後はアクション映画みたいな印象だったけど、総合評価★★★)

一方『ダーク・ウォーター』の母親は、幼少時に母親から嫌われた
トラウマを引きずっていて、最初から精神的に不安定な独身ママ。
この設定が納得のいかないオカルト的ラストにつながる。
オリジナルの『仄暗い水の底から』も同様の展開をするが、
実はコレ、原作のラストとは違う。

長くなったので、続きは明日!?…
次回、完全ネタバレ編でお贈りします!!

前回の「子供が仕事をもってきてくれる」という話