それでもボクはやってない(2007年) | 勝手に映画紹介!?

それでもボクはやってない(2007年)

それでもボクはやってない

【鑑賞日:2007年1月23日】

先週末から始まっている痴漢冤罪映画「それでもボクはやってない」をシネコンのレイトショーで鑑賞してきた。昨日、「太陽の傷 」のDVDの感想を書いたときに、TV局絡みの映画を批判したんだけど…ありゃりゃ、失敗したね…これフジテレビが製作した映画じゃん。マズった、前言撤回します…TV局絡みの映画でも、周防正行クラスの、本職の映画監督が撮れば、いい映画もできるってことですね(汗)ゴメン、これはかなり面白かったし…しっかりとテーマも伝わってきたし、「太陽の傷」と同じくらい社会派の硬派な作品に仕上がっています。フジテレビの名前だけでTVドラマとかわらん中身の薄い作品と一緒にしちゃ失礼な作品ですわ。

フリーターの金子徹平は、知り合いに紹介された会社の面接に行くため、満員電車に乗車していた。それは乗り換えの為、混雑した車内から駅に出た直後のことだった…中学生の少女にいきなり服の袖をつかまれ「痴漢したでしょ」と声をかけられる。騒ぎに気づき直ぐに駅員がやってきたのだが、誤解を解く暇もなく警察に引き渡され連行されてしまった。そして取り調べにあたる刑事たちも、徹平の言い分は全く取り合わずに…「自供すれば、すぐに出られる」の一点張りなのだが、身に覚えの無い徹平は頑として無実を主張し続けるのだった。結局、起訴されてしまった徹平は刑事裁判として裁かれることになった。

マスコミがやたらと取り上げたりして、最近は裁判傍聴ブームなんてものもやってきたりしたが…この映画の発想は、似たようなところからですよね。実は、たかが痴漢のようなチンケな事件(被害に悩んでる女性には申し訳ないが、エロイ妄想程度で満足し、痴漢なんかする気のない男として、どうしてもそういう印象になってしまう)でも…被害者も加害者も、人生を狂わせてしまうほどの壮大な物語があったのだと。凶悪事件も日常茶飯事な世の中になってきちゃったけど…一般人としてはやっぱり身近で陥る危険がありそうなのは痴漢と万引きだわな。そういった身近なところから、警察や検察、裁判所といったお役人たちの横暴さ、理不尽さを批判しながら、法律の矛盾点や曖昧さを描いていくという…内容の違いはあれど「太陽の傷 」とテーマは酷似していた。

あまり普通の映画やドラマで描かれない、痴漢に対する取調べや拘留の描写が凄くリアルで面白く…刑務所に入ってからの映画っていうのはいくつもあったけど、逮捕直後の拘留の様子を詳しく見せるのは珍しいですよね。万が一、警察にお世話になった時…こういう風景を見ておくと、少しは心の準備ができるかもしれない(笑)

それにしても、あの横暴な警察官の様子って誇張でもなんでもないよね…逮捕はされてないけどさ、自分もパトロール中のパトカーの前を自転車で路地に右折しただけで、追いかけてきて職務質問をかけられ、自転車泥棒に間違えられたことがあるけど、あの時の警察官の態度を思い出したよ。何故、職質なんかされたかというと…母親に借りたボロボロのママチャリに乗っていて、さらに自分が長髪だったから…見た目だけで、自転車泥棒と決めてかかってきたんだよね。人のいる前で、大きな声をかけ、逃げられないように前後を挟んでから、「何故、パトカーから逃げたんですか?」なんて言うんだよ。だって、自宅への帰り道なんだから仕方がないだろ!?

と…自分の嫌な思い出話はそのへんにしておいて、映画の感想に戻ります(^^ゞ

裁判が始まってからもバラエティ番組で、楽しげに裁判傍聴ネタを話している千原兄弟のジュニアのことなどを思い出しながら、無表情で官能小説でも読み上げているような冒頭陳述とか、クスクス笑ってしまうのだけど…後半は、ハラハラドキドキしながら、時には涙腺を緩ませながらも真剣に見入ってしまった。裁判ネタのフジテレビ映画といえば…「容疑者 室井慎二」なんかもあったけど、比べ物にならないほど、本格的に、リアリティを追求した裁判映画です。周防正行ということで…今までのスポ根もののような、もっとコメディ調の映画を想像していたのだが(予告編もどちらかというとコミカルな可笑しさを強調していたよね?)、これこそ、和製ジョン・グリシャムに相応しい本格的なリーガルサスペンスであった!

人によっては、不満にのこるかもしれないが…話の落しどころも、安易に予想できるものを選択していなく…納得できる展開であったと思う。劇中の被告人と同化しながら…裁判長の読み上げる判決文を、一字一句、厳粛に受け止め…最後の主人公の一言に心を揺さぶられる。エンディングロールが流れている間、映画の感想からはじまり…色々なものに対しての理不尽さに憤りを感じながら、自分がもしこんな事件に巻き込まれたらどうしよとか、色々なことを考えちゃいますよ。男のお客さん…場内が明るくなっても呆然としちゃって、立てない人もけっこういたしね(笑)

メインキャストから、脇役まですごく豪華でクセモノ揃い…本田博太郎、田口浩正、竹中直人なんて、少ない出番ながら、画面に写ってるだけで挙動不審で印象に残るよね。また、大森南朋の担当刑事、北見敏之の副検事、小日向文世や大和田伸也の裁判官役も迫力満点。でも、いちばん演技が凄かったのは、公判の前半戦に出てきた眼鏡の裁判長を演じた正名僕蔵だよね(笑)…風貌も喋り方もあの人はリアルだったわぁ~…いそうだもん、ああいうナヨナヨっとした裁判官(昔、通院していた病院の主治医に似てるんだな、コレが)。


監督:周防正行
出演:加瀬亮 役所広司 瀬戸朝香 もたいまさこ 山本耕史 光石研 尾美としのり 田中哲司


【関連書籍】
それでもボクはやってない―日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!






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