ベン・スティラー監督・主演、クリステン・ウィグショーン・ペンアダム・スコットシャーリー・マクレーン出演の『LIFE!』。2013年作品。

予告篇で使われているQueenの曲は本篇では流れません。




写真雑誌「LIFE」のネガフィルムの管理を担当しているウォルター(ベン・スティラー)は、いつもつい空想に耽ってしまう癖があった。同じ会社の社員シェリル(クリステン・ウィグ)に声をかける勇気がなく、彼女が登録しているパートナー探しのウェブサイトに自分も登録してみるが、自分を売り込めるものが何もない。そんな折「LIFE」の廃刊が決まり、リストラが始まる。フォトジャーナリスト、ショーン・オコンネル(ショーン・ペン)から最終号の表紙用のネガが送られてくるが、肝腎の「25番目のネガ」がみつからない。ウォルターはシェリルの協力で知った、ショーンがいるらしいグリーンランドに向かう。


ベン・スティラーの存在を最初に知ったのは多分『メリーに首ったけ』で、あの映画では自分のアソコから飛ばしたナニが耳たぶに付くというアクロバティックな下ネタをやってたけど、その後何本もの映画に出演、監督もしてるのは知っていながらも、映画館で観たのは赤いジャージ姿が似合い過ぎてた『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』とロバート・ダウニー・Jr.の黒人特殊メイクが強烈過ぎた『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』ぐらい。

ミート・ザ・ペアレンツ』は映画館だったかDVDでだったか忘れてしまった。

ナイト ミュージアム」シリーズは2本ともTVで。

ズーランダー』でのおちょぼ口の“キメ顔”には笑ったし、戦場版『サボテン・ブラザース』みたいな『トロピック・サンダー』はかなり愉快な作品でした。

そんなわけで、これまでなんとなく出演作を何本か観てきたんだけど、いまだにアダム・サンドラーとゴッチャになってしまう時がある。出演作品とかよく間違える。

別に顔が似てるとかいうんじゃないんだけど、立ち位置が微妙にカブってる印象があって(サンドラーは監督はしないけど)。

アダム・サンドラーも僕は最近ご無沙汰ですが。

あとどーでもいいけど、ベン・スティラーって口ヒゲ生やすとサシャ・バロン・コーエンに似てるよな(ほんとにどーでもよくてスイマセン)。

で、久しぶりにベン・スティラーの監督・主演作ということで予告篇も期待させるものだったので観に行ってきたんですが、うん、面白かったですよ。

これといって何か強く残るわけではなかったけれど。

それでは、これ以降はちょいちょいネタバレが入りますので、未見のかたはご注意ください。



原題の“THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY”は1947年(日本公開1950年)のダニー・ケイ主演映画『虹を掴む男』の原題で、この映画はそれのリメイクとのこと。

恥ずかしながら僕はこのオリジナル版『虹を掴む男』の方は未見なんですが、山田洋次監督、西田敏行主演の同名の邦画があるので元ネタとしては知っていました(山田監督の『虹をつかむ男』もちゃんと観てません)。

リメイク版はオリジナル版と映画のタイトルや主人公の名前が同じものの、ストーリーは主人公が空想癖のある男という点以外はほぼ別物。

ベン・スティラーがダニー・ケイみたいに歌って顔芸やったりはしません。

その代わり、特に最初のうちはVFXを使ってウォルターの荒唐無稽な空想(妄想)を表現。

ベンジャミン・バトン』のパロディには、本家よりも笑ってグッときました。

彼は電車のホームでパートナー探しのウェブサイトの顧客サーヴィス責任者トッド(パットン・オズワルト)と電話で会話してる最中に、ビルの爆発からシェリルの飼い犬を救いだすという妄想に浸ったりする。

この辺りのウォルターの妄想癖が物語に深く絡んできたり、その妄想癖ゆえに危機を脱する、といった展開にはならないのが個人的にはけっこう不満だったんですが。

たとえばシェリルの3本足の飼い犬を救出するために高架から飛び降りる妄想は、のちに彼がヘリコプターから海にダイヴすることと関係があるのかもしれないし、オフィスでいきなり雪山からシェリルに会いにくる妄想は、本当に雪山に登頂して帰ってくる終盤に呼応していると考えられる。

 


それはそうなんだけど、ウォルターは妄想力で現実をサヴァイヴしていくというよりは、ほとんど自力でやり遂げてしまう。

シェリルに対してどんどん自分に都合のいい妄想を募らせていくとことか、エレヴェーターの中でテッドのヒゲの悪口を言う空想なんかは「あるある」って感じだったけど。

とにかくウォルターはシェリルの言葉がきっかけで、今いる「ここ」から飛びだす。

それから先は、あれよあれよという間に彼は旅に次ぐ旅を繰り広げることになる。

この主人公の冒険譚にノれなかった、という人もいるようだし、正直僕もけっこう戸惑いつつの鑑賞でした。

いや、物語そのものは別に難しくはないんですが。

「写真のネガがないからって、いきなりカメラマンに会いに海外に飛んだりするか?」ということを云々しても意味がなくて、これは「世界を見よう。危険でも立ち向かおう。それが人生の目的だから」という「LIFE」誌のスローガン通りにウォルターが世界に踏みだすところから始まる一種の「寓話」なわけで、現実にそういうことがありうるかどうかという話ではない。

それに、「現実」からありえない世界への飛躍を目撃することこそが映画の醍醐味でもあるのだから。

気づいたらグリーンランド行きの飛行機に乗ってた時のウォルターの表情が楽しい。

ただしこの作品は、これは「現実」なのか?それとも「空想」なのか?と観客を惑わせるような筋立てにはなっていない。

基本的にウォルターがやってることはすべて現実の出来事で、その中にそれとわかるように彼の空想が差し挟まれるだけ。

僕がなんとなく違和感を覚えたのは、このウォルターさんって最初はなんだか疲れた勝村政信みたいな顔して出てくるからいかにも冴えない人っぽくて、アダム・スコット演じる事業再編担当者のテッドがやたらと彼をイジるんで“いじめられっ子キャラ”みたいにも見えるけど、実際にはかなり超人的なキャラで(スケボーめっちゃウマいし)、なんだろ、あまり等身大の人に感じられないんだよね。

 




仕事自体はできる人なんだし。

ただ雑誌のオンライン化によって他の仲間たちとともに仕事を失なった、というだけで。

楽しそうにリストラを敢行するテッドに向かって「上から言われた通りやってるんだろうけど、君自身が嫌な奴になる必要はない」と物申すところは、ちょっと共感しましたけどね。同じこと言ってやりたい奴が何人もいるんで。

アダム・スコットは僕は『ピラニア3D』でその存在を知ったけど、けっこう「嫌な奴」役が多い俳優さんだな。




大の大人が人形の奪い合い。腕伸びすぎw

このように、ウォルターは空想癖を除けば仕事にも問題のない人だし、あれだけ積極的にシェリルに接触できるんなら、妄想してたように彼女と手をつないだり付き合ったり結婚するのだってそんなにハードルの高い夢ではない。

夢見がちな男が空想の力によって現実を変えていく、というようなボンクラの夢物語ではなくて、ウォルターは最初からしっかりとスキルを持った人だったんだよね。

しつこいけど、そこが僕がこの映画にいまいちノりきれなかったところ。

この映画はつまり、ウォルターがアイスランドで火山の噴火から逃げたりエヴェレストに登って珍しいユキヒョウを見たりして帰ってくると、本当に大切なものがなんなのかわかった、というお話。

ネガの一枚にはウォルターの大切なピアノが写っていたり、終盤でシャーリー・マクレーン演じるウォルターの母親がいきなり重要なキャラに転じるのも、大切なものはすぐそばにあった、ってことなんだろうと。

なるほど、そういうことだったのか!と膝を打つような展開やオチが待っているのではなくて、非常にわかりきった結末へと収束していく。

すみません、それがちょっと物足りなかったです。

この映画自体が壮大な“妄想”でした!というんならまだわからなくもないけどさ。

シュワちゃんの『トータル・リコール』のように、冒険のあとに美女も手に入れて…でもこれは実は…(ホワイトアウト)みたいな。

でも、そういうんじゃないんでしょ?

ウォルターの冒険自体は先が読めなくてなかなか楽しかったですが。

 

 
ショーン・ペンの顔がやたらとシブくなってました

結果じゃなくて過程を楽しむ映画だったのかな。

行方不明だった「25番目のネガ」には、冒険家ショーンから送られてきたネガフィルムを一心にみつめるウォルターの姿が写っていた。

これこそが「LIFE」最終号の表紙にふさわしい、とショーンが判断した写真だった。

なるほどね、と。


僕は音楽に疎いんだけど、それでもこの映画に使われている曲はけっこう凝ってたな、と思いました。耳に心地よかった。

ヒロインのシェリルを演じるクリステン・ウィグは『宇宙人ポール』では下品な言葉を叫びまくるキリスト教原理主義者の女性を、また『ブライズメイズ』ではゲロ吐いたりこれまた大暴れしてましたが、今回は下ネタはなし。




ベン・スティラーにホレられるシングルマザー役。

フィルムを見るための専用のルーペをかけてるウォルターに「サンドピープルみたい」と言うところとか、普通の女性が通常の会話でSWネタをカマしてくるか?とw

 
サンドピープル?w

 
特殊メイクで老人になったベン・スティラーとクリステン・ウィグ(こんな場面あったっけ?)。クリステン・ウィグの老け顔がリアルすぎ^_^;

この人をキャスティングするスティラーは信頼できるなぁ(^o^)




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