http://www.sponichi.co.jp/society/news/2017/06/19/kiji/20170618s00042000446000c.html

 

 

茨城県警古河署は18日、膝の上に乗せた子供に車を運転させたとして、道交法違反(無免許運転ほう助など)の疑いで、古河市の配管工(31)を逮捕した。子供がハンドルを操作する様子を撮影した動画がインターネット上に投稿されており、同署が捜査していた。

(6月19日スポニチアネックスから一部引用)

 

映像を見ましたが,子どもがかわいそうだなというのが感想です。

 

 

ところで,今回の被疑事実のうちの一つは無免許運転のほう助ということになっているようです。

これは,あくまでも,無免許運転したのはあくまでも免許を持っていない子どもであって(正犯),父親はそれを助けた(ほう助した)という理屈です。

 

 

しかし,映像を見る限り,子どもは14歳未満のようですから,子ども自体は刑法41条により不可罰となり,犯罪は成立しないことになります。

 

 

ほう助犯というのは,あくまでも正犯を助けるものですから,正犯が成立しないのにほう助犯が成立するのかという問題があります。

犯罪が成立するためには,構成要件該当性,違法性,責任という3つの要素をクリアーしなければならないとされています。

構成要件該当性というのは今回の件でいえば無免許で自動車を運転したという行為です。違法性というのは処罰するだけの強い違法性があるのかということで,(成立するかどうかはともかく)例えば,無免許運転をしたけれども妊娠している妻を病院に運ぶためにほんの短時間だけ運転したというような場合に無免許運転には違いないけれども違法性があるのかといった論じ方をされます(正当防衛が成立するかという問題もこの違法性レベルでの議論になります)。最後に,責任については,構成要件にも該当し違法な行為であるけれども,14歳未満であるとか,認知症により責任能力がないというような場合には,不可罰とされます。

 

 

古い大審院の判例では,教唆・ほう助犯とよばれる従犯が成立するためには,正犯については構成要件該当性・違法性・責任のすべて備えていなければならないとするものもあるようですが,現在の支配的な見解としては,正犯は違法性のレベルまで備えていればよいと考えられています。

本件についても報道されている通りなのであるとすればこのような見解に沿って無免許運のほう助という法律構成を採ったものと考えられます。