判例タイムズ1429号で紹介された事例です(東京地裁平成28年3月11日判決)。

 

 

本件は,夫と不貞行為を行った女性(被告)に対し,妻(原告)が慰謝料請求をしたという事案ですが,被告は,慰謝料請求権を債権者名簿に記載したうえで破産手続開始決定を受け,免責決定を得ていたことから,当該慰謝料請求権が破産法253条1項2号の非免責債権に該当するかどうかが争われました。

 

(免責許可の決定の効力等)

破産法第253条  免責許可の決定が確定したときは、破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。ただし、次に掲げる請求権については、この限りでない。

 二  破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

 

破産法253条1項においては,税金や養育費などと並んで,「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」を非免責債権としています。

 

 

ここでいう「悪意」というのは,単なる故意を超えて,積極的な害意を指すというのが通説であり,本件判決もこの見解に依っています(というのも,3号では「故意・・により加えた人の生命身体を害する不法行為」が挙げられており,法律自体が「悪意」と「故意」を明確に書き分けているからです。)。

 

 

現在の判例のもとでは,配偶者がいることを知りながら不貞行為を行った第三者(本件の被告)が,他方配偶者に対して不法行為に基づく慰謝料を支払わなければならないことは争いがありませんが,先ほどの「害意」の定義からすると,単に配偶者がいることを知りながら不貞行為を行った(故意)だけでは,非免責債権には当たらないということになります。

 

 

本件において,被告の行為は違法性が低いとまではいえないけれども,一方的に原告の夫を篭絡してその家庭の平穏を侵害する意図までがあったとは認められないとして,原告の慰謝料請求権は非免責債権には該当せず,免責にされたとして,請求は棄却するという判断となっています。

 

 

個人の破産・免責を申し立てた際に,債権者の中に不法行為に基づく債権が含まれているという場合,本件のように,免責されるのかどうか微妙となるケースは時折あり,参考となる裁判例だと思いました。