判例タイムズ1428号などで紹介された最高裁の判決です(平成28年2月19日判決)。

 

 

本件は,経営難に陥った信用組合が,合併に当たり,労働者の退職金についてそれまでよりも不利な条件(計算の基準となる賃金や支給倍数など労働者にとって不利となる)に変更することについて労働者から署名押印された同意書を得たこと,また,同日に組合との間で締結された労働協約でも同様のことが合意された(労働協約はすべての労働者にその効力が及ぶものとされています)と主張し,労働者側では新しい計算方式によると退職金が0円となってしまうとしてそのような同意や労働協約の無効を訴えたというものです。

 

 

高裁では,同意や労働協約を有効として労働者側の敗訴としたのですが,最高裁では,使用者と労働者の力関係を考えると,就業規則等に規定された賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については,単に変更を受け入れるという労働者の行為の有無だけではなく,変更によって労働者にもたらされる不利益の内容・程度,労働者によりそのような行為がされるに至った経緯や態様,先立つ情報提供や説明の内容等に照らして,労働者の自由な意思に基づいてなされたものであるかどうかが判断されるべきであるとしました。

 

 

そして,本件では,合併に際して行われた労働者に対する説明につき,経営者側から示された同意書案の記載内容というのがめちゃくちゃで,合併しても支給基準が不利益にならない内容なものとなっていたり,変更された場合に退職金が0円となる可能性が高いものであるとこなどについて全く説明されておらず,また,「同意しないと合併が実現できない」などと言われていたという事情があったことなどから,労働者が同意するにあたって必要な情報の提供が受けられておらず,高裁の判断においてはこの点が十分に考慮されていないとして,破棄差し戻しとされました。

 

 

また,労働協約の点については,労働者側として署名押印した執行委員長の権限につき,規約に「組合を代表し業務を統括する」とあるだけでは,本件労働条件の変更に関して権限があったかどうかは解することができないとして,この点についても審理不尽として差し戻されました。

 

 

 

本件で合併話が進行して合併がなされたというのが平成14年,15年ということで,一審に訴訟提起されたのが平成24年のことです。

経営者の側としては,そんな古い話のことなど大丈夫だとタカをくくっていたのではないかと推測されますが,きちんとやっておかないと手痛いしっぺ返しを食らうということですね。