http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161021/k10010737531000.html?utm_int=news-social_contents_list-items_068

 

税理士で、日本税理士会連合会の常務理事を務めている●●●●容疑者(70)が、顧問をしていた、家電の通信販売サイト「まいど」の運営会社が、破産手続き中だった去年5月、元社長の口座からおよそ2000万円が引き出されていたことについて、破産管財人に対し、「知人からの借金返済に充てた」とうその説明をしたとして、破産法違反の疑いで、20日に警視庁に逮捕されました。
(10月21日NHKニュースウェブから一部引用)

 

否認しているということなので事案の真相についてはよく分かりませんが、破産手続きが開始され、破産管財人が選任されると、管財人は、債務者(会社である場合はその代表者や従業員)やその申立て代理人である弁護士から、事情を聴くことになります。現在の東京地裁の運用では、債務者による自己破産の申立であれば、破産手続き開始決定が出されるまでの間に打ち合わせをするように求められていて、その後も、大きな管財事件ではたびたび事情を聴くために管財人との会議が開催されることになります。私も、以前、複雑で大きな破産管財事件の申し立てをした際に、管財人との初回打ち合わせの際に、向こう3か月くらい先まで、毎週打ち合わせのための予定を組まされたことがあります。

 

 

それはともかく、今回の報道によると、破産会社の社長の口座から2000万円もの引き出しがされていたということなのですから、管財人として、(現金化の時期にもよりますが)この点について重大な関心を抱くことは当然と言えます。今回、会社だけではなく、代表者個人も破産手続きが開始されたのかはよく分かりませんが(通常は代表者が会社の債務を保証していることも多く、会社と代表者はセットで破産手続き開始となることが多いですが、稀に、会社のみ破産となり代表者は破産の申立をしないということもあります。)、管財人が社長個人の口座に関して質問したということは、仮に会社のみの破産であったとしても、会社の資金から社長個人の口座に流れていたということなのでしょう。

 

 

これに対する説明として、知人に対して返済したというのは、仮に社長個人も破産していたのだとすれば、社長個人の破産管財人として否認権の行使を検討するということになります。否認権というのは債権者の一部に対してのみ不公平な弁済をした場合に、その弁済の効力を否認し、弁済した金銭の返還を求めることです。ただ、弁済を受けた知人が「社長が破産するとは知らなかった」などと言って抗弁したりすでにその知人が死亡していたりなどしていた場合、弁済した時期等によっては否認権が行使できるかどうか微妙ということになってきます。「知人に対して弁済した」というのがうまい弁解だとは思えませんが(虚偽回答を推奨するものではありません)、もし事実なのであれば、このあたりの効果を狙ったなのかなとも思います。

 

 

また、仮に、会社のみに破産手続きが開始されており社長個人は破産していなかったという場合、管財人はあくまでも会社に関する資産等の調査しかすることができないので、会社のお金が社長個人に流れていることまでは分かったとして、その先については、より一層、社長個人から先のお金の流れについては有耶無耶になるということはあり得るものと思います。

 

 

もっとも、いずれにしても、会社から2000万円もの使途不明金が発生しているというのに、管財人に対して虚偽の説明をしてすんなり通るということがあり得ないということは「破産実務に通じた者」であればわかることです。

この点でいうと、この規模の破産事件であれば破産申立代理人の弁護士が付いているというのが普通で、管財人からの質問や回答も代理人である弁護士を通じてなされるのが通常なのですが(別サイトの記事などを見ると弁護士に一任しているというようなニュースもあるようです)、この事件の一連のニュースを見ると、事件の構図を描いていたのは税理士であったような印象を受けますが、税理士は「破産実務に通じた者」ではなく、弁護士こそがそうですので、仮に税理士に相談してこのような結果になったということが事実なのであるとすれば、この会社の社長は相談する相手を誤ったということなのかもしれません。