判例タイムズ1426号などで紹介された最高裁判例です(平成28年4月28日判決)。

 

 

破産手続きというのは,破産者が有している財産を債権者のために差し出す(破産財団を構成する,などといいます)という手続きですが,どのような財産が取られてしまうのかという点については,破産法34条1項に規定があり,破産手続開始決定時に破産者が有していた一切の財産ということになっています。

 

 

もっとも,破産者が自然人である場合には,破産者の生活ということも考えなくてはならないので,家財道具や一定金額(99万円)までの現金などそもそも差し押さえが禁止されているものについては対象から外されています(破産法34条3項)。

 

破産法第34条  破産者が破産手続開始の時において有する一切の財産(日本国内にあるかどうかを問わない。)は、破産財団とする。
 破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権は、破産財団に属する。
 第一項の規定にかかわらず、次に掲げる財産は、破産財団に属しない。
 民事執行法 (昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号 に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭
 差し押さえることができない財産(民事執行法第百三十一条第三号 に規定する金銭を除く。)。ただし、同法第百三十二条第一項同法第百九十二条 において準用する場合を含む。)の規定により差押えが許されたもの及び破産手続開始後に差し押さえることができるようになったものは、この限りでない。
 裁判所は、破産手続開始の決定があった時から当該決定が確定した日以後一月を経過する日までの間、破産者の申立てにより又は職権で、決定で、破産者の生活の状況、破産手続開始の時において破産者が有していた前項各号に掲げる財産の種類及び額、破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して、破産財団に属しない財産の範囲を拡張することができる。
(以降略)

 

本件で問題となったのは,破産者夫婦の長男が契約していた共済と生命保険契約で,長男は両親が破産する前からこれらの契約をしていました。

そして,両親(破産者夫婦)が破産手続き開始決定を受けた後,長男が死亡してしまい,その共済金と死亡保険金は受取人である両親に支払われることになりましたが,このうち両親が使ってしまった合計1000万円について,破産管財人が両親に対して返還請求したというのが本件です。

 

 

破産法34条2項に基づく「将来の請求権」として共済金等が該当するのかということが問題となりましたが,最高裁では対象になると判断し,両親に対し支払いを命じた原審を是認しました。理屈としては,保険金請求権というのは,保険事故が発生する前であってもそもそも発生しており,保険事故が発生したことを条件として具体化するというのが判例の踏襲してきた理屈なので,保険事故(本件でいえば長男の死亡)の発生前であっても債権者が差し押さえたりすることができる(前記したようなそもそも破産財団を構成しない差押え禁止対象ではない),というものです。

保険契約者(本件の長男)が受取人を変更しようと思えば自由にできるものであり,債権者としても引き当てとして期待していたものなのか,財産的価値としては希薄ではないかという問題意識もあるところですが,一定の財産的価値があるものとされています。

 

 

理屈としては分かるものの,本件の共済,保険契約は破産者夫婦が契約していたものではなく(破産者が契約していた保険契約であれば破産申立時の財産リストにも載ってきますが,自分が受取人である保険までは把握していないことも多いと考えられます),長男が(たぶん)両親のためという思いでかけていたもので,かわいそうという気もします。

 

 

このような場合には,破産財団ではあるけれども管財人(破産裁判所)により財団から放棄するとか,自由財産(破産者の自由にしてよい財産)を拡張するという申立(破産法34条4項)をすることで柔軟に対処しているのが実務的な運用で,本件でもそのような対応をすべきだったのかもしれません。

 

 

ちなみに,本件では破産者の代理人であった弁護士も,破産者に「保険金を使ってもよい」という誤った助言をしたという理由で一緒に被告として訴えられており,代理人弁護士に対する請求についても認容されています。原審(高裁)が破産者夫婦や代理人弁護士敗訴の判決をしたため最高裁への上告受理申立がなされ,最高裁が受理したという経緯なので,申立した方としては「もしかしたら・・・」と期待したものと思われますが,上告受理されても結論として原審是認ということもあるので,(おそらく)ぬか喜びとなったということになりました。

 

 

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