判例時報2299号で紹介された事例です(東京地裁平成28年1月15日)。

 

 

事案自体はありふれた離婚関連の訴訟で,夫が妻から受けた暴力を理由として慰謝料請求(妻による暴力を理由とする慰謝料請求)を地裁に提訴した後,離婚と離婚に基づく慰謝料請求(この件の慰謝料請求はもっぱら妻の行為が言動で離婚するに至ったということを理由とするもので離婚が成立し確定したことで初めて発生することになります)を家裁に提起したところ,妻から,人事訴訟法8条1項に基づき,地裁の事件は家裁に移送すべきであるとする申立がされたというものです。

 

人事訴訟法第8条  家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第一審裁判所は、相当と認めるときは、申立てにより、当該訴訟をその家庭裁判所に移送することができる。この場合においては、その移送を受けた家庭裁判所は、当該損害の賠償に関する請求に係る訴訟について自ら審理及び裁判をすることができる。
 前項の規定により移送を受けた家庭裁判所は、同項の人事訴訟に係る事件及びその移送に係る損害の賠償に関する請求に係る事件について口頭弁論の併合を命じなければならない。

 

同じ当事者間で背景事情も同じであるから移送してもよさそうにも思われますが,地裁の慰謝料請求事件は暴力があったこと自体は争いがなくその経緯のみが争点であるのに対して,家裁の離婚事件のほうは,もう少し争点に広がりがあり,別居に至った経緯や暴力に至る以前のいきさつなども争点となることから(離婚を認めるかどうかは暴力の有無だけではなく,みう少し広く事情をくみ取って判断するため),家裁に移送してしまうと,最初に提起された慰謝料請求事件の訴訟の遅延を招きかねないこと,夫側としてはわざわざ二つの事件を別々に提起したのは先行する暴力事件の慰謝料請求について早く判断を求めたいという意思であったことなどから,人訴法8条1項の「相当と認めるとき」に当たらないものと判断され,移送は却下されました。

 

 

本件とは関係ありませんが,離婚に伴う事件においては,平成15年頃に人事訴訟法の改正があり家裁の管轄が広がったことから,地裁(場合によっては簡裁)と家裁と管轄の判断に迷うことがあり,保全をかけるという場合にもその理由(慰謝料請求なのか財産分与なのかなど)によっても同様で,慌ててやると門前払いされかねないということもあり,慎重に調べることが必要となっています。ちなみに,最近では当事者が外国籍であったりすることも多くなり,国際私法(どの国で訴訟すべきかという国際裁判管轄や管轄が日本の裁判所であるとしてもどの国の法律を適用すべきかということが問題となります)の知識が必要となることも増えているような印象です。

 

 

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