判例時報2299号で紹介された事例です(大阪地裁平成27年1月26日判決,大阪高裁平成27年9月30日判決)。

 

 

本件は,交通事故で死亡した被害者の相続人が保険会社との間で締結した示談が,当該相続人に知的障害があり,示談の内容を十分に理解するだけの判断能力がなかったとされたうえで無効と判断されたという事案です。

 

 

後見の申立の動機(理由)の多いものの一つとして,保険金の受領というのがあり,主に,交通事故で意識障害となってしまった被害者に代わって後見人を立てるためというのが多いケースですが,本件は,交通事故の被害者は死亡し,その唯一の相続人が保険会社と交渉するにあたり,知人と称する者が事実上の交渉を行い,保険金として合計で1億円近くに上る金額での示談を取りまとめたうえで,新たに開設した相続人名義での銀行預金口座に入金させました。なお,送金された保険金はすべてその知人が引き出してしまったようで,相続人の手には渡らず,その後,相続人のために選任された成年後見人が,知人を被告として不当利得返還訴訟を提起するとともに,保険会社に対しても示談の無効を理由として保険金の支払いを求めたというのが本件です。

 

 

一審,二審とも,相続人の判断能力について,幼いころからの知的障害があり,医師の診断などからしても,相続人に本件示談の内容を理解するだけの能力はなかったと判断しました。

 

 

また,保険会社は,保険金を相続人本人名義の預金口座に送金しているので弁済しているとい主張しましたが,そもそも,預金口座の開設に当たっても知人と称する者と同行して解説手続きがされており,相続人本人の判断能力からして,金融機関との間で預金契約は成立しておらず,当該預金口座は本人のものではないということで,有効な弁済とはならないと判断されました。いわば,相続人本人こと知人名義の口座ということでしょう。

 

 

酷いのは,知人と称する者ですが,そんな者相手に示談を進めて保険金を支払うという手続きを行った保険会社も相当問題があるというべきです。

 

 

 

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