判例タイムズ1424号で紹介された事例です(東京地裁平成27年10月15日判決)。

 

 

本件は、債務者とその関連会社について、破産申立の方針のもと、債権者に受任通知を送付した弁護士が、債務者から費用の支払いがないので、受任通知発送から約4か月後に辞任しましたが、その間に債務者が所有していた不動産を売却してその代金も入手していたというものて、債権者の一人が、弁護士に対して、実印などを預かっていれば不動産が売却されることもなかったし、通帳を預かるなどして売却代金を補完すべき義務を怠ったとして、損害賠償請求を求めたという事案です。

 

 

裁判所は、一般論としては、破産申立の委任を受けた弁護士が受任通知を債権者に対して通知した場合、債務者の財産が不当に減少、散逸することを防ぎ、なるべく早く破産申し立てをすべき義務があるとしましたが、本件では、

・弁護士は、債務者に対して特定の債権者にだけ弁済したり、債務者の財産を処分してはいけないということを注意していたこと

・債務者は不動産の存在自体は弁護士に伝えていたものの、それを弁護士にも秘密裏に売却する意思がある可能性がうかがわれる状況にはなかったこと

・債務者の実印や登記情報識別情報を預かったとしてもそれだけで不動産の売却を完全に阻止できるわけではないこと

・社会生活をしている自然人である債務者から実印を預かることについては債務者に一定の不利益を生じさせてしまうこと

・弁護士は債務者に何度も通帳を持ってくるように指示していたが債務者が従わなかったこと、その提出を強制させる手段もないこと(ちなみに、破産管財人と異なり、破産申し立てを受任したという代理人の立場では金融機関に対して口座を凍結させたり取引履歴を出させたりするということはできません)

・などから、弁護士が不動産の換価防止義務に違反したとか売却代金の管理すべき義務に違反したとは認められないとされています。

 

 

また、弁護士が辞任したのも債務者が費用を支払わないという事情があったためで、破産申立に至らなかったとしても弁護士の責任ではないとされました。

 

 

債務整理事案においては、いい加減な債務者、うそをつく債務者というのが往々にしています。何かと理由をつけて、資料を持ってこない、払う払うと言いながら費用を支払わない、連絡がなかなかつかない・・・本件でもそのような兆候が見られた債務者であったようですが、なんとなく、「おかしい」という雰囲気は駆らなずあるので、それに感づいたら、期限を決めて辞任するほかないものです。

 

 

 

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