判例タイムズ1424号などで紹介された判例です(最高裁平成28年3月4日判決)。

 

本件は老人ホームのデイサービスの自動車での送迎の際に、老人が降車着地した際に骨折したという事故において、老人側が、当該自動車にかけられていた搭乗者保険に基づいて保険金(治療費)を請求し一旦は支払われたものの、さらに後遺障害保険金の支払いを求め、これに対し保険会社側が、約款上の「運行に起因した事故」(運行起因性)ではないと主張して支払った保険金の返還を求めたというものです。

 

本件は直接問題となるものではありませんが、運行起因性の論点に関しては、自賠法3条本文にも同様の規定があり、同様の議論されることがあります。

走行中に事故を起こした場合が「運行によって」に該当することは当然として、停止している自動車のドアを急に開いたために歩行者にぶつかってけがをした場合とか、運転そのものではなく車両につけられたクレーン操作中にクレーンが当たって事故となった場合など、どこまでが「運行によって」と言えるのかということが問題となることがあります。

 

自動車損害賠償保障法第3条  自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。

 

この規定は、自動車が通常の用法で利用していたとしても事故を起こす可能性があるものであることから、自動車のそのような危険性に着目して、被害者救済を目的として規定されたものであることから、自動車本来の用法によって利用されていたかどうかということが一つのメルクマールとなります。

 

 

本件では自動車の駐車位置に問題はなく、職員の介護のもとに降車をしていたことなどの事情からすると、本件事故は自動車の本来の危険性が顕在化したというものではないとして、運行起因性を否定し、保険会社からの請求を認めました。原審(高裁)では、事故の原因は自動車にあるのではなく、介護職員が踏み台を用いなかったことが原因であると説示していましたが、さすがにそこまでは踏み込みすぎであると指摘されています。

 

 

本件ではいったんは保険会社は約款に該当すると判断して保険金を支払っていたものですが、その後、老人側の請求に対して反訴する形で保険金の返還を求めるという経緯となっています。

老人側(正確に言うと当該老人はその後亡くなってしまったので原告は相続人である子供たちでしたが)は後遺障害(明示はされていませんが、大腿部骨折ということなので寝たきりとなったのではないかと推測されます)を理由として保険金の追加支払いを求めたのですが、保険会社としてはそれに乗っかる形で反訴し、もともと疑義をもっていた運行起因性について主張してきたということなのかなと思いました。

 

 

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