判例時報2292号で紹介された事例です(東京地裁平成27年10月2日)。

 

会社間で事業譲渡をした場合に、譲受会社が、譲渡会社の商号をそのまま続用して事業を継続した場合、譲受会社は、譲渡会社の事業によって発生した債務(金融機関からの借入金や取引先からの買掛金など)について連帯して責任を負うこととされています(会社法22条1項)。

 

会社法第22条1項  事業を譲り受けた会社(以下この章において「譲受会社」という。)が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う。

 

本件は、内装工事の設計や監理などを行なっていた会社(仮に「エービーシー株式会社」とします。)の取締役が、エービーシー株式会社の経営が悪化して以降、知人の別会社を使って、本店をエービーシー株式会社の事務所本店として登記し、その商号をABC株式会社(アルファベット表記にしたもの)とし、会社の標章(ロゴマーク)はエービーシー株式会社のものをそのまま使用し、従業員や顧客の一部を引き継ぐなどしたという事案です。

 

 

エービーシー株式会社とABC株式会社は別法人ですが、もとのエービーシー株式会社の債権者であった金融機関が、会社法22条1項を根拠としてABC株式会社に対し債務の支払いを求めたというもので、裁判所は、同条項を類推適用して(商号そのものの続用ではないので類推適用になります)、金融機関の請求を認めました。なお、本件では、両社間では正式に事業譲渡契約を締結していませんでしたが、判決では、事業譲渡があったものとして認定しています。

 

 

事業譲渡の際には、元の譲渡会社の商号や屋号、標章に対するブランド力というものが重要であり(そうでなければ譲受会社としても事業を譲り受ける魅力がなくなることもある)、安易に似たような商号や屋号などを付けていると、譲渡会社の債務について連帯責任を負わされてしまうということになります。

 

では、どうしておけばよかったのでしょうか。

 

会社法22条2項では、免責登記の制度が規定されており、元の譲渡会社の債務について責任を負わないという登記(免責登記)をしておくことで、責任を免れることができるとされています。

 

会社法22条2項 前項の規定は、事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。事業を譲り受けた後、遅滞なく、譲受会社及び譲渡会社から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。

 

商号をそのものを続用する場合でなくても、類似の商号や屋号の続用であっても免責登記はすることができるとされているのが登記実務です。

本件でも、きちんと免責登記をしておくべきであったものと考えられます。

 

もっとも、本件では、債権者からの追及を免れるためにスキームを組んだような形跡があるため、金融機関その他債権者も怒ったようであり、商号続用という法律構成がだめでも、(成否はともかく)債権者取消なり法人格否認の法理なりという法律構成で追及がされていた可能性もあったものと思われます。

 

やはり、債権者に対してはいずれかの段階で誠実に一定の説明をしたうえで、スキーム を組んでいくことが債務超過会社における事業再編に当たっては重要かと思われます。

 

 

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