金融商事判例1490号で紹介された事例です(松山地裁平成28年2月10日判決)。


犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律という長い名称の法律があり、いわゆる「振り込め詐欺防止法」と呼ばれているものです。


振り込め詐欺や闇金融などの犯罪に利用されていると思われる金融機関の口座について凍結できる根拠を与えるとともに、その後の、預金保険機構での公告などの手続きを経て、届け出があった被害者に対して口座に残っているお金を分配するという手続きを定めたものです。


本件では、中国から留学生として来日した女性が、偽造の運転免許証を使って開設したネット口座に、性風俗で働いて得たお金約であるおよそ500万円超を預けていたところ、偽造の免許証やオーバーステイなどの件で警察に逮捕されてしまい、その後、中国に強制送還されましたが、日本で働いてためていた前記口座のお金の払戻を求めたという事案です。


本件で、オーバーステイなどで逮捕した警察からネット口座の金融機関に対して捜査事項照会がなされたり、また、女性は強制送還されてしまったため金融機関からの通知が届かなかったりしたことから、金融機関が警察に連絡したところ、担当者から偽造の運転免許証を使用したことやオーバーステイにより有罪判決を受けて強制送還されたことなどを告げられ、犯罪利用口座に当たる可能性があるとして口座の凍結をしたというものです。


犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律
第3条1項
 金融機関は、当該金融機関の預金口座等について、捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があることその他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、当該預金口座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずるものとする。
2項 金融機関は、前項の場合において、同項の預金口座等に係る取引の状況その他の事情を勘案して当該預金口座等に係る資金を移転する目的で利用された疑いがある他の金融機関の預金口座等があると認めるときは、当該他の金融機関に対して必要な情報を提供するものとする。





本件では、そもそも、偽造の運転免許証によって口座を開設していたので、預金者は誰なのかということが問題となりましたが、口座の申込書の筆跡や女性が逮捕勾留など身柄拘束されていた期間はびたりと入出金が止まっていることなどから女性が預金者であると認定されています。


そして、預金されたお金は女性が性風俗で働いて得たお金であると認められること(犯罪によって得たお金ではないこと)や、口座凍結から1年半以上が経過してもなお「被害者」から「犯罪」を疑わせる申し出がないことなどから、本件においては、口座が犯罪に利用されていたものではないことの立証がされたとして、預金の払い戻しが命じられています。


解説によりますと、犯罪性がないことの立証があったとして預金の払い戻しが命じられた判決としては初めてのものではないかということです。



ちなみに、本件では、警察から情報の提供はされたものの、警察から口座凍結の要請まではされていないようです。振り込め詐欺や闇金融などの場合は、警察から口座凍結の要請がなされていることが通常で、この場合、警察が口座凍結解除について首を縦に振らない限り、金融機関が自主的に口座凍結を解除してくれることはまずありません。
警察が口座凍結要請の解除を通知してくれて初めて預金のお金が動かせることになります。


警察がいつ口座凍結の解除をしてくれるか、それはケースバイケースで、いくつか経験がありますが、それは守秘義務ということで。





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