判例タイムズ1421号で紹介された事例です(東京地裁平成26年4月25日判決)。



消滅時効が完成したとしても,その後に,債務の承認をすると,時効の援用をすることができなくなるというのが判例の立場です。



本件ではAが貸金業者との間でカードローン契約していたところ,最終取引日から5年以上経過した後(法人の貸金業者の貸金債権は5年で消滅時効期間の経過となります),訴訟提起され,期日の4日前に和解交渉を試みようと,貸金業者の担当部署に電話をかけ,担当者から「一括での支払いは可能か」と聞かれたのに対し「極めて難しいので何回かにわけてお願いしたい。」と述べたことが,時効の援用権を喪失する債務の承認に当たるかどうかが問題となりました。



結局,Aは,遅延損害金を含めた支払を求められている金額が思っているよりも多額であったことから,「色々と相談しなきゃいけない。」「検討したいので電話では即答できない。答弁書は裁判所に提出する」と述べて電話を切り,裁判所での期日において,消滅時効の援用をしたのでした。



裁判所は,Aの前記発言は,担当者から一括払いを求められたことからその応答として分割払いを求めたに過ぎないこと,一括払いを拒否したことに発言の趣旨があり分割で支払う意思を表明したとは認められないこと,Aが発言の3日後には消滅時効の援用をする旨の答弁書を提出しており,Aとしては債務の存否を争い最終的には裁判所の判断を求める意思を有しており担当者もそのことを認識していたと言えることなどから,訴訟外での和解の中でなされた発言の一部にすぎないとして,債務の承認をしたものとはいえないと判断し,Aの消滅時効の援用を認めました。




私たち弁護士としても,債務整理の仕事をする際には,債務の承認とはならないように,通知には「これは債務の承認をするものではありません。」と記載しておくなどしています。時効が完成していることが明らかな場合には時効を援用すればよいわけですが,受任した最初の段階で,資料などを業者から取寄せたりする場合には,とりあえず業者に連絡する必要があるわけで,通知の書き方には気を使うわけです。

もっとも,資料を調べた結果,消滅時効が完成していることが分かれば,時効中断していないかどうか確認したうえで,時効を援用すればよいわけで,本件Aのように,債務の承認と捉えかねられない危険な交渉をすることはありません。

本件ではAは救われたわけですが,自分で動く前に,やはり,きちんと専門家に相談するということが必要だと思われます。


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